3月2日(土)、ニュージーランド・オークランドで開催されている「第13回世界男子選手権大会」(大会公式ホームページはこちら)は2日目を迎えた。
日本は、予選リーグ第2戦、アルゼンチンと対戦。大会前日のテクニカルミーティングで、予選リーグ全試合の先攻・後攻を決定するコイントスの際、いきなり「決勝戦のコイントスも行ってほしい」と、「決勝進出宣言」ともとれる不敵な発言をし、注目を浴びたアルゼンチンだが、前日の予選リーグ第1戦では、「優勝候補」の一角に挙げられているカナダと延長タイブレーカーにもつれ込む死闘を演じ、「決勝進出発言」が単なるジョークではないことを証明してみせた。
アルゼンチンは、昨年11月、ホスト国として「第9回世界男子ジュニア選手権大会」を開催し、悲願の初優勝。男子日本代表の「弟分」U19日本代表が三度にわたり、敗れており、優勝を逃した「因縁の相手」でもある。それだけに「兄貴分」がその雪辱を果たしたいところだ。
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5 |
6 |
7 |
計 |
アルゼンチン |
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0 |
0 |
0 |
2 |
3 |
日 本 |
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0 |
0 |
1 |
1 |
バッテリー:●高橋速水(2回)・中島幸紀(5回)−片岡大洋 |
長打:〔二塁打〕松岡真央、松田光 |
日本の先発は高橋速水。西村信紀ヘッドコーチが「日本のエース」として期待を寄せる右腕が、予選リーグ・セクションBの上位争いの行方を占う「大事な一戦」の先発に指名された。
しかし、その立ち上がり、自らのエラーで無死二塁のチャンスを招き、次打者には送りバントすら許さず、見逃し三振に斬って取ったものの、連続四球で一死満塁。この「絶体絶命」のピンチを連続三振で切り抜け、日本の攻撃に勢いを与えるかに見えた。
アルゼンチンの先発はルーカス・マタ。1997年の「第5回世界男子ジュニア選手権大会」(カナダ・セントジョンズ)で、男子U19日本代表が、唯一決勝トーナメント進出を逃した大会で、獅子奮迅の活躍を見せ、アルゼンチンを初の決勝トーナメント進出に導いた「エース」が、再び日本の前に立ちはだかった。
そのルーカス・マタは、先制攻撃を目論む日本の攻撃を簡単に三者凡退に抑え、ベテランらしい落ち着いた立ち上がりを見せた。
逆に、日本の先発・高橋速水は、国際大会特有のストライクゾーンにも苦しみ、2回表も先頭打者を四球で歩かせると、送りバントの後、連打を浴び、一死満塁。次打者をショートゴロに打ち取り、初回に続き、「絶体絶命」のピンチを切り抜けたかに見えたが、3番打者の強烈なショートライナーをショート・松岡真央が一度はグラブに入れながら、はじかれ、懸命に二塁へ送球するも間に合わず、アルゼンチンに先取点がもたらされた。
日本はその裏、この回先頭の4番・松岡真央が強烈な当たりをセカンドへ放ち、チームを引っ張る「キャプテン」の「勝利への執念」が乗り移ったか、セカンドのグラブをはじくと、積極果敢な走塁で二塁を陥れ、同点に追いつくチャンスを作った。
しかし、続く5番・米良孝太が二度にわたって送りバントを失敗し、結局、空振り三振。続く6番・谷口淳、7番・小野洋平も連続三振に倒れ、無死二塁の絶好機に走者を進めることさえできず、チャンスを潰した。
日本は3回表から、早めの継投で中島幸紀を投入。この継投が成功し、毎回のように得点圏に走者を背負いながらも、粘り強い投球で追加点を許さず、守備陣も堅守で力投の中島幸紀を支え、最少得点差のまま、試合は後半を迎えた。
一方、日本は4回裏、この回先頭の2番・横山拓が持前の俊足を生かし、内野安打で出塁。「反撃開始」かと思われたが、3番・中村健二はいい当たりのレフトライナー、4番・松岡真央はレフトフェンス際まで運ぶレフトフライに倒れ、松岡真央のレフトフライの間に、一塁走者・横山拓がタッチアップから二塁へ進塁。得点圏に走者を進め、5番・米良孝太のバットに期待がかかったが、空振りの三振に倒れ、無得点。どうしても得点することができない。
7回表、ロングリリーフで耐えに耐えていた中島幸紀が2本の安打とフィルダースチョイスで一死満塁のピンチを招くと、ショートゴロを松岡真央がまさかの失策。二者が還り、アルゼンチンが貴重な追加点を挙げた。
日本はその裏、一死から4番・松岡真央がレフト前に落とし、代打・松田光が左中間を破るタイムリーツーベース。ようやく1点を返したが、時すでに遅く、反撃もここまで。最後までホームが遠く、1−3で今大会初黒星を喫した。
この試合、球審の国際大会特有のストライクゾーン(というよりは『不安定なストライクゾーン』というべきか……)に苦しめられ、明らかに「ストライク」と思われるボールがストライクをとってもらえない状況は、繊細なコントロールと微妙なコーナーワークで勝負する日本の投手陣に不利に働いたのは事実で、同情すべき余地はある。
ただ、アルゼンチンの「エース」ルーカス・マタは、老練なベテランらしく、そのストライクゾーンまでも味方につけ、12三振を奪い、その半数近くが「見逃し」の三振であったことを考えると、それも一つの「国際大会の戦い方」であるともいえよう。
また、その「厳しいストライクゾーン」の中で、粘り強く戦い、毎回のように走者を得点圏に背負いながらも簡単に失点しない「日本の守備」はやはり「世界一」であると立証してくれた。
しかし……勝負を分けたのは、その「鉄壁」なはずの守備のミスであった。先発・高橋速水の先頭打者のバント処理が、試合全体の「方向性」を決定づけた感は否めないし、失点に結びついたのは、いずれも「キャプテン」松岡真央のエラーだった。
もちろん、2回表のショートライナーは強烈な当たりであったし、7回表のショートゴロも難しい当たりであったことは事実だ。しかも、この日最後のゲームでグラウンドが荒れていたことも確かである。
それでも、日本が「世界の頂点」を争うようなチームであるとするなら、絶対に捕らなければいけない当たりだった。
そして……その「ミス」が許されるほど、「世界の舞台」は甘くない。自らのミスによって待っているものは「敗戦」でしかない。
だが「キャプテン」松岡真央は、その直後の打席で、いずれもヒットを放って見せた。決して会心の当たりではない。クリーンヒットといえるものでもない。それでも……「やられたらやり返す」「守備のミスはバットで取り返す」その強い気持ちが生んだヒットだった。
この姿勢こそが大切なのだ。若い選手には、この姿を見てほしい。迷ったようなスイングを繰り返し、挙句の果てに見逃し三振。「国際大会」に戸惑っているのか、「世界の舞台」にビビッているのか、「若さ」の感じられないプレーが目につく。
「若さ」の特権とは何か。それは「失うものがない」ということである。まずチャレンジすべきである。トライすべきである。どうせ打てないのなら、三回思い切って振ってくればいい。追い込まれて何もさせてもらえないなら、初球から打って出ればいい。
明日の相手は、「優勝候補」の一角であり、「ホスト国」であるニュージーランドである。完全なアウェイ、満員のスタンドの声援はすべてニュージーランドへ向けられ、審判の判定さえもホームタウンディシジョン(地元有利の判定)があると覚悟しておいた方がいいだろう。
だからこそ……「強い気持ち」が見たい。闘争心に溢れ、アグレッシブに戦う姿が見たい。どんな強い相手であれ、勝機は必ずあるはずである。
第13回世界男子選手権大会 第2日 予選リーグ第2戦
アルゼンチン戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
RF |
川田直諒 |
旭化成 |
7 |
2 |
CF |
横山 拓 |
岐阜エコデンSC |
1 |
3 |
DP |
中村健二 |
大阪桃次郎 |
17 |
4 |
SS |
松岡真央 |
旭化成 |
8 |
5 |
3B |
米良孝太 |
旭化成 |
5 |
6 |
2B |
谷口 淳 |
平林金属 |
18 |
7 |
LF |
小野洋平 |
高知パシフィックウェーブ |
24 |
8 |
1B |
佐伯忠昭 |
ダイワアクト |
12 |
9 |
C |
片岡大洋 |
高知パシフィックウェーブ |
2 |
FP |
P |
高橋速水 |
高知パシフィックウェーブ |
21 |
※選手交代 |
3回表 |
投手交代 |
高橋OUT→中島幸紀(大阪桃次郎)IN |
5回表 |
守備交代 |
川田OUT→木谷謙吾(平林金属)IN ※ライトの守備に入る |
5回裏 |
代打 |
佐伯OUT→伊藤公彦(豊田自動織機)IN |
6回表 |
再出場 |
伊藤OUT→佐伯忠昭(ダイワアクト)IN ※ファーストの守備に再出場 |
7回裏 |
代打 |
米良OUT→松田光(平林金属)IN |
7回裏 |
再出場 |
松田OUT→米良孝太(旭化成)IN ※代走として再出場 |
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