2016.2.12
 

 

平成27年度 全国指導者中央研修会
研修会のさらなる発展のため、新たな一歩を!




平成27年度全国指導者中央研修会を開催!



研修会には全国の指導者の代表者「57名」が参加



「もう一度原点に立ち返り、研修会の発展を!」
と挨拶した、日ソ協・寺村健人指導者委員長



「指導者の養成について」
事例発表を述べた、小野寺徹氏(東北地区/宮城県)



「指導者の養成とフェアプレーについて」
事例発表を述べた、佐子完十郎氏(近畿地区/滋賀県)



「準指導員の養成について」
事例発表を述べた、嘉屋徳英氏(中国地区/広島県)



地区別研修会、グループ別分科会においても
指導者資格の活用等に関して、熱心な討議が行われた



公認指導者“12,338名”を数えるソフトボール指導者。
指導者委員会が担い、果たすべき役割は大きい!



平成27年度全国指導者中央研修会/東京・大森東急REIホテル

 平成27年度全国指導者中央研修会が、去る2月6日(土)・7日(日)の両日、東京・大森東急REIホテルにおいて開催された。

 研修会には、(公財)日本ソフトボール協会指導者委員会をはじめ、全国各都道府県支部協会の指導者委員長ら計57名が参加。ソフトボールの普及・振興を図る上で極めて重要な役割を担っている全国の指導者の代表者たちが、ソフトボール指導者として今後どうあるべきかを考え、活発な意見交換を行うと同時に、より一層の資質向上を図るべく、自己研鑽を重ねた。

 また、大きく変動する社会の中で、ソフトボール指導者の現場での課題を洗い出し、現在全国に広く呼びかけている「日本体育協会公認指導者資格の取得」について、資格取得の意義とその重要性を再確認。社会から「真に求められる指導者」を養成していくため、今後どのようなことに取り組んでいかなければならないのかを議論し合うとともに、今回は根本的な部分でもある「全国中央研修会の在り方・開催意義」等についても討議が行われ、改めて参加者の意見・考えが求められることとなった。

 研修会初日、冒頭では、(公財)日本ソフトボール協会・煖エ清生専務理事が挨拶に立ち、現在の日本協会の取り組みや直近の課題を具体的に説明。2020東京オリンピックでの野球・ソフトボールの実施競技復帰を見据え、新たに動き出した選手強化プランの内容や、財源の確保等、今後、日本協会の「総力」を結集して取り組んでいかなければならない事項が述べられ、参加者全員に支援・協力が呼びかけられた。

 指導者連絡会議では、(公財)日本ソフトボール協会・寺村健人指導者委員長が、「ソフトボール指導者の指導対応について」「2012年〜2015年10月までの指導者の登録状況について」「2015年10月時点の登録者の義務研修受講率(競技別)について」の3項目を、配布された資料に基づき報告。

 まず、「ソフトボール指導者の指導対応」について、「平成25年に『スポーツ界における暴力行為根絶宣言』が、日本体育協会、JOC(日本オリンピック委員会)、大学連、高体連、中体連等、各連盟に向けて発表されたが、残念なことに現在も『指導者の暴力行為』は年間で数件確認されている。また、現場での『指導対応』についても、指導者の言動や立ち居振る舞いが当事者(選手)以外の第三者(保護者や観客等)に指摘され、問題となるケースが少なくなく、引き続き指導者の資質向上を強く呼びかけていかなければならない」と訴えると、「2012年〜2015年10月までの指導者の登録状況」においては、「2015年10月時点で公認ソフトボール指導者の登録数は12,338名。2012年から推移をたどると、2013年に過去最高の13,449名まで登録が伸びてはいるものの、2014年は12,289名と減少。今年度においては若干増加したが、数字はほぼ横ばいの状況である。我々指導者委員会としては、なぜそのような傾向に変化してきているのか、その要因を探り、しっかりと対策を講じていく必要がある」と現状を報告。「2015年10月時点の登録者の義務研修受講率(競技別)」からは、「指導者資格の更新にあたって、4年に一度義務研修を受講しなければならないのは必須事項。だが、残念なことではあるが、資格の更新をしなかった理由の一つとして、『義務研修を受講しなかった』という事実がある。本来、義務研修とは指導者が自己研鑽を重ね、自らの資質向上を図るための機会であり、単に資格を更新するためのものではない。義務研修受講の意義を再度徹底させることはもちろん、研修内容も工夫を凝らし、充実させる等、皆でより魅力ある義務研修を作り上げていくことこそが重要である」と委員会方針を語った。

 この後、研修会では、全国各支部で実施されている公認ソフトボール指導者養成講習会等の事例発表が行われ、東北地区・宮城県ソフトボール協会指導者委員長の小野寺徹氏が、「指導者の養成について」。近畿地区・滋賀県ソフトボール協会指導者委員長の佐子完十郎氏が、「指導者の養成とフェアプレーについて」。中国地区・広島県ソフトボール協会指導者委員長の嘉屋徳英氏が「準指導員の養成について」をテーマに、それぞれ発表。

 東北地区の小野寺氏は、これまで宮城県において実施してきた指導者養成講習会の事例を紹介。「ソフトボールを愛する全ての人のために!」を信念に、指導者にとってより多く研修の機会を確保するため、準指導員養成講習会、指導者対象講習会、学校体育ソフトボール指導者養成研修会等を、宮城県独自で平成21年度より毎年度開催していることが報告された。また、独自で義務研修会を開催する利点として、「指導者としての研修機会を増やせる」「ソフトボールに関する理論や技術が学べ、タイムリーな話題にも触れることができる」「指導者同士が顔を合わせることで、様々な情報交換ができる」等が挙げられ、指導者養成講習会開催の重要性が改めて参加者全員に説かれた。

 近畿地区の佐子氏は、近畿地区準指導員養成講習会において実施した「体罰に関する意識調査」の結果と、「指導者養成講習会・各種研修会の内容」について発表。「体罰に関する意識調査」では、「物を投げて身体にぶつける・襟首や胸元をつかむ」「ペナルティとしてグラウンドを何十周も走らせる」等、身体的ダメージが大きい場合は体罰であると感じる傾向が見られたと結果を考察すると、「指導者養成講習会・各種研修会の内容」では、近畿地区準指導員養成講習会の講義内容を具体的に紹介。「体罰問題」や「指導者の在り方」について重点的に研修を重ね、そこで聞いた受講生の「生の声」から、「指導者」そして「体罰」の実態を改めて思い知らされたことが伝えられた。

 中国地区の嘉屋氏は、広島県における「準指導員養成講習会及び義務研修の現状と問題点」を発表。指導者の大半が、資格を未だに「大会に出場するためのもの」としか認識できていない現状から、指導者の資質向上を図るためにも、やはり資格の取得、義務研修の受講を徹底しなければならないと再認識したこと。今後は義務研修への参加を広く呼びかけるために、事前のPR等、積極的な活動を展開していく必要があることが報告された。また、年間を通して計画性のある選手育成を行うことの重要性や、基礎基本・基礎体力作りの重要性についても考えが述べられ、「試合(実戦)を重ねて選手を育てていく考え方もあるが、私としてはただ目先の勝ち負けに一喜一憂するのではなく、選手の年齢や成長段階に応じて、丁寧に、かつ適切に指導を行うことが重要だと考えている。まずはしっかりと計画性を持ち、長い目で選手を育成していく。特に、基礎基本が身に付いていない、基礎体力の無い選手は、いくら試合(実戦)を重ねても『成長』に限界があり、トップレベルに到達することはできない。私自身もこれからまだまだ研鑽を積み重ねていかなければならないが、常に先を見据え、選手の将来を考えられる指導者を一人でも多く育成していきたいと思う」と自身の熱い思いを語った。

 事例発表の後には、全国各ブロック(北海道・東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)に分かれての地区別研修会を実施。各都道府県での指導者の活動報告、指導者資格の活用に関して、また、地区別に実施されている指導者養成講習会について、活発な意見交換が行われた。

 研修会2日目は、従来の形(昨年度までは講師を招き、講演を実施)とは異なり、「グループ別分科会・発表」を実施。ここでは、「義務研修会の完全実施に向けた取り組み」「準指導員養成講習会・指導者対象講習会の必要性について」をテーマに、グループ別での討議が行われ、参加者それぞれの意見・考えが求められた。討議後は、「ソフトボールは指導者の資格取得に対する意識がまだまだ低い(大会へ出場するために必要なものとしかとらえていない)。運営側としては、こういった現実を踏まえ、より魅力ある義務研修を実施できるよう、研修の中身を見直し、その内容を工夫していく必要がある(常に新しい知識を取り入れる!日本リーグの試合観戦等も研修内容に組み込み、男女トップレベルのチーム・指導者を実際に見て学ぶ機会を作ってはどうか?)。資格取得のためだけの講習会にするのではなく、『指導者としてどうあるべきか』を参加者に常に問いかけることが重要(社会から真に求められる指導者の育成、指導者の資質向上に努めることを決して忘れてはならない!)」等、各グループが意見を発表。全国の指導者の代表たちが連帯感を深め、自分たちの手で指導体制づくりを推し進めていこうとする姿勢が感じ取れる「熱意溢れる」分科会となった。

 全国から多くの指導者が集まり、今年度も開催された全国指導者中央研修会。参加者それぞれがソフトボール指導者として自己研鑽を重ねたことはもちろんであるが、今回は改めて「原点」へと立ち返り、この中央研修会の「在り方・開催意義」についても真意が問われる内容となった。しかし、これはある意味、長きにわたって歴史を刻んできた全国指導者中央研修会が総括され、「新たなスタート」を切る時期にさしかかったともいえるだろう。

 「大きく変動する社会の中で選手を指導する立場にいるからこそ、指導者は常に最新の情報を得ながら、謙虚に、ひたむきに学び続けていかなければならい。だからこそ……この中央研修会はこれからも開催していくべきではないのか」。研修会の中では実際にこのような声が多く聞かれた。今後は、組織として具体的に、どのような「指導者養成の体勢づくり」に着手していくかが大きなテーマとなる。公認指導者“12,338名”を数えるソフトボール指導者。「真に社会から求められる指導者」を、このソフトボール界から数多く輩出していかなければならない。指導者委員会が担い、果たすべき役割は極めて大きいのである。