2013.3.5
 

 

 
予選リーグ第5戦の相手は「優勝候補」カナダ

初回、3番・松田がホームラン性の大飛球を放ったが、
相手センターの「超ファインプレー」に阻まれ、無得点

日本の先発は「エース」高橋。期待に応え、力投!

2番手・中島はいきなりイリーガルピッチをとられ、
先取点を許したが、そこから粘り、好投を続けた

この試合、2安打と当たりが出てきた米良。
今後の「大事な試合」での活躍に期待!

6回裏、二死二・三塁から逆転タイムリーを放った小野。
打球に「魂」を込め、逆転に導く

6回裏、トドメの代打ホームランを放った中村。
「大舞台に強い男」がカナダの息の根を止めた

「優勝候補」カナダを撃破! この経験が男たちを強くする!!

第13回世界男子選手権大会
第5日

日本、「優勝候補」カナダを撃破!
3勝目を挙げる!!




第5日 カナダ戦

 

 3月5日(火)、ニュージーランド・オークランドで開催されている「第13回世界男子選手権大会」(大会公式ホームページはこちら)は5日目を迎えた。

 日本はこの日、前日、ホスト国・ニュージーランドと延長タイブレーカーにもつれ込む死闘を演じ、9−7で勝利。ここまで4戦全勝、予選リーグ・セクションBの1位通過がグッと近づいたカナダと対戦した。

大会第5日/3月5日(火)
予選リーグ第5戦
  1 2 3 4 5 6 7
カナダ 0 0 0 0 1 0 0 1
日 本 0 0 0 0 0 4 × 4
バッテリー:高橋速水(4回1/3)・○中島幸紀(2回2/3)ー片岡大洋
長打:〔本塁打〕中村健二

 日本の先発は高橋速水。西村信紀ヘッドコーチが、「日本のエース」と期待を寄せるピッチャーが、その期待に応える力投を見せた。
 先頭打者に一・二塁間を破られ、送りバント、レフトフライで走者が三塁まで進み、4番打者には三遊間を破るかという当たりを打たれたが、これをショート・松岡真央が好捕。三遊間奥深くから間一髪、一塁で刺し、ピンチを脱した。

 このバックの好守に応え、2回以降はノーヒットピッチング。前日、ニュージーランド投手陣から2本塁打を含む17安打・9得点と打ちまくったカナダの強力打線を無得点に抑え込んだ。

 一方、日本は初回、簡単にツーアウトとなった後、3番・松田光がセンターへホームラン性の大飛球を放ったが、相手センターがフェンス際でジャンピングキャッチ。スタンドに飛び込んだかに見えた打球をもぎ取る超ファインプレーを見せ、先制のチャンスを逃した。

 両チーム無得点のまま、迎えた3回裏、日本は、この回先頭の7番・片岡大洋が四球を選び、出塁すると、8番・米良孝太が、送りバント失敗の後、バントの構えから強打に切り替え、バスターで一・二塁間を破り、無死一・二塁とチャンスを広げた。
 しかし、9番・横山拓が送りバント失敗。ツーストライクと追い込まれ、やむなくヒッティングに切り替えたものの、ショートファウルフライで走者を進めることができず、1番・川田直諒のところで意表を突くダブルスチール。これが見事に決まり、一死二・三塁となったが、1番・川田直諒、2番・谷口淳が連続三振。絶好の先制機を逃した。

 両チーム一進一退の攻防が続き、迎えた5回表、高橋速水が先頭打者に四球を与え、送りバントで一死二塁となったところで、日本ベンチが動き、2番手・中島幸紀を投入。ところが、いきなりイリーガルピッチをとられ、走者が三塁へ進み、これに動揺したか、1番打者に四球を与え、一・三塁。次打者の二遊間寄りのゴロで一塁走者を二塁フォースアウトにしたものの、一塁は間に合わず、この間に三塁走者が生還。カナダが待望の先取点を挙げた。

 カナダが1点をリードしたまま、迎えた6回裏、日本はこの回先頭の2番・谷口淳がレフト前にクリーンヒット。続く3番・松田光は死球で無死一・二塁とチャンスを広げた。だが、ここでまた今大会、日本を蝕んでいる「送れない病」が顔を出し、4番・松岡真央が送りバント失敗の後、強打に切り替えるが、レフトフライで走者を進められず、5番・佐伯忠昭も三振に倒れ、「いいところまでいきながら、またしても敗れるのか……」と再三繰り返される「悪夢」が頭をよぎったが、この苦しい戦いの中で、選手たちは確実に「成長」していた。
 6番・小野洋平への2球目がワイルドピッチとなり、二・三塁とすると、スリーボール・ツーストライクの後の7球目を強振。完全に詰まった打球だったが、日本の「勝利への執念」が打球を後押しし、ショート後方にポトリと落ちた。
 スタジアムが悲鳴にも似た絶叫に包まれる中、三塁走者・谷口淳、二塁走者・嶋田智希が相次いで生還。日本が土壇場で試合をひっくり返した。

 だが……「ドラマ」はこれだけでは終わらなかった。その直前まで、「ビデオ係」を務めていた中村健二が代打に指名されると、その初球をとらえ、ライトスタンドへツーランホームラン。再びスタジアムが大歓声に包まれ、決定的な2点を追加。この回大量4点を挙げ、日本が4−1で劇的な逆転勝ちを収めた。

 この日も、走者を進めるべきところで進められず、「日本らしからぬ」試合展開が続いた。「今大会最高のゲーム」でスタジアムを沸かせても、勝てなければ意味はない。またしても同じような試合展開で敗れてしまうのか……という思いが頭の中をよぎった瞬間、そんな「悲しい予感」を吹き飛ばす、逞しき姿を選手たちが見せてくれた。

 投手陣は、強打のカナダ打線に対し、細心の注意を払って一球一球を投じた。その「代償」が7四球という数字でもあるが、とにかく不用意にストライクを取りに行くことなく、厳しく、微妙なコースを、丁寧に、根気よく突き、緩急を使い、最後まで的を絞らせなかった。
 「パワーに勝る外国人選手に、気持ちよくバッティングさせてはダメ。相手の体勢を崩し、フルスイングさせないこと」西村信紀ヘッドコーチが口を酸っぱくして言い続けてきたことが、少しずつ実を結びつつある。

 そして、「ここぞ!」という場面で、しっかりと仕事してみせるベテランたちの背中を、若い選手たちがしっかりと追いかけはじめた。まだまだ結果の出ていない選手もいるが、少なくとも、迷い、悩む、ナーバスな姿は見つけられなくなった。
 徐々に「戦う男の顔」となり、結果に一喜一憂することなく、「日本代表」として戦う「覚悟」と「自覚」が芽生えつつある。

 強豪・カナダに勝ったことは、「歴史的」な勝利であることは間違いないが、今大会における順位争いという意味では、さほど意味のあるものではなかった。
 すでにアルゼンチン、ニュージーランドとの直接対決に敗れている日本にとっては、前日のカナダ対ニュージーランド戦で、カナダが敗れない限り、2位争いを「混戦状態」にすることはできなかったからだ(前日のカナダ対ニュージーランド戦でカナダが敗れていれば、日本、カナダ、アルゼンチンの3チームが2敗で並ぶ可能性があった)。
 今日の最終試合でニュージーランドがアルゼンチンに2−1で勝利したこともあり、予選リーグ・セクションBの上位4チームは、すでにすべての直接対決を終え、残り試合を考えると、このままの順位を維持して予選リーグを終える可能性が非常に高くなった。(カナダ、ニュージーランドが1敗を堅持してカナダ1位・ニュー-ジーランド2位(直接対決の結果による)、アルゼンチン、日本が2敗で並び、同様に直接対決の結果でアルゼンチン3位、日本4位で予選リーグを終了する可能性が高い。仮にカナダがもう1敗して、カナダ、アルゼンチン、日本が並んでも、その場合は当該チームの直接対決における失点差により、順位が決定するので、失点の少ない順にアルゼンチン3、日本4、カナダ5となり、アルゼンチンが2位、日本が3位、カナダ4位と順位は変わるが、日本の2位以上はなく、ニュージーランドがもう1敗した場合にも、同率で並んだチーム同士の直接対決の勝敗で順位が決まり、ニュージーランド2勝(日本、アルゼンチンに勝利)で2位、アルゼンチン1勝1敗(日本に勝ち、ニュージーランドに負け)で3位、日本2敗(ニュージーランド、アルゼンチンに負け)で4位となり、順位は変わらない)。

 ただ、その順位争い上の「意味」はさておき、やはり「カナダに勝った」という事実は「意味」がある。特に苦しみながら勝利した、今日のような経験は、必ずや「明日」につながるものであり、今後、同じような苦しい状況に陥ったとしても、今日の経験があれば、最後まで諦めることなく、戦うことができるはずだ。
 そして、「カナダに勝った」ことにより、やはり日本が世界有数のチーム力を持ったチームであることを証明した。今日、この試合を観た人々は、口々に言うだろう。「日本は凄いチームだった」と。その「意味」は限りなく大きく、日本が世界中からリスペクトされ、愛されるチームであり続けるのは、今日のような試合をすることができるからなのだ。そう……観る者の「魂」を揺さぶる試合を。



第13回世界男子選手権大会 第5日 予選リーグ第5戦

カナダ戦 スターティングラインアップ
打順 守備位置 選手名 所属 UN
1 RF 川田直諒 旭化成 7
2 2B 谷口 淳 平林金属 18
3 DP 松田 光 平林金属 19
4 SS 松岡真央 旭化成 8
5 1B 佐伯忠昭 ダイワアクト 12
6 LF 小野洋平 高知パシフィックウェーブ 24
7 片岡大洋 高知パシフィックウェーブ 2
8 3B 米良孝太 旭化成 5
9 CF 横山 拓 岐阜エコデンSC 1
FP 高橋速水 高知パシフィックウェーブ 21

※選手交代
5回表 投手交代 高橋OUT→中島幸紀(大阪桃次郎)IN
6回裏 代走 松田OUT→嶋田智希(岐阜エコデンSC)IN
代走 小野OUT→木谷謙吾(平林金属)IN
代打 片岡OUT→中村健二(大阪桃次郎)IN
7回表 再出場 中村OUT→片岡大洋(高知パシフィックウェーブ)IN ※キャッチャーの守備に入る
守備位置
変  更
代走・木谷がそのままライトの守備に入り、
ライト・川田がレフトの守備に回る