2015.7.5
 

 


第14回世界男子ソフトボール選手権大会(カナダ・サスカツーン)

日本、終盤の「一発」に沈む……
オーストラリアに敗れ、4大会連続5位で終戦



決勝トーナメント2回戦へ駒を進めた日本
ここから勝ち上がり、「奇跡」を起こせるか!?



相手は前日の1位・2位戦に敗れ、
敗者復活戦へと回ってきた「因縁の相手」オーストラリア



「世界最速の投手」アダム・フォーカードと再戦!


日本の先発投手は岡阜囀l
弱冠二十歳にして「日本のエース」が、果敢に挑んだ


日本は5安打を放ち、機動力も絡めて
オーストラリアにプレッシャーをかけたが……


0−0のまま迎えた6回裏、二死一・二塁から
5番・ニック・ノートンに痛恨のスリーランを浴びてしまう


懸命に反撃を試みた日本打線だったが
アダム・フォーカードに12三振を奪われ、力尽きた


日本、0−3で敗れ、「4大会連続5位」
世界の4強の一角を崩すことはできなかった


試合後、大粒の悔し涙を流す松岡真央キャプテン
2年後、この舞台で必ず「リベンジ」を果たさなければならない!


大会最終日は、ファイナルでホスト国・カナダが
ニュージーランドを破り、1992年以来4度目の世界一に輝く


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 第14回世界男子選手権大会(※大会スケジュールはこちら※大会オフィシャルサイトはこちら)第9日。前日決勝トーナメント初戦(3位・4位戦)でチェコを破り、2回戦(3位・4位戦勝者対1位・2位戦敗者)へと駒を進めた日本は、同じく前日、1位・2位戦でホスト国・カナダに3−8とまさかの完敗を喫し、敗者復活戦に回ってきたオーストラリアと対戦。互いに決勝トーナメント「生き残り」をかけた「大一番」に臨んだ。

 予選リーグ・POOLBを2位で通過したオーストラリアは、前日、決勝トーナメント初戦(1位・2位戦)でホスト国・カナダ(POOLA1位)と対戦し、初回に2番・マーク・ハリス、3番・ニック・シャイレスの連続タイムリーでいきなり2点を先制したが、先発したエース・アダム・フォーカードが、初回、3回裏に1点ずつを返され、同点。流れは次第にカナダへと傾き、2−2のまま迎えた5回裏、カナダが5番・ジェイソン・ヒルのスリーランホームランで一挙3点を挙げ、逆転に成功。詰めかけた大観衆の声援に後押しされたカナダ打線の前に、「世界最速の投手」がまさかのノックアウト……。続く6回裏にもダメ押しの3点を追加され、3−8で完敗を喫した。

 日本とオーストラリアは、今大会予選リーグ初戦で対戦。日本はチャンスを作りながらも、オーストラリアの先発・アダム・フォーカードの前に13三振を喫し、0−1で敗れている。日本にとってオーストラリアは、2004年の第11回大会(ニュージーランド・クライストチャーチ)、前回の第13回大会(ニュージーランド・オークランド)と、いずれも決勝トーナメント2回戦で激突し、0−5、0−4の完封負けを喫した「因縁」の相手。日本が3大会連続で阻まれている「5位の壁」となって立ちはだかっている相手でもあり、特に前回大会では、先発・アンドリュー・カークパトリックの前に屈辱のノーヒット・ノーランを達成され、敗れ去っている。ここから先は目の前の相手に「勝つ」ことでしか道は拓かれない勝負の決勝トーナメント。日本の運命をかけた一戦がはじまった。

大会第9日/7月4日(土) 
決勝トーナメント2回戦(3位・4位戦勝者対1位・2位戦敗者)
  1 2 3 4 5 6 7
日  本 0 0 0 0 0 0 0 0
オーストラリア 0 0 0 0 0 3 x 3
バッテリー:●岡阜囀l(6回) − 片岡大洋
長打:〔三塁打〕筒井拓友〔二塁打〕糸瀬勇助

 オーストラリアの先発投手は、エース・アダム・フォーカード。前日のカナダ戦でノックアウトされ、「屈辱」を味わった「世界最速の投手」をこの日も連投させ、満を持して日本を叩きにきた。

 先攻の日本は初回、一死から2番・澤田優生がショート横を抜くヒットで出塁し、すかさず盗塁に成功。予選リーグ初戦でもアダム・フォーカードと唯一「互角」に渡り合った男が、この試合もチーム初安打を放ち、いきなり先制のチャンスを作った。しかし、このチャンスで3番・米良孝太が三振、4番・松田光はライトフライに打ち取られ、得点ならず。連投で「疲れ」が見えはじめ、予選リーグ初戦で対戦したときと比べると明らかに球威が落ちるアダム・フォーカードに「プレッシャー」をかけたが、この回無得点に終わった。

 日本の先発投手は岡阜囀l。弱冠二十歳にして、予選リーグ初戦(オーストラリア戦)では自己最速となる「MAX130km/h」を叩き出すなど、その「ポテンシャルの高さ」を見せつけ、早くも「日本のエース」として認知されつつある「今後の男子ソフトボール界を背負って立つ男」に、日本の「命運」を賭けた一戦の先発を託した。その岡阜囀lは立ち上がり、1番・ジノン・ウインタースにレフト前に運ばれ、いきなり出塁を許すが、2番・マーク・ハリスをライトフライに打ち取り、ワンアウト。その後、3番・ニック・シャイレスを四球で歩かせ、一死一・二塁のピンチを背負ったものの、4番・アンドリュー・カークパトリックを得意の「ライズボール」で三振、5番・ニック・ノートンもショートフライに打ち取り、まずは初回を無失点に抑えた。

 試合はこの後、オーストラリア・アダム・フォーカード、日本・岡阜囀lが「世界トップレベル」の見応えのある投げ合いを展開。両投手毎回のように走者を背負いながらも、その追い込まれた状況からもう一段ギアを入れ替え、「真の実力」を発揮する粘りのピッチング。5回まで互いに一歩も譲らず、0−0のまま、終盤を迎えた。

 6回表の攻撃も無死一塁と走者を出塁させながら、無得点に終わった日本に対して、オーストラリアはその裏、1番・ジノン・ウインタースが死球で出塁。2番・マーク・ハリスは送りバントを失敗し、一死となったものの、3番・ニック・シャイレスが三遊間を鋭く破り、一・二塁。ここで打席に4番・アンドリュー・カークパトリックを迎え、岡阜囀lが渾身の「ライズボール」を投げ込み、サードフライに打ち取って二死となったが、続く5番・ニック・ノートンが、これまでオーストラリア打線を抑え込んできた岡阜囀lの「アウトコースのローライズ」をパンチショットのようなコンパクトなスイングで完璧にとらえ、センターへ「値千金」のスリーランホームラン。ここまで力投を続けてきた岡阜囀lを、たった「一振り」で打ち砕き、この回オーストラリアに大きな3点がもたらされた。

 0−0のまま「延長タイブレーカーに入るか……」と思われた矢先に「痛恨の3失点」を喫した日本は、7回表も一死から代打・筒井拓友が右中間を深々と破るスリーベースを放つなど、懸命に反撃を試みたが、最後は代打攻勢として送り込まれた平本拓朗、中村健二が、サードゴロ、セカンドゴロに打ち取られ、ゲームセット。「世界最速の投手」アダム・フォーカードから5安打を放ち、機動力も絡めて再三チャンスを作り出したものの、「要所」をことごとく締められ、結局は12三振。またしても「世界の4強の一角を崩す」には至らず、0−3の完封負けを喫し、残念ながら「4大会連続5位」という結果で今大会を終えることとなった。

 今大会の戦いを振り返ってみると、日本は予想以上に「苦戦」を強いられた。初戦で「優勝候補」のオーストラリアと対戦し、0−1の惜敗。その後もベネズエラ、ドミニカら「中南米勢」に0−3、1−4と連敗し、一時は予選リーグで2勝3敗と黒星が先行する「崖っぷち」の状況。そこから何とかチームを立て直し、残り2試合「絶対に勝たなければならない」というプレッシャーの中、しっかりと勝ち切り、決勝トーナメント進出を果たすことができたということは評価に値し、日本の「意地」を見せたともいえるが、今大会予選リーグを4勝3敗で終え、「ギリギリの4位通過」。「4大会連続で決勝トーナメント2回戦敗退、5位に終わった」という成績こそが「世界における日本の立ち位置」を指し示しているといえるだろう。1996年の世界選手権3位、2000年の世界選手権準優勝、確かに一度は「世界の頂点」に手が届きかけた時代があった。しかし、現状は少なくとも「世界の勢力図」の中では、「トップグループ」に位置するチームではなく、予選リーグを突破できるかどうかの「ボーダーライン」上にいるチームであるという「現実」を認めなければならない。「世界の頂点」を狙うのではなく、まずは予選リーグを勝ち抜き、決勝トーナメントで一つでも二つでも上にいくこと、を考えるのが「現実的な目標」であり、まずはそこからはじめなければならない。

 弱冠二十歳にして、「日本のエース」を任された岡阜囀lが、今大会で自己最速となる「MAX130km/h」を叩き出し、「世界の舞台」でもある程度通用する目途がついたことは、日本にとって「大きな収穫」であった。しかし、その岡阜囀lも「世界トップレベルの相手に勝ち切れる投手」であったかといえば、まだそうではなく、この経験を糧に今後さらなる「進化」を遂げていかなければならない。得意の「ライズボール」にトコトンこだわり、世界の強打者を相手にしても「触れさせない」レベルまで磨きをかけていくのか、あるいはその「ライズボール」をより生かすことができるような「他の武器」を手に入れるのか、打者の目線を変え、タイミングをずらす投球術を身につけることはもちろん、ドロップやチェンジアップも磨くなど球種を増やし、ピッチングの幅を広げ、コントロールに関しても「精度」を上げていく。進化の選択肢は数々あれど、ハッキリしていることは、現状のままでは、「世界」を相手に対等に戦い、「勝ち切る」ことはできないということである。「善戦」はできても「勝ち切る」ことはできない。この「現実」とどう向き合い、今大会から何を学び、「次」に生かしていくことができるか、今大会の経験を糧に、真の意味で「日本のエース」に成長してくれることを期待したい。

 また、攻撃面についても、今回は三振が圧倒的に多かった。球速130km/h台のライズ・ドロップを投げ込んでくる「世界一線級」の投手を相手にすると、その球威や変化球の切れに圧倒され、ボールをとらえることができない。「日本でプレーするときと同じようにタイミングを取り、スイングしたのでは対応できない……」そういった現実も突き付けられた。このあたりは、何よりも海外の投手と対戦する機会を増やし、目を慣らすなど「場数」を踏みながら、身体にその「感覚」を覚え込ませていくしかないのだが、国内と国外において、プレーの「柔軟な使い分け」をしなければならないように思う。国際大会に来て一度バッティングを崩されても、大会中の短期間で「修正」する能力を持つ。様々な投球フォーム、独特の球筋で投げ込んでくる海外の投手を相手にする場合は、そこにうまく「アジャスト」し、その中で自分の「活きる術」を探しながら、結果を残すしかない。
 世界の「主流」は完全に「一発で勝負を決める」方向へと舵を切っている。確かに、これだけ投手力が上がると、連打で得点することは難しく、三振覚悟で当たればホームラン、一発で勝負を決める、という方向に向かうのも、ある意味では至極当然な、合理的な選択といえるだろう。しかし、ここでもパワーに劣る日本人が、その同じ土俵で勝負できるのか……という疑問と課題が残る。いつの日か、日本人が世界の舞台でも「パワー」で圧倒するような日が来ればいいが、他の競技を見ても、日本人がパワーで他国を圧倒しているという競技は皆無であるといっても過言ではない。だとすれば、日本得意の小技や機動力を生かしつつ、何人かは「一振り」で勝負を決めることができる選手を発掘・育成するとか、「足のスペシャリスト」を数名は打線の中に組み込んでいくとか、「日本らしさ」をより一層生かすことや、外国人には真似のできない「ジャパンオリジナル」を生み出していくことも必要であり、個々の能力を最大限に引き出すような手法や得意分野に特化した選手育成・強化方法も必要になるのではないだろうか。

 次回の第15回大会まで残された時間は、わずか2年。この2年でいかに日本の男子ソフトボールを「レベルアップ」させるかが勝負になる。今までのように日本で最強のチームを編成し、大会に臨むだけでは「世界の舞台」で勝つことはできない。今大会を経験した選手たちが日本に帰り、この現実を一人でも多くの選手に伝え、個々が「世界」を見据えて日々努力を積み重ねること。残念ながら、「男子ソフトボール」は決して恵まれた環境ではない。「世界で勝つ」ためには、選手自身が自らを変え、力をつけ、結果を出さなければ道は切り拓かれないのだ。

 「世界の舞台を知り尽くす」西村信紀ヘッドコーチは最後にこう話した……「世界選手権でメダルを取るためには、世界の4強の一角を必ず崩さなければならない!」と。現実をとらえれば、これは日本にとって非常に厳しい課題。「4大会連続の5位」、この事実がすべてを物語っている。

 大会は、ホスト国・カナダがニュージーランドの連覇を阻み、1992年以来となる「王座奪還」を果たし、4度目の「世界一」に輝き、幕を閉じた。前回大会、母国での大会開催で王座に返り咲いたニュージーランドの関係者がこう呟いていたのを思い出す。「今回はカナダがベストメンバーで大会に臨んでいない。それが我々には幸いした」と。このときは謙遜としか受け取っていなかったが、今大会のカナダの強さを見れば、この言葉が決して謙遜ではなかったことを裏付ける。オーストラリアを「優勝候補の大本命」と書いたことが恥ずかしくなるぐらいカナダは強かった。ニュージーランドに一度敗れはしたが、前回3位のオーストラリア、準優勝のベネズエラ、優勝のニュージーランド、すべてなぎ倒しての優勝は、まさに「圧巻」で文句なしの優勝であった。
 130km/hを超えるライズ、ドロップを投げ込むピッチャーがいて、それをいとも簡単に打ち返すバッターがいる。男子ソフトボールの世界はどこまで奥深く、底知れないのか……。そして、日本はその中でこれからも戦っていかなければならないのだ。



決勝トーナメント2回戦(3位・4位戦勝者対1位・2位戦敗者)
オーストラリア戦 スターティングラインアップ
打順 守備位置 選手名 所属 UN
1 RF 糸瀬勇助 ホンダエンジニアリング 6
2 2B 澤田優生 大阪桃次郎 12
3 3B 米良孝太 旭化成 5
4 DP 松田光 平林金属 20
5 SS 松岡真央 旭化成 10
6 1B 浦本大嗣 ホンダエンジニアリング 9
7 RF 木谷謙吾 平林金属 28
8 片岡大洋 高知パシフィックウェーブ 2
9 CF 西山幸助 平林金属 24
FP 岡阜囀l デンソー 19

※選手交代
7回表 代打 木谷OUT→筒井拓友(大阪桃次郎)IN 
片岡OUT→平本拓朗(平林金属)IN
西山OUT→中村健二(大阪桃次郎)IN 



決勝トーナメント組み合わせ・結果