大会9日目(7月21日/土 ※日本時間・7月22日/日)、決勝トーナメント2日目、日本はセミファイナルで「宿敵」アメリカと激突。ゴールドメダルゲーム(ファイナル)進出をかけ、対戦することになった。
第1試合では、昨日、台湾を4−3で破って勝ち上がったオランダとアメリカに2−4で敗れ、敗者復活戦に回った地元・カナダが対戦。カナダが地元の熱い声援に応え、4−0の完封勝ち。ヨーロッパ勢としては唯一予選リーグを通過し、決勝トーナメントでも貴重な1勝を挙げるなど、大会を沸かせたオランダが、ここでトーナメントから姿を消した。
第2試合では、日本に敗れ、敗者復活戦に回った中国と、プエルトリコにコールド勝ちして勝ち上がったオーストラリアが対戦。試合は1点を争う好ゲームとなり、延長タイブレーカーにもつれ込む熱戦の末、オーストラリアが5−4で逆転サヨナラ勝ち。相変わらずの勝負強さとしぶとさを見せ、トーナメントに生き残り、第4試合で地元・カナダと対戦。ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)進出をかけ、ぶつかることになった。
第3試合では、世界選手権8連覇の偉業達成を目論むアメリカと42年ぶりの王座奪還、アメリカの8連覇阻止に燃える日本が対戦。試合は予想通り、白熱した試合となった。
大会第9日
決勝トーナメント・セミファイナル/アメリカ戦 |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
計 |
アメリカ |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
3 |
日 本 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
日本の先発は、もちろん「エース」上野由岐子。その立ち上がり、先頭打者を三振、2番打者をセカンドゴロに打ち取り、快調な滑り出しを見せたかと思われたが、3番・Lauren・Gibsonにまるでチェンジアップが来るのがわかっていたかのように完璧なタイミングでとらえられ、センター頭上を越えるソロホームラン。アメリカが持ち前の「パワー」を全面に押し出した攻めで、日本が誇る「世界のエース」上野由岐子から先取点を奪った。
日本も負けてはいない。2回裏、この回先頭の5番・峰幸代が四球を選ぶと、すぐに代走に俊足・関友希央を送る。6番・藤野遥香の送りバントを相手三塁手が二塁へ送球。完全にセーフのタイミングだったが、審判の判定は「アウト」。これが無死一・二塁となっていれば、一気に試合の流れが日本へ傾くところだっただけに、微妙な判定が悔やまれる。
日本は二死後、8番・岩渕有美がセンター前にクリーンヒット。一塁走者・藤野遥香が思い切りの良い走塁で三塁を陥れ、一・三塁。好機を作りなおしたが、9番・鈴木美加がチェンジアップにひっかかり、空振り三振。惜しいチャンスを逃した。
日本は3回裏、1番・河野美里がレフト前ヒット。日本の「切り込み隊長」であり、「ムードメーカー」でもある河野美里の出塁に、日本ベンチが一気に勢いづく。2番・西山麗のところでヒットエンドランを仕掛け、難しいボールをうまくフェアグラウンドに転がし、一死二塁。さらに3番・大久保美紗の四球で一死一・二塁となったところで、アメリカは早くもピッチャー交代。先発・Jackie・Trainaを諦め、Chelsea・Thomasを投入。その代わり端、日本の「主砲」4番・山田恵里がレフトへヒット性の当たりを放ったが、レフトがスライディングキャッチ。結局、スライディングの勢い余って一度は捕球した打球を落球していたのだが、「捕られた」と思った二塁走者は帰塁しており、三塁へ送球され、フォースアウト。二死となり、チャンスを逃したかと思われたが、今大会打撃好調の5番・峰幸代がセンター前にはじき返し、同点。試合を振り出しに戻した。
日本は5回裏の二死一・二塁、6回裏の二死二塁の勝ち越しのチャンスをモノにできず、無得点。試合は1−1の同点のまま、延長タイブレーカーへと突入した。
迎えた8回表、アメリカはタイブレーカーの走者を二塁に置き、9番・Christie・Orgeronが二度送りバントを失敗し、追い込まれながらも、センター頭上をライナーで越す二塁打を放ち、勝ち越し。二死後、先制ホームランを放っている3番・Luaren・Gibsonにも左中間を破られ、この回2点を失い、勝負は決した。
日本もその裏、6番・藤野遥香があわや同点ツーランかという当たりをフェンス際まで運んだものの、あとひと伸びがなく、万事休す。今大会初黒星を喫し、敗者復活戦に回ることになった。
第4試合では、オーストラリアが女子リーグ1部・佐川急便で活躍中であり、予選リーグ初戦で日本の「エース」上野由岐子からも本塁打を放っているステーシー・ポーターが、地元・カナダの応援で満員に埋まったスタンドを黙らせる先頭打者本塁打。この一打で試合の主導権を握ったオーストラリアが終始先手を取り、3−1で勝利を収め、ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)へ駒を進め、ゴールドメダルゲーム(ファイナル)進出をかけ、日本と対戦することになった。
今日の敗戦はやはり痛い。「エース」上野由岐子の3連投がほぼ決定的となり、明日、オーストラリア、アメリカを相手に「ダブルヘッダー」を投げ抜かなくてはならなくなったからだ。
時には凍えるような寒さだったカナダ・ホワイトホースも夏の陽射しを取り戻し、試合時間は強い陽射しが照りつけ、かなり温度も上がってきている。日本のような蒸し暑さはなく、日陰に入れば、涼しくはあるが、それでも強豪相手の連投は決して楽なものではなく、できることなら明日、アメリカとのファイナルだけに集中できる環境と条件と整えてやりたいところだったのだが……。
しかし、こうなった以上、「勝つ」しかない。優勝するためには、明日のダブルヘッダーを勝ち抜くしかないのだ。そして、ここまで「力投」を続けている「エース」のために、打線の援護を期待したい。
今日のアメリカ戦でも、相手を上回る7安打を放っている。不運な判定もあったのは事実だが、日本打線本来の「つながり」を欠き、チャンスを作りながら「決定打」を奪えずにいる。
何度も言うようだが、今大会に関しては、「優勝候補」はアメリカではない。チーム力的には日本が「上」であり、負ける要素はないと言っても過言ではない。
今日の試合においては、アメリカが自らの「特徴」を生かし、「パワー」で日本を押し切った。しかし、アメリカに2008年北京オリンピック当時のチームのような「完成度」はなく、どこにも隙がないといったチームではない。日本が本来の力を出し切れば、「必ず」勝てる相手のはずである。
もちろん、アメリカとの「再戦」を果たすには、まず難敵・オーストラリアを撃破しなくてはならない。この相手も決して簡単な相手ではなく、過去何度も日本の前に立ちはだかり、時にはその行く手を遮っている。
簡単な相手ではないことは百も承知だが、ここで全力を出し切り、消耗してしまっては、前回大会の二の舞である。かなり高いハードルではあるが、できるだけ余力を残してアメリカが待つファイナルの舞台へ辿り着きたい。
そのためにも、「打線の奮起」がカギになる。奇しくも明日は「エース」上野由岐子の誕生日でもある。今大会、力投を続ける「エース」の誕生日に「世界一」の座をプレゼントしようではないか。
第13回世界女子選手権大会 第9日
決勝トーナメント・セミファイナル/アメリカ戦スターティングラインアップ |
打順 |
守備 |
選手名 |
所属 |
1 |
9 |
河野 美里 |
太陽誘電 |
2 |
6 |
西山 麗 |
日立ソフトウェア |
3 |
3 |
大久保美紗 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
4 |
8 |
山田 恵里 |
日立ソフトウェア |
5 |
2 |
峰 幸代 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
6 |
DP |
藤野 遥香 |
トヨタ自動車 |
7 |
5 |
坂元 令奈 |
トヨタ自動車 |
8 |
7 |
岩渕 有美 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
9 |
4 |
鈴木 美加 |
トヨタ自動車 |
FP |
P |
上野由岐子 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
※選手交代 |
イニング |
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2回裏 |
代走 |
峰OUT→関友希央(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
3回表 |
再出場 |
関OUT→峰幸代(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
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