3月8日(金)、ニュージーランド・オークランドで開催されている「第13回世界男子選手権大会」(大会公式ホームページはこちら)は8日目を迎えた。
大会もいよいよクライマックスを迎え、この日から決勝トーナメントに入った。予選リーグ・セクションB4位の日本は、予選リーグ・セクションA3位のサモアと対戦した。
大会第8日/3月8日(金)
決勝トーナメント3位・4位戦 |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
サモア |
0 |
2 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
日 本 |
3 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
x |
4 |
バッテリー:高橋速水(2回)・○中島幸紀(5回)−片岡大洋 |
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日本の先発は「エース」高橋速水。初回、先頭打者をファーストゴロに打ち取ったが、次打者にレフト前に落とされ、一死一塁。しかし、3番打者を6−4−3のダブルプレーに打ち取り、まずは無難に試合をスタートさせた。
日本はその裏、1番・川田直諒が鋭く三遊間を破ると、2番・横山拓が手堅く送り、一死二塁。3番・松田光は死球で一・二塁となり、4番・松岡真央がセンター前にはじき返し、まず1点を先取。「頼れるキャプテン」の一打で日本が先取点を挙げた。
これで勢いづいた日本は、二死後、6番・小野洋平がしぶとく一・二塁間を破り、2点目。さらに7番・佐伯忠昭の三遊間深い当たりがフィルダースチョイスとなる間に3点目を挙げ、鮮やかな「先制攻撃」で、この回3点を先制した。
しかし、先発・高橋速水がサモア打線につかまり、死球、送りバントの後、センター前に運ばれ、一死一・三塁とされ、さらに一塁走者がすかさず盗塁し、二・三塁とした後、犠飛、タイムリーヒットで2点を返され、1点差に迫られた。
今大会、試合時間が長いことが問題視され、決勝トーナメントでは「20秒ルール」を厳しく適用するとの通達が各チームになされていた。
しかし、20秒計が掲示されているわけでもなく、いきなりの宣告はあまりに酷なルール適用といえ、高橋速水はこのイニング、2球も「20秒ルール」にひっかかり、タイムオーバーを理由に「ボール」が宣告され、これで完全にリズムを崩してしまった感があった。
この嫌な雰囲気を、3回表から2番手で登板した中島幸紀が吹き飛ばす。最初のイニングをすべて内野ゴロで簡単に三者凡退に仕留めると、4回表、5回表は得点圏に走者を背負いながらも、落ち着いて後続を断ち、冷静なピッチングでサモア打線の反撃を許さず、味方打線の援護を待った。
打線もこの力投に応え、5回裏、1番・川田直諒が強烈なピッチャー返しでセンターに抜ける安打を放つと、2番・横山拓が手堅く送り、一死二塁。さらに二塁走者・川田が相手捕手の一瞬の隙を突き、三塁へ盗塁。ここで3番・松田光が三遊間を破るタイムリーを放ち、三塁走者を迎え入れ、貴重な追加点を挙げた。
ロングリリーフで力投を続ける中島幸紀は、6回表、簡単に二死を取った後、エラーとフィルダースチョイスで一・二塁とされ、パスボールで二・三塁。さらに四球で二死満塁と攻め立てられたが、後続をショートゴロに打ち取り、二塁フォースアウト。ピンチを切り抜けると、7回表にも、一死から連打、死球で満塁と、一打同点どころか、逆転の可能性もある「絶体絶命」のピンチを迎えながら、冷静沈着なピッチングで後続を浅いセンターフライ、空振り三振に打ち取り、最後までサモア打線に決定打を許さず、4−2で勝利を収めた。
初回、「頼れるキャプテン」松岡真央が、チームに「勇気」と「勢い」を与える先制のタイムリーを放てば、二死となり、1点止まりに終わりそうなところを、小野洋平が巧打でつなぎ、佐伯忠昭の三遊間深いゴロでも二塁へ「激走」し、フィルダースチョイスを呼び、初回3点を奪ったことが「勝因」といえよう。
これが1点止まりに終わっていたら……さらに苦しい試合展開になっていたに違いない。
守備面では、西村信紀ヘッドコーチの的確な判断と、その期待に応えた中島幸紀の好投が目を引いた。日本の「エース」と期待する高橋速水であっても、調子が悪い、リズムに乗れていないと判断すれば、序盤でスパッと代え、また、それを引き継いだ中島幸紀が冷静なピッチングでロングリリーフを成功させた。
中島幸紀は、今大会、いわゆる「中継ぎ」のような役割で、投手陣を支えている。敗れはしたが、アルゼンチン戦の粘り強いピッチング。「歴史的勝利」を収めたカナダ戦では、いきなりのイリーガルピッチで失点しながらも、そこで切れてしまうことなく、試合を作り、最後は劇的な逆転劇の「陰の立役者」となった。
この試合でも、サモアに傾きかけた流れを断ち切り、味方打線の援護を辛抱強く待ち、再三得点圏に走者を背負いながらも、「決定打」を許すことなく、要所を締め、日本の勝利に貢献した。
決勝トーナメントの「初戦」を「総力戦」で勝利した日本。ここまでくれば、「楽な試合」などありえない。
明日も「世界一」のオーストラリアとホスト国・ニュージーランドの敗者と対戦するのである。日本が勝利するとすれば、それこそ「死闘」と形容されるような試合になることは間違いない。
女子日本代表の上野由岐子のような「切り札」がいるわけではなく、その意味では現時点で「絶対的な力を持ったチーム」ではないのかもしれないが、オーストラリア、ニュージーランド、カナダといった「世界の3強」にも、「勝つ力を秘めたチーム」であると感じている。
もちろん、一つ間違えば、大差で敗れるようなケースもあるかもしれないが、予選リーグのカナダ戦のように、「何かをやってくれる」雰囲気が、このチームにはある。
決勝戦のチケットはすでに完売しているという。しかし……もしかすると、この「ソフトボール王国」ニュージーランドの人々が期待するようなカードにならない可能性もある。今はまだ「予感」でしかないが……明日、「何かが起こる」気がしてならない。
第13回世界男子選手権大会 第8日 決勝トーナメント3位・4位戦
サモア戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
RF |
川田直諒 |
旭化成 |
7 |
2 |
CF |
横山 拓 |
岐阜エコデンSC |
1 |
3 |
DP |
松田 光 |
平林金属 |
19 |
4 |
SS |
松岡真央 |
旭化成 |
8 |
5 |
2B |
谷口 淳 |
平林金属 |
18 |
6 |
LF |
小野洋平 |
高知パシフィックウェーブ |
24 |
7 |
1B |
佐伯忠昭 |
ダイワアクト |
12 |
8 |
3B |
米良孝太 |
旭化成 |
5 |
9 |
C |
片岡大洋 |
高知パシフィックウェーブ |
2 |
FP |
P |
高橋速水 |
高知パシフィックウェーブ |
21 |
※選手交代 |
3回表 |
投手交代 |
高橋OUT→中島幸紀(大阪桃次郎)IN |
5回表 |
守備交代 |
谷口OUT→西森雄(トヨタ自動車)IN |
6回裏 |
代 打 |
佐伯OUT→嶋田智希(岐阜エコデンSC)IN |
代 打 |
米良OUT→伊藤公彦(豊田自動織機)IN |
代 打 |
片岡OUT→中村健二(大阪桃次郎)IN |
7回表 |
再出場 |
嶋田OUT→佐伯忠昭(ダイワアクト)IN ※ファーストの守備に入る |
再出場 |
米良OUT→伊藤公彦(豊田自動織機)IN ※サードの守備に入る |
再出場 |
中村OUT→片岡大洋(高知パシフィックウェーブ)IN ※キャッチャーの守備に入る |
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