7月1日(水)、アメリカ・アーバインで開催されている「USAワールドカップ(World Cup of Softball 10)」(※大会オフィシャルサイトはこちら、※大会スケジュールはこちら)は大会3日目を迎えた。
前日、ダブルヘッダーだった女子日本代表TAP−A(U24A)は、この日は試合がなく、翌2日(木)に対戦の控えた「宿敵」アメリカ戦に備え、福田五志ヘッドコーチの指揮の下、入念に戦術を確認。アメリカ戦の「カギ」を握る投手陣の調整にも余念がなく、秋元理紗コーチが投手陣に熱心にアドバイスを送る姿も見られた。
アメリカはすでにここまで4試合を終え、無傷の4連勝。初戦のメキシコ戦で4−0の完封勝利を収めると、続くプエルトリコ戦に14−0、アルゼンチン戦に10−0と大勝。4戦目のU19アメリカ代表との対戦で3−2と接戦を演じたが、これも序盤で3点をリードした試合展開でのもの。来月に「第11回世界女子ジュニア選手権大会」に出場するジュニアチームに配慮した(大会へ向け、自信をつけさせる狙い!?)可能性もあり、この試合結果・内容を額面通りに受け取るわけにはいかないだろう(もちろん、今大会に出場しているU19アメリカ代表が「非常にレベルが高い」との評判があるのは事実だが)。
一方、TAP−Aも初戦のベネズエラ戦で10−0の5回コールド勝ちを収めると、続くカナダ戦は「エース」藤田倭の投げては2失点の完投勝利、打っては決勝ホームランと投打にわたって活躍。まさに「驚異の二刀流」本領発揮の働きで3−2と競り勝つと、メキシコにも10−3の6回コールド勝ち。こちらも無傷の3連勝と順調な足どりを刻んでいる。
大会は、両チームの「マッチレース」「一騎打ち」の様相を呈してきたが、ここまでのTAP−Aの3試合の戦いぶりと、「宿敵」アメリカを含む「世界の情勢」について、今大会の「チームリーダー」を務める公益財団法人日本ソフトボール協会の理事であり、選手強化副本部長でもある矢端信介氏にお話を伺った。
★★★
――明日、対戦を控え、日本と優勝を争うと見られるアメリカチームの印象はいかがでしょうか?
矢端信介選手強化副本部長(以下、矢端) 投手陣は、今シーズン来日し、日本リーグ・デンソーでプレーしているジャクリン・トレイナがエース格で、すべての投手が105km/h〜110km/hの球速を計測しています。
ただ、それ以上に、打線、攻撃陣に目を奪われました。これまでの4試合では、1番打者から6番打者までが「不動のオーダー」で、1番打者〜3番打者は左の好打者を揃えています。特長はその「足の速さ」にあり、パワーがありながらも、スラップを使いこなし、機動力を発揮できる上位打線はまさに「驚異」であり、クリーンナップの長打力・破壊力は相変わらず凄まじいものがあります。従来のパワフルさにスピードが加わった「新生・アメリカチーム」は「最大の難敵」であることは間違いありません。
――そのアメリカの代表チームと3−2というクロスゲームを演じたU19代表チームはどのように見られましたか。
矢端 まさに「アメリカチームの小型版」といった印象で、すべてに「規格外」のタレントを揃えています。背番号15のJohanna Grauerは、100q/h前半のジャイロ系のファストボールを中心に組み立て、90q/h後半のドロップ、80q/h後半のチェンジドロップが持ち球でコントロールの良いピッチャーです。
背番号42のZoe Conleyは、100q/h超のライズとドロップを投げ分け、チェンジアップは60q/h台でショートイニングのリリーフか、ワンポイントで使われそうなタイプです。
背番号33のKelly Barnhillが「エース」格のピッチャーと予想され、100q/h後半のローライズを中心に組み立て、ドロップはピールドロップでMAX114q/hを計測しました。ただ、球種の割合的にはドロップは少なく、ライズ中心の組み立てでしたが、将来有望な選手で、いずれ日本の「強敵」となりそうな存在です。打線は下位打線の2人を除き、すべて左打者を揃え、代表チームに負けず劣らずのパワーありスピードありのタレント揃いで、末恐ろしいチームだという印象を強くしました。
――ベネズエラ、プエルトリコ、メキシコといった中南米勢についての印象は??
矢端 投手力は確実にレベルアップをしています。ほとんどのチームのピッチャーが最低でも105q/h程度の球速を記録しています。打撃陣は相変わらずパワフルですが雑な面があり、守備も粗さが目立ちます。その中では、メキシコがバランス良く鍛えられている印象でした。アメリカ、カナダに次いで「強さ」を感じたチームです。投手力は100q/h〜105km/hの球速のライズ系投手がエース格で、守備も比較的安定していました。打撃はクラウチングスタイルからのプルヒッターを上位に揃え、一度火が点けば手におえない爆発力を秘めているチームです。
――国際大会、上位進出の常連・カナダについては?
矢端 豊富な投手陣とパワフルな打撃陣はアメリカに次ぐものがあります。ただ、ディフェンスに難があり、そのあたりにつけ込むスキがあります。実際、日本との対戦でも守備のミスが得点に絡んでしまっていました。
――では最後にTAP−Aについてお願いします。
矢端 5年後、2020年東京オリンピックでの野球・ソフトボールの「復活」、正式種目入りが実現することを前提に、その「ターゲットエイジ」の選手を集めただけあって、将来有望なタレントが揃っています。「エース」藤田倭を筆頭に、平原かすみ、濱村ゆかりは105q/h〜110km/hの球速を記録していますが、その球威とキレがアメリカ打線にどこまで通じるか、期待を持って見守りたいと思っています。
守備は相変わらず、「世界一」の堅実さと華麗さを誇っています。その一方で、投手陣、守備陣に比べると打撃陣の強化が今後の課題かもしれません。アメリカ打線に比べると、現時点では、その破壊力という点ではどうしても見劣りする感があるのは事実です。ただ、「日本らしい」小技や機動力も駆使した攻撃をうまく絡めていくことができれば、アメリカ打線とはまた一味違った「どこからでも得点出来る切れ目のない打線」になり、相手を圧倒するような迫力はなくても、「気がつくと得点されている」「気がつけば負けていた」といったソツのない攻撃のできるチームになるのでは……と期待しています。
とにかく高いモチベーションを持って、明日のアメリカ戦に臨み、自らの持つ力のすべてを出し切って、世界における自分の立ち位置を確認し、「世界の舞台」で自分に何ができるのか、何ができたのか、あるいは何が足りないのか、そういったことを自らの目で見て、肌で感じて、「5年後」へ向けた「成長の糧」としてほしいと思っています。
――本日は貴重なお話をありがとうございました。明日のアメリカ戦、期待しています。
◇USAワールドカップ 出場選手・スタッフ
NO |
守備 |
氏名 |
支部 |
所属 |
1 |
投手 |
近藤 光 |
愛知 |
デンソー |
2 |
〃 |
中野 花菜 |
群馬 |
ビックカメラ高崎 |
3 |
〃 |
濱村 ゆかり |
群馬 |
ビックカメラ高崎 |
4 |
〃 |
平原 かすみ |
愛知 |
トヨタ自動車 |
5 |
〃 |
藤田 倭 |
群馬 |
太陽誘電 |
6 |
捕手 |
我妻 悠香 |
群馬 |
ビックカメラ高崎 |
7 |
〃 |
山澤 葵 |
愛知 |
デンソー |
8 |
内野手 |
市口 侑果 |
群馬 |
ビックカメラ高崎 |
9 |
〃 |
古澤 春菜 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
10 |
〃 |
丸本 里佳 |
群馬 |
太陽誘電 |
11 |
〃 |
山下 りら |
愛知 |
トヨタ自動車 |
12 |
〃 |
山本 絵梨奈 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
13 |
外野手 |
江口 未来子 |
愛知 |
デンソー |
14 |
〃 |
大工谷 真波 |
群馬 |
ビックカメラ高崎 |
15 |
〃 |
塚本 智名 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
16 |
〃 |
長普@望未 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
17 |
〃 |
山崎 早紀 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
コーチングスタッフ
No. |
役職 |
氏名 |
支部 |
所属名 |
1 |
チームリーダー |
矢端 信介 |
北海道 |
(公財)日本ソフトボール協会 |
2 |
ヘッドコーチ |
福田 五志 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
3 |
アシスタントコーチ |
森澤 隆行 |
愛知 |
デンソー |
4 |
アシスタントコーチ |
秋元 理紗 |
愛媛 |
伊予銀行 |
5 |
トレーナー |
井上 章平 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
6 |
サポートスタッフ
(マネージャー) |
伊藤 幸子 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
7 |
帯同審判 |
太田 正夫 |
埼玉 |
(公財)日本ソフトボール協会 |
8 |
帯同審判 |
雑賀 大策 |
三重 |
(公財)日本ソフトボール協会 |
9 |
通訳 |
生原 都 |
愛知 |
トヨタ自動車 |
|