2015.9.25
 

 

第67回全日本総合女子ソフトボール選手権大会
豊田自動織機(愛知)、15年ぶり4度目の頂点へ!




豊田自動織機が激戦を制し、15年ぶりの頂点へ!



大会には「日本の頂点」をめざし、総勢32チームが出場
東京富士大学は「大学勢」として健闘し、王者・トヨタ自動車を苦しめる戦いを見せた



準々決勝で「宿命のライバル」トヨタ自動車とビックカメラ高崎が激突
延長9回に及ぶ「死闘」の末、トヨタ自動車が4−3でサヨナラ勝ち!



【準決勝】豊田自動織機 VS トヨタ自動車
ケイリン・キャスティーヨが「値千金」の2打席連続アーチ
豊田自動織機が5−0で快勝し、決勝に駒を進めた



王者・トヨタ自動車の「3連覇」達成はならず……



【準決勝】デンソー VS 日立
デンソーが4回表に一挙5点を先制!
自慢の「攻撃力」で7−1と圧勝し、決勝進出



【決勝】デンソー VS 豊田自動織機
豊田自動織機がケイラニ・リケッツのスリーランで先制
その後もデンソー投手陣を打ち込み、着々とリードを広げた



デンソー打線はこの試合わずか2安打と沈黙……
王者を破り、勢いに乗る豊田自動織機に対して「なす術」がなかった



豊田自動織機が7−0(5回コールド)でデンソーを圧倒!
15年ぶりの優勝に、「歓喜」が爆発する



王者の「3連覇」を阻止し、一気に頂点へ駆け上がった豊田自動織機
この「勢い」で日本リーグも制することができるか!?


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 去る9月19日(土)〜21日(月・祝)の3日間、「第67回全日本総合女子ソフトボール選手権大会」が、岩手県花巻市・金ケ崎町/石鳥谷ふれあい運動公園・森山総合運動公園野球場 他において開催され、豊田自動織機(愛知)が激戦を制し、15年ぶり4度目の栄冠に輝いた。

 大会には、前回優勝のトヨタ自動車(愛知)、準優勝のSGホールディングスグループ(京都)をはじめ、日本女子1部リーグから推薦出場10チーム(昨年優勝のトヨタ自動車、準優勝のSGホールディングスグループを除いた10チーム)、全国各都道府県・各ブロックの厳しい予選を勝ち抜いた19チーム、開催地枠として地元1チームを加えた総勢32チームが出場。文字通り「日本の頂点」をめざして熱戦を繰り広げた。

 昨年の覇者であり、今回「3連覇」をめざす王者・トヨタ自動車は、まず1回戦でMSH医療専門学校(広島)を相手に15−0の3回コールド勝ち。しかし、2回戦の東京富士大学(東京)戦では、6回終了時点で1−3と2点のビハインドを背負う「まさか」の「大苦戦」。「3連覇」の夢はここで早々と潰えてしまうのか……と思われたが、土壇場の7回裏、一死一・二塁から9番・町田ひかるのライト前タイムリーで1点差に詰め寄ると、さらにこの後、二・三塁のチャンスで1番・ナターシャ・ワトリーがセカンドゴロ。このセカンドゴロを確実にさばかれると、ツーアウトになり、まさに「絶体絶命」の状況へ追い詰められるところであったが、「幸運」にもここで二塁手が一塁へ悪送球。この間に三塁走者が還り、ついに試合を振り出しに戻した。こうなると流れは一転してトヨタ自動車へと傾き、最後は2番・山下りらがセンターへ鮮やかなサヨナラスリーランホームラン。6−3で何とか勝利をつかみ、準々決勝へ駒を進めた。

 準々決勝では、「宿命のライバル」ビックカメラ高崎と激突。両チームの実力からして「事実上の決勝戦」と注目を集めたこの一戦では、その「ライバル対決」にふさわしく、序盤から両者が「がっぷり四つ」に組む試合展開。トヨタ自動車・モニカ・アボット、ビックカメラ高崎・上野由岐子の両エースが「世界トップレベル」の見応えのある投げ合いを繰り広げ、2−2のまま、延長タイブレーカーへともつれ込んだ。8回も互いに1点ずつを取り合い、迎えた9回裏、トヨタ自動車は二死二・三塁から4番・坂元令奈が初球を積極的に打って出て、「執念」でセンター前に落とすタイムリー。息詰まる熱戦を4−3のサヨナラ勝ちで制し、準決勝進出を決めた。

 一方、昨年準優勝のSGホールディングスグループは、1回戦の日本文理大学(大分)戦に7−0(6回コールド)、2回戦の大垣ミナモソフトボールクラブ(岐阜)戦にも10−2で圧勝し、順当にベスト8へ進出。しかし、準々決勝・デンソー(愛知)戦では、エース・カーヤ・パーナビーが力投を見せ、6回まで0−0の「緊迫した投手戦」を演じながら、7回裏、最後は「スクイズ」で決勝点を奪われ、0−1のサヨナラ負け。昨年の雪辱を果たすことはできなかった。

 ベスト4には、トヨタ自動車、豊田自動織機、日立(神奈川)、デンソーと、今年も「日本女子1部リーグ勢」が勝ち残り、最終日、「日本一」の座をかけて対戦。

 準決勝・豊田自動織機対トヨタ自動車戦は、先攻の豊田自動織機が初回、死球、盗塁などで二死二塁のチャンスを作り、4番・ケイリン・キャスティーヨはセンターフライ。しかし、平凡なフライに見えたこの打球をトヨタ自動車のセンター・知久幸未が「まさか」の落球……。ツーアウトでスタートを切っていた二塁走者が一気に本塁へ還り、労せずして1点を先制した。先制点を奪った豊田自動織機は、3回表にも前日の「死闘」の「疲れ」が残るトヨタ自動車・モニカ・アボットを攻め、二死から2番・熏竝′氏A3番・狩野亜由美の連打で一・二塁とすると、続く4番・ケイリン・キャスティーヨがワンボール・ワンストライク後の3球目を鋭く振り抜き、センターバックスクリーンへ「値千金」のスリーランホームラン。4点をリードして迎えた終盤6回表には、一死からこの試合の「ラッキーガール」4番・ケイリン・キャスティーヨが今度はライトポール際へソロホームランを叩き込み、トドメの5点目を追加。守っては、打線の援護を受けたエース・ケイラニ・リケッツが、自慢の「ドロップ」を主体にトヨタ自動車打線をわずか2安打に抑え込む「剛腕」ぶりを見せ、完封。豊田自動織機が5−0と「予想外」の試合展開で快勝し、決勝へ駒を進めることとなった。

 もう一方の準決勝・デンソー対日立戦は、両チーム無得点のまま迎えた4回表、デンソーが5番・ジャクリン・トレイナ、9番・山根すずかのタイムリーなど4本の長短打を集中し、一挙5点を先制。これで試合の主導権を握ったデンソーは、その後も5回表、7回表に2番・竹林綾香が2打席連続でソロホームランを放り込むなど、着々とリードを広げ、7−1で圧勝。「攻撃力」を売りとする両者の対戦は、激しい「打ち合い」になることも十分予想されたが、終わってみれば4回表に先手を取り、この回を「ビッグイニング」としたデンソーが最後まで日立に試合のペースを握らせることなく、大差で勝利し、決勝進出を決めた。

 決勝では、今大会「勢い」に乗り、勝ち上がってきたデンソーと豊田自動織機が「日本一」の座をかけて対戦。豊田自動織機の先発は「剛腕」ケイラニ・リケッツ、デンソーは先発・近藤光と見せかけ、初回の守りにつくと同時にDP・ジャクリン・トレイナが投手の守備を兼務。その「切り札」ジャクリン・トレイナを「実質的な先発投手」にする戦法を使い、試合がスタートした。

 試合は両外国人投手が緊迫した「投手戦」を展開するかと思われたが、準決勝で王者・トヨタ自動車の「3連覇」を阻止する「金星」を挙げた豊田自動織機が、その「勢い」をそのまま持ち込み、初回に先制攻撃。一死から2番・洲鎌夏子が三遊間を破るヒットで出塁すると、3番・ケイリン・キャスティーヨのサードゴロはフィルダースチョイスとなり、一・二塁。ここで4番・ケイラニ・リケッツがワンボールの後の2球目を完璧にとらえ、センターバックスクリーンへ豪快なスリーランホームラン。「投打の大黒柱」がこの決勝の舞台で自ら「先制の一撃」を突き刺し、大きな3点が豊田自動織機にもたらされた。この一発で有利に立った豊田自動織機は、さらに二死後、6番・国吉早乃花、7番・中森菜摘の長短打でこの回4点目を追加。その後も攻撃の手を緩めることなく、3回裏に6番・国吉早乃花のセンターへのソロホームランとダブルスチールで2点。5回裏には二死一・二塁から2番・洲鎌夏子にセンターオーバーのタイムリーツーベースが飛び出し、リードを7点に広げ、あっさりと5回コールド勝ちが成立。デンソー投手陣(ジャクリン・トレイナ、近藤光)に10安打を浴びせる「猛攻」で、一気に「頂点」へと登り詰め、15年ぶり4度目となる栄冠を手にした。

 今回、王者・トヨタ自動車の「3連覇」を阻み、15年ぶりに全日本総合選手権を制した豊田自動織機。その優勝の「立役者」となったのは、ケイリン・キャスティーヨ、ケイラニ・リケッツといった「外国人選手」たちだった。ケイリン・キャスティーヨは、準決勝・トヨタ自動車戦でモニカ・アボットから2本のホームラン。前日のビックカメラ高崎戦で上野由岐子と息詰まる投手戦を繰り広げ、9イニングを投げ抜いたモニカ・アボットに「連投の疲れ」があったことは否めないが、「甘くなったライズ」を見逃すことなく、2打席連続「弾丸ライナー」で見事に叩き込んだ。また、ケイラニ・リケッツも同じく準決勝のトヨタ自動車戦で2安打・10奪三振の快投。決勝・デンソー戦では、初回に自ら先制のスリーランホームランを放り込むなど「打撃」でも活躍。「投打の大黒柱」であることを改めて証明した大会となった。

 しかし、その一方で「日本人選手の活躍」といった点ではどこか物足りなさが残る。日本リーグで「36連勝」を飾るなど連勝記録更新中のトヨタ自動車・山根佐由里も、2回戦の東京富士大学戦で3失点を喫するなどつかまり、無念の途中降板。その後はやはり、「絶対的エース」モニカ・アボット一人に頼らざるを得なかった。また、山根佐由里と同じく、女子TOP日本代表に名を連ねる太陽誘電・藤田倭も、準々決勝・日立戦で延長11回まで「力投」を続けながら、結局2−3で競り負け、ベスト8止まり。善戦はするものの、「ここぞ!」という場面で脆さを出してしまうことが多く、現状ではまだ「真のエース」と呼べる存在にはなれていない。そういった部分を考えると、敗れはしたが、ビックカメラ高崎・上野由岐子の「百戦錬磨のピッチング」「存在感」は群を抜いていた。モニカ・アボット、ケイラニ・リケッツら「世界トップレベル」の相手に真に対抗できるのは、今大会を見ても、やはり上野由岐子ただ一人であったように思う。

 この全日本総合選手権を終えると、戦いの舞台は再び日本リーグへ戻ることになる。今大会で「頂点」に立った豊田自動織機が、この「勢い」を持続させ、リーグ戦でも快進撃を見せるのか。今回悔しさを味わったチームは、当然「リベンジ」に燃え、チームを立て直してくることだろう。

 クライマックスを迎える日本リーグの舞台で、次は「日本人選手の活躍」を期待したい。「世界一流」の海外の選手たちに、逆に「刺激」を与えるような、そんなイキのいい「新たなスター」が出てきてもいいはずだ。激戦を戦い抜いた彼女たちは、次なる舞台で再び「頂点」をめざし、凌ぎを削る!