2016.1.23
 

 

次代を担うジュニア世代の強化めざして!
平成27年度 NTS優秀選手台湾遠征を実施




昨年11月のNTS(全国女子ジュニア育成中央研修会)で
選出された「優秀選手」の中から17名の選手が参加した



台湾・台北で「NTS STEP4」となる集中研修が行われた



「一つの上のカテゴリー」となる高校生との強化試合も組まれた



台湾の地で「次代を担う金の卵たち」が躍動した!!



雨にたたられながらも5試合を実施! 貴重な経験を積んだ



より高きところをめざして……「熱血指導」でレベルアップを図る



言葉の違い、生活習慣の違い、文化の違い……それを乗り越え
交流を図り、日本・台湾双方の競技力向上をめざし、切磋琢磨!



平成27年度 NTS優秀選手強化遠征 Vol 4

 年明け早々の1月17日(日)〜22日(金)、毎年「恒例」となっているNTS(全国女子ジュニア育成中央研修会)で選出された優秀選手台湾遠征が実施された。
 NTSは、JOC(公益財団法人日本オリンピック委員会)が策定した「JOCゴールドプラン」(国際競技力向上戦略)に基づく施策「一貫指導システム」(競技者育成プログラム)の一つとして実施されているもので、今回で12回目の開催。全国9ブロック(北海道、東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)から各6名ずつ選抜された54名に、日ソ協選手強化本部会推薦の6名を加えた計60名の選手が参加。昨年11月12日(木)〜15日(日)の4日間にわたり、静岡県伊豆市・天城ドームを主会場に研修が行われ、優秀選手18名を選出。その優秀選手の中から17名が参加し、台湾遠征が実施された。
 台湾遠征出発前日の1月16日(土)、選手たちは、東京・国立スポーツ科学センター内のアスリートビレッジに集合。日本のトップレベルの選手たちが「世界の舞台」で戦うための「強化拠点」である国立スポーツ科学センターやナショナルトレーニングセンターを見学。「チーム」としての初練習を行った後、夕食後には「事前指導」(講義)を行い、まず「日本代表」として、国を代表し、すべてのソフトボールプレーヤーの「代表」として国際大会に臨むための心構え、代表選手としての言動、立ち居振る舞いや、これまでオリンピックや世界選手権、あるいはジュニア世代においても輝かしい成績を残し続けてきた女子ソフトボールの歴史と伝統を「引き継ぐ者」「次代を担う者」として選ばれたことの意味、責任の重さについて、松田和広ヘッドコーチを中心に入念な指導が行われた。

 翌日(1月17日/日)、チームは台湾・台北へ出発。翌18日(月)から台湾の中学生・高校生との強化試合に臨んだ。
 今回の台湾遠征では前回から実施されている台湾の高校生との強化試合も組まれ、「一つ上」のカテゴリーを相手に、NTS優秀選手たちがどんな戦いを見せるか、注目が集まった。

・1月18日(月)
※雨天のため、当初日程を変更。士林商業高校と2試合を実施。
  1 2 3 4 5 6
日    本 1 0 3 2 0 8 14
士林商業高校 0 0 0 0 0 0 0
※6回得点差コールド
(日)○後藤希友(3回1/3)・清水慎子(2回2/3)−女鹿田千紘
〔三塁打〕齋藤明日加
〔二塁打〕久保英里奈、女鹿田千紘

 今回の遠征初戦、いきなり「一つ上のカテゴリー」高校生との対戦となった。対戦相手の士林商業高校は2014年の「台湾No.1チーム」。昨シーズンはその主力選手がゴッソリ抜け、戦力ダウンし、「台湾No.1」の座から転落したとはいえ、強豪チームであることに変わりはない。
 先攻の日本は初回、相手守備の乱れに乗じて1点を先制。3回表には、9番・辰巳愛海、1番・齋藤明日加、2番・坂本実桜の3連打で1点を加え、なお無死一・二塁と攻め立て、3番・清水慎子の送りバントで二・三塁とチャンスを広げた後、二死後、「昨年の全中制覇の立役者」5番・川北みいながレフト前にタイムリー。二者を迎え入れ、この回3点を追加。続く4回表には、一死から8番・女鹿田千紘がレフト前ヒットで出塁。二死後、1番・齋藤明日加のサード前にバントヒットを決め、一・二塁とすると、2番・坂本実桜が右中間へタイムリー。この回も2点を加え、6回表には7本の長短打を集中。大量8点を挙げ、士林商業高校を圧倒した。
 守っては、NTS優秀選手はもちろん、日本代表TAP−Bにも大抜擢されている後藤希友が先発。その立ち上がり、二死から安打を許したものの、落ち着いて後続を断ち、無失点の滑り出しを見せると、4回表一死まで被安打3の力投。士林商業高校打線に得点を許さず、2番手・清水慎子につなぐと、その清水慎子も負けじと奪三振6・被安打2の好投。14−0で6回コールド勝ちを収め、初戦を勝利で飾った。

  1 2 3 4 5
士林商業高校 0 0 0 0 0 0
日    本 4 0 1 0 x 5
※5回日没コールド
(日)○坂本実桜(4回)・後藤希友(1回)−女鹿田千紘
〔本塁打〕井田芽衣
〔三塁打〕近藤佑希
〔二塁打〕戸越るちか、久保英里奈

 日本の先発は坂本実桜。初回、連続三振とショートライナーで三者凡退の立ち上がりを見せると、打線もすぐに応え、その裏、鮮やかな先制攻撃を見せた。
 日本は1番・井田芽衣がセンターオーバーの先頭打者本塁打を放ち、あっさり先取点。一死後、3番・女鹿田千紘、4番・高橋まひろ、5番・戸越るちかの3連続長短打と相手守備の乱れで3点を加え、この回4点を先制し、試合の主導権を握った。
 日本は3回裏にも、この回先頭の4番・高橋まひろが意表を突くセーフティーバントで出塁。パスボール、内野ゴロ等で二死三塁とし、7番・久保英里奈が左中間を破るタイムリーツーベースを放ち、1点を追加した。
 5点のリードを奪った日本は、先発・坂本実桜が4回までわずか1安打、6三振を奪う力投を見せれば、5回表は後藤希友が三者凡退に抑える力投。ここで日没を迎え、試合続行が不可能となり、5−0のまま、日没コールドとなった。

・1月19日(火) ※雨天のため、試合中止。
・1月20日(水)
  1 2 3 4 5 6 7
日    本 0 0 0 0 4 1 8 13
福営国中学校 0 0 0 0 0 3 0 3
(日)○清水慎子(4回2/3)・川北みいな(2/3)・櫻井彩夏(1/3)・後藤希友(1回1/3)−久保英里奈
〔三塁打〕原茂那
〔二塁打〕齋藤明日加、井田芽衣A、戸越るちか

 この日は同じ中学生同士の対戦となったが、予想に反して4回まで両チーム無得点という緊迫した投手戦となった。
 0−0で迎えた5回表、日本は敵失、四球等で二死一・二塁とし、1番・齋藤明日加がタイムリーツーベースを放ち、待望の先取点。なお二・三塁のチャンスが続き、2番・井田芽衣の一打は深々と右中間を破り、この打球の処理を誤る間に、三塁走者、二塁走者に続き、打った井田芽衣までもが一気にホームイン。この回一挙4点を奪うと、6回表には、5番・戸越るちか、6番・久保英里奈の長短打で1点を追加。7回表には、怒涛の9連続長短打を含む11安打を集中。大量8点を挙げ、完全に勝負を決めてしまった。
 守っては、先発・清水慎子が序盤なかなか得点できない試合展開の中、辛抱強く打線の援護を待ち、4回2/3を無失点に抑え、先発の役割をしっかりと果たすと、その後は打線の大量援護もあり、小刻みな投手リレーで福営国中学校の反撃を3点に抑え、大勝。この遠征3勝目を挙げた。

  1 2 3 4 5 6 7
丹鳳高校 0 1 0 0 0 0 0 1
日  本 0 3 1 0 0 0 x 4
(日)○後藤希友(4回2/3)・坂本実桜(1回2/3)・原茂那(2/3)−女鹿田千紘
〔三塁打〕川原千賢
〔二塁打〕久保英里奈、高橋まひろ

 再び高校生が相手となったこの試合、初めて相手に先制を許す試合展開となった。
 日本の先発・後藤希友は2回表、守備の乱れからノーヒットで先制を許してしまった。
 しかし、打線がすぐに反撃。その裏、一死から6番・久保英里奈が左中間を破るツーベースで出塁。次打者のライトフライでタッチアップから三塁へ進み、この「一打同点」のチャンスに、8番・川原千賢が右中間を破る同点のタイムリースリーベース。さらに9番・高橋まひろの左中間二塁打、相手守備の乱れ等でこの回3点を挙げ、一気に試合をひっくり返した。
 日本は4回裏にも、3番・近藤佑希、4番・川北みいなの連打と5番・齋藤明日加の送りバントで一死二・三塁とし、6番・久保英里奈がレフト前にタイムリー。貴重な追加点を挙げ、3点差にリードを広げた。
 3点のリードを奪った日本は、先発・後藤希友が5回表二死まで被安打1の力投。2回表に1点を失ったものの、先発としてしっかり試合を作り、その後も2番手・坂本実桜、3番手・原茂那とつなぎ、丹鳳高校に追加点を許さず、4−1で快勝。無傷の4連勝を飾った。

・1月21日(木)
  1 2 3 4 5
日    本 6 0 0 0 2 8
士林商業高校 3 0 0 0 0 3
※雨天のため5回降雨コールド
(日)坂本実桜(2回)・○清水慎子(3回)−女鹿田千紘
〔本塁打〕高橋まひろ
〔三塁打〕原茂那
〔二塁打〕井田芽衣、女鹿田千紘

 先攻の日本は初回、1番・井田芽衣がいきなりの二塁打。フィルダースチョイス、盗塁で無死二・三塁の絶好機をつかむと、3番・女鹿田千紘が先制のタイムリーツーベース。あっさり2点を先制し、さらに4番・原茂那のレフト前ヒットで一・三塁とチャンスを広げ、一死後、ダブルスチールを仕掛け、一塁走者がアウトになる間に三塁走者が生還し、3点目。これで二死走者なしとなったが、連続四球と盗塁で揺さぶりをかけ、再び二死二・三塁のチャンスを作り直し、8番・高橋まひろがスリーランホームラン。この回一挙6点を挙げた。
 しかし、その裏、士林商業高校も「意地」を見せる。日本の先発・坂本実桜に2本のホームランを浴びせ、3点を返した。
 日本の3点リードで迎えた5回表、一死二・三塁の追加点のチャンスに4番・原茂那が右中間を破る走者一掃のタイムリーツーベースを放ち、2点を追加。勢いに乗る日本が6回表にさらに3点を加え、攻撃を終了したところで雨が激しさをまし、試合の続行が不可能となり、降雨コールド(日本が6回表に3点を挙げているが、士林商業高校が6回裏の攻撃を行っていないため、記録上は均等回を終了している5回終了時点の得点が最終的なスコアとなる)で試合終了となった。
 また、この後、予定されていたもう1試合も雨天中止となり、今回の遠征の強化試合の全日程を終了することになった。

 今回の遠征では、「一つ上」のカテゴリーである高校生を相手に臆することなく戦い、「全勝」という結果を残し、次代の日本を担う、日本のソフトボールの未来を背負って立つ、「金の卵」たちが、その「潜在能力」の高さを感じさせる試合を展開し、中学生とは思えないようなプレーを随所に見せてくれた。
 また、ジュニア世代から「海外遠征」を経験し、「世界の舞台」へ飛び出していく「第一歩」を踏み出したことは、大きな意義があり、この貴重な経験を今後に生かしていってくれることを願わずにはいられない。

 その一方で……不安がないわけではない。日本に帰ってくれば、高校進学により、慣れ親しんだ中学校の環境から、異なる環境に身を置くことになり、指導者もチームも変わる。そこから順調にステップアップし、成長していってくれれば良いが、環境にうまく適応することができず、将来を嘱望された選手が伸び悩んだり、才能や素質を十分に開花させることのないまま、選手生命を終えてしまう……といった例も過去にはあるのである。日本の場合、高校生は「国際標準」の革ボール、イエローボールではなく、ゴムボールでプレーすることになり、そこで求められる技術が異なる……という独特の事情もある。

 ただ……ここに集う選手たちの素質・才能に輝くもの、光ものがあることは間違いなく、ここからどう磨きをかけていくかに、本人自身の将来はもちろん、日本のソフトボールの「未来」がかかっているのである。

 遠征を終え、羽田空港での解団式で、渡辺祐司チームリーダー、松田和広ヘッドコーチ、田本博子コーチが口々に言った。「ここは『ゴール』じゃない。『スタート』なんだよ。今度はみんな『日本代表』として会おう!」と。

 NTSが現行の形で行われるのは今年が最後。来年度からは2020年東京オリンピック、さらに「その先」を見据えたジュニア世代の強化プロジェクトが立ち上げられる予定であり、その中でこのNTSに当たるジュニア層の強化が、さらに充実・発展させる形で実施されることになる。
 この中から、2020年東京オリンピックの舞台に立つ選手を育て上げ、さらに「その先」へとつなげていくこと。「世界一」の競技力を誇る女子ソフトボールの輝かしい実績と「勝ち続けていくDNA」「勝者のメンタリティ」をしっかりと継承していくこと。新たに打ち出されるジュニア世代の強化策がその『礎」となり、日本のソフトボールが進むべき確かな方向性を指し示してくれることを期待したい。

平成27年度全国女子ジュニア育成中央研修会(NTS)優秀選手 台湾遠征
参加選手団名簿
*ポジション別五十音順
人数 守備 氏名 支部 所属先 学年
1 投手 後藤 希友 愛知 名古屋市立日比野中学校 3
2 投手 坂本 実桜 広島 広島市立中広中学校 3
3 投手 櫻井 彩夏 群馬 群馬女子SC
(安中市立第二中学校)
3
4 投手 清水 慎子 秋田 能代市立能代東中学校 3
5 捕手 炭谷 遥香 兵庫 明石Pクラブ
(明石市立衣川中学校)
3
6 捕手 女鹿田 千紘 島根 雲南市立大東中学校 3
7 内野手 井田 芽衣 三重 度会町立度会中学校 3
8 内野手・外野手 川原 千賢 山口 下松市立末武中学校 3
9 内野手 近藤 佑希 愛媛 新居浜市立川東中学校 3
10 内野手 齋藤 明日加 岡山 倉敷市立倉敷第一中学校 3
11 内野手 瀬戸口 梨乃 長崎 長崎市立戸町中学校 3
12 内野手 高橋 まひろ 愛媛 新居浜市立川東中学校 3
13 内野手・外野手 辰巳 愛海 大阪 岸和田市立岸城中学校 3
14 内野手 戸越 るちか 鹿児島 曽於市立大隅中学校 3
15 外野手 川北 みいな 京都 京都市立樫原中学校 3
16 外野手 久保 英里奈 大阪 岸和田市立岸城中学校 3
17 外野手 原 茂那 大阪 岸和田市立岸城中学校 3

コーチングスタッフ
人数 役職 氏名 支部 所属先
1 チームリーダー 渡辺 祐司 京都 京都市立樫原中学校
2 ヘッドコーチ 松田 和広 宮崎 西都市立三納小中学校
3 アシスタントコーチ 田本 博子 京都 京都市立嵯峨中学校
4 トレーナー 大石 益代   (公財)日本ソフトボール協会
5 総務 藤井 まり子   (公財)日本ソフトボール協会
6 通訳 中田 ぴん   (公財)日本ソフトボール協会