第56回 全日本総合男子ソフトボール選手権大会

(2010.9.21)  

高知パシフィックウェーブが
4年ぶり3度目の優勝!

大会は実業団、クラブ、大学から
全32チームが出場!熱戦を繰り広げた

準決勝 デンソー 対 ダイワアクト
デンソーが初回に先制点を奪ったが……

1−1の同点で迎えた7回裏
ダイワアクト・深川清一郎のサヨナラスリーランで決着

準決勝 高知パシフィックウェーブ 対 旭化成
高知パシフィックウェーブが先手を取り、決勝進出

旭化成も最終回に1点差に詰め寄り、粘りを見せた

決勝 ダイワアクト 対 高知パシフィックウェーブ
「連覇」をめざし、アンドリュー・カークパトリックが先発

高知パシフィックウェーブが4回表に
6番・川村真司のスリーランで先制!


7番・尾崎和登も続き、二者連続ホームランで
ダイワアクトを突き放す
高知パシフィックウェーブ、歓喜の瞬間

岡本友章監督の身体が宙に舞う

高知パシフィックウェーブ(高知)
4年ぶり3度目の優勝!


 第56回全日本総合男子ソフトボール選手権大会が、9月18日(土)〜20日(月/祝)の3日間、高知県高知市・春野総合運動公園において開催された。
 大会には、昨年優勝のダイワアクト(佐賀)、準優勝の日本体育大(東京)をはじめ、リーグ推薦として、昨年の日本男子ソフトボールリーグ決勝トーナメントに出場した8チーム(今大会は前年度優勝のダイワアクトと、昨年限りで日本リーグから脱退した大阪ツヅキグローバルを除いた6チーム)の他、全国9ブロックの厳しい予選を勝ち抜いた24チームが出場。計32チームが、文字通り「日本一」の座をかけ、連日熱戦を繰り広げた。

 昨年初優勝を飾り、今大会「連覇」を狙うダイワアクト(佐賀)は、初戦の高崎市役所(群馬)戦でいきなり初回に先制点を奪われるなど思わぬ苦戦を強いられ、5−4で辛勝。昨年、カナダ・サスカツーンで開催された世界選手権を制し、「世界一」に輝いたオーストラリア代表の左のエースであり、現所属チーム・ダイワアクトには昨年から加入した「絶対的エース」アンドリュー・カークパトリックが珍しく不安な立ち上がりを見せたものの、その後はうまく持ち直し、貫禄のピッチングを展開。2回戦では男子西日本リーグでも優勝を争うライバル・大阪桃次郎(大阪)を4−0で撃破。準々決勝では、同じく男子西日本リーグの四国生コンSBC(愛媛)を5−3で破り、準決勝進出を決めた。
 昨年、実に35年ぶりとなる決勝進出を果たし、「旋風」を巻き起こした日本体育大(東京)は、初戦でホンダエンジニアリング(栃木)と対戦。今夏のインカレ(9月10日(金)〜12日(日)/富山県富山市)では、優勝候補の筆頭に挙げられながら、2回戦で中京大(愛知)に5−6とまさかの敗退。今大会では、その悔しさをバネにチーム一丸となった戦いを見せ、本来の実力でいえば「格上」の日本リーグ勢を相手に、終盤の集中打で5−0の完封勝利。この勝利で昨年に続く「快進撃」を見せるかと思われたが、続く2回戦でウエダバッファロー(広島)に接戦の末、1−2で惜敗。2年連続で大学生が上位進出を果たすことは、残念ながらできなかった。

 ベスト4には、「絶対的エース」アンドリュー・カークパトリックを擁し、「連覇」を狙うダイワアクト(佐賀)。今シーズン男子東日本リーグ3連覇をめざし、7月に開催された全日本実業団選手権では19年ぶり2度目の優勝。今大会では9年ぶりの優勝をめざすデンソー(愛知)が、百戦錬磨のエース・村里和貴を柱に初戦の中京学院大(愛知)を4−1、2回戦では男子西日本リーグのジェイテクト(徳島)を4−1、準々決勝では男子東日本リーグのライバル・トヨタ自動車(愛知)を2−1で破り、準決勝進出。
 もう一方のゾーンでは、地元・高知の大声援を受け、今大会では4年ぶり3度目の優勝をめざす高知パシフィックウェーブ(高知)が、初戦のFSC石橋建材(福井)を4−0、2回戦ではディーレックス(大阪)を4−0で破り、2試合連続の完封勝利。昨年はチームのエースとして、すべての試合を一人で投げ抜いてきた山尾竜則に加え、今年は、現在若手投手の中では“国内bP投手”として評判の高い高橋速水が加わったことで投手力が充実。準々決勝の丸山物産クラブ(鹿児島)戦では、日本代表の「主砲」小野洋平が圧巻の3打席連続本塁打を放つなど打線が爆発。8−2で圧勝し、盤石の戦いで準決勝進出を決めた。
 また、日本代表の「切り込み隊長」松岡真央がチームを引っ張る旭化成(宮崎)も、今大会いきなりの“山”となった日新製鋼(広島)との一戦に2−0の完封勝利。この勝利で勢いに乗り、続く埼玉県庁クラブ(埼玉)戦に7−0の6回コールド勝ち。準々決勝では、昨年準優勝の日本体育大(東京)を破り、自慢の強力打線を武器に虎視眈々と頂点を狙うウエダバッファロー(広島)を相手に手に汗握る接戦を展開。2−2の同点で迎えた土壇場の7回裏、一死一・三塁から9番・夏田陽平がセンターフェンス直撃のサヨナラタイムリーを放ち、3−2で勝利。以上の4チームがベスト4に名乗りを上げた。

 準決勝、デンソー対ダイワアクト戦は、先攻のデンソーが初回に先制攻撃。1番・稲木がいきなり左中間二塁打で出塁し、犠打で三進。3番・長岡の中越三塁打で先制点を奪った。しかし、「連覇」に燃えるダイワアクトも反撃。4回裏、一死から4番・アンドリュー・カークパトリックの右越ソロ本塁打で同点に追いつき、試合を振り出しに戻した。
 試合はこの後、両チームの「エース」が気迫溢れる投げ合いを展開。1−1のまま最終回を迎え、ダイワアクトは7回裏、この回先頭の9番・クレイトン・エリスが右前安打を放ち、出塁。一死後、2番・福井庸祐の三遊間突破安打で一・二塁とチャンスを広げると、3番・深川清一郎が初球のライズを狙い澄まし、サヨナラの右越スリーラン。ライトスタンド上段に叩き込む「会心の一撃」で接戦に終止符を打ち、「連覇」へ王手をかけた。

 もう一方のゾーンの準決勝、高知パシフィックウェーブ対旭化成戦は、ここまで危なげのない戦いで勝ち上がってきた高知パシフィックウェーブが、初回に3番・安井宏光の中越ソロ本塁打で先制。早々とリードを奪うと、5回表には8番・中西健太が死球で出塁し、犠打と暴投で三進。1番・片岡一人の左犠飛で貴重な2点目を奪い、守っては山尾竜則、高橋速水の投手リレーで最終回に1点差まで詰め寄られたものの、2−1で逃げ切り、4年ぶりの決勝進出を決めた。

 決勝は「連覇」をめざすダイワアクトと、4年ぶり3度目の優勝をめざす高知パシフィックウェーブが激突。立ち上がりは高知パシフィックウェーブ・高橋速水と、ダイワアクトの「絶対的エース」アンドリュー・カークパトリックが一歩も譲らぬ投げ合いを展開し、試合は両チーム無得点のまま、中盤に入った。
 高知パシフィックウェーブは4回表、一死から4番・岡本友章が右前安打で出塁。5番・小野洋平のショートゴロが相手守備のエラーを誘い、一・二塁と攻め立てると、6番・川村真司がワンボール・ツーストライクからの5球目をフルスイング。センターバックスクリーン右へ叩き込むスリーランで先制すると、その大歓声に後押しされたかのように、7番・尾崎和登もワンボール・ワンストライクからの3球目をライトスタンドへ特大の本塁打。鮮やかすぎる6番、7番の連続本塁打でこの回一挙4点を先制し、試合の主導権を握った。
 守っては、今シーズンチームに新加入し、「次代の日本代表を担う存在」でもある高橋速水が本領発揮。「昨年(日本体育大在籍時)の決勝戦のリベンジを!」と、最後まで気迫のこもったピッチングでダイワアクト打線を寄せつけず、3安打完封勝利を飾り、高知パシフィックウェーブが地元・高知で4年ぶり3度目の優勝に輝いた。

 「絶対的エース」アンドリュー・カークパトリックを擁し、「連覇」を目前にしていたダイワアクトはまさかの敗戦。しかも、決勝では二者連続本塁打を浴び、完敗を喫する予想外の幕切れとなった。チームに加入した昨年は、日本リーグこそ決勝トーナメント・ファイナルで大阪桃次郎にタイトルを奪われたものの、この全日本総合選手権をはじめ、まさに「無敵」を誇っていたアンドリュー・カークパトリック。身長200cmの長身から繰り出される120km後半のライズ・ドロップは、「もはや日本人選手では太刀打ちできない……」。昨年はすべてのチームにそんな強烈なインパクトを与えていた。
 しかし、この決勝戦での高知パシフィックウェーブの勝利は、その男子ソフトボール界に「新しい可能性」と「明日への希望」を与えてくれた。「日本人でもできる。世界のトップとも張り合える!」そんな確信を持たせてくれた試合であった。今後、この決勝戦を戦かった両チームを筆頭に、すべてのチームがさらにトップレベルをめざし、互いに切磋琢磨していくことができれば、日本のソフトボールは間違いなくより高いレベルへと向かっていくことができるだろう。今後の「男子ソフトボール」がますます楽しみになる。そんな思いを抱かせてくれた今大会であった。