去る1月21日(月)〜26日(土)、公益財団法人日本ソフトボール協会は、NTS優秀選手17名による台湾遠征を実施。昨年11月15日(木)〜18日(日)の4日間、静岡県伊豆市において開催された「平成24年度全国女子ジュニア育成中央研修会」で選出された選手たちで選抜チームを編成し、南投・埔里で開催された「2013南投女子ジュニア招待試合」に参加した。
このNTS優秀選手による台湾遠征は、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)が策定した「JOCゴールドプラン(国際競技力向上戦略)に基づく施策「一貫指導システム(競技者育成プログラム)」の一環として「優秀選手の発掘・育成」を目的として実施されている「全国女子ジュニア育成中央研修会」に、さらに具体的な「目標」を持たせ、ジュニア世代の選手たちに「夢」と「モチベーション」を与えようとの趣旨のもと、一昨年から実施され、今回で3回目の実施となる。
昨年11月15日(木)〜18日(日)、静岡県伊豆市で開催された「全国女子ジュニア育成中央研修会」には、全国9ブロック(北海道、東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)から各6名ずつ選抜された54名に、NTS強化委員推薦の6名を加えた計60名の選手が参加。初日の体力測定、2日目、バットスイング計測や実際にボール・バットを使っての実技研修。3日目、4日目は、実戦形式での研修を行い、厳しい選考の結果、優秀選手17名が選出された。
この研修会では、増淵まり子(元日本代表)、上野由岐子投手(ルネサスエレクトロニクス高崎)、西村信紀氏(IPU環太平洋大監督/公益財団法人日本ソフトボール協会選手強化本部会・男子強化委員長、同技術副委員長/男子日本代表ヘッドコーチ)らが、講師として参加。「世界最高峰」の技術をその目で確かめる機会を得ると同時に、「憧れの選手」たちと触れ合うひとときもプログラムに採り入れられており、グラウンド上での研修だけでなく、ソフトボール選手として必要な「知識」や「教養」を身につけるための講義も実施。また、トップアスリートをめさずための栄養補給、コンディショニング、トレーニングの基礎知識を学習した。優秀選手を選出するだけではなく、「未来の日本代表」を育成するための様々な施策がとられ、継続されている。
今回のNTS優秀選手台湾遠征は、一昨年、昨年に引き続き、南投・埔里で開催された「2013南投女子ジュニア招待試合」に参加。1月22日(火)〜24日(木)の3日間、台湾を代表する強豪中学・埔里國中、五福國中、今回初参加となる中国・南京市江寧中と対戦。3カ国4チームで、シングルラウンドロビン(1回戦総当たり)方式の予選リーグを行い、日本は五福國中に6−2、埔里國中に8−2、南京市江寧中に10−0(4回コールド)と快調に3連勝。予選リーグを3戦全勝の1位で通過。決勝トーナメントに駒を進めた。
ページシステム(敗者復活戦を含むトーナメント)で実施された決勝トーナメントでは、まず予選リーグ2位の五福國中と対戦。8−1で大勝し、一足先に決勝進出を決めると、決勝では南京市江寧中、日本に敗れた五福國中を連破した予選リーグ3位の埔里國中と対戦。6−3で快勝し、5戦全勝と無敗のまま、「完全優勝」を飾った。
今回の遠征を終え、奥村紘史団長(公益財団法人日本ソフトボール協会理事・技術委員長)は、「台湾に出発する前日(20日/日)、岸和田市立岸城中で事前に2試合行うことができ、選手のコンディションや健康状態を確認できたことが大きかった。また、前回に引き続き、松田和広コーチ(延岡市立南中)からの日本代表とは?や国際試合(海外遠征)参加への心構え等について講話を聞くことによって、選手はもちろん、スタッフも、しっかりとした意識・心構えで遠征に臨むことができ、この台湾遠征をより有意義なものとすることができた」また、前回の反省で出された「可能であれば、出発前に練習・合宿等を実施してもらいたい。」というスタッフからの要望も反映され、回を重ねるごとに充実した、中学生台湾遠征が出来ている、と語った。
今回の遠征に先立って、まず渡辺祐司ヘッドコーチ(京都市立樫原中)から、代表選手としての心構え・あるべき姿・備えておくべき必要条件について、選手個々へ再三にわたって事前指導が行われ、国際大会や海外遠征における時差への対応、食事等を含む生活習慣の対応、あるいは遠征へ持っていく荷物についての注意等がきめ細やかに指示されていた。
また、前述の松田和広コーチの講話では、ここに集う選手たちは、「これからのスポーツ界・ソフトボール界をリードしていくべきエリート選手である」ということ、また「JAPAN」「日の丸」を背負うことの意味・責任の重さが示唆され、「日本代表」として自分自身を高める努力が必要であり、心を鍛え、スキルを高めるために、自己を律し、自己管理、自己コントロールできる選手でなければならないことが強調され、求められていた。
今回も、「完全優勝」を飾った日本だが、前回、前々回ともに5試合中4試合がコールド勝ちであったのに比べると、今回コールド勝ちは2試合のみと、台湾チームが着実に力をつけ、レベルアップしていることが感じられる。また、今回は台湾だけでなく、中国からの参加もあり、アジアに「交流の輪」が広がりはじめている。
今回で3回目を迎えたNTS優秀選手による台湾遠征。この交流事業を通じ、日本・台湾双方で、参加選手の中から、「U19」の代表チーム、あるいはナショナルチームに名を連ね、世界の舞台で活躍する選手も出はじめた。
2020年、オリンピック競技復帰が実現すれば……その「主役」は彼女たちである。日本の未来を担う「宝物」のような選手だからこそ、「代表選手としていかにあるべきか」その一挙手一投足が常に注目されていることを自覚し、それにふさわしい言動をとることの大切さを知る必要がある。
「日本代表」は、もちろん技術も力も「世界一」のチームであるが、同時に、世界中の人々から愛され、リスペクトされているチームであることを忘れてはならない。その「良き伝統」がジュニア世代から正しく伝授され、継承していくためにも、このNTSという事業並びに優秀選手による遠征を、「より実りあるもの」していく努力を続けていかなければならない。
◇2013南投女子ジュニア招待試合 日本戦試合結果◇
●第1日(1月22日/火)
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
五福國中 |
0 |
0 |
0 |
2 |
0 |
0 |
0 |
2 |
日本 |
0 |
0 |
4 |
2 |
0 |
0 |
x
|
6 |
バッテリー:城戸真古・奥野初音−比護奈保子 |
長打:〔三塁打〕高橋真子〔二塁打〕中西舞衣 |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
日本 |
3 |
0 |
2 |
0 |
0 |
3 |
0 |
8 |
埔里國中 |
0 |
0 |
0 |
0 |
2 |
0 |
0 |
2 |
バッテリー:河澄星菜・渋井美波−長井美侑 |
長打:〔本塁打〕木原菜々子、中西舞衣 |
●第2日(1月23日/水)
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1 |
2 |
3 |
4 |
計 |
南京市江寧中 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
日本 |
9 |
1 |
0 |
x |
10 |
※大会規程により4回得点差コールド |
バッテリー:田内愛絵里・渋井美波−長井美侑 |
※日本は予選リーグを3戦全勝の1位で通過 |
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
計 |
五福國中(予選2位) |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
0 |
1 |
日本(予選1位) |
1 |
6 |
0 |
0 |
0 |
1x |
8 |
※大会規程により6回得点差コールド |
バッテリー:奥野初音・城戸真古・河澄星菜−比護奈保子 |
長打:〔二塁打〕北口美海、安田胡桃 |
●第3日(1月24日/木)
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
日本 |
0 |
1 |
0 |
0 |
5 |
0 |
0 |
6 |
埔里國中 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
3 |
0 |
3 |
バッテリー:田内愛絵里・河澄星菜・渋井美波−比護奈保子・長井美侑 |
長打:〔三塁打〕北口美海、木原菜々子、長井美侑 |
※日本、優勝 |
■表 彰 者
優秀投手賞/田内愛絵里(広島市立翠町中)、河澄星菜(名古屋市立港南中/名古屋西レディースJr)
打撃賞第3位/藤本 麗(広島市立翠町中)
最優秀監督賞/渡辺 祐司(京都市立樫原中)
◇平成24年度 NTS優秀選手 台湾遠征選手団名簿
〈スタッフ〉
・団長
奥村 紘史(公益財団法人日本ソフトボール協会理事)
・ヘッドコーチ
渡辺 祐司(京都市立樫原中)
・コーチ
松田 和広(延岡市立南中)
・トレーナー
熄シ久美子(豊田自動織機)
・総務
青木 敬祐(公益財団法人日本ソフトボール協会事務局次長)
〈選手〉
・投手
奥野 初音(岸和田市立久米田中)
河澄 星菜(名古屋市立港南中/名古屋西レディースJr.)
城戸 真古(伊予市立港南中)
渋井 美波(那須塩原市立厚崎中)
田内愛絵里(広島市立翠町中)
・捕手
長井 美侑(豊橋市立南部中)
比護奈保子(横須賀市立常葉中)
・野手
石川 妃悠(横浜市立荏田南中)
北口 美海(岸和田市立久米田中)
木原菜々子(広島市立翠町中)
神 樹里乃(札幌市立北都中)
高橋 真子(新居浜市立川東中)
中西 舞衣(高松市立龍雲中)
丹羽 萌(名古屋市立守山西中/ハッピーフレンズ)
廣瀬 夏季(三島市立錦田中)
藤本 麗(広島市立翠町中)
安田 胡桃(岐阜市立精華中)
※ポジション別50音順
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