2020年東京オリンピックでの野球・ソフトボールの「復活」が現実味を帯びる中、公益財団法人日本ソフトボール協会は、従来の強化部門とは別に「オリンピック」に特化したシステムの構築を行い、このほど、その新たな選手強化プラン・システムによる女子日本代表選手(TOP、TAP−A/U24A、TAP−B/U24B)が発表された。
※各カテゴリーの選手名簿はこちら
●平成27年度 女子TOP日本代表チーム
(JAPAN CUP 2015出場選手名簿 はこちら)
●平成27年度 女子TAP−A(U24A)日本代表チーム
(USAワールドカップ・カナディアンオープン 派遣選手団名簿 はこちら)
●平成27年度 女子TAP−B(U24B)日本代表チーム
(第4回東アジアカップ 派遣選手団名簿 はこちら)
この選手強化の新たな枠組み、選手強化プラン・システム、また、具体的な代表選手決定のプロセス等について、公益財団法人日本ソフトボール協会・三宅豊選手強化本部長、矢端信介副本部長にお話を伺った。
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──まず新たな選手強化プランの作成、その目的・意図についてご説明ください。
三宅豊選手強化本部長(以下、三宅) 2020年の東京オリンピックにおいて、「野球・ソフトボール」が復活するのでは……という気運が高まっていることはご存じの通りだと思います。
ただ、これが正式に決定するのは来年。それを待っていたのでは、選手強化は間に合わない。そこで、私たち選手強化本部会では、「2020年東京オリンピックで野球・ソフトボールの復活が必ず実現する」ということを大前提とし、矢端副本部長を中心に、2020年東京オリンピックでの金メダル獲得をめざす、選手強化のプラン・システムの作成を急がせました。
矢端信介選手強化副本部長(以下、矢端) 2020年東京オリンピックで「野球・ソフトボール」が復活することを前提とし、そこから逆算し、オリンピックへ向けた選手強化の5カ年計画を策定しました。2020年東京オリンピックで金メダルを獲得するために、従来の選手強化を根本から見直し、より効率的に、より合理的に、金メダルへの「最短距離」を突っ走っていけるよう、新たな枠組みでの選手強化プラン・システムを考案しました。
──具体的には???
矢端 オリンピックに特化した3つのタスクフォース(TF)の新設を行いました。一つ目は「意思決定のスピード化=SCOTT」、二つ目は、ターゲットエイジ選出のため、「客観性を重視した選手選考=COS」、三つ目は「国際競技力に視点を置いた情報戦略機関の設置=IST」です。
──「SCOTT」「COS」とは???
三宅 「SCOTT」(Special Committee Twenty-Twenty/特別委員会2020)は、先ほど矢端副本部長が説明した「意思決定のスピードアップ」を実現するための決定権を持つ新たな機関です。メンバーは、日本協会の煖エ清生専務理事、寺村健人理事、横田博之事務局長、そして、選手強化本部会から私、矢端副本部長、女子強化委員・シニア担当の木田京子氏を加えた6名で構成されており、オリンピックに直接関連するような重要案件以外の強化事案に関しては、すぐにでも実行に移せるようにしました。
矢端 これに対し、「COS」(Conference Of the Selector/選考委員会議)は、“広く情報を収集し、合議により推薦選手を絞り込んでいく”をコンセプトとして設置したセクションです。客観性を重視し、日本のソフトボール関係者の総力を結集し、まさに「ALL JAPAN」体制で「最強チーム」を編成するための機関です。
メンバーは、私が座長を務め、「世界最高峰のリーグ」と内外から高く評価され、世界最高の競技レベルを誇る日本女子ソフトボールリーグ1部12チームの監督は、すべて委員となっていただきました。これに、大学の代表として、大阪国際大の久保田豊司監督、山梨学院大の清水正監督の2名を加え、さらにオリンピアンの伊藤幸子氏(2008年北京オリンピック金メダリスト)、増淵まり子氏(2000年シドニーオリンピック銀メダリスト)にも加わっていただき、「SCOTT」のメンバーにもなっている寺村健人理事を加えた18名で構成しています。
「COS」の役割は、文字通り「SCOTT」の諮問的機関と考えて下さい。代表チームのヘッドコーチ候補者や有望選手の情報を広く収集し、ヘッドコーチと候補選手のリスト作りが主な役割です。
「IST」(Intelligence Strategy-Team)は、医科学サポート、情報収集分析、医科学的分析等を行う「情報戦略チーム」であり、今、その組織編成を急いでいます。
──今回選出されたTOP、TAP−A、TAP−Bについてもご説明ください。
三宅 TOPは、ターゲットエイジ(24歳以下)とオーバーエイジ(25歳以上)を含めた「日本代表」チームであり、派遣ごとに代表選手の見直しを行い、互いに切磋琢磨し、「競争原理」の中に身を置くことで、より強力な代表チームを作っていければ……と考えております。
矢端 TAP−A、TAP−Bについては、U24(24歳以下)世代を中心としたチームでTarget Age Project(2020年に中心選手となり得る選手群の発掘・育成・強化を行うプロジェクト)の略称です。
TOPチームと兼任となる選手もおりますが、TAP−Aは2020年をターゲットとした場合、より重点的に強化を行っていくべき選手たちであり、TAP−Bはそれに続く選手たちであると考えていただければと思います。現時点での「完成度」より、「潜在能力」や「将来性」に期待している選手たちです。
──選考の手順や経緯についても説明をお願いします。
矢端 まず「COS」の委員全員に、ヘッドコーチ候補者、有望選手(40名程度)の推薦リストを作成していただき、第1回COS (3月16日/月に開催)で提出してもらいました。ヘッドコーチ候補者は計13名(最終選考はSCOTT)、有望選手は延べ450名(重複者を整理し、最終的には145名)ほどになりました。会議では各COS委員が投手、捕手、内外野手のワーキンググループに分かれ、活発な議論の中で最終的に48名まで絞り込み、候補選手としました。48名の候補選手は4月9日(木)〜11日(土)の3日間、静岡県伊豆市で最終選考会を行い、TAP−A、TAP−B各17名を選出し、翌12日(日)の常務理事会で承認を得て、参加選手の皆さんには、その所属先宛てに文書で選考結果を通達しました。また、TOPチームの編成については、「COS」によって候補者が出され、最終的に「SCOTT」で決定したTOP、TAP−A、TAP−Bのヘッドコーチの合議によるピックアップを基本とし、4月28日(木)のHC−M(Head Coach Meeting/ヘッドコーチ会議)で宇津木麗華ヘッドコーチ(TOP)、福田五志ヘッドコーチ(TAP−A)、濱中武直ヘッドコーチ(TAP−B)の三者で17名のTOPチーム推薦リストを作成し、「SCOTT」で選考を行いました。
2015年度の強化事業としては、TOPチームは8月7日(金)〜9日(日)、岐阜県大垣市で開催される「JAPAN CUP 2015」に出場し、アメリカ、オーストラリア、チャイニーズ・タイペイと対戦することになります。
TAP−Aについては、6月29日(月)〜7月5日(日)の日程で「USAワールドカップ」、7月7日(火)〜13日(月)の日程で「カナディアンオープン」の両大会に出場。TAP−Bについては、6月25日(木)〜28日(日)の日程で東アジアカップに出場し、選手強化を図っていくことになります。
三宅 これらの遠征には、「チームリーダー」を帯同させます。「USAワールドカップ」「カナディアンオープン」には矢端副本部長を、「東アジアカップ」には強化委員であり、「SCOTT」のメンバーでもある木田京子氏の派遣・帯同を考えております。
これは、強化に携わる者が、実際に「世界のレベル」をその目で見て、肌で感じて、今後の日本のソフトボールの向かうべき方向性、めざすべき理想像を改めて考える「契機」としてもらうと同時に、「世界の舞台」で戦うには、現状で何が足りないか、何を強化すべきか、といった具体的な対策を見出してほしい、という狙いを持ったものです。また、それぞれの大会における代表チームの戦いを、総括・分析・評価してもらうための派遣でもあります。それらの総括・分析・評価を経た上で、11月に開催が予定されている「アジア女子選手権大会」では、TOPチームを再編成することを考えておりますし、来年2月のオーストラリア遠征についても、派遣チームの再編成を行う予定です。
選手だけでなく、ヘッドコーチについても同様で、宇津木麗華、福田五志、濱中武直3名のヘッドコーチの任期は2年間あり、前述の大会にはそれぞれTOP、TAP−A、TAP−Bのヘッドコーチとして大会に派遣することが決定しておりますが、大会の結果、選手起用、采配、技術指導、戦術面等を総括・分析・評価し、それ以降の大会については、それぞれの担当や役割を入れ替えていくこともあり得ます。その中で、「これがベスト」という人選を行っていきたいというのが選手強化本部会の考えであり、さらに言えば、TOPチームの選手17名の推薦リストを作成する際にも、3人の「合議制」としたように、互いが刺激し合い、競い合う中にあっても、最後は「日本のソフトボールのために」力を合わせ、協力し、それこそ「ALL JAPAN体制」で日本のソフトボールの叡智を結集し、総力を挙げて、目的達成に向けて邁進してほしいという思いを持っております。
また、現時点では、この3名が「ヘッドコーチ候補者」に挙がっておりますが、この他にも目覚ましい結果・成績を残すような指導者が出てくるようなことがあれば、日本リーグの監督に限らず、ここで説明した手順を経て、新たにヘッドコーチ候補者となり得る人材が出てくる可能性もあります。
──新たな枠組みでの強化が実りあるものとなることを期待しております。
三宅 強化のターゲットは代表チームだけでなく、それに続く世代であるU19(19歳以下)、NTS(中学生対象)の強化も考えなくてはなりません。
矢端 それについても「新たなプロジェクト」が進行中ですので、その具体的な内容につきましては、改めて機会を設け、今回のような形でお知らせできればと考えております。
──本日は長時間にわたり、ありがとうございました。
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