第11回世界女子選手権大会
開催地:中国・北京市
大会期日:2006年8月27日(日)〜9月5日(火)

第11回世界女子選手権大会 公式サイト


■決勝トーナメント表


■決勝最終順位表
優勝
アメリカ
準優勝
日本
第3位
オーストラリア
第4位
中国
第5位
カナダ
第6位
イタリア


■大会第1日:8月27日(日) [予選リーグ第1戦:日本 vs 台湾]

▲奪三振12の力投! エース・上野

▲6回裏、キャプテン伊藤がトドメのツーランを放つ

 2008年北京オリンピックの予選を兼ねた第11回世界女子選手権大会が開幕。この大会はさながら「北京オリンピックのリハーサル」といった形で運営されており、オリンピックのために新設されたすばらしいスタジアムを舞台に、いつになく華やかな雰囲気の中で大会がはじまった。
 日本の先発はエース・上野。日本の頼れる「大黒柱」は、初戦独特の緊張感をものともせず、三者三振の絶好の立ち上がり。台湾打線をまったく寄せつけず、「格の違い」を見せつけた。
 日本は3回裏、一死から9番・乾が力で運ぶレフト前ポテンヒット。1番・西山もレフト前にクリーンヒットを放ち、一死一・二塁とチャンスを広げた。2番・内藤はピッチャーゴロに倒れ、二死となったが、3番・山田がセンターへ鋭い当たりのタイムリー。二塁走者を迎え入れ、日本が先手を取った。終盤6回裏には、二死二塁から7番・伊藤が粘る台湾の息の根を止めるツーランホームラン。チームを引っ張る「主将」の一発で貴重な追加点を挙げ、勝負を決めた。
 試合後、井川ヘッドコーチは、「試合内容には満足していない。もっと得点できるチャンスはあったし、早く上野を楽にしてやりたかった。やはりやるべきことをキチンとやらないと……」と、大事な初戦の勝利を喜びながらも、次戦以降へ気を引き締めていた。
 見事な完封で初戦を飾った上野も「初回は絶対に走者を出さないつもりで三振を狙いにいき、2回以降は暑さも考えながら、球数を抑えて打たせて取るピッチングを心がけました。この試合だけに限れば暑さがピッチングに影響をおよぼすことはありませんでしたが、この暑さの中で連戦をこなしていかなければならないわけですから、体力の消耗を防ぎ、スタミナ配分を考えるなどしていかなければならないとは思っています」と、先を見据えた冷静なコメントを残した。
 確かに、この勝利は「通過点」に過ぎない。そう考えれば、3─0での勝利という結果以上に、初回の一死二塁、3回裏の先制した後の二死二・三塁で「あと一本」が出ず、6回裏も伊藤のホームランで結果的に帳消しになりはしたが、狩野の二塁打で無死二塁としながら、5番・三科が送りバントを失敗。6番・馬渕も簡単に初球を打って出て、レフトフライに倒れた「詰めの甘さ」こそ反省材料になる。
 エース・上野が被安打2・奪三振12の快投を見せ、「世界一の投手」であることを実証し、打線の中心である山田が先制打を放ち、チームリーダー・伊藤に勝負を決める一発が出たことは、今後の戦いを考えると大きな意味がある。しかし、めざす先はまだ遥か遠くにある。1970年以来の「世界一」の座の奪還。そして……「究極の目標」である北京オリンピックでの金メダル獲得。そのためにはまだ克服すべき課題は多い。初戦の勝利ぐらいで浮かれている暇はない。「世界一」への戦いは、今はじまったばかりなのだ。


1 2 3 4 5 6 7
台   湾 0 0 0 0 0 0 0 0
日   本 0 0 1 0 0 2 X 3
(日)○上野(7回)─乾(7回)
〔本塁打〕伊藤〔二塁打〕狩野、廣瀬

◇予選リーグ第1戦(台湾戦)スターティングラインアップ

1番・セカンド 西山  麗 (日立ソフトウェア)
2番・ショート 内藤 恵美 (豊田自動織機)
3番・センター 山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・ライト 田中 幹子 (豊田自動織機)
5番・DP 三科 真澄 (日立&ルネサス高崎)
6番・レフト 馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
7番・ファースト 伊藤 幸子 (トヨタ自動車)
8番・サード 廣瀬  芽 (太陽誘電)
9番・キャッチャー 乾  絵美 (日立&ルネサス高崎)
DEFO(ピッチャー) 上野由岐子 (日立&ルネサス高崎)

※選手交代
5回裏 乾OUT→上西  晶 (太陽誘電) IN ※代打
6回表 上西OUT→乾  絵美 (日立&ルネサス高崎) IN ※キャッチャーにリエントリー
田中OUT→狩野亜由美 (豊田自動織機) IN ※ライトの守備に入る





■大会第2日:8月28日(月) [予選リーグ第2戦:日本 vs ベネズエラ]

▲落ち着いたピッチングを見せた増淵
 予選リーグ第2戦、日本はベネズエラと対戦。昨日、オランダを10─6で破った強打が売り物のチームだ。
 日本の先発は増淵。数々の大舞台を経験してきた増淵は落ち着いた立ち上がりを見せ、得意のライズボールを主体にチェンジアップを巧みに織り交ぜ、すべて内野フライに打ち取り、三者凡退。まずは無難に試合をスタートさせた。
 日本はその裏、第1打席の出塁率が異常なまでに高い切り込み隊長・西山が一・二塁間を破り、この試合も出塁。2番・内藤のショートゴロで走者が入れ替わり、一死となったが、3番・山田が四球で歩き、4番・馬渕がしぶとく一・二塁間を破るタイムリー。この試合、6番から4番に打順の上がった馬渕の一打で日本が先手を取った。3回裏には、1番・西山が四球を選び、2番・内藤がキッチリと送りバント。3番・山田が痛烈な当たりのセンター前タイムリーを放ち、1点を追加した。続く4番・馬渕が四球で歩き、5番・三科のバントで二死二・三塁とした後、6番・田中が「意地」のセンター前タイムリー。二者を迎え入れ、着々とリードを広げた。日本はその後も攻撃の手を緩めず、4回裏には2番・内藤のタイムリーで1点を追加。6回裏には、4番・馬渕が右中間スタンドへツーランを叩き込み、ベネズエラを圧倒した。
 守っては、先発・増淵が4回表に1点を失ったが、それ以外は危なげのないピッチングを見せ、最後は「抑えの切り札」高山が締めくくり、2勝目を挙げた。
 試合後、井川ヘッドコーチは、「昨日の試合で4番に起用した田中のところにチャンスが回っていきながら、あと一本が出ず、打線がつながらなかった。調子の上がっていた馬渕を4番に置くことで打線がつながり、6番に下げられた田中も奮起してタイムリーを打ってくれ、馬渕も先制タイムリーにダメ押しのツーランと期待通りの働きをしてくれた」と打順の入れ替えの意図を説明した。
 先発・増淵の起用については、「中南米のチームは野球が盛んなこともあり、総じて打撃のいいチームが多い。ベネズエラも基本的なスイングがしっかりしているし、しかも迷いなく思い切り振ってくるので、一発の恐さのあるチームでした。ただ、野球にはないソフトボール独特の変化球であるライズボールへの対応だけは難があるので、ライズボールを武器とする増淵、高山のリレーでいこうと考えていた」と語った。
▲馬渕のツーランでダメ押し!
 確かに、増淵、高山ともライズボールを巧みに使い、ベネズエラ打線を翻弄。特に先発・増淵はそれにチェンジアップを加えて緩急をつけ、それをリードする鈴木、乾の捕手陣も球審の判定がインコース高めに甘く、アウトコースに辛いと見るや、インコース高めのライズボールを有効に使った配球でベネズエラ打線を封じ込んだ。
 初戦の台湾戦で打線がつながらないと見れば、すぐに打線を組み替え、馬渕、田中が張り合うように打ち合った。増淵、高山は数々の修羅場をくぐり抜けてきた経験に裏打ちされた落ち着いたピッチングでチームを勝利に導いた。もちろん、すべての課題が解消されたわけではないが、初戦より「手応え」を感じさせる勝利だった。
 この日、コロンビアの大会出場キャンセルの報が届いた。前代未聞の出来事ではあるが、酷暑の中で連戦が続くスケジュールを考えれば、予選リーグ最終戦のコロンビア戦がなくなったことは、日本にとって「追い風」以外のなにものでもない。「風」が吹きはじめている。日本を「世界一」の座へと後押しする「風」が……。

1 2 3 4 5 6 7
ベネズエラ 0 0 0 1 0 0 0 1
日   本 1 0 3 1 0 2 X 7
(日)○増淵(6回)・高山(1回)─鈴木(6回)・乾(1回)
〔本塁打〕馬渕

◇予選リーグ第2戦(ベネズエラ戦)スターティングラインアップ

1番・セカンド 西山  麗 (日立ソフトウェア)
2番・ショート 内藤 恵美 (豊田自動織機)
3番・センター 山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・レフト 馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
5番・DP 三科 真澄 (日立&ルネサス高崎)
6番・ライト 田中 幹子 (豊田自動織機)
7番・ファースト 伊藤 幸子 (トヨタ自動車)
8番・サード 廣瀬  芽 (太陽誘電)
9番・キャッチャー 鈴木 由香 (日立ソフトウェア)
DEFO(ピッチャー) 増淵まり子 (デンソー)

※選手交代
5回裏 田中OUT→狩野亜由美 (豊田自動織機) IN ※代走
6回表 代走・狩野がそのままライトの守備に入る
7回表 増淵OUT→高山 樹里 (豊田自動織機) IN ※投手交代
鈴木OUT→乾  絵美 (日立&ルネサス高崎) IN ※キャッチャーの守備に入る





■大会第3日:8月29日(火) [予選リーグ第3戦:日本 vs ギリシャ]

▲先制タイムリーを放った山田

 予選リーグ第3戦、日本はギリシャと対戦。今大会、初めて先攻となる日本は初回、1番・西山がレフト線へクリーンヒット。続く2番・内藤が手堅く送りバント。このバントの処理を焦った一塁手が一塁へ悪送球し、無死一・三塁とチャンスを広げた。このチャンスに3番・山田がレフト前へタイムリーを放ち、まず1点を先制。4番・馬渕が四球で歩き、なお無死満塁と攻め立て、二死後、7番・伊藤がライト前へタイムリー。二者を迎え入れ、この回3点を先制した。
 日本の先発はエース・上野。この日も立ち上がりからギリシャ打線をまったく寄せつけず、5回二死まで一人の走者も許さぬパーフェクトピッチング。文字通り完璧なピッチングでギリシャ打線を封じ込んだ。
▲最後はエース・上野が締めて3勝目

 しかし、日本は初回に先制したものの、その後は2回表の二死一・二塁、4回表の無死一・二塁とチャンスを作りながら決定打が出ず、試合後半はいい当たりが再三にわたって野手の正面を突くなど、運にも見放されて追加点を奪えず、試合は終盤を迎えた。  6回表、日本は上野から後藤に投手交代。その後藤は先頭打者を三振に切って取ったが、連打を浴びて一・二塁。さらに自らの失策で満塁のピンチを迎えた。3番・サラをセカンドゴロに打ち取り、本塁封殺。これでピンチを切り抜けたかと思われたが、4番・ゲイルにレフト前に運ばれ、1点差まで詰め寄られてしまった。日本はたまらずエース・上野をリエントリーさせ、ピンチを脱すると、7回裏も上野が簡単に三者凡退に切って取り、3勝目を挙げた。
 昨日のベネズエラ戦で内容のある勝利を挙げ、この試合も初回まではいいリズムが続いていたが、2回以降はチャンスはありながら得点できず、最後は1点差まで追い上げられるなど、苦しい試合となってしまった。
 ともあれこれで3連勝。明日のオランダ戦、明後日のボツワナ戦は今日と同じ第1試合。比較的涼しい時間帯に試合を済ませ、ゆっくり心身を休ませることができる。この2試合で内容のある勝利を手にし、予選リーグの最終戦となるオーストラリア、そして強豪ひしめく決勝トーナメントへ向け、調子を上げていかなければならない。

1 2 3 4 5 6 7
日   本 3 0 0 0 0 0 0 3
ギリシャ 0 0 0 0 0 2 0 2
(日)○上野(6回1/3)・後藤(2/3)─乾(6回1/3)・鈴木(2/3)
〔二塁打〕西山

◇予選リーグ第3戦(ギリシャ戦)スターティングラインアップ

1番・セカンド 西山  麗 (日立ソフトウェア)
2番・ショート 内藤 恵美 (豊田自動織機)
3番・センター 山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・レフト 馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
5番・ライト 三科 真澄 (日立&ルネサス高崎)
6番・DP 田中 幹子 (豊田自動織機)
7番・ファースト 伊藤 幸子 (トヨタ自動車)
8番・サード 廣瀬  芽 (太陽誘電)
9番・キャッチャー 乾  絵美 (日立&ルネサス高崎)
DEFO(ピッチャー) 上野由岐子 (日立&ルネサス高崎)

※選手交代
6回表 乾OUT→鈴木 由香 (日立ソフトウェア) IN ※代打
6回裏 上野OUT→後藤真理子 (太陽誘電) IN ※投手交代
代打・鈴木がそのままキャッチャーの守備に入る
  後藤OUT→上野由岐子 (日立&ルネサス高崎) IN ※ピッチャーにリエントリー
  鈴木OUT→乾  絵美 (日立&ルネサス高崎) IN ※キャッチャーにリエントリー





■大会第4日:8月30日(水) [予選リーグ第4戦:日本 vs オランダ]

▲持ち味を十二分に発揮し、好投した先発・遠藤

 予選リーグ第4戦、日本はオランダと対戦。日本は今大会初登板となる遠藤を先発に立てた。その遠藤は初回、二死から死球で走者を出したものの得点を許さず、落ち着いた立ち上がりを見せた。
 日本はその裏、1番・西山、2番・上西が倒れ、二死となったが、3番・山田がライトスタンドへ豪快な一発。「ホームランは狙いません」と宣言していた頼れる3番打者の今大会第1号ホームランで日本が先手を取った。3回裏には、この回先頭の9番・狩野が詰まりながらもセンター前へポテンヒット。1番・西山のセカンドゴロの間に二塁へ進み、2番・上西がライトオーバーのタイムリーツーベース。続く3番・山田もセンター前へはじき返し、二死後、5番・伊藤がライトオーバーのエンタイトルツーベース。この回3点を挙げ、完全に試合の主導権を握ると、4回裏には5番・伊藤の今大会第2号となるツーランホームランを含む長短6安打を集中。大量6点を挙げ、5回コールド勝ちを収めた。
 守っては、先発・遠藤が持ち味を十二分に発揮。緩急を巧みに織り交ぜ、ストライクゾーンいっぱいを使った丁寧なピッチングでオランダ打線に的を絞らせず、4回を1安打に抑える好投。最後は増淵につなぐ盤石の投手リレーでオランダ打線を完封した。
 日本はこれで4連勝。この試合、スタメンに起用された上西、狩野が活躍。練習では好調を持続していながら出番に恵まれず、溜まっていた鬱憤を晴らすかのように溌剌としたプレーを見せた。また、5番に打順が繰り上がったキャプテンの伊藤がホームランを放つなど、打線も組み替えも的中し、昨日の嫌な流れを断ち切ることに成功した。
▲スタメン起用に応え、大活躍の上西

 しかし、その一方で相変わらず目に見えないミスも出ている。送りバントの失敗、走塁の判断ミスなど、この試合では致命的なミスにはならず、そのミスをもカバーするプレーが生まれて事なきを得ているが、予選リーグの1位通過をかけたオーストラリア戦では、あるいはオリンピックの出場権をかけた決勝トーナメントでは、こういったわずかなミスが勝負を分けることもある。ましてや王者・アメリカとの対戦では、絶対にミスは許されない。むしろ相手のミスを誘うような戦術・戦略を仕掛け、緻密なゲームプランに基づく完璧な試合運びを展開しなければ勝機はない。
 この試合の勝利で、コロンビア戦の不戦勝もあり、決勝トーナメント進出が確定。しかし、試合後の記者会見に臨んだ伊藤、上西両選手は、「私たちは優勝するためにここにきています。決勝トーナメント進出は通過点に過ぎません」と、落ち着き払った口調でそう言った。そう「本当の勝負」はまだまだこれからである。


1 2 3 4 5
オランダ 0 0 0 0 0 0
日   本 1 0 3 6 X 10
※大会規定により5回得点差コールド
(日)○遠藤(4回)・増淵(1回)─鈴木(5回)
〔本塁打〕山田、伊藤〔二塁打〕上西、伊藤、馬渕、田中

◇予選リーグ第4戦(オランダ戦)スターティングラインアップ

1番・ショート 西山  麗 (日立ソフトウェア)
2番・セカンド 上西  晶 (太陽誘電)
3番・センター 山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・レフト 馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
5番・ファースト 伊藤 幸子 (トヨタ自動車)
6番・DP 田中 幹子 (豊田自動織機)
7番・サード 廣瀬  芽 (太陽誘電)
8番・キャッチャー 鈴木 由香 (日立ソフトウェア)
9番・ライト 狩野亜由美 (豊田自動織機)
DEFO(ピッチャー) 遠藤 有子 (日立ソフトウェア)

※選手交代
5回表 遠藤OUT→増淵まり子 (デンソー) IN ※投手交代





■大会第5日:8月31日(木) [予選リーグ第5戦:日本 vs ボツワナ]

▲日本打線が爆発! 17安打・16得点の猛攻!!

▲ボツワナにコールド勝ち! 全勝を守る


 予選リーグ第5戦、日本はここまでコロンビア戦の不戦勝を除くと4戦全敗のボツワナと対戦。4戦全勝(コロンビア戦の不戦勝を含めると5勝)の日本とは力の差は歴然としていた。
 先攻の日本は初回、一死から2番・上西が四球で歩き、3番・山田のセンターオーバーのタイムリースリーベースであっさり先制。さらに4番・馬渕、5番・内藤、6番・三科の3連続長短打で3点を追加。失策を挟み、8番・鈴木、9番・狩野の長短打でさらに2点を加え、この回大量6点を挙げた。2回表には、3番・山田の2打席連続のスリーベースを皮切りに、6本の長短打を集中。打者11人を送る猛攻で7点を加え、4回表にも途中出場の4番・伊藤の三遊間を破るタイムリー、5番・内藤のレフトオーバーのタイムリーツーベースで3点を追加。17安打・16得点の猛攻でボツワナに4回コールド勝ちを収めた。
 守っては、大量点にも守られ、遠藤、後藤とつなぐ余裕の投手リレーでボツワナ打線を完封。全勝を守り、いよいよ明日、「当面のライバル」オーストラリアと予選リーグ「POOL・B」の1位をかけ、対戦することになる。
 予選リーグも大詰めを迎え、「POOL・A」「POOL・B」の上位4チームが「ダブルページシステム」で行われる決勝トーナメントへ駒を進めることになるが、通常のページシステムであれば、予選1位・2位は順位の上下はあってもシステム上の有利・不利はない。ダブルページシステムの場合も、1位・2位で予選を通過すれば、敗者復活戦に回る権利が生まれる点では差異はないが、対戦相手を考える必要が出てくる。  「POOL・A」の1位はアメリカとなる可能性が高く、2位通過の場合、決勝トーナメントの初戦でアメリカとぶつかることになり、正直それは避けたいところだ。「POOL・A」の2位は、中国もしくはカナダとなることが予想され、そこに勝ってまず北京オリンピックの出場権を獲得し(システム上、1位・2位戦の勝者は4位以上が確定する)、その上でアメリカと対戦し、できることならそこでも勝ち、ファイナルで待ちかまえる形をとれれば理想的である。
 逆に「POOL・B」の2位になった場合、初戦の相手がアメリカになるばかりか、もし敗れた場合、敗者復活戦で中国もしくはカナダと対戦する可能性が高くなる。もちろん、優勝するにはどこにも負けるわけにはいかないのだが、アメリカといきなり対戦して万が一敗れ、地元の熱狂的な声援を背に戦う中国。投手力が安定し、大会前から日本の情報分析班ががもっとも警戒し、密かにマークしていたカナダ。そのいずれかとの対戦となると、可能性は極めて低いが「連敗」でトーナメントから姿を消すケースもないとはいえない。オーストラリアを破っての1位通過。優勝を狙うには、これがもっとも安全で最短のコースであることは間違いない。大会もいよいよクライマックスを迎える。


1 2 3 4
日   本 6 7 0 3 16
ボツワナ 0 0 0 0 0
※大会規定により4回得点差コールド
(日)○遠藤(1回)・後藤(3回)─鈴木(1回)・乾(3回)
〔三塁打〕山田(2本)、馬渕、鈴木〔二塁打〕狩野、馬渕、山田、内藤

◇予選リーグ第5戦(ボツワナ戦)スターティングラインアップ

1番・DP 西山  麗 (日立ソフトウェア)
2番・セカンド 上西  晶 (太陽誘電)
3番・センター 山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・レフト 馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
5番・ショート 内藤 恵美 (豊田自動織機)
6番・ファースト 三科 真澄 (日立&ルネサス高崎)
7番・サード 廣瀬  芽 (太陽誘電)
8番・キャッチャー 鈴木 由香 (日立ソフトウェア)
9番・ライト 狩野亜由美 (豊田自動織機)
DEFO(ピッチャー) 遠藤 有子 (日立ソフトウェア)

※選手交代
2回裏 遠藤OUT→後藤真理子 (太陽誘電) IN ※投手交代
  鈴木OUT→乾  絵美 (日立&ルネサス高崎) IN ※キャッチャーの守備に入る
  馬渕OUT→伊藤 幸子 (トヨタ自動車) IN ※ファーストの守備に入る
  ファースト・三科がライト、ライト・狩野がレフトの守備に入る
3回表 三科OUT→田中 幹子 (豊田自動織機) IN ※代打
3回裏 田中OUT→三科 真澄 (日立&ルネサス高崎) IN ※ライトにリエントリー





■大会第6日:9月1日(金) [予選リーグ第6戦:日本 vs オーストラリア]

▲被安打3・奪三振9の力投で延長9回を投げ抜いた上野

▲キャプテン伊藤の劇的なサヨナラ打で予選1位の座が確定!

 予選リーグ第6戦、日本は予選リーグ「POOL・B」の1位の座をかけ、ここまで全勝のオーストラリアと対戦した。オーストラリアはここまでの5試合(コロンビア戦は不戦勝)で、チーム打率3割7分5厘・本塁打7と打線が絶好調。3試合連続のコールド勝ちと波に乗っている。この好調な打線を、日本の誇る「世界一の投手」上野がどう抑えるか、その一点に焦点は絞られた。
 日本の先発はもちろん上野。注目の立ち上がり、上野は1番・モローをセカンドゴロに打ち取ったものの、2番・アレンに力でレフト前に運ばれ、懸命にダイビングキャッチを試みたレフト・馬渕がこの打球をはじく間に二塁まで進塁。いきなり得点圏に走者を背負うことになったが、3番・ポーターを三振、4番・カーパディオスをピッチャーゴロに切って取り、ピンチを切り抜けた。
 オーストラリアの先発はローチ。日本は初回、二死から3番・山田が四球で出塁したが盗塁失敗。2回裏には、この回先頭の4番・馬渕がライト前ヒットを放ち、犠打、内野ゴロで三塁まで走者を進め、7番・三科がレフト前へヒット性の当たりを放ったが、レフト・ドマンがダイビングキャッチ。超ファインプレーの前に得点できず、4回裏にも二死一・三塁と攻め立てたが、6番・田中がサードフライに倒れ、無得点。押し気味に試合を進めながら、先取点を挙げることができなかった。
 一方、上野は6回までオーストラリア打線を1安打に封じていたが、7回表、この回先頭の3番・ポーターに右中間を破られ、自らのエラーも絡み、無死一・三塁のピンチを迎える。さらにパスボールで二・三塁とされたが、ここからが「世界一」の投手の真骨頂。5番・モーズリーをショートゴロ、6番・ティットキュームを三振に切って取り、走者を釘付け。最後は7番・ドマンをセカンドへのハーフライナーに打ち取り、絶体絶命のピンチを切り抜けた。
 両チーム無得点のまま、試合はついに延長タイブレーカーへ突入。オーストラリアは8回表、8番・ライトが送りバント失敗の後、三振。続く9番・スチュワートも三振に倒れ、二死となったが、1番・モローがしぶとく二・遊間を破り、待望の先取点を挙げた。
 日本はその裏、9番・乾が送りバントをしっかりと決め、一死三塁。負傷退場を余儀なくされた西山の代打・上西がセーフティーバントを仕掛けるが、ピッチャー・ローチがすばらしいフィールディングでこれをさばき、上西の必死の一塁へのヘッドスライディングも届かず、間一髪アウト。万事休すかと思われた。しかし、2番・内藤の「執念」が奇跡を起こす。追い込まれながらも放った打球はフラフラッと二遊間へ上がり、懸命にグラブを差し出すショートのわずか先に打球は落ち、三塁走者が生還。二度のオリンピックを経験した「歴戦の勇者」の勝利への執念が試合を振り出しへと戻した。
 こうなると試合の流れは日本。9回表、エース・上野が送りバントを許さず、一死。3番・ポーターの三遊間を襲う痛烈な打球もショート・内藤が華麗にさばき、二死。最後は4番・カーパディオスをショートゴロに打ち取り、オーストラリアの攻撃を無得点に抑えた。
 日本はその裏、4番・馬渕が送りバントを失敗し、嫌な流れになりかけたが、今大会大活躍の5番・伊藤がライト前に運び、劇的なサヨナラ。タイブレーカーの「死闘」を制し、予選リーグ「POOL・B」の1位通過を決めた。
 明日のコロンビア戦は不戦勝となるため、束の間の休息。9月3日(日)、決勝トーナメントの初戦は、予選リーグ「POOL・A」2位のチームと対戦することになる。これに勝てば北京オリンピック出場権獲得が決定。しかし、オリンピック出場権獲得は「最低限の目標」に過ぎない。1970年以来の「世界一」の座へ……「本当の戦い」がこれからはじまる。


1 2 3 4 5 6 7 8 9
オーストラリア 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1
日   本 0 0 0 0 0 0 0 1 1X 2
(日)○上野(9回)─乾(9回)

◇予選リーグ第6戦(オーストラリア戦)スターティングラインアップ

1番・DP 西山  麗 (日立ソフトウェア)
2番・ショート 内藤 恵美 (豊田自動織機)
3番・センター 山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・レフト 馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
5番・ファースト 伊藤 幸子 (トヨタ自動車)
6番・ライト 田中 幹子 (豊田自動織機)
7番・DP 三科 真澄 (日立&ルネサス高崎)
8番・サード 廣瀬  芽 (太陽誘電)
9番・キャッチャー 乾  絵美 (日立&ルネサス高崎)
DEFO(ピッチャー) 上野由岐子 (日立&ルネサス高崎)

※選手交代
7回表 田中OUT→狩野亜由美 (豊田自動織機) IN ※ライトの守備に入る
8回裏 西山OUT→上西  晶 (太陽誘電) IN ※代打
9回表 代打・上西がそのままセカンドの守備に入る




■予選リーグ戦績表
POOL・A


※4位─6位の決定は同率チーム同士の対戦の失点差により順位を決定

POOL・B

※5位・6位の決定は同率チーム同士の対戦成績により順位を決定




■大会第7日:9月3日(日) [決勝トーナメント1位・2位戦:日本 vs 中国]

▲満員の観客で埋まったスタンドは中国の応援一色に染まった


▲内藤を中心に、日本は「鉄壁の守備」で中国を完封した


 今日からいよいよ決勝トーナメント。大会もクライマックスを迎える。まず第1試合で予選リーグ「POOL・A」1位のアメリカと「POOL・B」2位のオーストラリアが対戦。2点を先制されたオーストラリアがアメリカの左腕・オスターマンをとらえ、同点に追いつき、なお一打逆転のチャンスをつかむなど、白熱した好ゲームになるかと思われたが、アメリカが徐々に地力を発揮。効果的な一発攻勢でリードを広げ、終わってみれば11?2の大差で6回コールド勝ち。一番乗りで北京オリンピックの出場権を獲得した。
 予選リーグ「POOL・B」1位の日本は、「POOL・B」2位の中国と対戦。この大会のホスト国である中国は、熱狂的な声援にも後押しされ、予選リーグでは優勝候補の大本命・アメリカに敗れはしたものの、2?0と善戦。力的には上と見られたカナダにもわずか1安打に抑えられながら、その1本がタイムリーという「神がかり」的な勝ち方で決勝トーナメントに勝ち上がってきた。昨日のカナダ戦で勝利し、日本との対戦が決まった途端、チケット売り場には長蛇の列ができ、アッという間にソールドアウト。日本との「決戦」をスタジアムで後押ししようという「サポーター」たちのムードも最高潮に達していた。
 試合当日、満員の観客を飲み込んだスタンドは中国の応援一色。一種異様な盛り上がりの中、試合が開始された。日本の先発はエース・上野。立ち上がりから安定感抜群のピッチングを見せ、5回終了まで一人の走者も許さぬパーフェクトピッチング。決して「全開」ではなく、球数を抑えた打たせて取るピッチングで凡打の山を築けば、バックもそれに応え、ショート・内藤を中心に好守備を連発。「鉄壁の守備」で上野を支えた。
 一方、日本打線も中国先発の干をとらえられない。高めのボールになるライズに手を出し、3回までノーヒット。4回表、ようやく1番・上西がチーム初安打となるショート内野安打を放ち、それを足掛かりに二死一・二塁の先制機をつかんだが、5番・伊藤が見送りの三振。5回表の二死二塁のチャンスも逃し、嫌な流れのまま、試合は終盤を迎えた。
 中国は6回表、この回先頭の7番・辛が上野の完全試合を打ち砕く、レフトオーバーのツーベース。続く8番・邵も強攻策で二遊間を破り、無死二・三塁とチャンスを広げた。しかし、ここから上野に「スイッチ」が入る。それまで封印していた中国打線が苦手とするライズを駆使し、後続を三振、セカンドライナー、三振と簡単に料理し、味方打線の援護を持った。
 日本は7回表、一死から6番・三科がショート内野安打で出塁。7番・廣瀬が四球を選び、一・二塁とすると、8番・乾に代え、代打・田中で勝負に出た。しかし、田中はあえなく三振。9番・狩野が俊足を生かし、セカンド内野安打で二死満塁としたが、1番・上西がショートゴロに倒れ、無得点。どうしても得点を挙げることができず、試合は延長タイブレーカーにもつれ込んだ。
 日本は8回表、2番・内藤がしっかりと送り、一死三塁。3番・山田のバットに期待がかかったが、ショートゴロに打ち取られ、三塁走者・上西が飛び出し、三・本間に挟まれた。これでチャンスは費えたかに見えたが、挟まれた上西が懸命に粘り、その間に打者走者の山田が三塁まで到達。この上西の粘りと山田の走塁が結果的に日本を勝利に導くことになる。続く4番・馬渕の当たりは三塁線への緩いゴロ。万事休すと思われたが、一塁への送球が高く、一塁手が精一杯伸びて捕球したが、一塁ベースから一瞬足が離れ、その瞬間馬渕が一塁へ駆け込み、日本が待望の先取点を挙げた。
 こうなれば「世界一の投手」上野が得点を許すはずがない。送りバントすら許さず、先頭打者を三振。上野は打てないと見て仕掛けた中国の三盗の「奇襲」も女房役・乾が落ち着いて刺し、最後の打者を三振に打ち取り、日本が苦しみながらも価値ある勝利をモノにした。
 日本はこれで北京オリンピックの出場権を獲得。「最低限の目標」はクリアすることができた。しかし、日本の「真の目標」はまだ先にある。1970年以来の「世界一」の座の奪回。北京オリンピックでの金メダル獲得。オリンピック出場権獲得は、そのためのワンステップに過ぎず、「通過点」でしかない。
 明日は王者・アメリカとの対戦が待っている。破壊力抜群の打線とバラエティに富んだ投手陣を持つ「最強の王者」アメリカ。相手にとって不足はない。王者・アメリカといかに戦うか、日本の「真価」が問われる試合になる。願わくば「これがソフトボールだ!」という最高の試合を見せてくれることを期待したい。

1 2 3 4 5 6 7 8
日 本 0 0 0 0 0 0 0 1 1
中 国 0 0 0 0 0 0 0 0 0
日)○上野(8回)─乾(8回)


1番・セカンド    上西  晶  (太陽誘電)
2番・ショート    内藤 恵美  (豊田自動織機)
3番・センター    山田 恵里  (日立ソフトウェア)
4番・レフト     馬渕 智子  (日立ソフトウェア)
5番・ファースト   伊藤 幸子  (トヨタ自動車)
6番・DP      三科 真澄  (日立&ルネサス高崎)
7番・サード     廣瀬  芽  (太陽誘電)
8番・キャッチャー  乾  絵美  (日立&ルネサス高崎)
9番・ライト     狩野亜由美  (豊田自動織機)
DEFO(ピッチャー)  上野由岐子  (日立&ルネサス高崎)

※選手交代
7回表 乾OUT→田中 幹子 (豊田自動織機) IN ※代打
7回裏 田中OUT→乾 絵美 (日立&ルネサス高崎) IN ※キャッチャーにリエントリー





大会第8日:9月4日(月) [決勝トーナメント1位・2位勝者戦:日本 vs アメリカ]

▲大事な試合の先制点は日本へ。試合に出ている選手だけでなく、ベンチも一丸となって戦った


▲山田の強肩がチームを救った


 昨日、中国に苦しみながらも勝利し、北京オリンピックの出場権を獲得した日本は、ファイナル進出をかけ、アメリカと対戦した。アメリカは、世界選手権5連覇、オリンピック3大会連続の金メダルと「世界一」の座に君臨し続けている「最強の王者」である。特に世界選手権では7度の優勝を誇り、第1回大会から今大会まで(昨日の試合まで)世界選手権で通算113試合を戦い、104勝9敗。。勝率は実に9割を超え、連覇のはじまった1986年以降に限れば、62勝1敗という驚異的な数字を残している。その「最強の王者」に日本が果敢に挑んだ。
 日本の先発はもちろんエース・上野。「世界一の投手」上野に「世界最強」のアメリカ打線がいきなり襲いかかった。日本は1番・ローに対し、ライト・狩野まで内野の守備に組み込む「ローシフト」を敷き、驚異的な俊足を誇るアメリカのトップバッターを抑えにかかる。ローはそのシフトをものともせず、極端に狭い三遊間を抜くヒットで出塁。2番・ワトリーは際どいコースをよく選び、四球で無死一・二塁とチャンスを広げた。ここで強打のアメリカの中でも、もっとも勝負強くベンチからの信頼の厚い3番・メンドーサが打席に入る。信頼の厚さの証明か、この場面、相手が上野であっても強攻策に出た。この選択が結果的に裏目に出る。メンドーサは上野の前に三振に倒れ、続く4番・ブストスは初球を叩き、火の出るようなライナーがレフト頭上を襲う。「やられた……」と誰もが思った瞬間、レフト・馬渕が懸命に背走し、グラブの先でこの打球をひっかける大ファインプレー。最後は上野が5番・ヌーベマンを三振に打ち取り、ギリギリのところで得点を許さなかった。もしメンドーサのところで確実に送られていたら……ブストスの当たりは楽々犠牲フライとなり、アメリカが先取点を挙げていたところだった。
 アメリカの先発は右のフィンチ。苦手とするエースの左腕・オスターマンではなく、同じタイプの大型左腕・アボットでもなく、シュートを武器とするサザンでもなかった。日本の情報分析班が「日本の打線にもっとも合い、勝機のある投手」と分析していたフィンチの先発で日本ベンチは「行ける!」と勢いづいた。
 初回からいい当たりはしていたものの、3回までノーヒットに抑えられていたが、4回裏、ついにフィンチをとらえる。この回先頭の1番・上西が死球で出塁すると、2番・内藤が送りバントの構えで相手守備陣を引きつけ、バスターで三遊間を破る。3番・山田は予選リーグでの失敗を教訓に迷うことなくしっかりと送り、一死二・三塁。「もっとも信頼できる打者でもここは確実に送らせる」初回のアメリカの選択と対照的な場面だった。続く4番・馬渕のショートゴロに、三塁走者・上西がすばらしい反応を見せる。あまりのスタートのよさにショート・ワトリーは本塁へ送球することさえ諦め、日本に待望の先取点がもたらされた。山田の送りバントがこれで生きた。さらに二死三塁から5番・伊藤が得意の右打ちでライト前に運び、この回2点目。今大会大活躍の頼れるキャプテンのもはや「芸術」の域まで達した右打ちで貴重な追加点を挙げた。続く5回裏には、この回から代わったサザンを攻め、この回先頭の7番・廣瀬が左中間二塁打。8番・乾が「定番」となった送りバントを確実に決め、9番・狩野が三遊間を破り、3点目。着々とリードを広げた。
 守っては、エース・上野が尻上がりに調子を上げ、5回までわずか1安打の力投。疲れの見えた6回表に不運な当たりから1点を失い、なお二死二塁と攻め立てられ、ヌーベマンにセンター前に運ばれるピンチでは、センター・山田が自慢の強肩で本塁突入を阻止。「レーザービーム」で二塁走者を刺し、連投のエースを支えれば、最終回はエースがバックの好守に応えるように最後の力を振り絞って渾身の投球。王者の意地にかけ、必死の反撃を試みるアメリカ最後の攻撃を三者凡退に退け、「最強の王者」を破り、ファイナル進出を決めた。
 いよいよ「世界一」の座に「王手」をかけた。日本は明日、日本に敗れたアメリカと敗者復活戦を勝ち上がってきたオーストラリアの勝者と「世界一」の座をかけて対戦する。泣いても笑ってもあと一試合。ファイナルにふさわしい最高のゲームを見せてくれることを期待したい。そして……願わくば「世界一の笑顔」に会いたい。


1 2 3 4 5 6 7
アメリカ 0 0 0 0 0 1 0 1
日  本 0 0 0 2 1 0 × 2
(日)○上野(7回)?乾(7回)
〔二塁打〕廣瀬

◇決勝トーナメント1位・2位勝者戦(アメリカ戦)スターティングラインアップ

1番・セカンド上西  晶 (太陽誘電)
2番・ショート内藤 恵美 (豊田自動織機)
3番・センター山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・レフト馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
5番・ファースト伊藤 幸子 (トヨタ自動車)
6番・DP三科 真澄 (日立&ルネサス高崎)
7番・サード廣瀬  芽 (太陽誘電)
8番・キャッチャー乾  絵美 (日立&ルネサス高崎)
9番・ライト狩野亜由美 (豊田自動織機)
DEFO(ピッチャー)上野由岐子 (日立&ルネサス高崎)




■大会第9日:9月5日(火) [決勝トーナメント・ファイナル:日本 vs アメリカ]

▲日本はチーム一丸の戦いで「最強の王者」アメリカに挑んだが……


▲アメリカのエース・オスターマンに14三振を喫し、完敗



 大会最終日、昨日までに中国の4位が確定したため、まず第1試合で北京オリンピックの出場権をかけた「5位決定戦」がカナダとイタリアの間で行われた。結果は、カナダが3−0でイタリアを下し、残された最後の切符をつかみ取った。
 第2試合では、ファイナル進出をかけ、アメリカとオーストラリアが対戦。オーストラリアが3番・ポーターのホームランで先制したものの、地力に勝るアメリカが4番・ブストスのホームランなどで5−1と逆転勝ち。敗れたオーストラリアの3位が確定し、ファイナルは日本対アメリカの再戦となった。
 日本の先発は3連投となるエース・上野。その立ち上がり、上野は連投の疲れも見せず、強打のアメリカを三者凡退に切って取り、まずは順調なスタート。それを支える守備陣も相変わらずの軽快なフィールディングを見せ、力投を続けるエースに応えた。
 アメリカの先発は、日本が苦手とする左腕のオスターマン。切れ味鋭いライズ、ドロップを武器とするアメリカのエースに日本打線も的を絞り切れず、得点の糸口がつかめない。 試合は、日本・上野、アメリカ・オスターマンの投げ合いとなり、両チーム無得点のまま、試合は終盤を迎えた。
 アメリカは6回表、一死から2番・ワトリーがバントヒットで出塁。俊足の走者の出塁でバッテリーに揺さぶりをかけ、3番・メンドーサが弾丸ライナーでライトスタンドに突き刺す先制のツーラン。続く4番・ブストスもレフトスタンド中段まで運ぶ特大のソロホームランを放ち、「世界一の投手」を攻略。日本の快進撃を支え続けたエースはついに力尽き、6回でマウンドを降りた。
 3連投のエースを援護すべき打線も1安打・1四球で14三振と完全に沈黙。切れ味鋭いライズ、ドロップで上下に揺さぶられ、チャンスらしいチャンスもつかめぬまま、完封負けを喫した。この試合に関しては、完全な「力負け」だった。
 コロンビアの予想外の大会出場キャンセルで1試合少なくなり、予選リーグと決勝トーナメントの間に中1日の休みが入り、一度はアメリカを破ってファイナルで待ち受けるという「これ以上ない理想的な展開」に持ち込みながら、またしても届かなかった「世界一」の座。「星条旗よ永遠なれ」はいい加減聞き飽きた。この借りは2年後にこの場所で行われるオリンピックの舞台で返すしかない。今はこの悔しさを思い切り噛みしめておけばいい。
 本当にほしいのは「オリンピックの金メダル」である。そのためには、今日の負けを「価値ある敗戦」としなければならない。金メダルへの戦いはもうすでにはじまっている。


1 2 3 4 5 6 7
アメリカ 0 0 0 0 0 3 0 3
日  本 0 0 0 0 0 0 0 0
(日)●上野(6回)・増淵(1回)?乾(6回)・鈴木(1回)

◇決勝トーナメント・ファイナル(アメリカ戦)スターティングラインアップ

1番・セカンド上西  晶 (太陽誘電)
2番・ショート内藤 恵美 (豊田自動織機)
3番・センター山田 恵里 (日立ソフトウェア)
4番・レフト馬渕 智子 (日立ソフトウェア)
5番・ファースト伊藤 幸子 (トヨタ自動車)
6番・DP三科 真澄 (日立&ルネサス高崎)
7番・サード廣瀬  芽 (太陽誘電)
8番・キャッチャー乾  絵美 (日立&ルネサス高崎)
9番・ライト狩野亜由美 (豊田自動織機)
DEFO(ピッチャー)上野由岐子 (日立&ルネサス高崎)

※選手交代
6回裏乾OUT→田中 幹子(豊田自動織機) IN ※代打
7回表上野OUT→増淵まり子(デンソー) IN ※投手交代
 田中OUT→鈴木 由香(日立ソフトウェア) IN ※キャッチャーの守備に入る