3月3日(日)、ニュージーランド・オークランドで開催されている「第13回世界男子選手権大会」(大会公式ホームページはこちら)は3日目を迎えた。
前日のアルゼンチン戦に敗れた日本は、この日、今大会のホスト国であり、「ソフトボール王国」として、世界にその名を轟かせるニュージーランドと対戦。日曜日ということもあって、家族連れや子どもたちの姿が数多く見られ、スタンドを満員の観客が埋めた。
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
日 本 |
0 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
ニュージーランド |
0 |
5 |
0 |
0 |
2 |
0 |
× |
7 |
バッテリー:●松田光(4回)・照井賢吾(2回)ー片岡大洋 |
長打:〔二塁打〕佐伯忠昭 |
先攻の日本は初回、先制攻撃を目論むが、3番・松田光が四球を選んだ他は3三振。前日のアルゼンチン戦の「悪夢」が甦る滑り出しとなった。
日本の先発は松田光。「今、日本ソフトボール界で最も勢いのある男」に、この大事な一戦の先発が託された。 その立ち上がり、2番打者に安打を許したものの、離塁アウトにも助けられ、結果的には三人で初回のニュージーランドの攻撃を退け、無難に試合をスタートさせた。
先取点のほしい日本は2回表、一死から6番・中村健二が四球で歩き、続く7番・谷口淳がセンター前にクリーンヒット。一塁走者・中村健二が判断よく三塁を陥れ、三塁送球の間に打者走者・谷口淳も二塁まで進塁。一死二・三塁の絶好の先制機を作った。
二死後、9番・横山拓、1番・小野洋平に連続死球。押し出しで日本が先制点を奪った。
これで勢いに乗りたい日本だったが、その裏、ニュージーランドの「強力打線」が火を噴いた。
早々と1点のリードをもらったことで、松田光に「力み」が生まれたか、先頭打者に死球を与え、次打者の送りバントはファースト・佐伯忠昭がダッシュよく捌き、二塁フォースアウト。これで一息つけるかと思ったが、6番・ジェラード・マーティンのサードゴロで二塁フォースアウトを狙ったものの、セカンド・谷口淳の足が離れ、オールセーフ。これで一死一・二塁となり、7番・パトリック・シャヌーンの2球目がワイルドピッチとなり、二・三塁。パトリック・シャヌーンは空振り三振に打ち取って二死となり、ピンチを脱したかに見えたが、8番・トーマス・マケアが左中間スタンドにワンバウンドで飛び込むエンタイトルツーベース。二者を迎え入れ、あっさり逆転に成功。続く9番・タイロン・バートリロの一・二塁間へのボテボテの当たりにファースト・佐伯忠昭、セカンド・谷口淳の両者が反応。どちらも打球を処理しようとしたため、一塁へのベースカバーが遅れ、内野安打。この間に、二塁走者が躊躇なく、一気にホームイン。3点目を挙げると、日本でも「お馴染み」の1番・ネイサン・ヌクヌクがトドメとばかりにツーランホームランを叩き込み、この回一挙5点を奪い、試合をひっくり返した。
日本は3回表、2番・佐伯忠昭の三塁線を破る二塁打を足がかりに、すぐに1点を返し、食い下がったが、5回裏、この回から代わった照井賢吾が、ニュージーランドの「主砲」ブラッド・ロナにツーランを浴び、万事休す。2−7で敗れ、2敗目を喫した。
この試合でも、日本に「ミス」が出てしまった。2回表、1点を先制し、なお二死満塁とチャンスが続いていた場面で、三塁走者・谷口淳がワンバウンドになった投球を見て、飛び出してしまい、三・本間で狭殺。「もう1点」と、気持ちはわかるところだが、せっかく日本に試合の流れが傾きかけ、しかも打順もよかっただけに、惜しまれる「ミス」であった。
守備面でも、大量5点を失うキッカケとなったのは、一死一塁からのサードゴロをダブルプレーどころか、二塁フォースアウトすらできなかったことである。これも、その直前に、ファースト・佐伯忠昭が見事なバント処理で、送りバントを許さず、二塁で封殺する好プレーを見せていただけに、悔やまれる「ミス」であった。
前日のアルゼンチン戦でも書いたことだが、このレベルの相手になると「ミス」は許されない。相手の「ミス」は必ず得点に結びつけてくる。特に「格上」の相手と戦う場合、こちらが「ミス」しているようでは話にならない。こちらはノーミスで、相手に「ミス」させる展開になってこそ、勝機が見えてくる。
この日は、相手がニュージーランドということもあり、前日のアルゼンチン戦に比べると、「積極的にこちらから仕掛けていこう」「アグレッシブに戦おう」という気持ちは感じられたが、今度は逆にその気持ちばかりが空回りしているようにも見えた。
「百戦錬磨」のニュージーランドのベテラン勢は、そんな日本のわずかな「ミス」を逃すことなく、確実に得点に結びつけ、一瞬にしてトドメを刺す「強かさ」を見せた。
経験の差……と言ってしまえば、それまでだが、今の日本は、自らが持つ力を出し切ることができずにいるところに一番の問題がある。 もちろん、日常的に対戦することのない125km/h後半から130km/h近い球速を誇る投手ばかりを相手にし、切れ味鋭いライズ、ドロップを打ちこなすということは決して容易なことではない。しかも、一定しないストライクゾーンの中で、それに対応しなければならないということが、いかに難しいことであるかはわかっている。
一つ間違えば、軽々とスタンドへ運ぶパワーを持った打者ばかりを相手にしなければならない苦しさ、難しさは、見ているだけでも息苦しく、重苦しい気持ちになり、神経は擦り減るばかりである。細心の注意を払って投じなければいけない一球に、どれだけの労力がかかっているか、どれだけの思いと考えが詰まっているか、その「重み」を感じないわけがない。
ただ……まず自分たちの力を出し切ろうではないか。日本が本来持っている力はこんなものではない。自らのベストパフォーマンスを引き出すこと、まずそこに立ち返り、相手が誰だとか、世界の舞台がどうだとか、難しいことは抜きにして、自らのプレースタイルに徹し、自分にとって「ベスト」のプレーを見せようではないか。
世界の舞台を知り尽くした西村信紀ヘッドコーチが、「現時点で最強の布陣」と選び抜いたメンバーである。世界で戦うだけの力があるからこそ、それだけの能力・センスを有しているからこそ、今、ここに立っている。
だとすれば、その力を出し切りさえすればいいのだ。そうすれば……自ずと道は見えてくるはずである。
第13回世界男子選手権大会 第3日 予選リーグ第3戦
ニュージーランド戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
LF |
小野洋平 |
高知パシフィックウェーブ |
24 |
2 |
1B |
佐伯忠昭 |
ダイワアクト |
12 |
3 |
P |
松田 光 |
平林金属 |
19 |
4 |
SS |
松岡真央 |
旭化成 |
8 |
5 |
RF |
川田直諒 |
旭化成 |
7 |
6 |
DP |
中村健二 |
大阪桃次郎 |
17 |
7 |
2B |
谷口 淳 |
平林金属 |
18 |
8 |
3B |
米良孝太 |
旭化成 |
5 |
9 |
CF |
横山 拓 |
岐阜エコデンSC |
1 |
FP |
C |
片岡大洋 |
高知パシフィックウェーブ |
2 |
※選手交代 |
5回裏 |
投手交代 |
松田OUT→照井賢吾(高崎市役所)IN |
〃 |
守備交代 守備変更 |
レフト・小野OUT→ライト・川田がレフトの守備に回り、 ライトの守備には新たに木谷謙吾(平林金属)が入る |
6回裏 |
守備交代 |
谷口OUT→西森雄(トヨタ自動車)IN ※セカンドの守備に入る |
7回表 |
代打 |
佐伯OUT→伊藤公彦(豊田自動織機)IN |
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