7月13日(金)、第13回世界女子ソフトボール選手権大会がカナダ・ホワイトホースで開幕。42年ぶりとなる「世界選手権優勝」をめざす女子日本代表が、予選リーグ第1戦でオーストラリアと対戦した。
オーストラリアとは、2004年のアテネオリンピック、2008年の北京オリンピックの「初戦」で対戦しているが、今大会も「初戦」で対戦するという奇妙な「巡り合わせ」。1996年、女子ソフトボールがオリンピック競技に採用され、初めて迎えたアトランタオリンピックでは、日本がほぼ手中にしていたメダル獲得を阻み(当時、優勝候補の一角に挙げられていた中国を破り、予選リーグ2位通過の可能性が高まったが(予選リーグ2位以上はオリンピックの場合、メダル確定を意味していた)、オーストラリア戦で0−10と大敗。最終的に中国、オーストラリア、日本が5勝2敗の同率で並び、失点差で4位となった)、それだけでなく、メダル獲得をかけて臨んだ決勝トーナメントの「再戦」でもオーストラリアに敗れ、メダル獲得を逃した。
2000年、オーストラリアがホスト国として開催を迎えたシドニーオリンピックでは、初の金メダル獲得が期待されたオーストラリアの前に日本が立ちはだかり、日本が予選リーグを全勝の1位で通過。決勝トーナメントの初戦で予選リーグ2位のオーストラリアを破り、ファイナル進出。オーストラリアはアメリカに敗れ、銅メダルに終わり、ファイナルでアメリカと死闘を演じた日本が銀メダル獲得を果たしている。
2004年のアテネオリンピックでは、宇津木妙子ヘッドコーチ率いる日本が、初の金メダル獲得を期待され、戦いに臨んだが、予選リーグ初戦のオーストラリア戦での逆転負けで歯車が狂い、本来の力を出し切れないまま、予選リーグ4位とギリギリの通過。決勝トーナメントでもオーストラリアに敗れ、3位で終戦。銅メダルに終わっている。
2008年の北京オリンピックでは、予選リーグ初戦のオーストラリア戦に日本が苦しみながらも勝利を収め、決勝トーナメントでも延長にもつれ込む死闘の末、日本がファイナル進出。ファイナルでアメリカをも破り、悲願の金メダル獲得を果たした「経緯」がある。
そういう意味では、「因縁の相手」であり、オーストラリアを相手にどんな試合を展開するかで大会全体を占うことができる「重要な相手」でもあるといえるだろう。
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
日本 |
0 |
0 |
1 |
1 |
1 |
0 |
0 |
3 |
オーストラリア |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
直前のカナダカップ(カナディアンオープン)で優勝を飾り、上り調子のまま、大会に臨んだ日本だが、思わぬところに「落とし穴」がまっていた。
初回、三者凡退に終わり、無得点に終わると、満を持して登板したエース・上野由岐子が、先頭打者・ステーシー・ポーターにいきなり本塁打を浴びる予想外の展開。完全に詰まらせ、打ち取ったかに見えた打球だったが、センター・山田恵里の差し出したグラブのわずか先をかすめ、オーストラリアが先取点を挙げた。
しかし、打線好調の日本は3回表、二死から2番・西山麗が一塁線を鋭く破るヒットで出塁。3番・大久保美紗が「持ち味」のしぶといバッティングで一・二塁間深く転がし、内野安打。一塁走者・西山麗が判断良く三塁を陥れ、二死一・三塁とチャンスを広げた。この攻勢に慌てたか、4番・山田恵里のセカンドゴロが相手エラーを誘い、三塁走者が生還。日本の積極果敢な走塁と「打線の迫力」が相手のミスを呼び込み、同点においついた。
オーストラリアもその裏、先頭打者の安打と当たり損ねの打球が幸運な内野安打となり、無死一・二塁と勝ち越しのチャンスを作ったが、ここは「世界を制した鉄腕」上野由岐子が貫禄のピッチング。後続をライトフライ、ショートゴロ、ショートゴロに打ち取り、ピンチを切り抜けた。
こうなると試合の流れは日本に傾く。4回表、6番・坂元令奈が安打で出塁すると、7番・岩渕有美の内野ゴロの間に二塁へ進み、二死後、代打・藤野遥香が左中間へタイムリーツーベース。宇津木麗華ヘッドコーチの采配がズバリと当たり、日本が1点を勝ち越した。
続く5回表には、再び2番・西山麗が三遊間深く転がし、内野安打。3番・大久保美紗がバントの構えからバスターで相手守備陣を揺さぶり、得点圏に走者を進めると、4番・山田恵里の強烈な当たりは相手のファインプレーに阻まれ、二死となったが、5番・峰幸代がレフト前に落とす「技あり」のタイムリー。オーストラリアを突き放す、貴重な追加点を挙げた。
2点のリードをもらった「エース」上野由岐子は、初回にまさかの本塁打を浴び、序盤こそ走者を背負う場面もあったが、徐々に調子を上げ、後半は余裕のピッチング。1失点の完投勝ちで「42年ぶりの世界選手権制覇」へ、まず1勝を挙げた。
今回のチームは、とにかく落ち着いている。いわば「大人のチーム」といった印象で、初回にチームが絶大な信頼を置く「エース」がいきなり本塁打を浴びるというショッキングな展開になっても、誰一人慌てることなく、反撃の機会を窺い、チャンスをしっかり得点に結びつけ、逆転勝ち。「因縁」のオーストラリアが相手であっても、どこか「格の違い」すら感じさせる余裕の試合展開で快勝し、目標である「世界選手権優勝」に向け、好スタートを切った。
宇津木麗華ヘッドコーチは、「選手たちに『胴上げするときに重いから1.5s減量して』といわれている」と、微妙な数字のダイエット目標をにこやかに語ったが、この様子なら大丈夫。むしろヘッドコーチとして、あるいはコーチとして「初陣」となった宇津木麗華ヘッドコーチ、ルーシー・カサレスコーチの方がいつになく緊張しており、それが選手に伝染し、序盤の「硬さ」につながった感がある。
それも独特の緊張感のある初戦を終えたことで、明日は普段通りのソフトボールができるだろう。チーム力的には「優勝候補No.1」は間違いない。普通に、普段通りに、戦うことができれば、自ずと結果はついてくるはずである。
第13回世界女子選手権大会 第1日
予選リーグ第1戦 オーストラリア戦スターティングラインアップ |
打順 |
守備 |
選手名 |
所属 |
1 |
9 |
河野 美里 |
太陽誘電 |
2 |
6 |
西山 麗 |
日立ソフトウェア |
3 |
3 |
大久保美紗 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
4 |
8 |
山田 恵里 |
日立ソフトウェア |
5 |
2 |
峰 幸代 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
6 |
5 |
坂元 令奈 |
トヨタ自動車 |
7 |
7 |
岩渕 有美 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
8 |
4 |
鈴木 美加 |
トヨタ自動車 |
9 |
DP |
相馬 満利 |
日本体育大 |
FP |
P |
上野由岐子 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
※選手交代 |
イニング |
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4回表 |
代打 |
相馬OUT→藤野遥香(トヨタ自動車)IN |
7回表 |
代打 |
峰OUT→古田真輝(豊田自動織機)IN |
〃 |
代走 |
古田OUT→関友希央(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
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