3月4日(月)、ニュージーランド・オークランドで開催されている「第13回世界男子選手権大会」(大会公式ホームページはこちら)は4日目を迎えた。
予選リーグ第2戦のアルゼンチン戦、第3戦のニュージーランド戦に連敗を喫した日本は、この日、コロンビアと対戦。
コロンビアは大会2日目のニュージーランド戦は0−4で敗れているが、初戦のフィリピン戦に4−2、昨日のオランダ戦に6−1と快勝しており、ここまで2勝1敗。日本が決勝トーナメントに残るためには、「絶対に負けられない」相手である。
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
日 本 |
1 |
0 |
0 |
0 |
3 |
4 |
1 |
9 |
コロンビア |
2 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
バッテリー:嶋田智希(3回)・○中村健二(3回)・高橋速水(1回)−片岡大洋 |
長打:〔二塁打〕横山拓、松田光、川田直諒 |
先攻の日本は初回、この試合、トップバッターに起用された川田直諒がいきなりピッチャー強襲安打で出塁。2番に入った嶋田智希が手堅く送ると、これを処理したキャッチャーが二塁へ悪送球。無死一・二塁とし、さらにワイルドピッチで二・三塁とチャンスを広げ、絶好の先制機を得た。
しかし、3番・松田光の強烈なサードゴロが好捕され、三塁走者・川田直諒ともつれるようにタッチ。そのまま素早く一塁へ送球すると、一塁もアウトになり、ダブルプレーを完成させた。
無死二・三塁が一瞬にして二死二塁となり、またしても嫌な雰囲気になりかけたが、4番・松岡真央がレフト前に運び、二塁走者が一気にホームイン。「頼れるキャプテン」の一打で「嫌な雰囲気」を吹き飛ばしたかに見えた。
しかし、その裏、日本・先発の嶋田智希が、先頭打者にいきなり死球を与え、送りバントで一死二塁。3番打者に初球を狙われ、逆転のツーランを浴び、わずか7球で試合をひっくり返されてしまった。
これで意気消沈したわけでもないだろうが、2回表、3回表と淡白な攻撃で三者凡退を繰り返すと、この「沈滞ムード」を打破すべく、3回裏、西村信紀ヘッドコーチがついに動いた。
ショートに西森雄を入れ、ショートの松岡真央をファーストに、ファーストの佐伯忠昭をサードに回し、4回裏には、国際大会に滅法強い「投手陣のリーダー」中村健二を投入。もう後がないこの試合で「勝負」に出た。
これで試合の流れが変わったか、5回表、7番・小野洋平がセンター前ヒットを放ち、反撃の口火を切ると、西村信紀ヘッドコーチは代走に木谷謙吾を送り、8番・西森雄が追い込まれながらも、しぶとく「進塁打」で走者を得点圏に進め、9番・横山拓が右中間へ同点のタイムリーツーベースを放ち、試合を振り出しに戻した。二死後、2番・中村健二が死球で一・二塁。ここで「今、日本ソフトボール界で最も勢いのある男」3番・松田光がレフトオーバーのツーベースを放ち、2点を勝ち越し。スタジアムを支配していた重苦しい雰囲気を切り裂く一打を放ち、ついに試合をひっくり返した。
これで勢いづいた日本は6回表、5番・佐伯忠昭の三振振り逃げからチャンスをつかみ、6番・谷口淳の安打と犠打で一死二・三塁とすると、8番・西森雄が「持ち味」を十二分に生かした「技あり」の一打で2点を追加。さらに1番・川田直諒のタイムリーツーベース、ワイルドピッチなどで2点を加え、この回大量4点を挙げた。
日本は7回表にも、4番・松岡真央の四球、代打・伊藤公彦の内野安打などで追加点のチャンスをつかみ、7番・木谷謙吾のライトフライの間にそれぞれ進塁し、一死二・三塁とすると、8番・西森雄がまたしても「技あり」のプッシュバントを決め、ダメ押しの1点を追加。大きくリードを奪った。
守っては、先発・嶋田智希が初回にツーランを浴びたものの、3イニングを2安打・6三振に抑え、2番手・中村健二は3イニングを1安打・5三振の力投で試合の流れを日本へと呼び込み、最後は高橋速水が1安打は許したが、アウトは全部三振で斬って取るという派手なエンディングを演じ、連敗を脱した。
ただ、この日も序盤は前日までの嫌な流れを引きずっていた。初回、無死二・三塁としながら、併殺。「キャプテン」松岡真央のタイムリーで先制したとはいえ、一気に大量点を奪い、楽な試合展開に持っていきたいところだった。
また、せっかく1点のリードをもらいながら、その裏、先発・嶋田智希がいきなり先頭打者に死球を与え、3番打者には初球を狙われ、逆転ツーランを浴びた。この試合の「重さ」を考えれば、あまりにも「軽率」なピッチングと言わざるを得ないし、これが強豪国相手であれば、取り返しのつかない「失投」になっていたかもしれない。
この「窮地」を救ったのは、いずれも前回大会を経験したメンバーだった。まさかのダブルプレーで意気消沈しかけたチームを自らのバットで鼓舞し、先制点をもたらした「キャプテン」松岡真央。コロンビアのフルスイングを嘲笑うかのような「緩急自在」のピッチングで試合の「流れ」を変えた中村健二。重苦しい雰囲気の中、同点タイムリーを放った横山拓。「技あり」の一打で貴重な追加点をもたらした西森雄。ピッチャーでありながら、沈滞するチームの雰囲気を変えようと、自ら三塁コーチャーを買って出た「ムードメーカー」の照井賢吾。いずれも数々の「修羅場」をくぐり抜け、「日本代表」として戦い続けてきた「歴戦の勇士」たちであった。
そして、それを引き出した西村信紀ヘッドコーチの「決断」。思い切った采配と選手起用も見逃せない。あのまま手をこまねいていたら、ズルズルと「負けパターン」にはまり、そのまま「終戦」を迎えていたかもしれない。
「日本代表」の伝統と歴史を「歴戦の勇者」たちが伝えてくれている。今度は、若い選手たちがそれに応えなくてはならない。「新たな歴史」を作り、またそれを次なる世代へと継承していくために……。
今日の一勝で、予選リーグ突破は見えてきた。だが……「日本代表」がめざすべき場所は、そこではない。「日本代表」が本来在るべき場所に還るために……まだまだ戦い続けなくてはならない。
敗者には歴史は作れない。勝者にのみ、歴史の扉は開かれる。そう……苦しい状況にあるからこそ、勝ち続けるしかないのだ。勝ち続け、自らの力で、進むべき道を切り拓くしかない。残された道は「勝つ」ことだけだ。
第13回世界男子選手権大会 第4日 予選リーグ第3戦
コロンビア戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
RF |
川田直諒 |
旭化成 |
7 |
2 |
P |
嶋田智希 |
岐阜エコデンSC |
20 |
3 |
DP |
松田 光 |
平林金属 |
19 |
4 |
SS |
松岡真央 |
旭化成 |
8 |
5 |
1B |
佐伯忠昭 |
ダイワアクト |
12 |
6 |
2B |
谷口 淳 |
平林金属 |
18 |
7 |
LF |
小野洋平 |
高知パシフィックウェーブ |
24 |
8 |
3B |
米良孝太 |
旭化成 |
5 |
9 |
CF |
横山 拓 |
岐阜エコデンSC |
1 |
FP |
C |
片岡大洋 |
高知パシフィックウェーブ |
2 |
※選手交代 |
3回裏 |
守備交代 |
米良OUT→西森雄(トヨタ自動車)IN ※ショートの守備に入る |
守備位置変更 |
ショートの松岡がファーストへ回り、ファーストの佐伯がサードの守備に回る |
4回裏 |
投手交代 |
嶋田OUT→中村健二(大阪桃次郎)IN |
5回表 |
代 走 |
小野OUT→木谷謙吾(平林金属)IN |
5回裏 |
守備位置変更 |
代走・木谷がそのままライトの守備に入り、ライト・川田がレフトの守備に回る |
7回表 |
代 打 |
谷口OUT→伊藤公彦(豊田自動織機)IN |
7回裏 |
投手交代 |
中村OUT→高橋速水(高知パシフィックウェーブ)IN |
再出場 |
伊藤OUT→谷口淳(平林金属)IN ※セカンドの守備に入る |
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