2015.11.16
 

 

平成27年度(2015)
全国女子ジュニア育成研修会(NTS)を実施!




今年も「恒例」の全国女子ジュニア育成研修会
(NTS)が開催された



研修会冒頭、主催者を代表し、挨拶する
日ソ協・福島正一技術委員長



体力測定について説明する船渡和男教授



研修会初日は、様々な体力測定にチャレンジ!



研修はグラウンド上だけにとどまらず、宿舎に帰ってからも
続き、栄養学やコンディショニング等の講義を受け、学んだ



ピッチングの指導を行う染谷美佳氏
(2008年北京オリンピック金メダリスト)



守備の「基本」を指導する伊藤幸子氏
(2008年北京オリンピック金メダリスト)



この中から「次代の主役」が出現するか!?



平成27年度全国女子ジュニア育成研修会(NTS中央研修会)

 この事業は2001年にJOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)が策定した「JOC GOLD PLAN」(国際競技力向上戦略)」を受け、JSA(公益財団法人日本ソフトボール協会)が、一貫指導システム「競技者育成プログラム」を構築。さらには、このNTS(ステップ1/NTS地区研修会、ステップ2/NTSトレーニング研修会、ステップ3/NTS中央研修会、ステップ4/NTS集中研修会)の実施を通じて、ジュニア期からの優秀選手の発掘・競技者育成と、育成対象選手のデータを収集・管理することにより、今後、日本を代表する選手層の強化、国際大会におけるメダル獲得率の安定化を目的に実施されている研修会で、今年で12回目の開催となった。

 NTS事業のステップ3(NTS中央研修会)にあたる、この研修会は、11月12日(木)〜15日(日)の4日間、静岡県伊豆市を会場に開催された。
 研修会当日(11月12日/木)は、全国9ブロック(北海道、東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)各地区より選出された6名の選手、計54名と、選手強化本部会推薦の6名(全国中学校大会等を強化委員が視察し、推薦)を合わせた計60名の選手がこの事業に参加(研修会参加者名簿はこちら)し、4日間にわたる研修がスタートした。

 研修会では、まず大石益代、田中亜香里、光本雅美、蓑谷康子トレーナーが、参加選手たちにウォーミングアップを指導。ケガを予防し、万全な状態でこの後のプログラムに入っていけるよう、選手たちの体調、コンディションに細心の注意を払いながら入念にウォーミングアップを行った。

 ウォーミングアップの後は、選手全員で体力測定を実施。今回も船渡和男講師(日本体育大学大学院教授)を中心に、高橋流星講師(日本体育大学助教)ら、日本体育大学トレーニング科学系研究生が測定をサポートし、NTS代表委員・NTS委員・日本中体連スタッフが測定をサポートし、選手たちが現在どの程度の能力があるのかをチェック。測定項目は、身長・体重、皮下脂肪の測定等の身体組成や、柔軟性(長座体前屈)、筋力(握力、背筋力、上体起こし、腕立て伏せ)などに加え、遠投力、走能力テスト(30m走)、反復横とび、立ち幅跳び、メディシンボール後方投げなど、フィールドテストも実施。測定後は、個人のデータを集計し、数値化。それを選手たちにフィードバックすることで、自らの長所、短所を確認すると同時に、歴代の日本代表選手の数値や、このNTSに参加した後、U19日本代表、日本代表へと巣立って行った選手たちの当時のデータとも比較しながら、「世界の舞台」「国際舞台」で活躍する選手たちが、どのような能力的な特徴を持っているのか、その舞台に立つには、どれだけの数値を有していることが目安となるのか等が示され、選手たちが今後めざすべき、「具体的指標」がデータとして明示された。

 研修は実技のみならず、座学も実施。今回は、例年、「夕食後」に実施されていたJISS(国立スポーツセンター)の石井美子管理栄養士の講義を、「夕食前」に実施。今回の研修会の食事がビュッフェ形式であることから、成長期にある選手たちが、「アスリート」として、「どんな食事を摂ればよいか」「強くなるための食とは!?」の具体例を明示しながら講義され、今回の研修会の全メニューが栄養素ごとに色分けされて張り出され、ビュッフェ形式の食事で料理を選ぶコツや、女性アスリートが特に心がけておかなければならないこと、栄養面での女性アスリート特有の問題点等を指摘。「アスリートとしての食事」「強くなるための食」を考えることの大切さ、重要性を説き、初日の研修を終了した。

 研修2日目は、実技研修。午前中は、バットのスイングスピードの計測と並行して、守備の「基礎・基本」を徹底的に研修。
 まず「すべてのプレーの基本」となるキャッチボールの基礎を学んだ後、ポジションごとの研修に入った。
 この日の研修には、2008年の北京オリンピック金メダリストの染谷美佳氏、伊藤幸子氏が選手の激励を兼ねて参加。「世界の頂点」を極めたオリンピアンが直接指導にあたった。
 投手の研修では、染谷美佳氏が実際に投球を行いながら、投球フォームのチェックポイント、投球動作における「基本」やピッチングのメカニクス、基礎理論が伝授された。
 指導後には、スピードガンによる球速の測定も行われ、ハイスピードカメラ(スーパースローでの撮影が可能)を利用した回転、回転数のチェックや全体のフォーム、ボールをリリースする際の手、指先の動きを映像で確認。染谷美佳氏は「ここにいる選手たちは能力が高く、日本のソフトボールの未来・将来を担う『金の卵』であることを改めて感じた。その一方で、能力が高いが故に、ピッチングの基本となる動作や理論、合理的・効率的なピッチングメカニズムの重要性を知らなくても、無意識のうちに『できてしまっている』選手が多い。もちろん、センス・能力が高いからこそ……ではあるのだが、『なぜそうするのか』『なぜそうしなければならないのか』を知っておかないと、より高いレベルに進んだときに、『壁』にぶちあたることもある。そのとき、自分自身のことをしっかりと理解し、把握していないと、状況を整理・打開できず、自らの成長を止めてしまうこともある。より高いレベル、『上』をめざすのであれば、遠回りに見えても、一度『基礎・基本』に立ち返ることが重要で、迷ったとき、壁にぶつかったとき、まずそこからはじめてみると、その原因や課題が自ずと見えてくる」と、アドバイスした。
 野手の指導では、伊藤幸子氏がゴロ捕球の基本動作・基本姿勢を入念に指導。実際に打球を処理して見せながら、基本動作の重要性を説き、「世界の頂点」を極め、「世界一」と評された「日本代表」伝統の守備の技術の「真髄」を伝授。伊藤幸子氏は「その一球にかける思いの強さ、一球の重さを知り、大切にしてほしい。私たちは、常に『世界の頂点』に立つことを夢見て努力してきたし、オリンピックで『金メダル』を獲るために、全力を傾けてきた。また、日本リーグでも、優勝して『日本一』になるには、『世界一の投手』上野由岐子投手を打つしかなかった。1シーズン、『狙うべき一球』に的を絞って研究を重ね、練習に練習を重ねた。あれだけのレベルの投手を打とうと思えば、『一球』にかけるしかなく、その『一球』を打ち損じれば、ファウルしてしまえば、もう決して『狙い球』は来ない。その『一球』をとらえることができなければ、それでシーズンが終わってしまう……という緊張感と集中力を持ってプレーしていた。守備でも、打撃でも、何千何百と練習を繰り返すが、試合では、その『一球』、その『ワンプレー』がすべてでやり直しはきかない。常に『一期一会』『唯一無二の一球』の思いを持って、その瞬間、瞬間に全力を尽くし、その全力を積み重ねていくことが自らの力となり、自らを成長させていく糧となることを忘れないでほしい」と自らの貴重な経験を紐解きながら、次代の日本のソフトボールを担う選手たちに『エール』を贈った。

 午後には、打撃の「基本」技術を研修。ティーバッティング、ロングティーを中心に、基本的な構え、理想的なバッティングフォームについて、その基本となる動きや留意点が指導され、また、正確にボールをとらえるにはどのような点について注意すればよいかが研修された。バッティング練習では、とても中学生とは思えない鋭いスイングで快打を連発する選手や、パワフルで豪快な打撃をする選手が多数見られ、今回の研修に参加している選手たちのレベルの高さが垣間見られた。

 この日の夜は、大石益代トレーナーによるウォーミングアップ・クーリングダウンの役割や重要性について研修。どんな運動をするにも「準備」が必要であり、ウォーミングアップによって運動をする「意識」を高めることで、ケガのリスクを減らし、ハードなトレーニングにも耐えることができ、それが自らの成長につながっていくと説明した。また、疲労が溜まることでケガにつながりやすいことも指摘。その日の疲れを蓄積させることなく、身体のケアを行い、回復に努めることがトレーニングや練習の効果を高めることにつながるということが改めて強調され、しっかりと「休養」をとることも、強くなるための、上手くなるための、「重要な要素」であることが再確認された。
 選手たちは「自己管理」の意識を持ち、身体を動かす準備の段階から自らの体調を把握し、万全な状態でトレーニングに励むことが「アスリート」にとって大切であり、日々の練習の効果・効率を高めることになるのだということを研修。また、ソフトボールという競技に必要な要素と、それを鍛え、強化するために、どんなトレーニングを積むことが効果的であるのかが具体的に示され、次代を担う選手たちの「進むべき道」が示された。

 研修3日目・4日目は実戦形式による研修が行われ、60名の選手をA、B、C、Dの4つのチームに分け、実戦形式での研修が行われた。ここでは、場面に応じた状況判断ができているか、これまでに学んだ基礎・基本が身についているかなど、技術面はもちろん、向上心、判断力、将来性がチェックされた。
 投手では、昨年記録された「NTS最高球速」となった103km/hに迫る選手もおり、NTS優秀選手への選出どころか、12月9日(水)〜11日(金)に予定されている「日本代表TAP−A(U24A)/TAP−B(U24B)選考会」への参加を推薦されるのでは……という選手まで現れ、「今後」がますます期待される。

 今回で12回目の開催となった全国女子ジュニア育成中央研修会。NTS代表委員・NTS委員・日本中体連スタッフ共通理解のもと、第1回から構築されてきた「一貫指導システム」は、年々内容を充実させており、ジュニア世代の技術の向上に貢献している。また、今回も参加が実現した「北京オリンピック金メダリスト」との交流では、トッププレイヤーを夢見る選手たちにとって、その存在を間近に感じることができ、しかも直接指導を受けることができるという、貴重な経験にもなった。
 この研修会のもう一つのテーマである「優秀選手の発掘」については、今回も優秀選手17名による「台湾遠征」(平成28年1月17日(日)〜22日(金)に実施予定)が決まっている。選手たちにとって、ジュニア世代の段階から「国際経験」を積み、海外遠征を通じて生活環境の違いや、文化・言葉の違いなどを経験することも「大きな財産」になることは間違いない。
 2020年東京オリンピックでの女子ソフトボールのオリンピック競技復帰が実現すれば、今回ここに集った選手たちの中から「オリンピック代表選手」が出る可能性もある。また、「世界一」に君臨している女子ソフトボールの競技レベルを維持し、保ち続けていくためには、ジュニア世代からの人材発掘と一貫した指導による才能の開花、ダイヤモンドの「原石」を「本物の輝き」とするために、順調に「金の卵」たちを孵化させ、育て、磨きをかけていく作業が必要となる。
 この「全国女子ジュニア育成中央研修会」がジュニア世代の技術力・競技力の向上とともに、今後の日本ソフトボールを盛り上げていくための事業として、さらに発展していくことを期待したい。