男子U19日本代表ヘッドコーチ
長崎県立大村工業高等学校
男子ソフトボール部監督・山口義男
2012年11月、南米・アルゼンチンの地で開催された「第9回世界男子ジュニア選手権大会」に男子U19日本代表が出場。未来のソフトボール界を担う若き17名の戦士たちが、10日間にわたる激戦を戦い抜き、2005年に開催された第7回大会以来、2大会ぶりとなる銀メダルを獲得した。
大会には、世界男子ジュニア選手権5連覇の偉業達成に挑む「王者」オーストラリアを筆頭に、前回準優勝のカナダ、前回3位の日本、ホスト国・アルゼンチンをはじめ、デンマーク、インド、ニュージーランド、シンガポール、アメリカ、ベネズエラ、チェコ、クロアチア、メキシコの13カ国が出場(当初、14カ国の出場が予定されていたが、大会直前に英領バージン諸島が出場をキャンセル。全13カ国での開催となった)。
日本は、予選リーグセクションBを5勝1敗(ホスト国・アルゼンチンに続く2位)で通過し、決勝トーナメントへ進出。決勝トーナメントでは「王者」オーストラリアを2度にわたり撃破し、ファイナル進出を果たすなど、世界の強豪国と歴史に残る死闘を繰り広げ、その“実力”を世界に広くアピールした。
ここでは、今回、男子U19日本代表がどのような強化を図り、世界の舞台でどう戦ったのか。対戦国や出場国の特徴なども踏まえ、チームを率いた山口義男ヘッドコーチに話をうかがい、大会を総括していただいた。
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──世界男子ジュニア選手権大会、大変お疲れ様でした。まずは、今大会に臨むにあたってのチーム編成、また強化の流れついてお聞かせいただけますでしょうか?
まずは、8月に代表選手選考会を行い、大会に出場する17名を決定したのですが、大会本番まで準備期間が3カ月しかなく、私の中では大きな不安がありました。今回のチームは、日本リーグ在籍3名、大学生10名、高校生4名の内訳となり、大学生主体のチーム編成となりましたが、日本リーグ在籍の選手たちは、まだチームに入って1年目ということもあり、3名とも日本リーグではほとんど出場機会のない状態でしたし、これまでゴムボールでプレーしてきた高校生も、イエローボールに不慣れで、その感覚をつかみ切れていなかったのです。世界の舞台で戦うにあたり、期待で胸が膨らんでいたのは間違いないのですが、現実的には課題が山積みでしたね……。
そんな不安の中、9月に、大会に向けて唯一の強化事業となる国内強化合宿(岡山県岡山市)を実施しました。合宿では、男子西日本リーグに在籍する地元・平林金属、IPU・環太平洋大学の胸を借り、実戦主体の強化を実施。昨年男子西日本リーグ、決勝トーナメントを制し、全日本総合選手権を連覇した日本リーグの「強豪」平林金属と3試合、IPU・環太平洋大学(平林金属所属の選手を含む)と1試合の計4試合を戦えたことは、トップレベルを知り、実戦感覚を磨くという部分で、非常に大きかったと思っています。実戦では選手たちに、まずチームとして一つになること、そして自分たちの攻撃、守備のスタイルを確立することを求めました。攻撃、守備の技術的な部分については、バッティングでは、投手の球速(120km/h台)や、変化球のキレ、その変化球の変化の大きさに慣れ、対応していくこと。守備では、カットプレーなど内・外野の連携に重点を置き、先を読んだプレーで、相手のチャンスの芽をつみ取る守りを徹底させていきました。4試合のテストマッチを通して、攻守ともに課題が多く出ましたが、その課題に挑戦し、乗り越えていくことで個々がレベルアップできましたので、対戦相手を務めてくれた平林金属、IPU・環太平洋大学の皆さんには改めて感謝したいと思います。また、現在「国内bPの投手」と評価される日本代表・松田光投手の球を打てたことも貴重な経験になりました。松田投手は、球速120km/h台のライズ・ドロップはもちろんのこと、コーナーをキッチリ突いてくるコントロールと、巧みな投球術を兼ね備えたまさに「トップレベル」の投手です。レベルの高い世界の強豪国の投手をイメージできたことだけではなく、選手たちのソフトボールに対する技術的な視野も広げてくれましたので、非常にありがたかったと感じています。
また、国内合宿では、実戦での強化だけではなく、選手たちに「日本代表選手としてどうあるべきか」を問い、「次世代を担い、ソフトボール界を引っ張る存在になろう!」と、日本代表としての「自覚」と「責任」を持たせるよう努めました。これは、今回、私がU19日本代表のヘッドコーチを務めるにあたって、選手たちにもっとも伝えたかったことでもあります。合宿の最終日には、高橋流星コーチ(高橋流星コーチは2001年にオーストラリア・ブラックタウンで開催された第6回世界男子ジュニア選手権大会に出場。チームの主力として活躍し、銀メダルを獲得した)にも、ミーティングをお願いし、『日本代表としての心得』、『国際大会での戦い方』を選手たちにレクチャーしてもらいました。U19日本代表の“先輩”でもある高橋コーチからの、「私が選手時代に果たせなかった世界一になるという夢を、君たちに託したい!」、「君たちには、今後の男子ソフトボール界を担い、引っ張っていく責務がある。10年先、20年先を見据え、ソフトボール界に貢献できる人間になろう。そして、生涯をかけてソフトボールに携われる人間であろう!」というメッセージは、その場にいたスタッフ、選手全員の心を熱くし、チームの団結をより強めてくれるものであったと思います。高橋コーチには、『国際大会での戦い方』についても、言葉だけではなく、自身が実際に海外(ニュージーランド)で撮影してきた投手、打者の映像を紹介してもらうなど、貴重な時間を作ってもらいました。この場を借りて、改めて感謝を述べたいと思います。
現地(アルゼンチン・パラナ)に入ってからは、大会直前にオーストラリア、アメリカ、アルゼンチンと計4試合のテストマッチを実施しました。結果は、アメリカに6−4で勝利したものの、その他の国との対戦では連敗し、1勝3敗。日本から現地に到着するまで30時間以上かかった移動の疲れもあり、ここでは試合の勝敗というより、体のキレや、実戦感覚を取り戻すことに重点を置きましたが、ライバル国と大会前に戦い、「相手を知る」ことができたことは、一つの収穫だったと思います。
今回は、大会前の強化事業が国内合宿1回のみで、チームを強化するという部分では非常に難しさがありましたが、短い期間の中でも、高橋流星コーチ、松繁冬樹コーチと密にコミュニケーションを図りながら、目の前の課題と向き合い、世界の舞台で戦えるチームを作り上げることができました。チームの課題は何か、その課題にどう取り組み、改善していけば良いのか、深夜、ときには朝方まで互いの意見をぶつけ合い、納得いくまで語り合ったあの日々は、今でも鮮明に思い起こすことができます。選手たちも、そんな私たちの言葉をしっかりと受け入れ、グラウンドで精一杯表現してくれました。スタッフ、選手、全員の「ソフトボールに対する情熱」が、最終的にチームを変え、成長させていったのでしょうね。
──今大会、日本代表の戦いについて、山口ヘッドコーチはどのように総括されていますか?攻撃面、守備面、また投手のピッチングについて、それぞれお願い致します。
まず、攻撃については、日本の得意とする小技(セーフティーバント、スラップ)と機動力を絡め、相手の守備を崩しにいきました。海外のチームは全体的に守備が弱く、特にサード、ファーストのバント処理などはあまり練習されていません。また、相手の盗塁に対しても、捕手からの送球にベースカバーが間に合わず、内野が対応できない場面が目立っていました。であれば……と、二盗、三盗を狙い、とにかく積極的に走らせたのです。走者一塁、走者二塁からの送りバントも、ただ転がすのではなく、「自分も生きろ!」と、選手たちには指示していました。日本の小技、機動力は国際大会で“大きな武器”になると、改めて確認できた大会でもあったと思います。しかし、打って返すという部分では、相手投手の独特の投球フォームや、多彩な球種に翻弄され、なかなか結果を出せませんでした。特に優勝したアルゼンチンのエース・ウエムル・マタとは、今大会3度対戦しましたが、いずれも抑え込まれ、全敗。ツーステップで大胆に踏み込んでくる独特の投球フォームと、球速120km/hに迫るライズ・ドロップ、緩急の効いたチェンジアップは本当にくせ者で、結局、最後までつかまえることができませんでした。今大会では、打席での勝負以外にも、相手投手を攻略するために、実はいろんな試みを行ったのです。決勝トーナメントでは、オーストラリア戦で、松繁コーチと選手が相手ベンチに目を凝らし、投手コーチから出されていたバッテリーへの配球サインを察知。見事その配球サインを見破って、相手投手の攻略に成功し、勝利を得ることができました。セミファイナルのアルゼンチン戦でも、オーストリア戦と同じく、ベンチから出されていたバッテリーへの配球サインを一度見破ったのですが……、この日本の動きが相手に気づかれたのか、その後、すぐにサインを変えられ、最終的には攻略に至りませんでした。日本の小技、機動力が、世界の舞台で大きな武器になることを再確認できたことは間違いありません。しかし、悔しいですが、世界トップレベルの投手を打ち崩すことができなければ、世界一にはなれないということを痛感させられたとも感じています。
守備に関しては、今大会、非常に安定していたと私は評価しています。捕球や送球、内・外野の連携についても、特に乱れた場面はなく、グラウンドコンディションが悪い状況でも「堅い守備」を見せてくれました。今後、国際大会を戦う上で課題を挙げるとすれば、ナイトゲームに慣れることでしょうか。海外で開催される国際大会では、午後、また夜に試合が組まれることが多いため、前もってこのような状況に慣れておくことが非常に重要なのです。ナイターでの試合は、投手の投げる球や打球が日中より速く感じられるような錯覚に陥りますし、打ち上げられたフライが、照明と重なり、ときに見失ってしまうこともありますから、実戦で十分練習しておく必要があるでしょう。
投手に関しては、何といってもこの大会で「ヒーロー」になった岡阜囀l投手の活躍に尽きます。今大会では、海外の打者に対して岡蕪且閧フ“ライズボール”がとにかく効果的でした。特に、打者の膝元へ投じるローライズのコントロールが抜群で、予選リーグ第4戦のカナダ戦では圧巻の20奪三振。120km/hに迫る球のスピードはさることながら、しっかりとコントロールされたローライズ、ハイライズは、カナダ打線だけではなく、各国の打者にも的を絞らせませんでしたね。今大会では、ストライクゾーンが低めに広かったため、全体的に低めの球(ドロップ)を狙い打ちされました。高低にしっかりと投げ分けられなかった投手、またストライクゾーンの違いに対応できなかった投手は、非常に苦労したのではないかと思います。今回、日本の投手陣もストライクゾーンの違いに対応し切れませんでした。特に、アルゼンチン戦では、球を低めにコントロールし切れず、カウントを悪くしてしまった結果、置きにいったベルト線の球を痛打される悪い流れに陥ってしまいましたから……。岡蕪且閧ェこの大会で結果を残したように、世界の舞台で武器になるのは、やはり“ライズボール”なのかもしれません。前回(2009年)の世界選手権で好投した中村健二投手(大阪桃次郎)のように、チェンジアップに変化をつけた球種(チェンジライズ、チェンジドロップ)を多投して緩急をうまく使うのもおもしろいでしょう。海外の投手のように、120km/h、130km/hの速球で押しまくるようなピッチングは日本人にはできません。これまでの国際大会での経験を活かして、日本独自のピッチングスタイルを模索していく必要があるのではないかと考えます。
──今回、自国開催で初優勝に輝いたアルゼンチンをはじめ、世界の強豪国として知られるオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、アメリカなど、各国の印象はどのように感じられましたか?
優勝したアルゼンチンについては、今大会、投・打に非常にバランスが取れていました。日本打線が手を焼いたエースのウエムル・マタは、先程もお話ししましたが、球速110km/h後半(MAXは120km/hを超えていたでしょう)のライズ・ドロップを主体に、巧みにチェンジアップを織り交ぜ、日本だけではなく、各国の打者を抑え込みました。あのように、ツーステップで大胆に踏み込んでくる独特の投球フォームで、120km/h近い速球を投げ込まれ、チェンジアップを混ぜられると、打者はどうしても上体が起き上がってしまい、およがされてしまいます。ドロップもシュート気味に落ちていくような球筋で、非常に打ちづらかったのではないでしょうか。岡蕪且閧フピッチングももちろん素晴らしかったのですが、私は、やはりこのウエムル・マタが、全体のバランスを見ても今大会「bPの投手」だったと評価しています。打撃についても、アルゼンチンは力がありました。特にクリンナップは体格に恵まれ、スイングスピードが速く、パンチ力があります。ここぞというときに一気に畳みかける集中力と、爆発力も持ち合わせており、今大会、5000〜7000人を数える熱狂的なサポーターに後押しされ、勢いに乗ったときのアルゼンチン打線は本当に手がつけられませんでした。
大会5連覇の偉業達成に挑んだオーストラリアには、さすが王者と思わせる「貫録」と「しぶとさ」がありましたね。そのオーストラリアと、日本は今大会2度にわたり激戦を展開。“難攻不落の王者”に連勝し、私たちが連覇を阻む存在となれたことについては、非常に誇りに感じています。今回、オーストラリアには過去に優勝投手となった、アンドリュー・カークパトリックやアダム・フォーカードのような「絶対的エース」は存在しませんでした。しかし、選手層は相変わらず厚く、投手陣はどの投手も、登板すればしっかりと試合を作れ、完投できる実力を有していたように思います。攻撃では、大振りせず、コンパクトにセンター方向へ打ち返す基本に忠実なバッティングが印象的で、全体的に打線に切れ目がありませんでした。走塁でも、出塁すれば機動力を絡めて常に2つ先の塁を狙うことが徹底されており、走者一・三塁の状況でどんどんディレードスチールを仕掛けてくるようなところは、「さすがにソツがないな……」と感じましたね。このようなオーストラリアの攻撃スタイルは、機動力を絡まれて攻める日本にとって非常に良いお手本になると思いますので、機会があればぜひ多くの人に見てもらい、学んでほしいと思います。
4位に終わったカナダは、日本との予選リーグ第4戦(延長8回タイブレーカーの末、日本が3−0で完封勝利)に象徴されるように、今回は打線にあまり力がありませんでした。日本との対戦では、先発した岡蕪且閧ェ8回を一人で投げ抜き、20奪三振の快投。この試合でも、岡蕪且閧フライズにはまったく対応できておらず、こちらとしてはつかまる気はしませんでしたし、何か「ただ振り回しているだけ……」という印象を持ちました。チームの戦い方を見ても、アルゼンチン、オーストラリアに比べ、攻撃、守備ともに荒さが目立っていたように思います。しかし、このような状況にあっても、最終的にメダル争いに絡んでくるところはさすがカナダです。本来、カナダの男子ソフトボールは、オーストラリア、ニュージーランドとともに「世界の3強」と評価されていますし、国としても、確固たるソフトボール人気・地位を確立していますので、今後も優勝争いに絡んでくることは間違いないでしょう。
アメリカ、ニュージーランドについては、今回メダル争いにこそ絡めませんでしたが、その実力は確かなものだったと思います。アメリカは、予選リーグでニュージーランドに5−4で勝利するなど、好調な戦いぶりを見せ、オーストラリアに続くセクションA2位(5勝1敗)で決勝トーナメントへ進出。決勝トーナメントでも、果敢な戦いぶりで、優勝したアルゼンチンと熱戦を展開しました。最終的にアルゼンチンに5−8、カナダに2−4で敗れ、連敗し、5位という形で大会を終えましたが、攻守に豪快なソフトボールは見る者の目を引きつけ、会場を沸かせていたと思います。一方、ニュージーランドは、今大会投手陣が苦しみました。打線はどの打順からでも得点が期待できる爆発力を持っていたのですが、敗れた試合では、せっかくリードしても、その後失点し、逆転され、競り負けてしまうというパターンが多く、どこかもったいないと感じてしまう試合展開だったというのが正直な感想です。ナショナルチーム(ブラックソックス)でも、マーティー・グラントに続くエースの育成が急務と言われていますので、今後はこのジュニア世代から、いかに投手を育てていけるかが、「王国復活」のカギになるのではないかと思います。
この他、私が印象に残った国として挙げたいのは、メキシコ、ベネズエラら南米の国々です。もともとメキシコやベネズエラは、野球の土壌があり、攻守に能力の高い選手が多く、またお国柄、民族性もあるのか、ナイトゲームで勢いに乗ったときには非常に怖さがありました。日本は今回、メキシコとは予選リーグ第2戦で対戦し、11−2の6回コールド勝ちを収めましたが、立ち上がりはチャンスを作られるなど、押されましたし、一歩間違えば試合をひっくり返される可能性もあったのではないかと思います。ベネズエラに関しても、今回決勝トーナメントには進出できませんでしたが、チームの戦力を見た限りでは、決してレベルの低いチームではありませんでした。予選リーグのニュージーランド戦では、2−3の大接戦を演じ、両チームの選手同士がエキサイト。一触即発の試合展開でガンガンやり合ってましたからね……(笑)大会を通じて高い集中力を持続させ、毎試合臨むことができたなら、今後、上位にくい込める可能性は十分あるでしょう。
──最後に、大会を終えて、今後山口ヘッドコーチが選手たちに期待することは何でしょうか。また、ソフトボール界の未来に向けて、山口ヘッドコーチが伝え、残していきたいことなどございましたら、お聞かせ下さい。
当たり前のことなのかもしれませんが、選手たちには、ぜひこの先もソフトボールを続
けてほしいと思っています。一人一人、これから置かれる環境も変わると思いますが、彼
らには変わらず日本代表の夢を追い続けてもらいたいし、世界の舞台で戦い、いつの日か
必ず、今回の悔しさを晴らしてほしい。それが、今の私の正直な気持ちです。今回、私た
ちは世界ジュニア選手権を戦い、今後のソフトボール人生に活かすことのできるかけがえのない経験を得ることができました。そして、その経験の中には新たな発見があり、多くのことを学びました。この学びは、自分たちの未来に役立てるだけではなく、ソフトボール界にもしっかりと還元していかなければなりません。彼らのソフトボールはまだはじまったばかり……、いや、彼らの「本当のソフトボール」はここからはじまるのです。ジュニア世代からナショナルチームへと継続した強化を続け、日本の男子ソフトボールのレベルをさらにアップさせていきたいですね。
今後については、ジュニア世代の選手たちへの指導を通して、男子ソフトボール界にもっと「夢」を与えていきたいと思っています。多くの選手や指導者に、積極的に“世界”へ飛び出していってもらいたいですし、日本のソフトボールとは違った、世界のソフトボールを、実際に自分の目で見て、肌で感じ、良い部分はどんどん日本に持ち帰ってもらいたい。今回、大会が開催されたパラナという街は、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスから車で約7時間かかる遠く離れた小さな田舎街でした。そんな小さな街でも、地元・アルゼンチン戦では連日5000人を超える観客が集まり、人々は大熱狂するのです。最終日(ファイナル)には、7000人を超える観客が集まり、スタジアム全体が独特の“ラテンのリズム”に包まれていました。本当にすごいですよね。日本ではまず考えられません。会場設備や大会運営についても、プレーする選手のためだけではなく、見る者のこともよく考えられていました。日本に観客スタンドつきのソフトボール専用球場がいくつあるでしょうか。試合を行うだけではなく、試合を見る側のことを考えることも非常に大切なことだと思います。試合を盛り上げ、観客を楽しませるための音響設備や、集客を考慮したナイトゲームの導入など、選手のプレー以外の面でも参考にすべきことがたくさんあったと私は感じています。「ソフトボールをより楽しめる環境を整えること」、こういったことも、人々に夢を与える競技にするためには必要な要素ですよね。
国際大会や海外遠征においても、海外の選手やチームとの交流をもっと積極的に行っていかなければなりません。例えば、今回優勝したアルゼンチンが、大会に向けてどのような強化を図ったのか。オーストラリア、ニュージーランド、カナダはどうか。ときには逆の視点を持ち、世界は日本のソフトボールをどう評価し、どのような所に関心を持っていたのか、耳を傾けることも必要でしょう。言葉の壁はありますが、必ず、そこで何か得られるはずなのです。今回も大会に出場してみて、世界のソフトボールのいろんな情報を耳にし、私たちには知らなかったことがまだまだたくさんありました。ひょっとすると日本は、世界のソフトボールの技術的な傾向や、強豪国の強化システム、各国の国際交流など、様々なことに関して情報をつかみ切れておらず、世界の動向や流れから取り残されてしまっているのではないかとも思います。これからは、私たち日本が世界で「リーダーシップ」を発揮していかなければなりません。世界の国々と手を取り合いながら、ソフトボールをもっともっと盛り上げていかなければならないのです。“日本から世界へ”ソフトボールの魅力を発信し、多くの人々にソフトボールを通じて「夢」をあたえていこうではありませんか。それが、未来に向けた私の一番の願いです。
最後になりますが、今回男子U19日本代表を支えていただきました皆さんに心から感謝申し上げます。大会期間中、お気遣いいただきました尾武ウ則団長、はじめての日本代表チームへの帯同、国際大会への派遣で大変だったと思います齋藤学トレーナー、選手たちに勇気を与えていただきました広報の竹侮。さん、いつも明るくチームをサポートしていただきました添乗員の田沼真太郎さんには、本当にお世話になりました。また、(公財)日本ソフトボール協会、協会事務局の皆様、選手所属の企業、学校の皆様、岡山県ソフトボール協会・福島正一理事長、西村信紀男子強化委員長、平林金属ソフトボールクラブ、IPU・環太平洋大学ソフトボール部の皆さん、ご支援・ご協力いただきまして、ありがとうございました。残念ながら優勝にはあと一歩届きませんでしたが、多くの方々のご支援・ご協力により、選手たちと今大会を熱く戦い抜けたことを、私自身、何よりも幸せに感じております。
この“世界一になる”という夢は、次の世代の選手たちに託しましょう。「かけがえのない経験を未来へ!男子ソフトボール界に夢を!!」私はこれからも、若き「原石たち」の活躍を期待しています!
──今回はインタビューにご協力いただき、ありがとうございました! |