2014.2.14
 

 




平成25年度 全国指導者中央研修会を開催
委員長報告を行った日ソ協・竹島正隆指導者委員長



研修会には、日ソ協指導者委員会をはじめ
全国から計68名が参加した



北海道を代表し、 「北海道における『公認ソフトボール準指導員養成講習会』
『義務研修会の現状と課題』について」発表した鎌田英樹氏



近畿地区を代表して
「近畿地区における『公認ソフトボール準指導員養成講習会』の
現状と課題」について発表した佐子完十郎氏



大分県を代表して
「大分県における『指導者委員会』の組織づくりの現状と課題」について発表した高橋秀幸氏



事例発表の後には、地区別のブロック研修会を開催。
事例紹介や今後の指導者のあり方、課題について議論し合った



研修2日目
「JICAボランティアとソフトボールの普及について」
をテーマに講演した公益社団法人青年海外協力協会の井上栄氏

  「(公財)日本サッカー協会の指導者育成システムについて」
をテーマに講演した(公財)日本サッカー協会特任理事・
技術委員長の山口隆文氏

  「震災復興と指導者のリーダーシップについて」をテーマに講演した衆議院議員で内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官の亀岡偉民氏

  「選手の将来を左右する」指導者たちが今、行うべきこととは……
指導者は、常に先頭に立ち、考え、行動していくことが求められる

平成25年度 全国指導者中央研修会




平成25年度全国指導者中央研修会

 平成25年度全国指導者中央研修会が、去る2月8日(土)・9日(日)の両日、東京・大森東急インにおいて開催された。

 研修会には、(公財)日本ソフトボール協会指導者委員会をはじめ、全国各都道府県支部協会の指導者委員長、一般参加者を含めた計68名が参加。ソフトボールの普及・振興を図る上で極めて重要な役割を担っている全国の指導者の代表者たちが、ソフトボール指導者として求められる役割や、今後のあるべき姿を考え、意見交換を行うと同時に、指導者のより一層の資質向上を図るべく、自己研鑽を重ねた。

 研修会初日、冒頭では(公財)日本ソフトボール協会・笹田嘉雄専務理事が挨拶に立ち、「日本協会も『公益法人』に移行し、今年の6月で2年になる。その間、スポーツ界全体が『新しい時代』を迎えており、それに即した新しい組織・団体になるべく努力をしているところである。先日、日本協会から各都道府県支部協会に向け、平成25年度の事業報告、決算報告、次年度の事業計画、予算計画等の提出をお願いしたところである。これも今までになかったことではあるが、日本協会は『公益法人』の認可を受けたことで、様々な補助金や税制面の優遇措置を受けている。その日本協会の委託先である各都道府県支部協会にも、日本協会と同様に適切な会計処理、事務処理を行うよう内閣府から指導されている。公益法人となる以前とは、事情も状況も違っていることを理解し、ご協力をお願いしたい」と、公益法人として襟を正していく必要性を説き、「ここに集まった全国の指導者の代表者である皆さまは、各支部協会において、『指導的立場』にある方々ばかり。日本協会と歩調を合わせ、『透明性』があり、『公益性』の高い組織運営を行っていただくようお願いしたい」と、締めくくった。

 指導者連絡会議では、(公財)日本ソフトボール協会・竹島正隆指導者委員長が、「昨年は体罰が大きな社会問題となった。いかなる理由があろうとも、指導現場において、身体的・精神的暴力行為は絶対にあってはならない。このことを指導者養成講座や義務研修会等で引き続き呼びかけてほしい」と、指導現場における体罰と暴力の根絶が訴えられた。また、指導者委員会は、「1.指導者の資質向上」、「2.有資格指導者の拡充(若年層、女性)」、「3、指導者マイページ利用の促進」の3つの重点施策を策定。「『1.指導者の資質向上』は、『@義務研修受講率の向上』と『A公認コーチ・上級コーチ養成会受講の促進』を目標とし、『2.有資格指導者の拡充(若年層、女性)』では、5年後、登録チーム数×1.5名の16,050名を目標に、現役トップアスリートの資格取得についても促進していきたいと考えております。そして、『3、指導者マイページ利用の促進』については、マイページを利用することで、資格に関する詳細に得られるため、ぜひ、多くの方に活用していただきたいと思います」と、ソフトボールにおける指導者資格取得状況と今後の課題と展望が語られた。

 この後、研修会では全国各支部で実施されている公認ソフトボール指導者養成講習会等の事例発表が行われ、北海道ソフトボール協会指導者委員長の鎌田英樹氏((公財)日本ソフトボール協会指導者委員会委員)が「北海道における『公認ソフトボール準指導員養成講習会』『義務研修会』の現状と課題」について、近畿ソフトボール協会指導者委員長(滋賀県ソフトボール協会指導者委員長)佐子完十郎氏が「近畿地区における『公認ソフトボール準指導員養成講習会』の現状と課題」について、大分県ソフトボール協会指導者委員長の高橋秀幸氏が「大分県における『指導者委員会』の組織づくりの現状と課題」について、それぞれ発表を行った。

 北海道の鎌田氏からは、北海道の現状として、まず、登録チーム数の減少が進んでおり、さらには若年層の有資格者が少なく、養成講座の実施も、地方では定員に満たず、都市部での開講に限られてしまい、地域によってはなかなか有資格取得者が増加しないという現状が語られた。有資格者の資質向上に関する取り組みについては、北海道協会独自で毎年行っている義務研修会に、その年ごとに各分野の専門家を呼び、実技も交えて行われているという報告がなされた。

 近畿地区の佐子氏からは、まず、近畿地区指導者委員会として、例年通り、大会視察や準指導員養成講座の実施、また、資格取得に関する課題や現状についての情報交換の場を持ったという活動報告が行われた。そして、昨今の体罰問題については、「いかなる理由があろうとも身体的・精神的暴力行為はあってはならない」と深く認識する場として養成講座は重要な機会であることから、受講生を対象に意識調査を行い、そのワークシートをもとにした検定試験問題を実施したことが資料とともに報告された。また、「養成講習会や義務研修会において、『倫理に関するガイドライン(体罰問題をはじめとする)』を取り扱う優先順位を上げる必要があり、自分の体験や意識を掘り起こすプログラムが必要ではないか。協会内に相談できるような場所が必要なのではないか」という課題が挙げられた。

 大分県の高橋氏は、県内のチームでは、1チームに有資格者1名であったこれまでの状況から複数名に増える流れはあるものの、チーム数そのものが減少傾向にある厳しい現実に直面していることや、現在は委員長1名と副委員長1名の計2名で準指指導員養成講座等の事業が企画・運営されている状況を報告。今後の大分県協会指導者委員会の組織化への取り組みとして、平成26年度からは各支部に指導者委員長を配置し、指導者委員会を開催する予定となっていること、そして、組織化を進めた後、強いチームを作り上げていくために、選手強化との連携も強め、これまで選手強化における分野の事業であった指導者招聘事業にも積極的に参加していくといったことを考案していることが報告された。

 各支部の事例発表の後には、全国各ブロック(北海道・東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)に分かれての地区別研修会を実施。各都道府県での指導者の活動報告、指導者資格の活用に関して、また、地区別に実施されている指導者養成講習会について、活発な意見交換が行われた。

 地区別研修会終了後には、参加者全員が互いの親睦を深めるための情報交換会を開催。全国から集まった指導者たちが、和やかな雰囲気の中、他の都道府県の指導者たちと活動状況の情報収集や意見交換を行い、初日の日程を終了した。

 研修会2日目は、3名の講師による講演が行われ、まずは、公益社団法人青年海外協力協会(事業部駒ヶ根事業課)の井上栄氏が「JICAボランティアとソフトボールの普及について」をテーマに講演。まず、JICA(独立行政法人国際協力機構)が行っているボランティア派遣の中で、自身が体育の教師としてソロモン諸島へ派遣されることが決まり、平日は教員養成学校で授業を実施。休日にソフトボールを行おうと、「人集め」に奔走し、町に貼ったポスターを見て集まった4人と始めた活動も、2か月後には50人を超え、用具が足りないという問題に直面しながらも、中高生の大会を実施するに至った体験が語られた。今後、途上国でソフトボールを普及、継続するための課題として、「1.安定しない情勢、2.ボランティア派遣期間、3.連盟・協会の資金難、4.ソフトボール用具の劣化・不足が挙げられ、“いかに継続するか”が大切であり、対策としては、1.継続的、計画的なボランティア派遣、2.JICAボランティア事業への理解者拡大が重要である」と、これまで青年海外協力隊として活動してきた様々な経験と考えが語られ、講演後には参加者がソフトボール用具の提供を申し出る場面もあった。

 続いて、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)特任理事・技術委員長(育成担当)の山口隆文氏が「(公財)日本サッカー協会の指導者育成システムについて」をテーマに講演。2013年1月現在、71,020人の指導者登録数を誇る日本サッカー協会。「夢を見よう」を合言葉に、「2050年までにサッカーファミリーが1000万人になり、FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップを日本で開催し、その大会で優勝チームとなること」という2050年のまでの約束を設定した「JFA2005年宣言」を達成するために、2007年にロードマップを策定。その中で、「サッカー文化の醸成」をメインテーマとし、U12世代での年間リーグ戦を行う等「ゲーム環境」を整備していくこと、また、「指導者養成」にも重点を置き、将来的には47都道府県に専任の育成責任者を置くことが目標として設定されたことが説明された。
 その上で、日本サッカー協会の技術委員会の役割についても、「代表チーム強化」、「ユース育成」、「指導者養成」に「普及」を加えた4本柱とし、「最終的にどこをめざすのか」という大きなテーマを、全国高校選手権大会や全国少年大会で勝つことではなく、常に、世界を見据えた「グローバルスタンダード」に設定していることが説明された。
 「各カテゴリーの世界大会」を分析しながら、「問題を発見」し、「課題の抽出」を行い、さらにそこから「克服のシナリオ作成」し、「問題の解決」を図り、「各カテゴリーの世界大会」に挑むという“サイクル”を作り、強化策の推進を行っていることが述べられた。
 最後に、日本サッカー協会の行っている「ライセンス制」にはベースとなる初級のD級からJリーグおよび代表監督に求められるS級までがあり、「サッカーの原理原則」を「幹」として、D級では簡単な表現を使い、分かりやすく説明し、S級では専門的な言葉を使い、より詳細に説明を行うといったカリキュラムの説明や、「指導者養成の重要性」については、まずは理解者を増やすこと、そして、”ベクトル”を合わせ、「同じビジョン」、「同じ方向性」で力を集結させるという方針で指導者養成が行われていることなどが説明された。

 最後は、衆議院議員(内閣府大臣政務官兼復興大臣政務官)の亀岡偉民氏が「震災復興と指導者のリーダーシップについて」をテーマに講演。「震災の時、上に立っている者たちが会議、会議で現場に出ることが出来なかった。本来は、現場に出てきて、現場を見て、現場で対応すべきではないだろうか。現場に来なければ、何が起きているか分からない。また、トップが現場で陣頭指揮に立つことで、士気が高まるのではないか。トップに立つものが逃げてしまったり、迷ってしまったり、泣いてしまったとしたら……それでは、現状は変わらない。どうやったらよくなるか、変わるか、考えなければいけない」と震災復興に携わる自身の思いから、今後、“求められるリーダー像”が語られた。講演の後半、亀岡氏は子どもたちの指導方法にもふれ、「指導者として活動される皆さんには、ぜひ、子どもたちに夢を持たせるような指導をしてもらいたい。出来なかったことを感情的になって怒るのではなく、どうやったら出来るようになるのか教えてほしい。まずは、子どもたちの多様性を大切にする。多様性の中での個性の活かし方というものがあると思います。まずは、皆さんが人生の中で得てきた経験を、どうか指導に活かしていただきたい」と、熱い思いを述べると、ソフトボールに例えてさらに具体的な部分にもふれ、「最初は捕れないボールでも、適切な練習を続けることで必ず、捕れるようになる。そして、捕れるようになり、上手くなれば、自信が持てるようになる。これが、何よりも大事なこと。子どもたちには何事にも挑戦し続けてほしいし、指導者の方々には子ども一人ひとりの“個性”と“特徴”を活かす指導をしてもらいたい」と熱弁。最後に、「指導者は多くの人と触れ合い、いろいろな考えを聞きながら、今後のあるべき姿を考え、行動していかなければならないのではないでしょうか」と投げかけ、参加者を奮起させた。

 全国から多くの指導者が集まり、今年度も開催された全国指導者中央研修会。変化し続ける時代の中で、公認指導者“13,449名”(平成25年10月1日現在)を数えるソフトボール指導者に求められる役割は、年々大きく、重要なものになってきている。多様な社会の変化に対応し、多くの人々から「真に求められる」指導者を育成する。指導者としてのあり方、資質、それが今まさに、ソフトボール界でも問われている。