2014.12.24
 

 

第4回学校体育ソフトボール
全国指導者伝達研修会を実施!




第4回学校体育ソフトボール全国指導者伝達研修会が開催された

  特別講演を行う文部科学省・高橋修一教科調査官



基調講演を行う日ソ協・丸山俊克学校体育推進副委員長



研修会初日、指導実習も行われた



事例発表を行う岩手県教育委員会・千田幸喜指導主事



事例発表を行う岐阜市立長良西小学校・田島学教諭



研修会2日目にも指導実習の時間を持ち、各班ごとに
出された「つまづき」克服のための指導法を研修した



「ベースボール型」の授業展開へ……意欲と情熱が
溢れる研修会となり、全国への広がりが期待される



平成26年度 第4回学校体育ソフトボール全国指導者伝達研修会

 去る12月20日(土)・21日(日)の両日、岐阜県大垣市・大垣フォーラムホテル、大垣城ホール、岐阜聖徳学園大学を会場に「第4回学校体育ソフトボール全国指導者伝達研修会」(主催:公益財団法人日本ソフトボール協会、後援:文部科学省、岐阜県、岐阜県教育委員会、大垣市、大垣市教育委員会、主管:公益財団法人日本ソフトボール協会 学校体育推進委員会、岐阜県ソフトボール協会)が実施された。

 この研修会は、平成24年4月からはじまった「ベースボール型」の必修化に伴い、公益財団法人日本ソフトボール協会が新たに研究・開発を行った、従来のソフトボール以上に学校の教育現場で採り入れやすく、授業展開をしやすい、安全性の高い用具を使用した「学校体育ソフトボール」への理解を深め、今後さらに全国的な普及・展開をめざしていこうというものである。
 また、現代では、子どもたちの体力水準の低下や「運動する子ども」と「そうでない子ども」の二極化傾向等の指摘を踏まえ、体育授業等学校教育活動を通して体を動かす楽しさや心地よさを経験することにより、運動意欲を高める取り組みが求められており、この伝達研修会では、子どもの体力向上に資するとともに、「ベースボール型」の授業の指導法について、指導者として必要な知識や技能の習得を図り、参加者が各地域(ブロック)や都道府県において、本研修会の内容を踏まえた伝達研修会等の講師として活動し、学校体育ソフトボール授業担当者へ指導助言等を行うことのできる資質・能力の向上を図るとともに、「学校体育ソフトボール」の全国的な普及・展開のための「指導者」を育成することを目的として開催されている。
 昨年の「第3回」の研修会から、文部科学省の「後援」がつき、実際に「ベースボール型」が「必修」となっている小・中学校の教育現場の「最前線」に立つ先生方が研修会参加者の大多数を占め、中には教育委員会指導主事といった方々の参加も実現する等、研修会参加者の顔ぶれだけを見ても、回を重ねるごとにこの研修会の内容が充実し、中身の濃いものとなっていることがうかがえた。

■研修会初日(12月20日/土)
 まず公益財団法人日本ソフトボール協会の専務理事であり、学校体育推進委員長でもある高橋清生が挨拶に立ち、「周知のように、文部科学省「学習指導要領」の改訂に伴い、平成23年4月から小学校5・6年生、平成24年4月からは中学校1・2年生の学校体育授業において『ベースボール型』が必修種目となり、ソフトボール界にとっては、底辺拡大、さらなる普及活動を力強く推進できる“ビッグチャンス”ともいえる機会であると認識している」と挨拶。「前回の研修会から文部科学省の『後援』をいただき、実際に小学校・中学校の教育現場の最前線にいる皆さんの参加が実現した。これまでは、なかなかそのような理想・構想を持っていても、実際にこの場に集うのはソフトボール協会関係者ばかりであったり……。それでも回を重ねていくことで、それが『実績』となり、文部科学省の後援を得るに至り、皆さんの参加が実現したことを喜んでいる」と、文部科学省の後援を得るまでの経緯・苦労が語られた。また、「この『学校体育ソフトボール』を一つの起爆剤とし、ソフトボールを楽しみ、歓声を上げる生徒たちの姿を学校の教育現場に取り戻してほしい。ソフトボール『復権』のため、この研修会が実り多いものとなるよう期待している」と、学校体育ソフトボール授業の推進への決意と今後の展開・広がりへの期待を口にした。

 この後、研修会は、本格的な研修内容へと入り、「小・中学校体育授業におけるベースボールの必修化について−文部科学省の基本方針−」と題した文部科学省スポーツ・青少年局体育参事官付教科調査官・高橋修一氏(国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官)による「特別講演」でスタートした。
 まず学習指導要領とは、法的拘束力を持つもので、教師が指導すべき「最低基準」であり、すべての教師が指導すべき内容であることが再確認された。
 その上で、文部科学省として「豊かなスポーツライフの実現」を掲げ、その「基本方針」に沿う形で学習指導要領を策定し、実際の指導現場において、どの段階で、どこまで指導すべきか、その領域や種目ごとに体系化され、より具体的に、明確に、記されていることが強調された。
 今回の講演では、「1.子供の現状から」「2.学習指導要領における指導内容等」「3.運動部活動と喫緊の課題」という『3つの視点』から講演が行われ、まず子供の現状が報告され、「運動する」児童・生徒と「運動しない」児童・生徒の二極化が進んでおり、中学校においては1週間の総運動時間が60分未満の生徒が、男子は6.9%、女子は21.8%おり、そのうちの約7割は、「まったく運動しない」という深刻な状況にあることが報告された。また、運動技能も低下傾向にあり、特に「ソフトボール投げ」では、平成20年以降で最も低い値であったことも報告され、ボール投げにおいては、幼児期からボール投げをする運動習慣を持っている児童・生徒、あるいはそのような経験・体験を持つ児童・生徒であったとのことであった。
 児童・生徒の意識調査においても、「運動・スポーツが得意」と答えた児童・生徒が、必ずしも「運動・スポーツが好き」と答えていないという興味深い報告も行われた。
 それらを踏まえた上で、今回の学習指導要領では、従前に比べ、指導内容の体系化・系統化が進められており、小学校・中学校・高等学校の12年間を4年ごとに系統立て、それぞれの段階でそれぞれの発達段階に応じ、学ぶべき内容や習得すべき技能等が関連づけてプログラムされていることが改めて解説され、この研修会に参加しているのが、中学校の先生であることもあり、小学校から中学校へ、中学校から高校へとつないでいく、重要な役割を担っていること、中学校だけでなく、小学校、高校との「連携・協働」が必要であることが強調された。
 実際の授業においては、その授業の「ねらい」「めあて」を明示し、学習の意図・ねらいを明確にすることで、児童・生徒はその授業に能動的・積極的に取り組むようになること、また、評価されるのは、技能だけではなく、態度、知識、思考・判断もその対象であり、授業の中で、「態度」においては、お互いの心情を思いやりながらも、自分の考えをしっかり述べたり、相手の話をキチンと聞き、チームの話し合いに責任を持って関わろうとする態度を有しているかどうか、「思考・判断」では、提供された作戦や戦術から自チームや相手チームの特徴を踏まえた作戦や戦術を選ぶことや、仲間に対して、技術的な課題や有効な練習方法の選択について指摘すること等が挙げられており、それにより、例えば技能の劣る児童・生徒でも、作戦の立案や戦術の選択で「チームに貢献できた」「自分が役に立った」と実感でき、それぞれが様々な形でチームに関わり、役割を担うことできるような授業展開をめざすべきであることが改めて説明された。
 最後に、運動部活動についても言及され、運動部活動に熱心な児童・生徒は、家庭においてもそれを勧められる環境にあり、特にソフトボールのようなチームスポーツでは、学校単位での部活動の展開が難しい状況(チーム構成に必要な人員・人数が集まらない)もあることから、学校だけではなく、家庭や地域との連携・協働が必要で、複数の学校が集まって活動すること等も視野に入れていく必要があるとし、特別講演を締めくくった。

 続いて、公益財団法人日本ソフトボール協会・丸山克俊学校体育推進委員会副委員長( 同協会指導者副委員長/東京理科大学教授)が、「小・中学校体育授業における『ベースボール型(ソフトボール)』の必修化について−その経緯と課題−」と題した「基調講演」を行った。
 ここでは、小・中学校体育授業におけるベースボール型(ソフトボール)の必修化に至るまでの経緯を詳細に説明。「ソフトボールに児童・生徒を合わせるのではなく、児童・生徒の実態に合わせたソフトボール授業を展開しなければならない」ことが強調され、そのために学校の授業に採り入れやすく、「ヘルメットもマスクもいらないソフトボール」として安全性に配慮し、誰にでも気軽に、しかも楽しく、安全にソフトボールができるよう、「学校体育ソフトボール」の基本ルールの策定や専門の用具が研究・開発されたことが説明された。
 しかし、いち早くこのような取り組みを行ってきたにも関わらず、現状では、まだまだその普及・推進は十分ではなく、実際の授業展開においては、従来の用具がそのまま使用されていたり、「ティーボール」の方が授業で行われている状況にあることに、強い“危機感”を滲ませた。ただ、その一方で、中学校の指導要領に、小学校同様、「ソフトボール」に加え、「ティーボール」が併記されるような状況となったとしても、大きく考えれば、「ベースボール型」への入口、導入段階として「決してマイナスではない」と、まずは「ベースボール型」の普及・推進が「第一義」であり、「最優先事項」であることが強調された。
 ただし、そのような現状・現実を受け止めながらも、「ピッチャーが投げ、バッターがそれを打つ」のが「ベースボール型」の原点であり、醍醐味であること。最終的な授業展開の「ゴール」、授業における最終的な到達点が「学校体育ソフトボール」となることが理想であることが熱く語られた。
 また、ソフトボールは、バット、グラブ等多くの用具を必要とし、安全性への十分な配慮等もしなければならず、実際の教育現場において、ソフトボールが決して「指導しやすい」教材ではないということを認識した上で、誰でも気軽に、しかも楽しく、安全に、授業の中で行えるような「工夫」が必要で、そのためにも、「学校体育ソフトボール」が「ヘルメットもマスクもいらないソフトボール」として安全性に最大限配慮し、メーカー各社の協力を得て、専用用具を研究・開発し、「ベースボール型」の最大の魅力である「打つ」ことに特化させたルールをスローピッチソフトボールを土台として策定したことなどが、その経緯・ねらいとともに改めて説明され、ソフトボールだけでなく、同じ「ベースボール型」の野球とも連携・協力し、「ベースボール型」の「入口」に一人でも多くの児童・生徒が立ってくれるよう、努力していくことが必要であると説き、基調講演を終了した。

 この後、バスで実技研修会場である大垣城ホールに場所を移し、「指導実習」が行われた。ここでは、松田和広学校体育推進委員(延岡市立南中学校教諭)を中心に、ボールの握り方からはじまり、正しい投げ方を指導するためのポイント、ボールの投げ方、キャッチボール等の投動作の「基礎・基本」の研修が行われた。
 同時に、その投動作がピッチングやバットスイングにおける身体の使い方・体重移動にも「共通点」があることなどが、わかりやすく丁寧に解説され、それを理解し、投・打に「共通のイメージ」を持つことが上達の早道であることが指導された。
 また、ボールを捕球する際のグラブの使い方などについても指導され、ゴロ捕り、バッティングの基本等も学ぶ時間を持った。
 今回の研修では、参加者を4つの班に分け、それぞれに「班長」を置き、班長をリーダーとして班ごとに研修を実施。班の中で、互いに気づいたポイント等をアドバイスし合ったり、話し合いながら、研修が進められた。
(※学校体育推進委員会では、「学校体育ソフトボール」の基本的な技術指導・授業展開をまとめた動画を、公益財団法人日本ソフトボール協会のオフィシャルホームページで公開しています。
http://www.softball.or.jp/info_jsa/joho/osirase/guide_video.html
ぜひそちらもご活用ください)

 夕食時には、実技研修を行った班ごとに着席。食事をともにしながら、「情報交換会」を行い、それぞれの県・地区の実情や授業における悩みや課題等に至るまで、様々な話題で盛り上がり、情報交換。47都道府県から集まった先生方が「新たなネットワーク」を構築する等、実り多きひとときを持ち、初日の研修を終了した。

■研修会2日目(12月21日/日)
 研修会2日目は、研修場所を岐阜聖徳学園大学・羽島キャンパスの体育館に移して行われた。
 まず「事例研究発表」が、千田幸喜氏(岩手県教育委員会事務局スポーツ健康課主任指導主事兼主任保健体育主事)、田島学氏(岐阜県岐阜市立長良西小学校教諭)より行われた。
 千田幸喜氏は、岩手県における事例を紹介し、まず「ボール運動・球技におけるベースボール型の技能」について、学習指導要領解説に示されているボール操作の例示を引用し、そこに示されている1〜4の項目が、小学校5・6年、中学校1・2年、中学校3年・高校入学年次、高校その次の年次以降、どの段階にあてはまるのかを明確に分類。そうすることで、それぞれの年次で、何をやればよいのか、どこまでの技能を身につけさせればいいのかが明確になり、段階を踏み、連携を密にしながら、指導することができると述べ、投球動作を学ばせるために、メンコや紙鉄砲等を利用したユニークな指導法を紹介。また、ボールを床や地面に叩きつけるように投げてバウンドさせ、それがどの高さまで上がったかを競うような方法、ブーメラン(ハガキで作成)、バドミントンのシャトルを利用して、大きな動作で送球できるような指導法の数々が紹介された。
 その他にも、様々な形に工夫の凝らされた用具や指導法が紹介され、限られた時間・場所の中でも、楽しみながら、効率的に、自然と「ベースボール型」に必要な動作が身につくような練習方法、指導法が例示された。
 千田氏は、「ベースボール型の指導においては、まず最低限の技能を保証することからはじめ、導入段階としてティーボールを利用し、止まったボールを打つことからはじめた方が良いように思う。また、ゲームのルールを複雑にせず、簡易化すること。人数を少なくし、状況判断を容易にし、運動量を増やす工夫をすること。三角ベース等、ベースの数を減らし、安全性が高く、怖さ・恐怖感を持たせないよう、やわらかいボールを使用し、バットで打つことが難しければ、ラケットを使用してみる等、柔軟に対応し、とにかくベースボール型を楽しめるようにすることが大切」と述べ、「ベースボール型はチームスポーツであり、『仲間の学習を援助する』態度を育てることも大切。練習の際に、球出しの補助をしたり、チームの作戦や戦術等、仲間に助言したりすることで、自己の能力を高め、仲間との連帯感を醸成することにつながる」とチームスポーツならではの指導・評価についても言及。「ベースボール型の授業づくりのポイントは、教材を工夫し、ゲームにつながる技能を高める練習が必要で、ルールを簡易化したゲームを行い、単元構成については、メインとなるゲームは毎時間位置づけ、チームの課題解決を図るための話し合いの時間を持つことが重要。単元の前半には、単元の後半の学習で必要となる練習方法を学ばせておくと、学習効果が高まるのでは」と発表を締めくくった。

 続いて、田島学氏が、長良西小学校での事例を発表。実際の授業の風景の映像を流しながら、「ベースボール型ならではの『戦術的思考』を学ばせたかった。例えば、他のスポーツでは、基本的にゴールすれば1点とか、決まった点数しか入ることはないが、ベースボール型(野球・ソフトボール)では、満塁ホームランで一挙4点とかいったケースがあり、試合の状況や得点差によっては、『1点やっても2点目は阻止したい』とか、『大量得点が必要だから、送りバントではなく、強攻策』という場面がある。もちろん、小学校の授業の中では、そこまで複雑な戦術的理解や場面が出てくるわけではないが、なるべくそれに近いような『戦術的思考』が必要となるゲームにしたかった」と話し、「ただ単にベースボール型をやる、ということではなく、最終的にソフトボールや野球につながる、つなげることを意識し、児童の心をとらえた」と語った。その上で、「授業については、『ベースボール型面白い!』という反応が多く、ベースボール型の単元が終わった後でも、ボールを見つけると、『先生、キャッチボールしてもいい!?』と聞いてきたり、実際にやっている姿が見られたことが本当に嬉しかった」と成果を報告した。

 その後、体育館で実技の指導実習。4つの班に分かれ、前日、班ごとに色分けされたカードに「つまづき」を書き出し、それらの課題をどのように克服し、指導すればよいかを話し合い、実際の指導方法について実技を交えて研修を行った。
 班ごとに、キャッチボールについて話し合うところもあれば、バッティングについて議論を交わす班もあり、ゴロ捕球の指導について実技を交えて意見を出し合ったり……といった姿が見られ、なかには模擬的なゲームをはじめる班まであった。
 最後に、班ごとに取り上げた「つまづき」とそれを解決するための指導法についての「まとめ」が班ごとに発表され、全体で閉講式を行い、研修会の全日程を終えた。

 今回で4回目を迎える「学校体育ソフトボール全国指導者伝達研修会」。念願だった文部科学省の後援も得ることができ、研修参加者も実際に小学校・中学校の教育現場にいる先生方の参加が実現し、その研修内容も充実の一途を辿っている。

 昨年の研修会では、その教育現場の「最前線」にいる先生方から、「打つと三塁へ走ってしまう」「グラブを利き手にはめてしまう」「女子についてはボールを投げるという動作は不可能に近い」「ベースボール型の基本的なルール・技術を習得しているのは、一部の競技経験者のみで、他は壊滅的な状態」と、現状の「野球離れ」「ソフトボール離れ」が深刻なまでに進行していることが報告され、文部科学省の教科調査官、大学の教材研究の「第一人者」から、「競技としてのソフトボールを授業で再現することを求めているわけではない」「ピッチャーが投げたボールを打つのは難しい」「グラブの操作は非常に難しいものがある」といった見解が示され、提示された具体的な教材は、少なくとも「競技」としての野球やソフトボールとは、もはや「別物」ものとなっている感があった。

 しかし、今回の研修会では、そこから「最終的に野球・ソフトボールにつなげるにはどうしたらよいか」というアプローチも垣間見られ、導入段階で簡易化した「ベースボール型」のゲームを行ったとしても、そこを「終着点」とするのではなく、あくまでも最終的には、「学校体育ソフトボール」が提示するゲームに近づけていこうという意欲と熱意が感じられた。

 また、今回の研修会に参加された先生方の「ベースボール型」に関する技能の高さに驚かされた。ほとんどが野球、ソフトボールの経験者で、これだけの技能を有していれば、授業におけるベースボール型の指導においても、何ら不自由することなく、いろんな引き出しを用意し、対応することができるであろうことが推察された。

 ただ、なかには競技経験もなく、ベースボール型の指導経験もない、という先生も数名おり、その先生方に対し、公益財団法人日本ソフトボール協会理事であり、学校体育推進委員会副委員長でもある佐野仁美氏は、「よくいらっしゃってくれました。この研修会は、先生方こそが『主役』なんです」と声をかけていたことが印象に残った。

 もちろん、ベースボール型の高い技能と豊富な経験を有し、ベースボール型の授業展開、部活動での指導等に意欲と情熱を燃やす先生方に、この研修会を通じて、今後より一層、「ベースボール型」の授業展開を推し進めていくために、各都道府県、各地区での伝達研修を行うための「核」となる存在になってもらわなくてはならいのは事実だが、それ以上に、今はまだ「ベースボール型」に興味も関心もなく、競技経験も指導経験もない先生方をどう取り込み、巻き込んでいくかがカギになる。
 また、児童・生徒にしても同様で、そういった層を取り込んでいかない限り、本当の意味で学校体育の中に「ベースボール型」が定着することはないといっても過言ではない。

 「ベースボール型」の指導に意欲と情熱を燃やす先生方が、全国にたくさんいることは確認できた。今後は、その先生方を「核」に、どれだけその「仲間」を増やしていけるかが大きな課題となる。
 オリンピック競技復帰へ向け、「追い風」が吹いている「ベースボール型」。これを「一過性」のものに終わらせないためにも、学校教育・学校体育の中に「ベースボール型」を根付かせ、定着させることが大切である。今後、「学校体育指導者伝達研修会」が果たすべき役割は、ますます大きなものとなるはずである。内容のさらなる充実と、各都道府県、各地区への広がりを期待したい。