去る6月9日(月)〜11日(水)の3日間、中国・広東省順徳で開催されていた「第3回東アジアカップ」に出場していた女子大学日本代表が、各国の「代表チーム」を次々と撃破。見事2年ぶり2度目の優勝を飾った。
この「東アジアカップ」は、国際的に見てもソフトボールが盛んで競技力の高い東アジア地域の4チーム(日本、中国、チャイニーズタイペイ(台湾)、韓国)が集まり、さらなるレベルアップを図るとともに、オリンピック、アジア競技大会等と同じように「総合競技大会」として開催されている「東アジア競技大会」でのソフトボール競技の実施をめざし、それを一つのステップとして、東アジアからオリンピック競技復帰へのムーブメントを起こしていこうとの趣旨のもと、2012年に創設された大会であり、第1回大会(韓国・大邱で開催)には、女子大学日本代表が出場し、記念すべき第1回大会で優勝を飾り、「初代チャンピオン」となっている。
昨年は日本がホスト国としてこの大会を開催し(岐阜県揖斐川町で開催)、女子日本代表とともに女子大学日本代表も参加し、特例的な参加で順位こそつかなかったが、女子日本代表には敗れたものの、中国、チャイニーズタイペイ(台湾)、韓国の「代表チーム」を次々と撃破。実質的には「準優勝」という成績を残している。
この第3回大会も、日本を除く3チームが「代表チーム」での参加。中国、チャイニーズタイペイ(台湾)は、8月15日(金)〜24日(日)、オランダ・ハーレムで開催される「第14回世界女子選手権大会」へ向けた強化・調整も兼ね、「ベストメンバー」で大会へ臨み、「世界選手権の前哨戦」とこの大会を位置づけ、韓国も9月27日(土)〜10月2日(木)、「ホスト国」として「第17回アジア競技大会」を仁川で開催することが決まっており、そこに照準を絞り、強化を進めている。
それだけに過去2回の大会以上に、参加チームは「本番モード」「臨戦態勢」で大会に臨んでくることは間違いなく、「過去最高レベルの大会」となることが予想された。
大会は、参加全チームによるシングルラウンドロビン(1回戦総当たり)の予選リーグを行い、その順位によって、決勝トーナメントでの対戦相手を決定。ソフトボール独特のシステムであるページシステム(敗者復活戦を含むトーナメント)で最終順位を決定する試合方式で覇が競われた。
女子大学日本代表は、大会初日(6月9日/月)、まずチャイニーズタイペイ(台湾)と対戦。先攻の女子大学日本代表は初回、1番・古澤春菜(園田学園女子大)が四球を選び、出塁すると、2番・田中瑠莉(園田学園女子大)が確実に送り、得点圏に走者を進め、3番・榎本千波(城西大)のところでヒットエンドランを仕掛けると、ショートがサードベースカバーへと動いたこともり、打球がその動きの逆をついてセンターへと抜け、二塁走者が一気にホームイン。幸先よく先取点を挙げた。
しかし、「開幕投手」に指名された池田美樹(園田学園女子大)がその裏、開幕戦特有の緊張からか、二死を簡単に取った後、突然コントロールを乱し、3連続四死球で満塁のピンチを招くと、6番打者にライト前ヒットを浴び、二者が還り、あっさり逆転を許してしまった。女子大学日本代表は海部栞菜、酒井彩好を投入し、継投策で防戦に努めたが、長打3本を含む7安打を浴び、5失点と本来のピッチングができないまま、ズルズルと失点を重ねてしまった。
打線も初回の鮮やかな先制攻撃の後は、逆転を許し、リードされて追いかける展開になったこともあり、焦りからか、「日本らしい」攻撃が見られず、つながりを欠いたまま、わずか3安打に封じられ、大事な初戦を1−5で落とした。
この日はダブルヘッダーとなり、続いて韓国と対戦。初戦を落としたことで、この試合も立ち上がりから重苦しい試合展開となり、先発・秋元菜穂(東京女子体育大)が3回まで無失点に抑えながら、打線がそれを援護できない。初回、2番・古澤春菜(園田学園女子大)がレフト前ヒットを放ったものの後続なく、2回表にも、この回先頭の5番・森田紀代美(山梨学院大)が二塁打を放ち、次打者の送りバントで三塁まで走者を進めながら無得点。3回表も先頭打者が敵失で出塁し、送りバントを決め、得点圏に走者を進めながら、「あと一本」が出ず、どうしても得点することができない。
迎えた4回表、敵失と2つの四球で二死満塁の好機をつかみ、1番・塚本智名(中京大)が満塁本塁打を放ち、重苦しい雰囲気を「一振り」で吹き飛ばし、一挙4点を先制した。
これで本来のリズムを取り戻した女子大学日本代表は、6回表にも、再び1番・塚本智名(中京大)がタイムリースリーベースを放ち、ダメ押しの1点を追加。
守っては、先発・秋元菜穂(東京女子体育大)が4回まで被安打3・無失点の力投で試合を作り、5回裏からは岡村奈々(日本体育大)を投入。すでに「U16日本代表」「U19日本代表」「日本代表」と各世代で「日本代表」として「世界の舞台」を経験してきた「実力派」が、貫禄のピッチングで韓国打線を抑え込み、3イニングをパーフェクトピッチング。韓国打線に最後まで得点を許さず、5−0の完封勝利を収め、今大会初勝利を挙げた。
大会2日目(6月10日/火)、女子大学日本代表は、予選リーグ最終戦で中国と対戦。試合は韓国戦に続き、先発に起用された秋元菜穂(東京女子体育大)が好投。中国打線をわずか1安打に抑え、4回まで無失点に封じ、5回裏から岡村奈々(日本体育大)にバトンタッチ。女子大学日本代表の「勝利の方程式」で中国打線に得点を許さず、試合は終盤を迎えた。
女子大学日本代表は6回表、相手守備の乱れから二死二塁のチャンスをつかみ、6番・森田紀代美(山梨学院大)がレフト前にタイムリー。二塁走者を迎え入れ、待望の先取点を挙げた。
1点のリードをもらった岡村奈々(日本体育大)は、6回裏、7回裏を一人の走者も許さぬパーフェクトピッチングで締めくくり、最少得点差を守り抜き、1−0の完封勝利。予選リーグ2位通過を決めた。
この日もダブルヘッダーとなり、決勝トーナメントの初戦は、予選リーグで唯一敗れた予選1位のチャイニーズタイペイ(台湾)との対戦となり、先攻の女子大学日本代表が1番・塚本智名(中京大)の先頭打者本塁打で先手を取ると、二死後、4番・山根すずか(東京女子体育大)、5番・村上ほのか(山梨学院大)、6番・森田紀代美(山梨学院大)の3連打で1点を追加。鮮やかな先制攻撃でこの回2点を先制した。
女子大学日本代表の先発・池田美樹(園田学園女子大)は、その立ち上がり、いきなり先頭打者に本塁打を浴びると、清水正ヘッドコーチは、この大会での「勝利の方程式」「必勝パターン」となっている岡村奈々(日本体育大)の投入を早めに決断。2回途中での継投策に出ると、岡村奈々(日本体育大)は毎回のように走者は出すものの、「粘り」のピッチングで追加点を許さない。
この力投に打線も応え、3回表には3番・古澤春菜(園田学園女子大)、4番・山根すずか(東京女子体育大)、5番・村上ほのか(山梨学院大)の3連打で1点を追加。4回表には、9番・鈴木茜(山梨学院大)のセンター前ヒット、相手守備の乱れなどで一死一・二塁のチャンスをつかみ、2番・田中瑠莉(園田学園女子大)がレフト前にタイムリー。4点目を奪い、徐々にリードを広げた。
最後は、今大会「抑えの切り札」とした大活躍の岡村奈々(日本体育大)がロングリリーフで最後を締め、4−1で勝利を収め、決勝進出を決めた。
大会最終日(6月11日/水)、まず女子大学日本代表に敗れ、敗者復活戦に回ったチャイニーズタイペイ(台湾)と、韓国を破り、勝ち上がってきた中国が対戦。中国が4−2で勝利を収め、決勝進出を決め、女子大学日本代表との対戦が決まった。
決勝を控え、女子大学日本代表が試合前のシートノックに入ると、豪雨に見舞われ、グラウンドコンディションが悪化。試合を行うことは不可能と判断され、決勝戦は中止。それまでの成績で女子大学日本代表の優勝が決定した。
清水正ヘッドコーチ(山梨学院大)は、「今大会でチームの指揮を執るにあたり、選手たちには言い続けてきたことは、どんな状況になっても、最後まで諦めず、戦おうということであった。選手たちは皆、大学を代表する選手たちであり、技術も力も十分に持っている。とにかく、最後まで諦めず、ひたむきに、粘り強く戦うことができれば、自ずと勝利をつかむことができると言い続けてきた。選手たちはそれを大会を通して実行に移し、一試合一試合力を残すことなく、全力で戦い抜いてくれた。それがこのチームの唯一無二の『テーマ』であり、直前合宿のときから、それを徹底し、やり抜き、やり遂げたことが、各国の代表チームを向こうに回しての優勝につながったと思う」と優勝の喜びを語った。また、「今回は天候が味方してくれる運もあった。大会直前の強化合宿は全国的な豪雨であったにもかかわらず、ウチ(山梨学院大)のグラウンドだけ雨が降らないという奇跡的な出来事からはじまり、今度はその雨が優勝を後押ししてくれた。合宿の時は、テストマッチの相手をしてくれたNECアクセステクニカも、靜甲も、『この雨で試合ができるわけがない』といって、山梨へ来ることさえ拒んでいたのに、本当にウチの大学のグラウンドだけ雨が避けて通り、ほぼ予定されたスケジュールを消化することができた。それでチームを仕上げることができ、今度はその雨が私たちの優勝を後押ししてくれるなんて……何か運命的なものを感じます」と、不思議なほど天候を味方につけた『幸運』に感謝し、「もちろん試合をやっていても勝つ自信はあった。初戦こそ落としたが、その試合を教訓にすぐに修正し、いろんな球種を見せ、使い、相手をかわそうとするような『逃げ』のピッチングではなく、通用する、使えると感じたボールを中心に『攻め』の配球に徹したことがよかったと思う。その結果、内野ゴロを打たせ、しっかりと守る日本の持ち味を生かす試合ができた。キャッチャーの森田紀代美(山梨学院大)が攻守に冴えていたし、若くして国際経験、代表経験豊富な岡村奈々(日本体育大)、3年連続でこの大会に出場している塚本智名(中京大)が投打の中心となり、チームを引っ張ってくれた。やはりそういう経験を積んでいる選手は違うな……と感じた。スタッフのチームワークもよく、いい雰囲気で大会を戦うことができた。とにかく今はホッとしているし、支えてくださった多くの皆さんに感謝したい」と、優勝の喜びを語った。
決勝戦が行われないままの優勝は、少々「拍子抜け」の感もあったが、それでも各国の「代表チーム」を相手に、勝ち獲ったこの優勝は、価値あるものといえるだろう。「日本代表」に次ぐカテゴリーである「大学日本代表」が、これだけの力を持っているという「事実」は心強い限りであり、「未来」に大きな希望を与えるものである。
世界選手権でも上位に入る中国、チャイニーズタイペイ(台湾)を破ったということは、世界でもトップレベルの力を有していることを証明している。「世界最高レベル」といわれる日本リーグで活躍する選手たちとともに、大学勢が競い合い、切磋琢磨していくことで、日本のソフトボールのレベルはさらに上がっていくことだろう。
2020年東京オリンピック競技復帰へ向けた期待が膨らむ中、もしそれが実現すれば、その「主役」となるのは、今回の東アジアカップを制した選手たちかもしれない……。
【第3回東アジアカップ 女子大学日本代表 全試合結果】
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
女子大学日本代表 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
チャイニーズタイペイ(台湾) |
2 |
0 |
1 |
1 |
0 |
1 |
x |
5 |
バッテリー:●池田美樹・海部栞菜・酒井彩好 − 森田紀代美 |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
女子大学日本代表 |
0 |
0 |
0 |
4 |
0 |
1 |
0 |
5 |
韓 国 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
バッテリー:〇秋元菜穂・岡村奈々 − 森田紀代美 |
長打:〔本塁打〕塚本智名〔三塁打〕塚本智名〔二塁打〕森田紀代美 |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
女子大学日本代表 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
1 |
中 国 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
バッテリー:秋元菜穂・〇岡村奈々 − 森田紀代美 |
※女子大学日本代表、予選リーグ2勝1敗の2位で決勝トーナメント進出 |
予選リーグ戦績表
チーム名 |
女子大学 日本代表 |
チャイニーズ タイペイ(台湾) |
中 国 |
韓 国 |
勝数 |
敗数 |
順位 |
女子大学日本代表 |
☆ |
●1 - 5 |
○1 - 0 |
○5 - 0 |
2 |
1 |
2 |
チャイニーズタイペイ |
○5 - 1 |
☆ |
○7 - 0 |
○5 - 2 |
3 |
0 |
1 |
中 国 |
●0 - 1 |
●0 - 7 |
☆ |
○6 - 2 |
1 |
2 |
3 |
韓 国 |
●0 - 5 |
●2 - 5 |
●2 - 6 |
☆ |
0 |
3 |
4 |
大会第2日/6月10日(火)
決勝トーナメント1位・2位戦 |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
女子大学日本代表 |
2 |
0 |
1 |
1 |
0 |
0 |
0 |
4 |
チャイニーズタイペイ(台湾) |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
1 |
バッテリー:池田美樹 ・○岡村奈々− 森田紀代美 |
長打:〔本塁打〕塚本智名〔二塁打〕鈴木茜 |
大会第3日/6月11日(水)
決勝トーナメント3位決定戦
中国 4−2 チャイニーズタイペイ(台湾) |
大会第3日/6月11日(水)
決勝トーナメント優勝決定戦
※雨天のため試合中止 それまでの成績により、女子大学日本代表優勝! |
決勝トーナメント
平成26年度 女子大学日本代表チーム
第3回東アジアカップ女子ソフトボール大会 選手団名簿 |
NO |
守備 |
氏名 |
支部 |
所属 |
1 |
投手 |
秋元 菜穂 |
東京 |
東京女子体育大学 |
2 |
〃 |
池田 美樹 |
兵庫 |
園田学園女子大学 |
3 |
〃 |
岡村 奈々 |
東京 |
日本体育大学 |
4 |
〃 |
海部 栞菜 |
岡山 |
環太平洋大学 |
5 |
〃 |
酒井 彩好 |
山梨 |
山梨学院大学 |
6 |
捕手 |
平川 穂波 |
愛知 |
中京大学 |
7 |
〃 |
森田 紀代美 |
山梨 |
山梨学院大学 |
8 |
内野手 |
榎本 千波 |
埼玉 |
城西大学 |
9 |
〃 |
亀井 愛梨 |
兵庫 |
園田学園女子大学 |
10 |
〃 |
古澤 春菜 |
兵庫 |
園田学園女子大学 |
11 |
〃 |
松畑 美希 |
東京 |
日本体育大学 |
12 |
〃 |
山根 すずか |
東京 |
東京女子体育大学 |
13 |
〃 |
山本 絵梨奈 |
東京 |
東京女子体育大学 |
14 |
外野手 |
鈴木 茜 |
山梨 |
山梨学院大学 |
15 |
〃 |
田中 瑠莉 |
兵庫 |
園田学園女子大学 |
16 |
〃 |
塚本 智名 |
愛知 |
中京大学 |
17 |
〃 |
村上 ほのか |
山梨 |
山梨学院大学 |
役員・コーチングスタッフ
NO |
役職 |
氏名 |
支部 |
所属 |
1 |
団長 |
高橋 伸次 |
群馬 |
(公財)日本ソフトボール協会 |
2 |
ヘッドコーチ |
清水 正 |
山梨 |
山梨学院大学 |
3 |
アシスタントコーチ |
長澤 淑恵 |
埼玉 |
城西大学 |
4 |
アシスタントコーチ 兼総務 |
伊藤 幸子 |
愛知 |
中京大学/トヨタ自動車 |
5 |
トレーナー |
末弘 美保 |
|
月ノ浦整骨院 |
6 |
帯同審判 |
千葉 敬徳 |
岩手 |
(公財)日本ソフトボール協会 |
7 |
通訳 |
高 萍 |
|
(公財)日本ソフトボール協会 |
|