2017.2.25
 

 

女子TOP日本代表
バッテリー強化合宿を実施!
投手力の強化に励む!!




野手組が帰国した後、「バッテリー強化合宿」を実施!



ピッチャー出身であるルーシー・カサレスコーチを中心に
投げ込みを行い、「新たな変化球」の習得をめざした



元・オーストラリア代表で、SGホールディングスでコーチを務めるメラニー・ローチ氏を「臨時コーチ」として招聘し、指導を仰いだ



矢端選手強化副部長自らノックバットを握り、選手を鍛え上げた



人数は少なくても創意工夫を凝らし、効果的・効率的練習を行った



長期にわたる過酷なオーストラリア合宿を打ち上げた選手たち。
その表情には確かな手応えと自らの成長への自信が感じられた



女子TOP日本代表「バッテリー強化合宿」

 去る2月9日(木)〜12日(日)、オーストラリア・ブラックタウンで開催された「2017 International Down Under Series」で優勝を飾った女子TOP日本代表は、野手組が帰国の途につき、投手・捕手のバッテリー組は現地に残り、そのまま「バッテリー強化合宿」を行った。

 この「バッテリー強化合宿」では、女子TOP日本代表のアシスタントコーチであり、投手出身のルーシー・カサレス氏が中心となり、現在、女子リーグ1部・SGホールディングス ギャラクシースターズでコーチを務め、「現役時代」はオーストラリア代表のピッチャーとして1996年のアトランタ、2000年のシドニー、2004年のアテネ、2008年の北京と4回のオリンピック出場経験があり、銀メダル1回、銅メダル3回に輝いた経歴を持つメラニー・ローチ氏を「臨時コーチ」に招聘。日本を「世界の頂点」へと導いてくれた「エース」上野由岐子に続くピッチャーの育成・強化という「大きな課題」に取り組んだ。

 合宿では、基本的に午前中は投げ込み。ルーシー・カサレスコーチ、メラニー・ローチ臨時コーチの指導のもと、現在有する球種に磨きをかけるとともに、新たな変化球の習得にもチャレンジ。投手陣の「底上げ」をめざし、連日投げ込みが続いた。

 午後は、ノック、バッティング、トレーニングと少人数であることを逆手にとり、効率的・効果的な練習メニューが組まれ、徹底的に鍛え上げた。

 投げ込み、ピッチング練習では、ルーシー・カサレスコーチ、メラニー・ローチ臨時コーチがつきっきりで投手陣を指導。同じ変化球の指導一つとっても、その教え方やちょっとした「コツ」の伝え方にも特色・差異があり、あるピッチャーは「ルーシー・カサレス式」でグンと力をつけたかと思えば、また他のピッチャーは「メラニー・ローチ式」で目覚ましい成長を遂げる等、複数の指導者が指導してくれる「メリット」を最大限に活かし、合宿前と合宿後では、大きな「変化」を感じさせてくれると同時に、確かな「成長」が見て取れる合宿となった。

 また、今回の「バッテリー強化合宿」に「臨時コーチ」として招聘されたメラニー・ローチ氏は、2000年のシドニーオリンピックでは、「自国開催」のオリンピックで「金メダルの有力候補」として出場した経験を持っている。

 当時、オーストラリアは1998年の「第9回世界女子選手権大会」で、1996年のアトランタオリンピック金メダル、世界選手権では1986年の「第6回世界女子選手権大会」から3連覇を継続中、この大会で「4連覇」を狙う「王者」アメリカに肉薄。決勝トーナメントでは延長12回に及ぶ死闘の末、アメリカを破って決勝進出。決勝では、初回にホームランで1点を先制され、豪雨中断で日付をまたいで深夜に再開されるという、今でも語り草となっている「2日がかりの決勝戦」に0−1で敗れ、優勝は逃したものの、2000年のシドニーオリンピックは「自国開催」ということもあり、「アメリカの牙城を崩すとすればオーストラリアしかない!」と、一躍「優勝候補」に挙げられ、「金メダル獲得」の機運が高まりを見せていた。

 結果的にオーストラリアは、オリンピック「本番」で、予選リーグではそのアメリカを破り、2位で決勝トーナメント進出。決勝トーナメントでは、セミファイナルで日本と対戦し、当時はまだ「現役選手」で日本の「主砲」として君臨していた現・女子TOP日本代表の宇津木麗華ヘッドコーチに決勝点となるソロホームランを浴び、増淵まり子(当時・東京女子体育大、現・淑徳大学女子ソフトボール部監督)の「直角に浮き上がる」とまで形容されたライズボールに手も足も出ず、10三振を奪われ、わずか1安打と打線が沈黙。0−1の完封負けを喫し、日本に決勝進出を阻まれ、銅メダルに終わっている。

 そのメラニー・ローチ氏が、自らの「夢」と「希望」を打ち砕いた対戦相手である日本の「臨時コーチ」に招聘され、指導に当たってくれているという「現実」。そして、日本が当時のオーストラリアと同じように2020年に「自国開催」のオリンピックを迎えるというこの現状を考えると、何か奇妙な「因縁」めいた「縁」を感じざると得ない。

 そして……「自国開催」のオリンピックで、その「国」を代表として戦い、さらには「金メダル獲得」を期待されることの意味、期待が高まれば高まるほど大きくなるプレッシャー……。これから2020年東京オリンピックへ向けて、日本が辿って行くであろう道を、すでに「実体験」として経験しているメラニー・ローチ氏の指導は、その場に立った者にしかわからない、「自国開催」のオリンピックで「金メダル獲得」を至上命令として戦った者だけが有する経験に裏打ちされた「重み」と「説得力」に満ちており、選手たちにとっては、それこそ他の何ものにも代え難い「貴重な時間」となったことは間違いない。

 技術的な指導はもちろん、「自国開催」のオリンピックで「金メダルしかない!」という、想像を絶する緊張とプレッシャーの中で戦った「経験者」から、直々にオリンピックへ向けた「メンタル」面での「準備」、それだけの舞台で戦うという「覚悟」を伝授してもらう機会を得ただけでも、今回の合宿の意味があったといえるのではないだろうか。

 また、ノックでは、矢端信介選手強化副本部長自らがノッカーを買って出て、投手陣を、あるいは捕手陣を、右へ左へと走らせ、鍛え抜く場面も見られた。容赦なく浴びせられるノックの雨に、へこたれることなく挑む選手たちの姿は頼もしくさえあった。

 合宿後半は、スコールのような雨に見舞われることも多かったが、そうとなれば、室内でしっかりとトレーニング。一瞬足りとも時間をムダにすることはできないと、創意工夫を凝らした練習メニューが組まれた。

 今回の「バッテリー強化合宿」では、野手組が帰国し、残ったメンバーの中では「最年長」となる佐藤みなみ選手のリーダーシップも目を引いた。上野由岐子選手や山田恵里選手のような「レジェンド」感や「カリスマ性」こそないものの、選手たちの「お姉さん」的な存在としてチームをまとめ、引っ張っていく姿が印象に残った。

 もちろん、「エース」となり、「主砲」となって、華々しい活躍をすることを誰もが夢見るだろうが、「チーム」はそれだけで成り立っているわけではない。自分自身が「チーム」の中で何ができ、何をしなければならないか……それをいち早く理解し、チームにおける自分の「立ち位置」を見つけ、チームの中で与えられた「役割」を果たすことができる、そんな選手でなければ、「代表」では生き残れない。

 自らの所属チームでは「主役」を張る選手であっても、「代表」では「脇役」に回ることもある。出場機会に恵まれないことすら起こり得る。それが「日本代表」というチームであり、そんな「現実」に直面したとき、どんな行動ができるか。そこが「カギ」となるのである。

 佐藤みなみ選手は、2007年の「第8回世界女子ジュニア選手権大会」でU19日本代表に選出され、「世界の舞台」にデビューし、準優勝。2014年の「第14回世界女子選手権大会」では、「世界一」となり、同年の仁川アジア大会で金メダルを獲得した「実績」も持っている。ただ……代表においては、常にレギュラーポジションを与えられていたわけではない。「控え捕手」という立場を余儀なくされたこともあれば、DPや代打で出場することもあった。にもかかわらず、「代表」に呼ばれ続け、「欠くことのできない戦力」であり続けている。
 誰に言われたわけでもなく、自ら進んで先頭に立ち、黙々と果たすべく役割を全うする。「言葉」ではなく、「行動」で示し、若い選手や代表経験の少ない選手がチームに打ち解け、力を発揮しやすいような雰囲気・環境をそれとなく整えていく。
 そして……そんな「姿勢」がしっかりと根付き、次の世代へと受け継がれて、「伝統」となっていく。佐藤みなみ選手に限らず、こういうことを「自然に」できる選手がいるからこそ、チームにこういう心配りと気遣いができる存在がいるからこそ、日本のソフトボールは「強く」あり続け、また、国際大会において、どのチームよりも多くの歓声と拍手をもって迎えられるチームになっているのだと、改めて思う。

 2月24日(金)早朝、選手たちは元気に帰国。3月10日(金)に再び招集され、千葉県鴨川市で「第4次国内強化合宿」に臨むことになる。



平成28年度第2次海外強化合宿-バッテリー強化合宿(豪州・シドニー)
選手団名簿
選手
No. 守備 UN 氏名 支部 所属名
1 投手 11 泉 礼花 神奈川 日立
2 33 岡村 奈々 東京 日本体育大学
3 39 海部 栞菜 愛知 豊田自動織機
4 22 勝股 美咲 岐阜 多治見西高等学校
5 18 田内 愛絵里 愛知 トヨタ自動車
6 13 中野 花菜 群馬 ビックカメラ高崎
7 23 濱村 ゆかり 群馬 ビックカメラ高崎
8 捕手 25 我妻 悠香 群馬 ビックカメラ高崎
9 12 切石 結女 千葉 千葉経済大学附属高等学校
10 24 清原 奈侑 神奈川 日立
11 4 佐藤 みなみ 群馬 太陽誘電

コーチングスタッフ
No. 役職 氏名 支部 所属名
1 チームリーダー 矢端 信介   (公財)日本ソフトボール協会
2 ヘッドコーチ 宇津木 麗華 群馬 ビックカメラ高崎
3 アシスタントコーチ ルーシー・カサレス 愛知 豊田自動織機
4 トレーナー 志村 昌彦 群馬 ビックカメラ高崎
5 トレーナー 村上 純一 愛知 デンソー
6 マネージャー 柳川 直子 群馬 ビックカメラ高崎

サポートスタッフ
No. 役職 氏名 支部 所属名
1 臨時コーチ メラニー・ローチ   SGホールディングス
2 総務 山内 亜美   (公財)日本ソフトボール協会