2017.2.12
 

 

●平成28年度 全国指導者中央研修会

「主体性」ある指導者養成の体制づくりを!




平成28年度 全国指導者中央研修会を開催


「互いに議論を重ね、ぜひ、『主体性』ある中央研修会に!」
と挨拶し、参加者を激励した日ソ協・矢島宏指導者委員長



今回も全国各支部の指導者を代表し、三者が事例発表。
「指導者の養成について」をテーマに発表した東京都協会・
小谷野芳昭指導者委員長



「指導者の養成とフェアプレー」について発表した
愛知県協会・白井雅博指導者委員長



福岡県協会・中村好教指導者委員長は、
「準指導員の養成について」をテーマに発表



事例発表の後には、(公財)日本スポーツ仲裁機構
理解増進事業専門員の小山和茂氏が、「スポーツ仲裁・
調停およびスポーツ紛争の予防について」をテーマに講演した



研修会2日目は、前回に続きグループ別討論を実施



最後は、各グループの代表者がそれぞれ意見を発表。
自分たちの手で指導者養成の体制づくりを推し進めていくべく、
「熱意溢れる」グループ別討論となった



指導者はどうあるべきか? また、指導者委員の役割とは何か??
今後は組織としても確かな「方向性」を示していかなければならない

 平成28年度全国指導者中央研修会が、去る2月4日(土)・5日(日)の両日、東京・大森東急REIホテルにおいて開催された。

 研修会には、(公財)日本ソフトボール協会指導者委員会をはじめ、全国各都道府県支部協会の指導者委員長ら計54名が参加。ソフトボールの普及・振興を図る上で極めて重要な役割を担っている全国の指導者の代表が、ソフトボール指導者として今後どうあるべきかを考えるとともに、より「主体性」を持った指導者養成の体制づくりを推進させていくべく、活発な意見交換を行った。

 また、大きく変動する社会の中でソフトボール指導者の現場での課題を洗い出し、社会から「真に求められる指導者」を養成していくため、今後どのようなことに取り組んでいかなければならないのかを議論。全国から集まった代表者たちがそれぞれ考えを持ち寄り、「今後、指導者はどうあるべきか?」「指導者委員として何をすべきか?」等、さまざまな分野について熱く語り合う場となった。

 研修会初日、冒頭では、(公財)日本ソフトボール協会・煖エ清生専務理事が挨拶に立ち、現在の日本協会の取り組みや直近の課題を具体的に説明。特に今年度新設された「相談窓口」(※(公財)日本ソフトボール協会では、組織運営及び事業推進において、すべての関係者の倫理規程に基づく違反行為に関する通報及び相談窓口を設置。本窓口では、当法人顧問弁護士が相談を受け、必要な事案については事実確認を行い、暴力行為等が明らかになった場合は必要な対応(指導・処分等)を行う)を取り上げ、「指導者である以上、選手たちへの『指導力』といった部分はもちろん重要になってきます。しかし、指導者の『暴力・体罰・パワハラ・セクハラ』等が問題視される昨今においては、人としての『倫理観』がクローズアップされており、同時に『人間力』に磨きをかけていかなければなりません。ソフトボールがメジャースポーツの仲間入りを果たし、今後、世間に広く認知されていくためには、まず何よりも指導者の資質向上が必要不可欠となります。選手からも、社会からも、『真に求められる』人材を育成していくこと。それこそが、指導者養成においての『最大のテーマ』といえるのではないでしょうか」と参加者全員に呼びかけた。

 指導者連絡会議では、(公財)日本ソフトボール協会・矢島宏指導者委員長が今回の中央研修会の流れを説明。「今回は例年よりもテーマを絞り、次の2つをポイントにさせていただきます。1つ目は、『指導者対象講習会』を全国各地で積極的に開催してもらいたいということ。そのためにも、ここにいる皆さん(全国の指導者の代表)には全国各地で指導者養成の中心的存在となって、より『リーダーシップ』を発揮してもらいたいと思っています。2つ目は、このほど(公財)日本体育協会で『倫理ガイドライン』という冊子が作成されましたが、我々日本ソフトボール協会指導者委員会としましても、この内容を基にした『ソフトボール指導者専用』のガイドライン(冊子)を作り、全国の登録チームの指導者へ配布したいということです。特に2日目のグループ別討論では、『今後、指導者委員は何をすべきか?』というテーマも加えて建設的な議論展開をお願いしたいと思っておりますので、互いに親睦を深め、情報交換を図りながら、ぜひ、有意義で実りある中央研修会にしましょう!」と具体的な研修内容を語り、参加者への期待も述べた。

 この後、研修会では、全国各支部で実施されている公認ソフトボール指導者養成講習会等の事例発表が行われ、関東地区・東京都ソフトボール協会指導者委員長の小谷野芳昭氏が、「指導者の養成について」。東海地区・愛知県ソフトボール協会指導者委員長の白井雅博氏が、「指導の養成とフェアプレー」。九州地区・福岡県ソフトボール協会指導者委員長の中村好教氏が、「準指導員の養成について」をテーマにそれぞれ講演。

 関東地区の小谷野氏からは、東京都における指導員・準指導員養成講座の内容と運営方法が説明され、まず、平成28年度における指導員養成講習会・準指導員養成講習会の実施経過を紹介。平成29年度の予定は来月(3月)に各講習会の開催案内書を配布し、4月1日、東京都ソフトボール協会ホームページに掲載予定であること。また、昨年11月20日・27日、12月4日・11日に行った平成28年度指導員養成講座の内容も、そのタイムスケジュールを記した資料を基に具体的に紹介され、「基礎理論、指導実習、実技、基礎的な技能と指導法」等の各分野をそれぞれ専門の講師(加村文一、福島豊司、大石益代、佐藤理恵、山田浩二郎、利根川勇、田儀幸男、細田きみ子、馬渕智子)に依頼し、講義を実施したことが発表された。

 東海地区の白井氏は、東海地区準指導員養成講習会で実施した「指導者の考えや行動」についてのアンケート調査の結果と、その考察を発表。アンケート調査の中で、「場合によっては暴力行為を伴ったスポーツ指導も必要だと思う」「プレーヤーとの信頼関係があれば、暴力は許されると思う」「スポーツ指導で暴力を禁止したら、プレーヤーやチームが弱くなってしまう」等の項目に肯定的な意見が少なくなく、“指導者の意識改革”という面ではまだまだ厳しい状況にある“現状”が述べられ、今後の指導者においては、特に時代の流れや社会の変化を敏感に感じ取り、“今の選手たち”をしっかり把握する必要があること。そして自らの指導方法においても、常に最新の情報を得ながら、自己研鑽に励むことの重要性が参加者全員に説かれた。

 九州地区の中村氏は、福岡県における準指導員養成講習会の事例を紹介。「講習会を実施する際には、その講習内容にソフトボールの技術やルールに関する知識等、さまざまな分野があるので、常に各専門委員会(技術委員会、審判委員会等)と連携を図るようにしています。また、講師も受講生も日本協会発行の『指導教本』を『共通のツール』とし、特に講師においては、講習を進めていく中で『主観』に走ることなく、必ず『指導教本に基づく』講義・実技を行うよう、徹底させています」とその運営方法や留意点が説明された。

 事例発表の後には、(公財)日本スポーツ仲裁機構 理解増進事業専門員の小川和茂氏が「スポーツ仲裁・調停およびスポーツ紛争の予防について」をテーマに講演。参加者全員に「トラブルのないスポーツ環境の重要性」を説き、その他にも「トラブルが生じた場合のための公平・公正な解決制度」「スポーツ紛争・不祥事の具体例や原因」等が紹介された。

 続いて、(公財)日本ソフトボール協会・栗山利宏指導者副委員長が、翌日のグループ別討論に向けてその「議題」を再確認。「1.指導者対象講習会は継続すべきか? 2.今、指導者委員は何をすべきか? 3.日本協会倫理ガイドラインの内容は?」の3つをテーマとし、今回のグループ別討論で出された意見を集約した後に、日本協会指導者委員会で議論を行うこと。そこで出された結論に基づき、今後、一定の方向性を示していくことが説明された。

 研修会初日の最後は、全国各ブロック(北海道・東北、関東、北信越、東海、近畿、中国、四国、九州)に分かれての地区別研修会を実施。各都道府県での指導者の活動報告、指導者資格の活用に関して、また、地区別に実施されている指導者養成講習会について等、活発な意見交換が行われた。

 研修会2日目は、今回の中央研修会のメインとなるグループ別討論を実施。参加者全員を所属ブロックに関係なく、ランダムに振り分け、「1.指導者対象講習会は継続すべきか? 2.今、指導者委員は何をすべきか? 3.日本協会倫理ガイドラインの内容は?」の3つをテーマに議論が行われた。討議後は各グループが「指導者対象講習会は、やはり今後も継続すべき!」「 指導者の対象(小学生からハイシニアチームの指導者まで)に応じたカリキュラムの作成を行ってはどうか?」「指導者(有資格者)の活動の場を増やすことも重要。指導者自らが積極的に動いて現場に出向き、ソフトボールの普及・発展に努めてくれればベストだが、実際のところ、そういった指導者はまだまだ少ない。例えば指導者委員が各地方でリーダーとなって体制づくりを行い、地域の大会やイベントがある際には指導者を派遣。選手へのクリニックや指導者養成講習会を実施していくとか……。指導者派遣の具体的なシステム構築をしなければならないのでは??」「倫理ガイドラインについては、(公財)日本体育協会が作成したものをベースに、現在のソフトボールの指導現場における『実態』や『問題点』を追記してほしい」等、それぞれ意見を発表。参加者がより連帯感を深め、自分たちの手で指導者養成の体制づくりを推し進めていこうとする姿勢が感じ取れる「熱意溢れる」討論となった。

 前回の全国指導者中央研修会では、改めて「原点」へと立ち返り、この中央研修会の「あり方・開催意義」についてもその真意が問われる内容となった。「大きく変動する社会の中で選手を指導する立場にいるからこそ、指導者は常に最新の情報を得ながら、謙虚に、ひたむきに学び続けていかなければならない。だからこそ……この中央研修会はこれからも開催していくべきである!」。研修会の中では実際にこのような声が多く聞かれ、今年度以降は「隔年開催」となる変更点が生じたものの、継続して開催されていくことがすでに決定している。

 研修内容を見ても、前回の研修会から参加者自らが「指導者委員の役割」、また「指導者委員会のあり方・方向性」について深く考え、意見を出し合うといった、より「主体性」あるスタイルにシフトチェンジ。「これからは『自分たち』の手で指導者養成の体制づくりを推し進めていこう!」「 組織としても一定の方向性を示していこうではないか!! 」という変化が見られ、そこには指導者委員会の「新たな決意」を感じることができた。

 技術指導や選手強化はもちろんのこと、競技の普及に向けた取り組みや指導者の養成等も重要課題。現在のソフトボール指導者の役割は、多岐にわたっている。そして現代社会においては、指導者の「倫理問題」が叫ばれるほど、ますますその「資質」が問われるようになってきた。今回の研修会で出されたさまざまな意見を集約し、今後、指導者委員会がどのように歩みを進めていくのか……注目していきたい。