第8回世界男子ジュニア選手権大会
開催地:カナダ・ホワイトホース
大会期日:2008年6月20日〜6月29日

 公式ホームページ http://www.worldsoftball2008.com



最 終 順 位
優勝
オーストラリア
準優勝
カナダ
3位
日本
4位
ニュージーランド




 出場国
 日本
 オーストラリア
 カナダ
 ニュージーランド
 ベネズエラ
 アメリカ
 アルゼンチン
 メキシコ
 デンマーク
 南アフリカ
 チェコ
 ボツワナ

日程&組合せ

月日 フィールド1 フィールド2
  試合 開始時間 チーム 試合 開始時間 チーム
6月20日 1 12:00 オーストラリア vs ボツワナ 2 13:00 デンマーク vs ニュージーランド
3 14:30 ベネズエラ vs 南アフリカ 4 15:50 アルゼンチン vs メキシコ
  18:00 開会式               
5 19:00 カナダ vs チェコ 6 19:30 アメリカ vs 日本
6月21日 7 09:30 ニュージーランド vs ベネズエラ 8 11:00 日本 vs 南アフリカ
9 12:00 アルゼンチン vs チェコ 10 13:30 アメリカ vs デンマーク
11 14:30 南アフリカ vs オーストラリア 12 16:00 メキシコ vs チェコ
13 17:00 ボツワナ vs ベネズエラ 14 18:30 日本 vs デンマーク
15 19:30 カナダ vs アルゼンチン       vs  
6月22日 16 09:30 メキシコ vs ボツワナ 17 11:00 カナダ vs 南アフリカ
18 12:00 アルゼンチン vs ベネズエラ 19 13:30 ニュージーランド vs ボツワナ
20 14:30 オーストラリア vs 日本 21 16:00 チェコ vs デンマーク
22 17:00 アメリカ vs 南アフリカ 23 18:30 メキシコ vs ベネズエラ
24 19:30 カナダ vs ニュージーランド       vs  
6月23日 試合時間変更 デンマーク vs オーストラリア 雨天順延 ボツワナ vs カナダ
雨天順延 南アフリカ vs アルゼンチン 雨天順延 ベネズエラ vs チェコ
雨天順延 日本 vs メキシコ 雨天順延 ニュージーランド vs アメリカ
31 17:00 オーストラリア vs チェコ 32 18:30 デンマーク vs アルゼンチン
33 19:30 ベネズエラ vs カナダ 25 19:30 デンマーク vs オーストラリア
6月24日 27 07:00 南アフリカ vs アルゼンチン 26 08:30 ボツワナ vs カナダ
34 09:30 南アフリカ vs メキシコ 35 11:00 ボツワナ vs アメリカ
36 12:00 日本 vs ニュージーランド 37 13:30 アルゼンチン vs オーストラリア
38 14:30 デンマーク vs メキシコ 39 16:00 ベネズエラ vs アメリカ
40 17:00 南アフリカ vs ニュージーランド 41 18:30 ボツワナ vs 日本
42 19:30 オーストラリア vs カナダ 28 21:00 ベネズエラ vs チェコ
6月25日 30 07:00 ニュージーランド vs アメリカ 29 08:30 日本 vs メキシコ
43 09:30 ニュージーランド vs チェコ 44 11:00 アメリカ vs アルゼンチン
45 12:00 メキシコ vs カナダ 46 13:30 オーストラリア vs ベネズエラ
47 14:30 南アフリカ vs デンマーク 48 16:00 ボツワナ vs チェコ
49 17:00 日本 vs アルゼンチン 50 18:30 アメリカ vs メキシコ
51 19:30 デンマーク vs カナダ       vs  
6月26日 52 12:00 オーストラリア vs アメリカ 53 13:30 メキシコ vs ニュージーランド
54 14:30 アルゼンチン vs ボツワナ 55 16:00 チェコ vs 南アフリカ
56 17:00 ニュージーランド vs オーストラリア 57 18:30 デンマーク vs ベネズエラ
58 19:30 カナダ vs 日本       vs  
6月27日 59 11:00 デンマーク vs ボツワナ 60 12:00 チェコ vs アメリカ
61 13:30 ベネズエラ vs 日本 62 14:30 南アフリカ vs ボツワナ
63 16:00 メキシコ vs オーストラリア 64 17:00 アルゼンチン vs ニュージーランド
65 18:30 チェコ vs 日本 66 19:30 カナダ vs アメリカ







大会第1
(6月20日/金)


〔予選リーグ第2戦/アメリカ戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日  本 1 0 1 0 1 1 0 4
 アメリカ 1 0 0 0 1 0 0 2

(日)○濱田(7回)−藤川(7回)

▲世界選手権、開幕!
▲被安打3・奪三振10の力投を見せた濱田
 6月20日(金)、第8回世界男子ジュニア選手権大会がカナダ・ホワイトホースで開幕。日本はオープニングセレモニー直後の試合でアメリカと対戦。大事な初戦を濱田耕児郎の力投と抜け目のない攻めで4−2と快勝。チーム一丸となった戦いで勝利を収め、1981年以来、遠ざかっている「世界一」の座の奪還へ向け、上々のスタートを切った。
 オープニングセレモニーが、その直前に行われたメキシコ対アルゼンチンの試合が長引いたこともあり、予定より30分遅れた18時半にはじまり、日本は出場全12チーム中6番目に堂々の入場行進。いよいよ10日間にわたる熱戦の火蓋が切られた。
 日本はオープニングセレモニー直後にアメリカと対戦。先攻の日本は初回、1番・植田が四球で出塁。イリーガルピッチ、ワイルドピッチで無死三塁とし、2番・林も四球を選び、3番・川口の高いバウンドのショートゴロの間に三塁走者が生還。ノーヒットで1点を先制した。アメリカは先発のDEFOに入っていた右投手を、試合開始と同時にDPの左投手に代えるという「DPルール」を活用した得意の奇襲戦法に出たが、これが完全に裏目。代わった左投手がイリーガルピッチを取られてリズムを崩し、四球を連発。さらにイリーガルピッチ、ワイルドピッチでピンチを広げ、打者2人に投げたところで早くも降板。それが初回の失点の直接的な原因となってしまっただけに、惜しまれる選手交代のミスであった。
 日本の先発は左腕の濱田。その立ち上がり、1点のリードをもらい、先頭打者を三振に切って取る上々の滑り出しだったが、2番打者にスコアボード直撃の特大のソロホームランを浴び、アッという間に同点。後続を連続三振に打ち取り、すぐに立ち直りを見せたが、試合は振り出しに戻ってしまった。
 日本は3回表、9番・首藤、1番・植田が連続内野安打。2番・林のピッチャーゴロの間に進塁し、一死二・三塁とした後、3番・川口がレフトにキッチリと犠牲フライを打ち上げ、1点を勝ち越した。5回表には、二死から1番・植田がライト前ヒット。2番・林が三塁線を破るヒットで続き、3番・川口がレフト前にタイムリー。貴重な追加点を挙げた。1点差に詰め寄られた6回表には、5番・内海の三塁強襲安打、敵失で無死一・二塁とした後、7番・筒井が追い込まれながらもしぶとくセンター前にタイムリーを放ち、粘るアメリカを突き放した。
 守っては、先発・濱田が被安打3・奪三振10の力投で完投勝ち。大事な開幕戦を勝利で飾った。
 決して楽な試合ではなかった。ミスもなかったわけではない。全員がベストのパフォーマンスを見せたとは言い難い試合内容だった。だが、それでも勝った。誰かがミスをしても誰かがそれを補う好プレーを見せた。試合に出ている者もベンチにいる者も、誰もが声を張り上げ、チームが一丸となって勝利へと突き進んだ。
1981年の第1回大会以来、遠ざかっている「世界一」の座。その「世界一」の座を取り戻すために、今、確かな一歩を踏み出した。


予選リーグ第1戦/アメリカ戦スターティングラインアップ

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
8番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 濱田耕児郎(豊田自動織機)
▽選手交代
7回表 大嶋OUT→佐次田 誠(カネボウ小田原)IN ※代走









■大会第2日(6月21日/土)

〔予選リーグ第2戦/南アフリカ戦〕

  
  1 2 3 4 5
 南アフリカ 0 0 1 0 0 1
 日   本 2 3 6 2 x 13

※大会規定により5回得点差コールド
(日)○古賀(3回)・立石(2回)−藤川(5回)
〔本塁打〕菅野、植田
〔三塁打〕首藤
〔二塁打〕植田、大嶋

▲日本、第2戦の相手は南アフリカ
超特大の一発を放った菅野
 6月21日(土)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第2日、この日の日本はダブルヘッダー。まず南アフリカに13−1の5回コールド勝ちを収めると、続くデンマーク戦も打線が爆発。23−0の3回コールドで下し、圧倒的な強さで開幕3連勝を飾った。明日は「前半戦の山場」オーストラリア戦。本大会3連覇を継続中で4連覇を狙う「王者」オーストラリアに、「絶好調」の日本が挑むことになる。
 日本の先発は古賀。高校時代(新見高/岡山)に春・夏連覇を達成した右腕を先発に立てた。古賀は落ち着いた立ち上がりを見せ、南アフリカの初回の攻撃を三者凡退に切って取り、日本の攻撃のリズムを作り出した。
 日本はその裏、1番・植田がいきなり一・二塁間を破り、2つのワイルドピッチで無死三塁とすると、2番・林が四球を選び、3番・川口の2球目に二盗。川口は三振に倒れ、一死となったものの、4番・大嶋のファーストゴロの間に、三塁走者・植田が判断よく、本塁を陥れ、まず1点を先制。さらに二死三塁とチャンスは続き、5番・内海の強烈な当たりがショートのエラーを誘い、2点目。この回2点を先制した。続く2回裏には、9番・首藤のタイムリー、2番・林のセンターへの犠牲フライ、3番・川口のピッチャー強襲のタイムリーなどで3点を追加。3回裏には、6番・菅野のスコアボード直撃のホームラン、1番・植田のスリーランを含む7本の長短打を集中。大量6点を奪い、続く4回裏にも9番・首藤の左中間を破るスリーベース、1番・植田の死球、盗塁で無死二・三塁とし、2番・林がまたしてもセンターへ犠牲フライを打ち上げ、この本塁への送球がそれる間に、三塁走者に続き、二塁走者までもがホームイン。この回2点を挙げ、勝負を決めた。
 守っては、先発・古賀が3回表にソロホームランを浴び、1点を失ったが、3イニングを無難にまとめ、4回表からリリーフした立石も、いきなりイリーガルピッチを取られ、これに動揺したか、無死一・二塁のピンチを招いたが、落ち着いて後続を断ち、2イニングを無失点に抑え、今大会2勝目を挙げた。

〔予選リーグ第2戦/南アフリカ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
8番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 古賀 元気(立命館大)
▽選手交代
3回裏 筒井OUT→佐次田 誠(カネボウ小田原)IN ※代打
 〃  内海OUT→山崎 雄太(神戸学院大)IN ※代打
4回表 古賀OUT→立石 壮平(岡豊高)IN ※投手交代
 〃  代打の佐次田がショート、山崎がライトの守備に入る




〔予選リーグ第3戦/デンマーク戦〕

  
  1 2 3
 デンマーク 0 0 0 0
 日   本 13 10 x 23

※大会規定により3回得点差コールド
(日)○谷川(2回)・谷脇(1回)−藤川(3回)
〔本塁打〕川口、大嶋、植田
〔三塁打〕林
〔二塁打〕川口(2)、大嶋、藤川、菅野、首藤


▲日本、第3戦の相手はデンマーク
▲「主砲」大嶋にも待望の一発が飛び出した

 日本の予選リーグ第3戦の相手はデンマーク。試合開始前に冷たい雨が降り、急激に温度が下がり、震えるような寒さの中でプレーボールがかかった。
 日本の先発は谷川。谷川は1番打者、2番打者を連続三振に取り、3番打者はセンターフライ。三者凡退に退ける完璧な立ち上がりを見せた。
 日本はその裏、1番・植田が一塁線を鋭く破る安打で口火を切ると、3番・川口、4番・大嶋の連続ホームランを含む長短11安打を集中。打者17人を送る猛攻で一挙13点を奪い、初回で勝負を決めた。続く2回裏にも、2番・林、3番・川口、4番・大嶋、代打・山崎、6番・菅野の5連打を含む7長短打を浴びせ、10点を追加。3回コールド勝ちを収めた。
 日本はこれで開幕3連勝。初戦で強豪・アメリカを苦しみながらも破り、この日は2試合ともコールド勝ちと調子を上げ、まさに「絶好調」といったところだ。
 ただ……明日の相手はオーストラリア。本大会3連覇を継続中で、前人未到の4連覇に挑む「王者」が相手となる。本大会も初戦のボツワナ戦を15−0、続く南アフリカ戦を19−0といずれもコールド勝ち。圧倒的な強さを見せており、投打に死角は見当たらない。この「最強の王者」に「絶好調」の日本が挑む。まさに「前半戦最大の山場」であり、この一戦が大会の行方そのものを占う「大一番」となることは間違いない。日本がオーストラリアを破るようなことになれば……1981年以来の「世界一」が俄然現実味を帯びてくる。
 「王者」オーストラリアがその力を見せつけるのか。前回、前々回とオーストラリアの牙城を崩せず、準優勝に甘んじた日本がその「リベンジ」を果たすのか。この一戦に注目が集まる。

〔予選リーグ第3戦/デンマーク戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
8番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 谷川 智紀(熊本学園大)
▽選手交代
2回裏 内海OUT→山崎 雄太(神戸学院大)IN ※代打
3回表 谷川OUT→谷脇 靖雄(宇部興産)IN ※投手交代
 〃  代打の山崎がライトの守備に入る







■大会第3日
6月22日/日)

〔予選リーグ第4戦/オーストラリア戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日     本 1 0 0 0 0 0 0 1
 オーストラリア 0 1 0 4 0 1 x 6

(日)●濱田(3回2/3)・嶋田(2回1/3)−藤川(6回)
〔本塁打〕植田

▲植田の先頭打者本塁打で先手を取ったが……
▲オーストラリア打線を止められず……
  6月22日(日)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第3日、ここまで3連勝と「絶好調」の日本は、本大会3連覇を継続中で4連覇を狙う「王者」オーストラリアと対戦した。
 
先攻の日本は初回、1番・植田がいきなりの先頭打者本塁打。ライトスタンドへ鮮やかなアーチをかけ、アッという間に1点を先制した。勢いに乗る日本は、2番・林が粘って四球を選び、さらに盗塁をしかけたが、間一髪アウト。ここで勢いに乗り切れなかったことが、後々の試合展開に響いた。
 日本の先発は濱田。開幕戦のアメリカ戦で見事な完投勝利を挙げた左腕に、この「大一番」の先発を託した。濱田は期待に応え、1点のリードをもらった初回の立ち上がりを、三振、ショートゴロ、センターフライに打ち取り、三者凡退。無難に試合を滑り出させたかに見えた。
 しかし、オーストラリアもすぐに反撃。2回裏、安打、ワイルドピッチ、内野ゴロで一死三塁のチャンスを作ると、6番打者の痛烈な当たりが三遊間を襲い、サード・林がダイビングキャッチ。完璧な反応でこのヒット性の当たりを抑えたものの、一塁送球がわずかに逸れたのを見て、三塁走者が本塁突入。ファースト・菅野がすぐに本塁へ送球し、「アウト」のタイミングに見えたが、判定は「セーフ」。オーストラリアが同点に追いつき、試合は振り出しに戻ってしまった。
 こうなると試合は「王者」オーストラリアのペース。4回裏には、四球、安打で無死一・二塁のチャンスをつかむと、さらに四球で満塁と攻め立て、タイムリー、2つの押し出しなどで、大量4点を奪い、試合を決めてしまった。
 この試合の勝負を決めた4回裏の攻防は、カナダとのテストマッチ以前の日本に見られた「自信のなさ」と「弱気の虫」が顔を出した結果だった。本大会3試合ですばらしい配球を見せていたバッテリーが、相手を警戒するあまり、厳しいコースを突こうとして、それがボールになり、苦し紛れにストライクを取りにいって痛打されるか、「打たれたくない」と逃げ回り、結局ストライクすら入らなくなるという悪循環に陥ってしまっていた。
 確かに打たれたのは甘く入ったボールだった。スキを見せない「王者」が「好球必打」に徹し、誘い球に乗らなければ、カウントの組み立ては難しくなる。「打たれたくない」「甘い球は投げられない」と慎重に警戒する気持ちは分からなくもない。だが、それでももっと自らのボールを信じ、バックを信じ、「勝負」すべきではなかったか。少なくとも、そこに「挑戦者」の姿はなかった。「戦う気持ち」が感じられなかった。それが何より悔しく感じた。
 「王者」の力に圧倒されたという思いはない。植田のプレーボールホームランで「王者」は一瞬うろたえた。それでも、そこから「王者」のプライドをかなぐり捨て、到底捕れそうもないファウルボールに飛びつき、あらん限りの声を振り絞り、日本に向かってきた。2回裏、「アウト」のはずの判定を「セーフ」と言わせたのは、オーストラリアの「気迫」ではなかったか。
 「このままでは終われない」「オーストラリアともう一度戦いたい」試合後、選手たちは口々にそう言った。それを実現するには「勝つ」しかない。幸い世界選手権の試合方式はリーグ戦。この1敗で終わるわけではない。「リベンジ」のチャンスは残されている。しかし、その一方でニュージーランド、カナダといった難敵との対戦もまだ残されている。ここを勝ち残らないことには、「打倒・オーストラリア」どころではない。「王者」オーストラリアへの「挑戦権」を得るために、もう負けるわけにはいかない。

〔予選リーグ第4戦/オーストラリア戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
8番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 濱田耕児郎(豊田自動織機)
▽選手交代
4回裏 濱田OUT→嶋田 智希(環太平洋大)IN ※投手交代







大会第5日(6月24日/火)

〔予選リーグ第5戦/ニュージーランド戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日      本 0 0 1 6 0 0 1 8
 ニュージーランド 0 0 0 6 0 0 1 7

(日)古賀(3回0/3)・内海(2/3)・○谷川(2回1/3)・濱田(1回)−藤川(7回)
〔三塁打〕植田



▲ニュージーランドは「ハカ」で気合いを入れる!
▲菅野、執念の決勝打!
 6月24日(火)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第5日、雨天による順延で、前日、試合のなかった日本は、この日、ニュージーランド、ボツワナとのダブルヘッダーに挑んだ。大会第3日、「王者」オーストラリアに1−6と完敗し、初黒星を喫しているだけに、チームの立て直しを図るためにも、今日のダブルヘッダーに連勝し、再び勢いを取り戻したいところだ。
 
先攻の日本は初回、2番・林のレフト前ヒット、盗塁、四球、ワイルドピッチで二死二・三塁の先制機をつかんだが、5番・内海が見逃し三振。惜しいチャンスを逃した。
 日本の先発は古賀。今年1月に実施された男子U19日本代表の第1次海外強化合宿(ニュージーランド遠征)で好投した実績を買われて、この大事な試合の先発を任された。しかし、その立ち上がり、いきなりイリーガルピッチを取られ、それに動揺したか、先頭打者を四球で歩かせ、送りバントの後、3番打者の3球目にまたしてもイリーガルピッチの宣告。初回から一死三塁のピンチを迎えた。3番打者は結局、四球で歩かせたものの、ここで古賀が踏ん張る。4番打者、5番打者を連続三振に打ち取り、絶体絶命のピンチを切り抜けた。
 この力投が試合の流れを引き寄せ、3回表、日本は一死から今大会大活躍の1番・植田が一・二塁間を破るヒットで出塁。すかさず盗塁でチャンスを広げ、さらにパスボールで三進。二死後、勝負強さが光る3番・川口がセンター前にタイムリーを放ち、待望の先取点を挙げた。こうなると試合は日本のペース。4回表、5番・内海がセカンドゴロエラーで出塁すると、この試合6番に打順の上がった藤川がニュージーランド守備陣のバントシフトをあざ笑うかのような絶妙のプッシュバントを決め、一・二塁。7番・菅野のあわやホームランかというレフトへの大飛球はレフトの超ファインプレーに阻まれたものの、二塁走者・一塁走者がこの当たりにつられることなく、冷静にタッチアップ。一死二・三塁とチャンスを広げ、8番・筒井がセンター前へタイムリー。二者を迎え入れ、貴重な追加点を奪った。さらに9番・首藤が内野安打で再び一・二塁のチャンスを作ると、もはや「神がかり」的な活躍を見せる1番・植田が左中間を深々と破る三塁打。さらに2番・林、4番・大嶋にもタイムリーが飛び出し、この回大量6点を奪い、このままコールド勝ちかと思われた。
 しかし、その裏、「ソフトボール王国」ニュージーランドが、その威信をかけた大反撃を見せる。3本の長短打を浴びせ、アッという間に3点を返し、先発・古賀をノックアウトすると、リリーフした内海にも長短打を浴びせ、ついに1点差。コールドどころか、一気に試合をひっくり返す勢いで日本の投手陣に猛打を浴びせた。
 ここで日本は谷川を投入。この谷川が試合の流れを変えて見せた。ニュージーランドの猛攻を断ち、長かった4回裏の攻撃を終わらせると、5回裏、6回裏も「気合」の投球でニュージーランド打線に反撃を許さず、試合の流れを再び日本に引き寄せた。
 日本は7回表、5番・内海のセンター前ヒット、6番・藤川のセカンドゴロがエラーを誘い、無死一・二塁。ここで7番・菅野が執念のセンター前タイムリー。完全に詰まらされた打球だったが、菅野の「執念」がボールに乗り移り、二遊間を抜けて行った。結果的にこの1点が大きくモノをいうことになった。
 日本はその裏、いまや「エース」「日本の切り札」的存在に成長した濱田を投入。逃げ切りを図ったが、簡単に二死を取った後、5番打者にチェンジアップを狙い打たれ、超特大の本塁打で1点差。次打者もノースリーとなり、嫌な雰囲気になりかけたが、ここから「打てるものなら打ってみろ!」とばかりに強気に攻め、最後の打者を三振に打ち取り、日本が「死闘」を制し、貴重な1勝を挙げた。
 一時は「コールドゲームか」と楽勝ムードが流れ、そこから怒涛の反撃を受け、大量7点のリードから1点差まで詰め寄られ、試合の流れは完全にニュージーランドにあった。しかし、その流れをジッと我慢し、耐え忍び、逆に先に追加点を奪い、試合を決めて見せた。決して格好いい勝ち方ではなかった。しかし、流れに呑み込まれ、簡単に諦めてしまう「弱さ」はもうそこにはなかった。か弱き少年たちは厳しい戦いの中で、たくましく成長し、今まさに「男」となり、「戦士」となった。

〔予選リーグ第5戦/ニュージーランド戦スターティングラインアップ〕

1番・センター     植田 貴也(岡豊高)
2番・サード      林  卓磨(立命館大)
3番・レフト      川口 拓馬(関西大)
4番・DP       大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト      内海 裕也(京都産業大)
6番・キャッチャー   藤川 拓郎(立命館大)
7番・ファースト    菅野 達也(環太平洋大)
8番・ショート     筒井 昭太(環太平洋大)
9番・セカンド     首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー  古賀 元気(立命館大)
▽選手交代
4回裏 古賀OUT→山崎 雄太(神戸学院大)IN
    ※ライト・内海がピッチャーに回り、山崎がライトに入る
 〃  山崎OUT→谷川 智紀(熊本学園大)IN
    ※ピッチャー・内海がライトに回り、谷川がピッチャーに入る
7回裏 谷川OUT→濱田耕児郎(豊田自動織機)IN ※投手交代









〔予選リーグ第6戦/ボツワナ戦〕

  
  1 2 3 4 5
 日  本 2 0 4 0 5 11
 ボツワナ 0 0 2 0 0 2

(※大会規定により5回得点差コールド
(日)○嶋田(4回)・立石(1回)−藤川(5回)
〔本塁打〕川口、菅野


▲ダブルヘッダーでボツワナと対戦
▲日本は攻守に手堅い試合運びでコールド勝ち!
 先攻の日本は初回、1番・植田が四球で出塁すると、ワイルドピッチで二塁へ進み、2番・林が手堅く送り、3番・川口のピッチャーゴロの間に三塁走者・植田が判断良く生還。先取点を挙げると、4番・内海のレフト前ヒットをレフトが後逸。これで内海が一気にホームに還り、この回2点を先制した。3回表には、3番・川口、5番・菅野にツーランが飛び出し、4点を追加。5回表にも6安打を集中し、5点を追加。勝負を決めた。
 守っては、先発・嶋田が3回裏にツーランを浴び、2点を失ったが、最後は立石が締め、5回コールド勝ちを収めた。
 日本はこれで5勝1敗。7戦全勝のオーストラリア、6勝1敗のカナダ、5勝1敗のメキシコと上位争いを演じている。明日はそのメキシコとの直接対決が待っている。メキシコを叩き、アルゼンチンにも勝って、明後日のカナダとの直接対決を迎えたい。そして……カナダを破れば、予選リーグ2位以上の通過が見えてくる。そのためにも、まだまだ負けられない戦いが続いていく。

〔予選リーグ第6戦/ボツワナ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      内海 裕也(京都産業大)
5番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
6番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
7番・ショート    佐次田 誠(カネボウ小田原)
8番・ライト     山崎 雄太(神戸学院大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 嶋田 智希(環太平洋大)
▽選手交代
5回裏 嶋田OUT→立石 壮平(岡豊高)IN ※投手交代









大会第6日(6月25日/水)

〔予選リーグ第7戦/メキシコ戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日  本 0 0 0 1 1 0 0 2
 メキシコ 0 0 0 2 1 3 6

(日)●立石(5回)・谷脇(0/3)・古賀(1回)−藤川(6回)
〔三塁打〕首藤

▲日本は3投手をつぎ込んで防戦したが……
▲メキシコの猛攻の前に2敗目を喫す
 6月25日(水)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第6日、日本はメキシコ、アルゼンチンの中南米勢とのダブルヘッダーに挑んだ。メキシコ戦は本来、23日(月)に行われる予定であったが、雨によりこの日に順延。前日にナイトゲームを戦い、この日は早朝8時半から試合開始という強行日程を強いられることになった。
 
前日のダブルヘッダーを連勝し、通算5勝1敗まで星を伸ばし、決勝トーナメント進出圏内が見えてきた日本は、この日もメキシコ、アルゼンチンとのダブルヘッダー。まず5勝1敗の同率に並ぶ、「当面のライバル」メキシコと対戦した。
 日本は4回表、4番・大嶋がセンター前ヒット、5番・内海もライト前ヒットで無死一・二塁のチャンスをつかんだ。6番・藤川のピッチャーゴロが1−6−3とわたるダブルプレーとなり、チャンスを潰したかに見えたが、7番・菅野がレフト前に運び、日本が1点を先制した。
 日本の先発は立石。投手陣唯一の高校生がこの大事な一戦の先発を任された。立石は立ち上がりの無死一・二塁のピンチを切り抜けると、落ち着いたピッチングを見せ、3回まで無失点。しかし、1点のリードをもらった4回裏、二死二塁から7番打者にスコアボード直撃のツーランを浴び、逆転を許してしまった。
 逆に1点を追う立場となった日本は5回表、この回先頭の9番・首藤がレフト線に三塁打を放ち、1番・植田のレフトへの犠牲フライで三塁走者・首藤を迎え入れ、すぐに同点に追いついた。
 しかし、メキシコはその裏、一死からショートゴロエラーの走者を出すと、手堅く送りバント。3番打者が三遊間を破り、再び1点のリードを奪った。
 日本は6回表、二死から7番・菅野の四球、8番・筒井のセンター前ヒットで一・二塁の同点機を作ったが、9番・首藤はピッチャーゴロ。一塁へ懸命のヘッドスライディングを試みるも、あと一歩およばず同点のチャンスを逃した。
 勢いに乗るメキシコはその裏、日本が送り込んだ谷脇、古賀のリリーフ陣を持ち前の強力打線で粉砕。3本の長短打とメキシコらしからぬ手堅いスクイズなどで決定的な3点を追加。そのまま逃げ切った。
 前日のナイトゲームの後、いきなり早朝の試合。特に今大会がはじまってからは午前中の試合はなく、試合に臨むリズムがどこか今までと違っていた。見事な集中力でつながっていた打線が、この試合ではつながりを欠き、先制はしても1点止まり、同点には追いついたが逆転できず、といった感じで「あと一押し」ができないまま、最後は警戒していたメキシコの強力打線に投手陣がつかまり、痛い星を落とした。
 長丁場での大会では、「エアポケット」に入り込んでしまったような試合が必ずあるもの。ここまで厳しい試合を乗り切ってきたこのチームも「例外」ではなく、「当面のライバル」との大事な一戦でそれが出てしまい、終始リズムに乗り切れないまま、試合が終わってしまった。
 この試合に勝てば、決勝トーナメント進出は「まず間違いない」というところだった日本だが、日本が敗れたことで上位争いは混沌としてきた。ここからは本当に一つも負けられない試合が続く。日本の「真価」が問われるのはここからである。

〔予選リーグ第7戦/メキシコ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
7番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
8番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 立石 壮平(岡豊高)
▽選手交代
6回裏 立石OUT→谷脇 靖雄(宇部興産)IN ※投手交代
 〃  谷脇OUT→古賀 元気(立命館大)IN ※投手交代










〔予選リーグ第8戦/アルゼンチン戦〕

  
  1 2 3 4 5 6
 日    本 1 1 2 0 0 4 8
 アルゼンチン 0 0 1 0 0 0 1

※大会規定により6回得点差コールド
(日)○谷川(6回)−藤川(6回)
〔本塁打〕菅野、大嶋
〔三塁打〕川口、首藤
〔二塁打〕林、大嶋、菅野

▲日本は堅い守りでアルゼンチンの攻撃を凌いだ
▲6回表、大嶋の超特大の本塁打でコールド勝ち!
 先攻の日本は初回、2番・林の左中間二塁打、3番・川口の右中間三塁打で1点を先制。続く2回表には、6番・菅野の右中間への本塁打で1点を追加し、3回表には、3番・川口、4番・大嶋の長短打と6番・菅野の三塁線を鋭く破る二塁打で2点を追加。6回表には、8番・筒井のバントヒット、9番・首藤のレフトオーバーの三塁打で1点を加え、1番・植田もセンター前にはじき返し、この回2点目。イリーガルピッチ、ワイルドピッチで無死三塁とした後、2番・林の内野安打で3点目。3番・川口がピッチャーフライに倒れ、一塁走者・林も離塁アウトで二死となったが、4番・大嶋が場外の森深くに打球が消える超特大のソロホームラン。この回4点を挙げ、6回コールド勝ちを収めた。
 守っては、「吠える投手」谷川が6回を1失点に抑える好投。守備陣の好守にも支えられ、完投勝利を挙げた。
 日本はこれで通算成績6勝2敗。全勝のオーストラリア、1敗のカナダを追いかける「3番手グループ」につけている。今日のメキシコ戦に勝っていれば、かなり楽な展開になっていたのだが……。そう簡単に勝たせてはくれないのが「世界のレベル」である。
 明日はカナダ戦はスタンドに入り切れないほどの超満員の観衆が詰めかけるだろう。周りはみんなカナダの応援。完全アウェーの雰囲気の中でも「勝つ」ことが日本には求められる。また、勝つことでしか道は開かれない。カナダ戦の敗北は決勝トーナメントへの道を断たれ、予選リーグ敗退の危機に晒されることを意味する。「本当の戦い」はこれからはじまる。

〔予選リーグ第8戦/アルゼンチン戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
8番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 谷川 智紀(熊本学園大)
▽選手交代なし







大会第7日(6月26日/木)

〔予選リーグ第9戦/カナダ戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日 本 2 1 0 0 1 0 2 6
 カナダ 0 0 1 0 0 0 1 2

(日)○濱田(7回)−藤川(7回)
〔二塁打〕内海


▲「スーパー高校生」植田のタイムリーで3点目
▲奪三振12の力投を見せた「エース」濱田
 6月26日(木)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第7日、ここまで6勝2敗でニュージーランドと同率3位の日本は、今大会のホスト国であり、地元の大声援を受け、8勝1敗で2位につけるカナダと対戦した。この日もスタンドは超満員。地元・カナダの応援に詰めかけた観客でスタンドは埋め尽くされ、完全な「アウェー」の雰囲気の中で試合がはじまった。
 
先攻の日本は初回、1番・植田が四球を選び、2番・林が絶妙の送りバント。これが自らも生きる内野安打となり、3番・川口がライト前ヒットで続き、無死満塁の絶好機をつかんだ。4番・大嶋はサードフライに倒れ、一死となったが、5番・内海への3球目がパスボールとなり、三塁走者・植田に続き、二塁走者・林までもが判断良く本塁を陥れ、この回2点を先制した。
 日本の先発は濱田。今や日本の「エース」に成長した左腕は、その立ち上がり、一死から連打を浴びたものの、後続を三振、センターフライに打ち取り、2点のリードを保ったまま、ピンチを切り抜けた。
 日本は2回表、7番・藤川が死球で出塁。2つの内野ゴロの間に三塁まで進み、1番・植田がしぶとくレフト前に運び、1点を追加。今大会大当たりの「スーパー高校生」植田の活躍で貴重な追加点を挙げた。
 一方、カナダも黙ってはいない。3回裏、一死から1番打者がセンター前ヒット。セカンドフライ、パスボールで二死二塁となった後、3番打者にセンター前に運ばれ、1点を返された。
 日本は5回表、1番・植田がセンター前ヒット。2番・林がキッチリ送った後、「チャンスに燃える男」川口がセンター前へタイムリー。1点を追加し、7回表には、またしても「スーパー高校生」植田が一・二塁間を破り、2番・林が絶妙のバント。一塁への気迫のヘッドスライディングがこの打球を処理したキャッチャーの悪送球を誘い、無死一・三塁。ここで「チャンスに燃える男」川口がまたしてもセンター前に運び、まず1点。なお無死二・三塁と攻め立て、「無限の飛距離を誇る大砲」大嶋があわやホームランかというセンターへの犠牲フライを打ち上げ、この回2点目。5点のリードを奪い、完全にカナダの息の根を止めた。
 守っては、尻上がりに調子を上げた濱田が、最終回にソロホームランを浴びたものの、被安打6・奪三振12の力投で完投。「エース」の気迫溢れるピッチングで決勝トーナメント進出を争う「当面のライバル」カナダを叩き、通算成績を7勝2敗とした。
 この日、本大会3連覇を継続中で史上初の4連覇を狙い、前回、前々回と予選リーグ・決勝トーナメントを通じて全勝のまま、「完全優勝」を達成していた「王者」オーストラリアがニュージーランドに敗れ、今大会初黒星を喫するという大波乱があった。しかも……0−9の5回コールド負け。信じられない結果であった。
 これで全勝のチームはなくなり、9勝1敗のオーストラリア、8勝2敗のカナダ、ニュージーランド、7勝2敗の日本の決勝トーナメント進出が濃厚になった。数字の上では、まだ6勝4敗のベネズエラ、メキシコにもわずかに可能性が残されているが、ベネズエラは明日の日本戦に勝ち、日本がさらにチェコにも負けた場合のみ、メキシコは明日のオーストラリア戦に勝ち、日本がベネズエラ、チェコに連敗した場合のみ、4位の可能性が残されてはいるが、現実的にはほとんどその可能性はないといっていいだろう。
 逆に日本は明日のベネズエラ戦に勝った時点で決勝トーナメント進出が決まり、仮に敗れても最終戦のチェコ戦に勝ちさえすれば決勝トーナメント進出が決まる。
 ただ、日本の狙いは予選リーグ2位通過。今日のカナダ戦での勝利でその可能性が限りなく高まった。このままカナダ、ニュージーランドと2敗のまま同率に並んでも、その両チームに直接対決で勝利している日本の順位が上となり、2位が確定するからである。
 ただ、まだ明日の2試合が残されている。これに勝たないことにはカナダ戦での勝利は意味をなさなくなる。また、決勝トーナメントでの戦いを考えても、結局は自らが「勝つ」ことでしか、道は開かれないし、「世界一」の座を勝ち取ることはできない。
 予選リーグ2位通過の可能性は限りなく高まった。ただ、それはまだ「可能性」にすぎない。その「可能性」を「現実」に変えるためには「勝つ」しかない。予選リーグ最終日、最後の最後まで気を抜くことはできない。今日のような集中力を持って、残り2試合に臨むこと。そして……その2試合に「勝つ」こと。日本がなすべきことはそれだけである。

〔予選リーグ第9戦/カナダ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
8番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 濱田耕児郎(豊田自動織機)









大会第8日(6月27日/金)

〔予選リーグ第10戦/ベネズエラ戦〕

  
  1 2 3 4 5
 ベネズエラ 0 1 0 0 1 2
 日   本 6 2 0 1 9

※大会規定により5回得点差コールド
(日)○谷川(3回)・古賀(2回)−藤川(5回)
〔三塁打〕内海〔二塁打〕植田、大嶋

▲4点目のタイムリーを放った筒井
▲ベネズエラの強力打線が反撃にかかる
 6月27日(金)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第8日、予選リーグは最終日を迎えた。ここまで7勝2敗の日本は、この日はベネズエラ、チェコとダブルヘッダー。まず通算6勝4敗でわずかに決勝トーナメント進出の可能性を残すベネズエラと対戦。日本は、この試合に勝てば決勝トーナメント進出が決まり、最終戦となるチェコ戦にも勝てば予選リーグ2位通過が決定。メダル(3位以上)が確定することになる。
 
日本の先発は谷川。今大会に入り、安定感抜群のピッチングを見せる「吠える投手」が、強打のベネズエラ打線に真っ向勝負を挑んだ。谷川は先頭打者にセンター前ヒットを打たれたものの、次打者の送りバントがピッチャー前の小フライとなると、敏捷な動きでこれを捌き、一瞬のうちにダブルプレー。この自らの好守備で波に乗り、3番打者を三振に切って取り、日本の攻撃に勢いをつけた。
 日本はその裏、1番・植田が四球を選び、2番・林が手堅く送りバント。3番・川口はサードフライに倒れ、二死となったが、4番・大嶋が四球で歩き、5番・内海がレフト頭上を越える走者一掃の三塁打を放ち、まず2点を先制。さらに6番・菅野のレフト前タイムリーで3点目。7番・藤川もレフト前ヒットで続き、二死一・二塁とすると、8番・筒井がセンター前にタイムリーを放ち、4点目。9番・首藤が四球を選び、満塁とすると、「スーパー高校生」植田がセンター頭上をライナーで越える二塁打を放ち、二者を迎え入れ、この回大量6点を奪い、初回で試合を決めてしまった。それでも日本は攻撃の手を緩めず、2回裏には6番・菅野のタイムリーで2点を追加。4回裏には、8番・筒井のタイムリーで1点を加え、大きくリードを広げた。
 守っては、これまでの10試合で92得点と1試合10点近くを叩き出してきたベネズエラの強力打線を、先発・谷川が3イニングを1失点、リリーフした古賀が2イニングを1失点に抑え、5回コールド勝ちを収めた。
 これでベネズエラの決勝トーナメント進出の可能性が消え、日本の決勝トーナメント進出が決定。予選リーグ最終戦となるチェコ戦に勝利すれば、予選リーグ2位通過、メダル(3位以上)が確定することになる。

〔予選リーグ第10戦/ベネズエラ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
8番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 谷川 智紀(熊本学園大)
▽選手交代
3回表 首藤OUT→佐次田 誠(カネボウ小田原)IN ※セカンドの守備に入る
4回表 谷川OUT→古賀 元気(立命館大)IN ※投手交代









〔予選リーグ第11戦/チェコ戦〕

  
  1 2 3 4
 チェコ 0 0 2 0 2
 日 本 10 1 8 19

※大会規定により4回得点差コールド
(日)○谷脇(2回)・嶋田(1回)・立石(1回)−藤川(4回)
〔本塁打〕植田、藤川〔三塁打〕佐次田〔二塁打〕藤川、筒井

▲予選リーグ最終戦はチェコと対戦
▲「スーパー高校生」植田の先頭打者本塁打が猛攻の口火を切った

 
この試合に勝てば予選リーグ2位通過が決まり、メダル(3位以上)が確定する日本は、先発・谷脇が立ち上がり二死満塁のピンチを招いたが、このピンチを冷静に切り抜けると、打線が初回からエンジン全開。まず「スーパー高校生」植田が今大会2本目となる先頭打者本塁打を放って口火を切ると、いきなり打者14人を送る猛攻。6番・藤川のスリーランを含む8本の長短打を集め、大量10点を挙げると、2回裏には、6番・藤川、7番・筒井の長短打で1点を追加。3回裏には、再び打者13人を送る猛攻。6本の長短打を集め、8点を加え、4回コールド勝ちを収めた。
 日本はこれで9勝2敗。予選リーグ2位通過を決めるとともに、メダル(3位以上)を確定させた。明日の相手は、本大会3連覇を継続中で史上初の4連覇を狙うオーストラリア。今大会、ニュージーランドに屈辱の5回コールド負けを喫し、前々回、前回に続く、予選リーグ・決勝トーナメントともに全勝での「完全優勝」の夢は消えたが、予選リーグ10勝1敗。総得点98・総失点21と抜群の安定感を示し、史上初の「4連覇」への意欲は衰えてはいない。日本も予選リーグでは1−6と完敗を喫している。
 だが、それだけにオーストラリアとの再戦に期するものがある。前々回、前回ともに3度ずつ挑みながら6連敗。オーストラリアにだけは一度も勝てず、2大会連続の準優勝に甘んじてきた。その先輩たちの悔しさの分まで、予選リーグでの敗戦の悔しさの分まで、明日の対戦でまとめてお返ししようと燃えに燃えている。オーストラリア戦へのモチベーションは限りなく高い。そして……日々成長を続けてきたこのチームなら「何か」をやってくれそうな気がする。1981年以来、遠ざかっていた「世界一」の座。それをこの手に取り戻すために……「最後の決戦」の時が近づいている。

〔予選リーグ第11戦/チェコ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
6番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
7番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
8番・ライト     山崎 雄太(神戸学院大)
9番・セカンド    佐次田 誠(カネボウ小田原)
DEFO/ピッチャー 谷脇 靖雄(宇部興産)
▽選手交代
3回表 谷脇OUT→嶋田 智希(環太平洋大)IN ※投手交代
4回表 嶋田OUT→立石 壮平(岡豊高)IN ※投手交代









第8回世界男子ジュニア選手権 予選リーグ戦績表                                

チーム名 日本 オーストラリア カナダ ニュージーランド ベネズエラ アメリカ アルゼンチン メキシコ デンマーク 南アフリカ チェコ ボツワナ 順位
日本   ●1─6 ○6─2 ○8─7 ○9─2 ○4─2 ○8─1 ●2─6 ○23─0 ○13─1 ○19─2 ○11─2 9 2 2
オーストラリア ○6─1   ○3─1 ●0─9 ○11─4 ○9─0 ○6─3 ○3─0 ○19─1 ○19─0 ○7─2 ○15─0 10 1 1
カナダ ●2─6 ●1─3   ○3─1 ○14─3 ○1─0 ○10─0 ○15─2 ○7─0 ○12─5 ○13─1 ○9─1 9 2 3
ニュージーランド ●7─8 ○9─0 ●1─3   ○7─4 ○4─3 ●6─7 ○8─1 ○20─2 ○7─0 ○11─2 ○16─1 8 3 4
ベネズエラ ●2─9 ●4─11 ●3─14 ●4─7   ●4─12 ○15-12 ○20─9 ○17─1 ○11─1 ○9─2 ○5─2 6 5 5
アメリカ ●2─4 ●0─9 ●0─1 ●3─4 ○12─4   ●4─5 ○7─6 ○7─0 ●2─10 ○9─5 ○15─0 5 6 8
アルゼンチン ●1─8 ●3─6 ●0─10 ○7─6 ●12─15 ○5─4   ●7─9 ○7─1 ○15─3 ○14─0 ○3─2 6 5 7
メキシコ ○6─2 ●0─3 ●2─15 ●1─8 ●9─20 ●6─7 ○9─7   ○10─0 ○9─6 ○18─11 ○12─1 6 5 6
デンマーク ●0─23 ●1─19 ●0─7 ●2─20 ●1─17 ●0─7 ●1─7 ●0─10   ●0─15 ○9─2 ○7─2 2 9 10
南アフリカ ●1─13 ●0─19 ●5─12 ●0─7 ●1─11 ○10─2 ●3─15 ●6─9 ○15─0   ○9─6 ○6─4 4 7 9
チェコ ●2─19 ●2─7 ●1─13 ●2─11 ●2─9 ●5─9 ●0─14 ●11─18 ●2─9 ●6─9   ○3─5 1 10 11
ボツワナ ●2─11 ●0─15 ●1─9 ●1-16 ●2─5 ●0─15 ●2─3 ●1─12 ●2─7 ●4─6 ●3─5   0 11 12
                            








大会第9日(6月28日/土)

〔決勝トーナメント1位・2位戦/オーストラリア戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日     本 0 0 0 0 1 0 0 1
 オーストラリア 0 1 2 0 1 0 4

(日)●古賀(2回1/3)・谷川(3回2/3)−藤川(6回)
〔二塁打〕筒井

▲2回裏、オーストラリアが先制!
▲最終回、センター前ヒットを放った藤川。最後まで諦めず、戦ったが……


 6月28日(土)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第9日、この日から決勝トーナメントに入り、まず予選リーグ3位のカナダと予選リーグ4位のニュージーランドが対戦。息詰まる投手戦を展開したが、地元の大声援を受けたカナダが2−1のサヨナラ勝ち。明日のブロンズメダルゲーム(3位決定戦)に駒を進め、敗れたニュージーランドがトーナメントから姿を消した。
 予選リーグ2位の日本は、予選リーグ1位の「王者」オーストラリアと対戦。気温9℃と冬を思わせる寒さの中、試合が開始された。
 
日本は予選リーグの対戦でオーストラリアのエース・ノーマンに10三振を喫し、1番・植田のプレーボールホームランはあったものの、それ以外はノーヒット。しかも内野ゴロ10・盗塁死1と外野にボールを飛ばすことすらできず、敗れ去っている。
 先攻の日本は初回、1番・植田、2番・林、3番・川口がいずれも内野ゴロに倒れ、「予選リーグの再現か……」と嫌な雰囲気が流れた。
 日本の先発は古賀。予選リーグの対戦で打ち込まれている左のエース・濱田ではなく、高校時代に何度も大舞台を経験し、優勝投手となってきた古賀の右腕に日本の命運を託した。古賀はその立ち上がり、冷静なピッチングを見せ、レフトフライ、サードゴロ、三振と三者凡退の上々の滑り出しを見せた。しかし、2回裏、簡単に二死を取った後、内野安打、四球で一・二塁のピンチを招き、8番・ボッカードにレフト前に運ばれ、1点を失ってしまった。
 一方、日本はその直後の3回表、7番・藤川がセンター前ヒット、8番・筒井の四球で無死一・二塁の反撃機をつかんだが、9番・首藤が三振。1番・植田の浅いレフトフライは折からの強風でレフトが落球したが、慌てず三塁へ送球し、フォースアウト。2番・林も三振に倒れ、惜しいチャンスを逃した。
 オーストラリアはその裏、1番・ウェルスが左中間を破る二塁打。2番・ハンクナーのサードゴロで二塁走者が飛び出し、サード・林がセカンド・首藤にすばやく送球、完全にアウトのタイミングだったが、セカンド・首藤がまさかの落球。この走者を生かし、さらにパスボールで無死二・三塁となった後、3番・ビントはショートゴロでランナーは動けず。ここで日本ベンチが動き、「吠える投手」谷川を投入。谷川は気迫溢れるピッチングで4番・プリエストを三振に打ち取ったものの、5番・ラバーズにセンター前に運ばれ、2点を失ってしまった。
 3点のリードを許した日本は5回表、一死から7番・藤川が振り逃げで出塁。続く8番・筒井が右中間を深々と破ったが、二塁を大きくオーバーランし、タッチアウト。その間に藤川がホームを踏み、1点は返したが、得点差を考えると痛い走塁ミスであった。
 オーストラリアはその裏、1番・ウェルスが三遊間を破り、2番・ハンクナーが手堅く送り、一死二塁。3番・ビントがレフト前に運んだが、レフト・川口が思い切りよく突っ込み、バックホーム。本塁を狙った二塁走者は楽々アウトのタイミングだったが、タッチにいった藤川のミットからボールがこぼれ、決定的な4点目。1点を返し、反撃ムードが高まったところだっただけに、痛い失点であった。
 日本は6回表、7回表と走者は出すものの、得点することはできず、1−4で敗れ、敗者復活戦(ブロンズメダルゲーム/3位決定戦)へ回ることが決まった。
 この試合でもオーストラリア・ノーマンを攻め切れず、3安打・7三振で内野ゴロも10と数字だけを見れば、予選リーグのときの対戦と何ら変わっていない。しかし、同じ内野ゴロでも、その「内容」に明らかな違いがあった。予選リーグのときは、完全に差し込まれ、ボテボテの内野ゴロばかりであったが、今回は「芯」でとらえた打球が多く、ちょっとどちらかにズレていれば……といった惜しい当たりが数多く見られた。
 守備面でも、「打ち込まれた」というよりは、ミス絡みの失点がほとんどで、「やられた」という印象はまったくない。むしろ「もう一度対戦することができれば今度は……」と思える試合内容だった。
 明日はまず「ブロンズメダルゲーム/3位決定戦」で、ニュージーランドを破って生き残った地元・カナダとの対戦となる。予選リーグでの対戦以上に、完全な「アウェー」の雰囲気の中での試合となるだろう。また、予選リーグで完敗を喫しているだけに、カナダの気合いの入れようも尋常ではなく、高いモチベーションを持って、日本に挑んでくることは間違いない。むしろ、この試合の方が難しい試合になるかもしれない。オーストラリアとの再戦を夢見る前に、まずこの試合に勝利しなければならない。
 いよいよ大会最終日、泣いても笑っても、明日すべての結果が出る。オーストラリアには、前々回、前回同様、今回も予選リーグ、決勝トーナメントと敗れており、大きなことを言えた立場ではないかもしれないが、「王者」の背中はハッキリ見えた。ゴールドメダルゲーム(ファイナル/決勝)でオーストラリアとの再戦が実現したならば、かなりの確率で日本が「世界一」になれるという手応えはある。
 それだけにカナダ戦を大事にしたい。カナダ戦には絶対の自信を持つ「エース」濱田を温存している。予選リーグでの対戦も圧勝だった。大会前のテストマッチも含め、情報も分析もその対策もバッチリだ。負ける要素は極めて少ないように見える。だからこそ、逆に「嫌な予感」がする。たくましく成長した選手たちに、「油断」や「気の緩み」など、ありはしないだろうし、「取り越し苦労」であればいいのだが……。
 10日間にわたる戦いの総決算。すべての「答え」は明日、出される。願わくは17名の戦士たちが持てる力のすべてを出し切り、「最高の試合」を見せてくれることを祈りたい。そして……持てる力のすべてを出し切ることができたなら、必然的に「世界一」へと道がつながっているはずである。

〔決勝トーナメント1位・2位戦/オーストラリア戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
7番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
8番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 古賀 元気(立命館大)
▽選手交代
3回裏 古賀OUT→谷川 智紀(熊本学園大)IN ※投手交代








大会第10日(6月29日/日)

〔決勝トーナメントブロンズメダルゲーム(3位決定戦)/カナダ戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日 本 2 0 0 0 0 0 1 3
 カナダ 0 3 0 0 0 0 2x 5

(日)●濱田(6回1/3)−藤川(6回1/3)
〔本塁打〕川口、筒井


▲7回表、二死走者なしから筒井が起死回生の一発を放つ!
▲まさかのサヨナラホームラン。勝負は決した
▲試合を終えた選手たちの頬に涙がつたう……
 6月29日(日)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第10日、大会もいよいよ最終日を迎え、この日は決勝トーナメント・ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)、ゴールドメダルゲーム(ファイナル/優勝決定戦)が行われた。
 第1試合では、昨日の1位・2位戦の敗者・日本と3位・4位戦の勝者・カナダが対戦。日本はこのカナダ戦に臨んだが、思いもよらぬ結末が待ち受けていた。
 
先攻の日本は初回、1番・植田が四球で出塁。2番・林は送りバント失敗で一死一塁となったが、3番・川口がボール気味のライズをライトスタンドに叩き込み、2点を先制。カナダファンで埋まった満員のスタンドが一瞬沈黙する強烈な先制パンチを浴びせた。
 しかも、日本の先発はオーストラリア戦を回避し、この試合に照準を合わせ、満を持して登板した「エース」濱田。カナダ戦に絶対の自信を持つ「エース」の登板で、日本の勝利は間違いないと思われた。
 しかし、地元・カナダにも意地がある。2回裏、6番・ポスキンがセンター前ヒットで出塁すると、次打者が手堅く送り、一死二塁。8番・ミッシェルが「お返し」とばかりにライトスタンドに同点ツーランを放つと、二死後、1番・ウォーカーが勝ち越しのソロホームラン。一気に逆転に成功した。
 一方、日本はカナダの先発・ケシャネのライズを打ちあぐみ、2回以降は得点を挙げることができない。日本のエース・濱田も再三得点圏に走者を背負いながらも何とか凌ぎ、3−2とカナダが1点のリードを奪ったまま、試合は最終回を迎えた。
 7回表、頼みの「主砲」大嶋がショートフライに倒れ、5番・内海も三振。二死走者なしとなって、カナダファンで埋まった満員のスタンドはカナダの勝利を確信。「カナダ! カナダ!!」絶叫のボルテージが最高潮に達したとき、6番・筒井のバットが一閃。打球は一直線にライトスタンドに飛び込んだ。一瞬、スタンドが静まりかえる。その中を筒井がダイヤモンドを一周する。歓喜の日本ベンチ、茫然と立ち尽くすカナダナイン。勝負は振り出しに戻った。
 7回裏、守備につく前に梅下ヘッドコーチが全員を集め、いったん興奮を静める。「勝負はこれから!」と生気を甦らせた日本ナインが守備位置に散る。7回裏、この攻撃を抑え、延長に持ち込めば絶対に勝てる。誰もがそう思っていた。しかし……地元の大声援に後押しされたカナダもさすがだった。一死一塁から2番・シュリンガムが左打席に入る。最後の力を振り絞り、カナダ打線に真っ向勝負を挑む日本のエース・濱田の入魂の一球をとらえ、青空に吸い込まれていくようにボールが高く舞い上がった。懸命に背走するセンター・植田。フェンス際で懸命に差し出した植田のグラブの上を黄色いボールが越えていった。サヨナラホームラン。一瞬の静寂の後、爆発する歓喜。カナダが決勝進出を決めた。
 10日間にわたる長い戦いを戦い抜いた17名の戦士たち。戦いを終えた戦士たちの頬を涙がつたう。決勝進出、オーストラリアとの再戦は叶わず、「世界一」の夢は消え失せた。
 しかし、次の瞬間、カナダファンばかりのスタンドが、スタンディングオベーションで日本ナインを迎えてくれた。「グッドゲーム!」惜しみない拍手と歓声はいつまでも途切れることはなかった。この拍手こそが、この歓声こそが、彼らが持てる力のすべてを出し切り、戦ったことの「証」であった。
 結果は、「世界一」には届かなかった。それどころか前々回、前回を下回る3位という成績に終わった。しかし、その戦いは称賛に値するものであり、胸を張れる結果であったと思う。恥ずべきことなど一つもない。全力で戦い、全力でプレーし、その持てる力のすべてを出し切り、そして……負けた。それを責めることなど、誰ができるだろうか。
 彼らは「日本代表」の「誇りとプライド」に賭け、その名にふさわしい試合を展開した。それはこのスタンドで日本のプレーを目撃した観客の一人ひとりが証人である。行き交う人が口々に「グッドゲーム」「グッドチーム」と称賛の言葉を惜しまなかった。私自身もこの戦いに立ち会うことができたことを誇りに思う。
 10日間にわたる戦いは終わった。しかし……「ソフトボール」は続いていく。このすばらしい戦いを見せたチームは、もはや存在しない。二度とこのメンバーが集まり、同じユニフォームを着ることはない。それでも……「ソフトボール」は続いていくのだ。それぞれのチームで。それぞれの場所で。今、このときの気持ちを決して忘れないでほしい。純粋にソフトボールに向かう気持ち。ただひたすらに「うまくなりたい」「強くなりたい」と欲する気持ち。それらを持ち続ける限り、「ソフトボール」は続いていく。「ソフトボール」に終わりはない。
 誰かが言った。「ソフトボールは奥が深い」と。そう……君たちはまだ「ソフトボール」の「入口」へ立ったばかりなのだ。ようこそ! 「ソフトボール」の世界へ!! 「ソフトボール」は君たちを歓迎する。
(第8回世界男子ジュニア選手権大会 日本選手団広報 吉田 徹)

〔決勝トーナメントブロンズメダルゲーム(3位決定戦)
/カナダ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
7番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
8番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 濱田耕児郎(豊田自動織機)
▽選手交代なし





第8回世界男子ジュニアソフトボール選手権大会 候補選手 名簿

  守備 氏 名 所属先 支部 年齢
1 投手 谷川智紀 熊本学園大学(熊本県) 熊本県 18
2 谷脇靖雄 宇部興産(山口県) 長崎県 18
3 内海裕也 京都産業大学(京都府) 広島県 18
4 古賀元気 立命館大学(京都府) 岡山県 18
5 濱田耕児郎 豊田自動織機(愛知県) 高知県 18
6 嶋田智希 環太平洋大学(岡山県) 福井県 18
7 立石壮平 岡豊高校(高知県) 高知県 17
8 捕手 藤川拓郎 立命館大学(京都府) 高知県 18
9 内野手 菅野達也 環太平洋大学(岡山県) 岡山県 19
10 首藤大地 トヨタ自動車(愛知県) 高知県 18
11 林 卓磨 立命館大学(京都府) 千葉県 18
12 筒井昭太 環太平洋大学(岡山県) 高知県 18
13 佐次田 誠 カネボウ小田原(神奈川) 神奈川県 19
14 外野手 植田貴也 岡豊高校(高知) 高知県 17
15 大嶋 匠 早稲田大学(東京都) 群馬県 18
16 山崎雄太 神戸学院大学(兵庫県) 高知県 18
17 川口拓馬 関西大学(大阪府) 岡山県 18


スタッフ
1 団長 鎌田恵雄 (財)日本ソフトボール協会 常務理事  
2 ヘッドコーチ 梅下佳裕 岡豊高校 高知県
3 コーチ 宮平永義 嘉手納高校 沖縄県
4 総務兼コーチ 山口義男 大村工業高校 長崎県
5 トレーナー 矢内智也 (株)スポーツプログラムス  
6 帯同審判 有山充剛 (財)日本ソフトボール協会 審判副委員長