去る6月21日(金)、群馬県前橋市の上毛新聞敷島球場で行われたプロ野球・巨人−中日戦に合わせ、群馬県を本拠地とする日本女子ソフトボールリーグ1部・ルネサスエレクトロニクス高崎の選手たちが、公益財団法人日本ソフトボール協会・一般財団法人全日本野球協会が共同で作成した2020年オリンピック競技復帰をPRする2万枚のチラシを配布。野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰を訴えた。
野球・ソフトボールは、4月14日にIBAF(国際野球連盟)とISF(国際ソフトボール連盟)が、2020年夏季オリンピックでの実施競技復帰をめざし、両競技団体を統合する「WBSC(世界野球ソフトボール連盟)」を設立。男子の野球、女子のソフトボールを1競技として2020年オリンピック競技復帰をめざして本格的な活動をスタートさせた。
5月29日(水)、ロシア・サンプトペテルブルクで開催されたIOC(国際オリンピック委員会)理事会で、レスリング、スカッシュとともに、野球・ソフトボールが、2020年オリンピック実施競技の「最終候補」に選出されたことを受け、さらなる復帰活動の「第1弾」として、プロ野球の試合会場でPRチラシを配布。
IOCがオリンピック実施競技の選考において、その競技への支持・関心の高さが直接反映されるとして重視している「ソーシャルメディア」での支援・協力を、来場者一人ひとりに丁寧にチラシを手渡しながら呼びかけた。(※配布中のPRチラシはこちら)
試合に先立ち、ISF副会長であり、公益財団法人日本ソフトボール協会常務理事・国際委員長の宇津木妙子氏、IBAFの執行役員であり、一般財団法人全日本野球協会業務執行理事・国際委員長の薙野正明氏が、女子ソフトボール日本代表・宇津木麗華ヘッドコーチ、日本代表の「エース」上野由岐子選手(ともにルネサスエレクトロニクス高崎)を伴い、読売ジャイアンツ・原辰徳監督、中日ドラゴンズ・高木守道監督を訪問。野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰活動へのプロ野球界からの協力・支援を要請した。
この要請を両監督とも快諾。両チームの選手もルネサスエレクトロニクス高崎の選手とともに、降りしきる雨をものともせず、入場ゲートに立ち、観戦に訪れた観客一人ひとりにチラシを手渡し、ときには握手に応え、記念撮影の要望に応じながら、野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰活動への協力・支援を訴えた。
公益財団法人日本ソフトボール協会・宇津木妙子常務理事は、「あれこれ考えていても何も進まない。とにかく行動しないと! ちょうど私たちの地元・群馬県でのプロ野球開催があると聞き、何かできないかと考え、全日本野球協会と連携・協力し、このチラシ配布を思いついた」と語り、「やっぱり一人ひとりに直接声をかけ、思いを伝えることが大切だと思う。今、私たちの立場でできることを地道に、しっかりと行っていきたい。これを一つの契機として、札幌ドーム、東京ドーム、ナゴヤドームといった全国各地のプロ野球の本拠地でも、こういった活動が展開できれば……と思う。もちろん、7月からはじまるソフトボールの全日本大会でも実施し、支援・協力の輪を広げていきたい!」と、今後の活動へ意欲を見せた。
一般財団法人全日本野球協会・薙野正明業務執行理事は、「全日本野球協会としても、高校野球の甲子園で20万枚、都市対抗野球で15万枚のチラシ配布を準備している。もちろん、ソーシャルメディアによる支持が増えたからといって、それだけで野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰が実現するわけではないが、その数が大きくなればなるほど、IOCを動かす可能性も出てくる。とにかく、『今、できること』を積み重ね、野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰の可能性を少しでも高められるよう頑張りたい」と、9月の「最終決定」まで、最善を尽くす覚悟と決意を滲ませた。
女子ソフトボール日本代表・宇津木麗華ヘッドコーチは、「日本、アメリカなど、盛んな地域が限られているとも言われるが、野球・ソフトボールの競技人口、人気の高さを考えれば、その『潜在能力』をIOCも無視はできないはず。私は、野球・ソフトボールがオリンピック競技に復帰することを信じているし、オリンピックで行われるに相応しい競技であると胸を張って言える。来月、岐阜県揖斐川町で行われる東アジアカップでは、『日本代表』としても、来日する中国、チャイニーズタイペイ、韓国の代表チームとも協力し、オリンピック競技復帰をPRしたいと思う」と熱く語った。
上野由岐子選手は、「オリンピックが『すべて』では決してないけれど、オリンピックという舞台があったからこそ、『夢』を見ることができたし、その『夢』を追いかけることができた。そして……その『夢』を追うことができるということこそが幸せだった。その『夢』の舞台を、次の世代のために用意してあげたいと思うし、そのためにはオリンピック競技復帰を是が非でも実現させたい」と、オリンピック競技復帰へかける思いを語った。
2020年オリンピック実施競技の最終決定は9月。残された時間は決して多くはない。それでも、野球・ソフトボールが「本気」を見せれば、まだまだやれることがあるはずである。
読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズ、両チームの選手たちからも、「NPB(日本野球機構)やJPBPA(日本プロ野球選手会)が、プロ野球選手のオリンピック参加について、公式な組織決定を打ち出しているわけではなく、現時点で明確な方針が示されているわけではないが……」と前置きした上で、「個人的には、野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰を応援している!」との声は多く、「頂点にプロスポーツが確立している野球に比べ、ソフトボールにはオリンピックが必要。そのためにも野球・ソフトボールのオリンピック競技復帰が実現してほしい」「今は人気のある野球だが、その未来を考えれば、オリンピック競技となり、世界的な普及を進めていくことは絶対に必要」などの意見も聞かれた。
同じ「ベースボール型」の競技に携わり、『頂点』を極め、君臨している選手たちだからこそ、その競技に愛着がないわけがないし、オリンピック競技復帰を願わないわけがない。
その『想い』があるからこそ、ごく自然に両チームの選手によるチラシ配布への『協力』という『行動』へとつながったのだろう。
この踏み出した『第一歩』が、大きなうねりとなり、世の中を動かすことにつながる可能性は十分にある。野球・ソフトボールが真の意味で連携し、オリンピック競技復帰を訴えることができれば……。『世の中』を動かすだけの『力』を野球・ソフトボールという競技は持っているはずである。
野球・ソフトボールを愛する者たちよ!
今こそ……その『底力』を示そうではないか!!
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