2014.10.2
 

 

第17回アジア競技大会

日本、無敗のまま、「頂点」へ!
4大会連続の金メダル獲得!!

 






試合前、JOC・竹田恆和会長ら役員総出で激励に駆けつけてくれた


4大会連続の金メダルがかかった試合とあって、試合前バッテリーを集め、「チャイニーズタイペイ対策」を確認する宇津木麗華ヘッドコーチ



ゴールドメダルゲームの相手は三度目の対戦となるチャイニーズタイペイ



日本の先発はもちろん「エース」上野由岐子



2回裏、「キャプテン」大久保美紗が先制タイムリーを放つ!



3回裏、チャンスに強い坂元令奈のタイムリー内野安打で2点目



世界選手権連覇に続き、アジア大会4大会連続の金メダル獲得を
成し遂げた女子日本代表。宇津木麗華ヘッドコーチ歓喜の胴上げ



4大会連続の金メダルを手にした女子日本代表。
この「偉業」がオリンピック競技復帰へつながるか!?



最後は、各国の選手がそれぞれの「国」や「チーム」の枠組みを超え、 2020年東京五輪での野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰を訴えた

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 韓国・仁川で開催されている「第17回アジア競技大会」(オフィシャルサイトはこちら)ソフトボール競技も大会最終日( 大会スケジュールはこちら)を迎え、この日の第1試合で日本に敗れ、敗者復活戦に回ったチャイニーズタイペイ(台湾)と、3位・4位戦でフィリピンを3−0で破った中国が対戦。一足先にゴールドメダルゲーム(ファイナル/決勝)に駒を進め、待ち受ける日本への「挑戦権」をかけ、激突した。
 試合は、両チームの「意地と意地」がぶつかり合う、1点を争う好ゲームとなったが、チャイニーズタイペイが4−3で競り勝ち、ゴールドメダルゲーム進出を決めた。
 ゴールドメダルゲームで待ち受ける日本(代表メンバーはこちら)は、チャイニーズタイペイと今大会予選リーグを含め3度目の対戦。4大会連続の金メダル獲得をかけ、激突した。

・大会最終日(10月2日/木)
〈決勝トーナメント・ゴールドメダルゲーム〉
  1 2 3 4 5 6 7
チャイニーズタイペイ 0 0 0 0 0 0 0 0
日  本 0 1 3 0 0 2 x 6
日本:○上野由岐子(6回)・藤田 倭(1回)− 峰 幸代・佐藤みなみ

 アジア競技大会4大会連続の金メダル獲得をめざす日本は、「エース」上野由岐子を先発に立て、「必勝態勢」で臨んだ。
 その立ち上がり、一死から2番打者にライト前に運ばれ、走者を出したが、3番打者を三振に打ち取り、4番打者の三遊間深くを襲う打球は名手・西山麗が華麗なフィールディングで捌き、間一髪アウト。「世界一」の守備陣がまたしても輝きを放ち、連投の「エース」を盛り立てた。

 日本は初回、珍しく三者凡退に終わったものの、2回裏、二死走者なしから、6番・峰幸代、7番・市口侑果が粘って連続四球でしぶとくつなぎ、8番・大久保美紗がこれもフルカウントまで粘り、センター前へ先制のタイムリー。今大会、特に目立つ「二死走者なし」からの得点で日本が先手を取った。

 続く3回裏には、一死から2番・西山麗が粘り強くボールを見極め、四球を選ぶと、3番・河野美里がピッチャー強襲安打。4番・山田恵里の痛烈な当たりを一塁手がはじいたものの、一塁は間に合って、二死二・三塁。ここで「勝負どころ」で無類の強さを発揮する「いぶし銀」5番・坂元令奈が二遊間深くに転がし、内野安打。三塁走者がホームを踏み、1点を追加。なお二死一・三塁と攻め立てると、これも今大会「得意」としている一塁走者と三塁走者のダブルスチールで本塁を陥れ、この回2点目。さらに6番・峰幸代が四球でつなぎ、一・二塁とすると、7番・市口侑果がライト前にしぶとく落とし、この回3点目。4大会連続の金メダルをグッと引き寄せた。

 終盤6回裏には、「チームリーダー」4番・山田恵里のタイムリーと、「勝負どころ」は決して外さない5番・坂元令奈の連続タイムリーで2点を追加。6点差にリードを広げ、チャイニーズタイペイの息の根を止めた。

 守っては、「エース」上野由岐子が6回まで被安打2の力投で、先発の役割をしっかりと果たし、最後は「次世代のエース」として期待される藤田倭にバトンを託した。
 最終回、突然の豪雨による中断はあったものの、藤田倭が最後をしっかりと締めくくり、6−0の完封勝利。4大会連続の金メダル獲得を果たした。

 チームを率いた宇津木麗華ヘッドコーチは、「4大会連続の金メダル……は、世界選手権の『連覇』以上にプレッシャーがあった。オリンピック競技から外れてしまっている今、JOCとのつながりがあるのは、この大会だけだし、2020年オリンピック競技復帰をアピールするためにも、負けるわけにはいかなかった。4大会連続の金メダル獲得を果たすことができ、ホッとしています」と、想像以上に大きなプレッシャーの中で戦っていたことを打ち明けた。

 今大会を振り返ると、大会出発前の合宿から、宇津木麗華ヘッドコーチは神経質になり、ピリピリしている雰囲気があった。それだけ大きなプレッシャーに晒されていたということなのだろう。
 「何もそこまで言わなくても……」「そこまで警戒する相手じゃないでしょう」と、正直思うところもあったが、「勝って当然」「世界選手権連覇のチームがアジアで負けるわけがない」そんな安易な、ときとして「油断」を生んでしまうような雰囲気が、「一番の大敵」であることをわかっていたからこそ、選手たちに厳しく当たり、世界選手権から続く連戦に疲れた身体・心であることを承知で、緩ませることなく、あえてさらにムチを入れるかのように、チームを仕上げていった。

 その成果か、今大会では、「危ない試合」「厳しい試合」が一試合もなかった。もちろん、いざとなれば「上野由岐子」という「切り札」が切れるアドバンテージはあったにせよ、とにかく粘り強く、肉体的にも精神的にも「タフ」なチームだった。
 その象徴が、「二死走者なし」からの得点と「二死となってからのタイムリー」の多さだった。まず簡単にアウトにならない。追い込まれてもしぶとく粘り、打てなくても四球で塁へ出てつなぐ。送りバントは確実に決め、得点圏に走者を進め、二死となっても決して諦めることなく、基本に忠実に、センター前にはじき返すタイムリーが目立った。

 また、守備面でも堅実な守りが目を引いた。送りバントすら簡単にはさせない、バッテリーの配球も含めたバント守備。走者を背負っても、ダブルプレーでピンチを脱するケールも多かった。
 「エース」上野由岐子は、自分が登板しない試合では、若い投手陣にアドバイスを送り、自らが築いてきた「財産」を惜しげもなく伝授していた。
 「名手」として名高い西山麗が、誰よりも基本練習に時間を割き、その反復を決して怠らない姿勢に、「世界一」と評される守備陣の「真髄」と「源」を見た気がした。
 山田恵里、峰幸代を含めた「北京オリンピック金メダリスト」たちが、「日本代表」として「どうあるべきか」を自らの後姿で示し、「良き伝統」を継承しようとしている。
 中堅、若手もそれに続き、河野美里はコンスタントに活躍を続け、今では日本代表に「欠くことのできない選手」に成長しているし、坂元令奈はチャンスになれば「必ず」といっていいほど快打を連発。チームの「得点源」となっている。
 1年間のブランクを経て、「現役復帰」を果たした山本優の存在も大きい。日本代表の「切り込み隊長」として、1番最初に打席に入り、日本の先制攻撃の火付け役となり、チームに「勇気」を与え、士気を高めてくれた。
 レベルの高い外野手陣にあって、永吉理恵はレギュラーポジションに定着したといっていい活躍を見せ、「若き天才打者」長楓]未を控えに置くという「贅沢」な状況が生まれている。
 その長楓]未も同世代の「安打製造機」市口侑果が覚醒しつつあり、互いに競い合い、高め合いながら、「日本代表」への定着とレギュラーポジション獲得をめざしている。
 この多士済々、個性溢れるメンバーを「キャプテン」としてまとめている大久保美紗の存在も見逃せない。4大会連続の金メダル獲得のかかった、この試合での先制タイムリーでもわかる通り、坂元令奈同様、決して派手ではないが、「ここぞ!」というところで必ず働いてくれる。こういう「キャプテン」がいるからこそ、かくもしぶとくも粘り強いチームに仕上がったのだろう。

 投手陣でも、今大会では藤田倭が、アジアのレベルでは十分に通用することがわかった。ここからさらにアメリカ、カナダ、オーストラリアといったパワフルな打線を相手にしても同様の安定したピッチングができるかどうかが「次なる課題」となる。
 山根佐由里は、今大会では世界選手権のときのような「安定感」が見られなかった。アジアのチームは、パワーには欠ける反面、ねちっこく合わせてきたり、スラップを仕掛けてきたり、アメリカ、カナダ、オーストラリアといった「パワー」を前面に押し出してくるチームとは別の特徴がある。藤田倭とは逆に、アジアのようなタイプのチームに、どのようなピッチングが有効なのか、もう一度検証し、再確認する必要があるだろう。
 中野花菜は登板機会こそ少なかったものの、「得意」の中国戦のリリーフで「存在感」を見せた。まずはこのような形で、「この相手なら自分が」という「売り」を身につけることで「日本代表」における「存在価値」を見出していかなければならない。緩急を使ったピッチングには見るべきものがあるだけに、さらに「基本」となる球種に磨きをかける必要があるだろう。
 また、この投手陣とバッテリーを組む捕手陣も、峰幸代が攻守に相変わらずの安定感を見せたのはもちろんのこと、佐藤みなみも所属チームが同じ藤田倭の登板時に出場する機会が多かった。
 世界選手権では、打撃好調で大会途中からDPのレギュラーとして起用されることが多かったが、今大会では市口侑果が「絶好調」であったこともあり、「控え捕手」という役割を担うことになったが、小柄ながらパワフルな打撃は健在で、ブルペンでもリリーフに備える投手陣としっかりとコミュニケーションをとり、自らの役割をしっかりと果たしていた。

 目標であった「世界選手権連覇」と「アジア大会4大会連続の金メダル」を見事成し遂げた女子日本代表。それぞれが与えられた役割をしっかりと果たし、チームは「円熟」し、「完成」の域に達したといっても過言ではない。
 一試合として「危ない試合」「厳しい試合」はなく、圧倒的な強さで「頂点」に登り詰めた姿は、まさに「王者」の貫禄だった。

 今日、成し遂げた、この「偉業」が「オリンピック競技復帰」への「起爆剤」となり、大きなうねりを生み出してくれることを期待したい。

 彼女たちのプレーが、「オリンピック」という舞台で見られることを信じて……。

第17回アジア競技大会 決勝トーナメント・ゴールドメダルゲーム

チャイニーズタイペイ戦 スターティングラインアップ
打順 守備位置 選手名 所属 UN
1 3B 山本 優 ルネサスエレクトロニクス高崎 5
2 SS 西山 麗 日立 3
3 RF 河野美里 太陽誘電 9
4 CF 山田恵里 日立 11
5 2B 坂元令奈 トヨタ自動車 6
6 峰 幸代 ルネサスエレクトロニクス高崎 2
7 DP 市口侑果 ルネサスエレクトロニクス高崎 4
8 1B 大久保美紗 ルネサスエレクトロニクス高崎 10
9 LF 永吉理恵 デンソー 8
FP 上野由岐子 ルネサスエレクトロニクス高崎 17

※選手交代
5回裏 代打 永吉OUT→長楓]未(トヨタ自動車)IN
6回表 守備交代 代打・長楓]未がそのままレフトの守備に入る
6回裏 代打 峰OUT→佐藤みなみ(太陽誘電)IN
7回表 守備交代 代打・佐藤みなみがそのままキャッチャーの守備に入る
7回表 投手交代 上野OUT→藤田倭(太陽誘電)IN


決勝トーナメント