大会もいよいよ最終日(7月22日/日 ※日本時間・7月23日/月)を迎え、まずブロンズメダルゲーム(3位決定戦)で、昨日、アメリカに敗れ、敗者復活戦に回った日本と、プエルトリコ、中国、カナダを撃破し、勝ち上がってきたオーストラリアが対戦。
日本が最終回の無死満塁のピンチを凌ぎ、2−0の完封勝ち。セミファイナルで敗れたアメリカとの「再戦」にこぎつけた。
ゴールドメダルゲーム(ファイナル/優勝決定戦)は、日本とアメリカの「再戦」となり、「世界一」の座をかけた試合にふさわしい息詰まる投手戦を展開。両チーム無得点のまま、延長タイブレーカーにもつれ込む熱戦となり、日本が2−1で粘るアメリカを振り切り、アメリカの世界選手権8連覇を阻止。42年ぶりに「王座奪還」を果たし、世界の頂点へ登り詰めた。
大会第10日(大会最終日)
決勝トーナメント・ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)/オーストラリア戦 |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
日 本 |
1 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
2 |
オーストラリア |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
バッテリー:〇上野(7回)−峰 |
長打:〔二塁打〕山田、古田 |
先攻の日本は初回、鮮やかな先制攻撃を見せた。まず、この試合打順を入れ替え、トップバッターに起用された「主砲」山田恵里が、いきなりライト前ヒットを放ち、出塁。すかさず二盗を仕掛けると、キャッチャーからの二塁送球が逸れ、一塁走者・山田恵里の身体に当たり、ボールが転々とする間に、一気に三塁まで進塁。絶好の先制機をつかむと、2番・河野美里がレフト前にタイムリーを放ち、大事な試合の先取点を奪った。
日本の先発は、連投の「エース」上野由岐子。いきなり1点の援護をもらうと、初回からエンジン全開。連投の疲れなど微塵も感じさせない三者三振の絶好調の立ち上がりを見せ、試合の流れを日本に引き寄せた。
日本は2回表の二死二・三塁、3回表の一死満塁とチャンスは作るものの、決定打が出ないという今大会後半続いている「タイムリー欠乏症」に悩まされていたが、ようやく5回表、3番・西山麗がセンター前にクリーンヒットを放ち、4番・峰幸代が確実に送り、一死二塁。ここで5番・古田真輝が一塁線を鋭く破るタイムリーを放ち、貴重な追加点となる2点目を挙げた。
日本の先発・上野由岐子は、6回までオーストラリア打線を1安打・1四球に抑え込み、このまますんなり「宿敵」アメリカが待つ「ゴールドメダルゲーム(ファイナル/優勝決定戦)」進出が決まるかと思われたが、やはり相手はオーストラリア。一筋縄でいく相手ではなかった。
この試合初めての連打と四球で無死満塁のチャンスをつかみ、一打同点どころか、長打が出れば逆転という絶体絶命のピンチを招いてしまった。
しかし、ここからが日本が誇る「世界のエース」上野由岐子の真骨頂。後続を連続三振に斬って取ると、最後はサード・坂元令奈が「エース」の力投に応える好守を見せ、難しい当たりのサードゴロを捌き、そのまま三塁ベースを踏み、ゲームセット。2−0の完封勝利を収め、世界選手権「8連覇」の偉業達成に挑むアメリカとの「再戦」が決まった。
決勝トーナメント・ゴールドメダルゲーム(ファイナル/優勝決定戦)/アメリカ戦 |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
計 |
日 本 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
1 |
2 |
アメリカ |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
1 |
※延長10回タイブレーカー |
バッテリー:○上野(10回)−峰 |
先攻の日本は初回、宇津木麗華ヘッドコーチの「トップバッター起用」がズバリと当たった山田恵里がセンター前ヒットで出塁。いきなり二盗を成功させ、オーストラリア戦に続き、「先制攻撃」といきたいところだったが、アメリカの先発・左腕Keilani・Rickettsに後続が三者三振に打ち取られ、先制のチャンスを逃した。
アメリカもその裏、四球、パスボールなどで二死二塁と得点圏に走者を進めたが、後続が三振に打ち取られ、こちらも無得点に終わった。
その後は、日本が4回表、二死一・三塁のチャンスをつかみながら、「あと一本」が出ず、アメリカは6回裏、この試合初めてのノーアウトのランナーを出しながら、「剛腕」上野由岐子の前に、送りバントもままならず、ファーストへの小フライとなり、次打者は「世界一」と評価の高い日本守備陣の併殺網にかかり、注文通り5−4−3のダブルプレー。両チーム無得点のまま、延長タイブレーカーへともつれ込んだ。
延長8回表、代打・渡邉華月が走者を送れず、三振。続く1番・山田恵里のセンター頭上を襲うホームラン性の打球は超ファインプレーに阻まれ、ツーアウトとなり、2番・河野美里が故意四球で歩き、一・二塁。代打・藤野遥香がツーストライクと追い込まれると、イチかバチかのダブルスチールを敢行したが、アメリカ守備陣が冷静に対処し、三塁タッチアウト。日本の攻撃を無得点に抑え、アメリカは俄然勢いづいた。
しかし、ここで「エース」上野由岐子が文字通り「エース」のピッチングを見せる。送りバントでタイブレーカーの走者が三塁へ進んだものの、後続を浅いレフトフライ、三振に打ち取り、一打サヨナラのピンチを脱出。逃げ出しかけた「勝利の女神」を力投で振り向かせた。
日本は延長9回表、3番・西山麗がタイブレーカーの走者を確実に送り、一死三塁。4番・峰幸代は空振り三振に終わり、「またしても無得点か……」と嫌な雰囲気になりかけたが、5番・古田真輝がしぶとくセンター前に運び、待望の先取点。持ち前の「勝負強さ」を発揮し、日本の窮地を救う一打を放った。
これで「勝負あった」かと思われたが、アメリカも「王者」の意地を見せる。送りバントでタイブレーカーの走者を進めると、二死後、昨日、先制ホームランとダメ押しの二塁打を放っている3番・Luaren・Gibsonが執念のレフト前ヒット。決していい当たりではなかったが、「王者」の意地と誇りが打球に乗り移ったかのようにレフト前に落ち、同点に追いついた。
日本は延長10回表、「頼れるキャプテン」7番・岩渕有美が送りバントを決め、一死三塁とすると、8番・大久保美紗が「得意」のスクイズを決め、勝ち越し。再びリードを奪った。
最後は「エース」上野由岐子が、アメリカの「意地の反撃」をショートゴロ、三振、セカンドゴロに封じ込み、延長10回に及ぶ「死闘」を制し、日本がアメリカの世界選手権8連覇を阻み、42年ぶりの栄冠を手にした。
「オリンピックのないオリンピックイヤー」にソフトボールが存在感を示した。北京オリンピックに続き、奇しくもその「4年後」となる世界選手権で優勝し、再び「世界一」の座に登り詰めた。
4年前、数えきれないほど取り囲んでいた報道陣の姿はない。世界選手権で優勝したからといって、あの熱狂が再現されるわけではない。
ただ、「ソフトボール」は4年前も、今も、変わることなく魅力的で面白い。ある選手が、試合中に呟いた。「こういうのっていいですね」と。息が詰まるような緊張感、胸が締めつけられるような緊迫感、アメリカと死闘を展開している最中に、「面白いなぁ〜こういうのって」と、誰に話すでもなく呟いた。そう……ソフトボールって本当に面白いんです!
アメリカを破り、「世界一」となった選手たちは、4年前の金メダリストたちと何一つ変わることはない。彼女たちは「世界一」なのだ。4年前より「舞台」は少しばかり小さいのかもしれないが……。「世界一」になった彼女たちの表情は、あのときよりも輝いて見え、心の底から嬉しそうにも見えた。
第13回世界女子選手権大会 第10日
決勝トーナメントブロンズメダルゲーム オーストラリア戦スターティングラインアップ |
打順 |
守備 |
選手名 |
所属 |
1 |
8 |
山田 恵里 |
日立ソフトウェア |
2 |
9 |
河野 美里 |
太陽誘電 |
3 |
6 |
西山 麗 |
日立ソフトウェア |
4 |
2 |
峰 幸代 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
5 |
DP |
古田 真輝 |
豊田自動織機 |
6 |
5 |
坂元 令奈 |
トヨタ自動車 |
7 |
7 |
岩渕 有美 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
8 |
4 |
鈴木 美加 |
トヨタ自動車 |
9 |
3 |
大久保美紗 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
FP |
P |
上野由岐子 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
※選手交代 |
イニング |
|
3回表 |
代走 |
峰OUT→関友希央(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
〃 |
代打 |
鈴木OUT→藤野遥香(トヨタ自動車)IN |
3回裏 |
再出場 |
関OUT→峰幸代(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
〃 |
〃 |
藤野OUT→鈴木美加(トヨタ自動車)IN |
7回表 |
代走 |
古田OUT→相馬満利(日本体育大)IN |
〃 |
代打 |
岩渕OUT→渡邉華月(トヨタ自動車)IN |
7回裏 |
再出場 |
渡邉OUT→岩渕有美(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
決勝トーナメントゴールドメダルゲーム アメリカ戦スターティングラインアップ |
打順 |
守備 |
選手名 |
所属 |
1 |
8 |
山田 恵里 |
日立ソフトウェア |
2 |
9 |
河野 美里 |
太陽誘電 |
3 |
6 |
西山 麗 |
日立ソフトウェア |
4 |
2 |
峰 幸代 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
5 |
DP |
古田 真輝 |
豊田自動織機 |
6 |
5 |
坂元 令奈 |
トヨタ自動車 |
7 |
7 |
岩渕 有美 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
8 |
3 |
大久保美紗 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
9 |
P |
上野由岐子 |
ルネサスエレクトロニクス高崎 |
FP |
4 |
鈴木 美加 |
トヨタ自動車 |
※選手交代 |
イニング |
|
4回表 |
代走 |
峰OUT→関友希央(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
4回裏 |
再出場 |
関OUT→峰幸代(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
8回表 |
代打 |
上野OUT→渡邉華月(トヨタ自動車)IN |
〃 |
〃 |
西山OUT→藤野遥香(トヨタ自動車)IN |
8回裏 |
再出場 |
渡邉OUT→上野由岐子(ルネサスエレクトロニクス高崎)IN |
〃 |
〃 |
藤野OUT→西山麗(日立ソフトウェア)IN |
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