3月9日(土)、ニュージーランド・オークランドで開催されている「第13回世界男子選手権大会」(大会公式ホームページはこちら)は9日目を迎えた。
前日、予選リーグ・セクションA3位のサモアを4−2で破った予選リーグ・セクションB4位の日本は、この日、オーストラリアと対戦。
前回大会の覇者・オーストラリアは予選リーグ・セクションAを7戦全勝の1位で通過。135km/h超のライズ、ドロップを有する「世界最速」にして「世界一」の投手・アダム・フォーカードを擁し、「優勝候補の大本命」と目されていたが、前日、予選リーグ・セクションB2位のニュージーランドと延長10回に及ぶ死闘を展開。
「エース」アダム・フォーカードが16三振を奪いながらも9安打を浴び、5失点。まさかの逆転サヨナラ負けを喫し、敗者復活戦に回ってきた。
これは日本にとっても「大誤算」、ニュージーランドとの再戦になると予想し、準備を進めていただけに、思わぬ方向転換、軌道修正を余儀なくされることになった。
大会第9日/3月9日(土)
決勝トーナメント2回戦(3位・4位戦勝者対1位・2位戦敗者) |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
オーストラリア |
3 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
4 |
日 本 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
バッテリー:●松田光(2回)・照井賢吾(4回)・嶋田智希(1回)−片岡大洋 |
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日本の先発は松田光。その立ち上がりを「世界チャンピオン」オーストラリアが攻めた。トップバッター・マイケル・タナーがいきなり一・二塁間を破ると、2番・ジョエル・サウザンがバントの構えで日本守備陣を引きつけ、強打に切り替え、センターオーバーのスリーベース。たった5球で先制されてしまった。
一死後、死球、盗塁で二・三塁とされると、6番・ニック・シャイレスのサードゴロをサード・米良孝太が痛恨のトンネル。二者が還り、この回3点を先制されてしまった。
オーストラリアの先発は、「エース」アダム・フォーカードではなく、ダイワアクトに所属し、日本リーグ(西日本リーグ)でも活躍中のアンドリュー・カークパトリック。「エース」アダム・フォーカードが前日のニュージーランド戦で延長10回を投げていたこともあり、先発を回避。「日本を知り尽くした男」アンドリュー・カークパトリックを先発に立ててきた。
日本はその立ち上がり、2番・横山拓が四球を選び、すかさず盗塁。得点圏に走者を進め、4番・松岡真央が三遊間にヒット性の当たりを放ったが、サード・ジェフ・ゴーラゴングがこれを好捕。日本の反撃を芽を摘み取り、3点リードを保ったまま、初回の攻防を終えた。
日本は3回表から左腕・照井賢吾を投入。オーストラリア打線をうまくかわし、5回まで無失点に抑えていたが、6回表、一死から5番・ジェフ・ゴーラゴングにソロホームランを浴び、痛い追加点を奪われてしまった。
日本も必死の反撃を試みるが、「日本を知り尽くした男」アンドリュー・カークパトリックのチェンジアップを巧みに交えた「ジャパニーズスタイル」のピッチングに翻弄され、得点どころか、ノーヒットに抑え込まれ、反撃の糸口すらつかめない。
最終回、この回先頭の2番・横山拓がセーフティーバントを試み、一塁へ懸命のヘッドスライディングを見せるも、間一髪アウト。今大会、何度も試合の流れを変えてきた「必殺仕事人」中村健二も三振に倒れ、4番・松岡真央が執念の当たりを放つが、これも相手の好守備に阻まれ、ショートライナー。屈辱のノーヒット・ノーランを喫し、この瞬間、男子日本代表の長い戦いが終わった。
思えば、計算通りにいかない大会だった。カナダ、ニュージーランドと同組の予選リーグ・セクションBで、5勝2敗という成績を残しながら、4位での決勝トーナメント進出。 星勘定は西村信紀ヘッドコーチの想定通りで、この成績であれば決勝トーナメントを有利に戦える「2位通過」もあり得ると踏んでいた(実際、予選リーグ・セクションAはベネズエラが5勝2敗で2位となっている)。
しかし、ニュージーランドがカナダに敗れたことで計算が狂い、アルゼンチンと同率ながら、4位となるという「計算違い」が生じた。
また、アルゼンチンの予想以上の成長も「計算違い」であった。昨年の世界男子ジュニア選手権のチャンピオンとはいえ、ホスト国での優勝であり、代表チームが強化されるには、もう少し時間が必要なのではないかと見ていた(前回大会の覇者・オーストラリアは、1997年の第5回世界男子ジュニア選手権に優勝し、2001年、2005年、2008年と4連覇を飾っていたが、世界選手権優勝は2009年の前回大会が初優勝)。
ところが、投手力が整備され、予選リーグでは、カナダ、ニュージーランドと2−1の僅差のゲームを演じ、日本を3−1で破り、決勝トーナメントでは、ついにカナダを2−1で撃破。「世界の3強」の一角を崩し、同じ中南米勢のベネズエラとともに、大会に新鮮な「驚き」を与え、上位進出を果たす「快挙」を成し遂げた。最後は「世界チャンピオン」オーストラリアの前に力尽きたが、延長9回と互角の戦いを演じ、打線は「世界最速」にして「世界一」の投手・アダム・フォーカードに17三振を奪われ、ノーヒットに終わったが、投手陣は被安打2・奪三振11と一歩も引かぬ投手戦を展開。男子ソフトボールの「世界の勢力図」が変わりつつあることを感じさせる躍進を見せた。
そして、日本が密かに「アップセット」(番狂わせ)を狙っていたニュージーランドが、逆にオーストラリアを破るという「アップセット」を演じてしまい、ここでも日本に「計算違い」が生じた。
打力はあるが、投手力の弱いニュージーランドが、日本にとって最も勝機のある相手であり、アダム・フォーカード、アンドリュー・カークパトリックの「左右の二枚看板」を揃えるオーストラリアが、最も戦いたくない相手であった。
あくまでも個人的見解だが、ニュージーランドとの再戦が実現していたら、日本が勝っていたのではないか……と本気で思う。
日本の戦いは終わった。今回も「5位の壁」を破れず、3大会連続の5位に甘んじた。ただ、カナダ戦で見せたように、「可能性」を感じさせるチームであった。まだまだ成長途上、手痛いところでのミスもありはしたが、多くの若い選手たちが、「世界の舞台」を肌で感じたことは決してムダではなく、チームの「進むべき方向性」が見えたことが、今大会一番の収穫であった。
リベンジの機会が2年後、というのも、このチームには幸いかもしれない。西村信紀ヘッドコーチのもと、「進むべき方向性」は見えてきている。この方向性をより確かなものにしていくことができたら……日本は世界の舞台で「頂点」を争うことができるチームになると感じる。
男子日本代表の「世界」への「挑戦」は終わったのではなく、今、はじまったばかりなのだ。
第13回世界男子選手権大会 第9日 決勝トーナメント2回戦
オーストラリア戦 スターティングラインアップ |
打順 |
守備位置 |
選手名 |
所属 |
UN |
1 |
RF |
川田直諒 |
旭化成 |
7 |
2 |
CF |
横山 拓 |
岐阜エコデンSC |
1 |
3 |
DP |
中村健二 |
大阪桃次郎 |
17 |
4 |
SS |
松岡真央 |
旭化成 |
8 |
5 |
P |
松田 光 |
平林金属 |
19 |
6 |
LF |
小野洋平 |
高知パシフィックウェーブ |
24 |
7 |
1B |
佐伯忠昭 |
ダイワアクト |
12 |
8 |
2B |
西森 雄 |
トヨタ自動車 |
6 |
9 |
3B |
米良孝太 |
旭化成 |
5 |
FP |
C |
片岡大洋 |
高知パシフィックウェーブ |
2 |
※選手交代 |
3回表 |
守備交代 |
松田OUT→谷口淳(平林金属)IN ※セカンドの守備に入る |
守備交代 |
西森OUT→照井賢吾(高崎市役所)IN ※投手の守備に入る |
6回裏 |
代 打 |
照井OUT→木谷謙吾(平林金属)IN |
7回表 |
投手交代 |
木谷OUT→嶋田智希(岐阜エコデンSC)IN |
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