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第1戦
増井知美のタイムリーで大鵬が先制!
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第1戦
先制点を挙げ、盛り上がる大鵬ベンチ。
「大事な試合」の先取点の意味は大きい
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第1戦
ぺヤングも大応援団とともに
チーム一丸全力で戦ったが
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第1戦
大事な初戦、大鵬・井俣が見事な完封!
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第2戦
後がないぺヤング。この試合にかける!
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第2戦
この試合も大鵬が佐藤のツーランなどで
着々とリード。一方的な試合になりかけたが
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第2戦
試合後半、ぺヤングは大塚のツーランなどで
1点差に迫り、猛追したが、あと一歩およばず
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第2戦
連勝で1部残留を果たした大鵬薬品。
若く可能性を秘めたチームだけに、
来シーズンの飛躍を期待したい!
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大鵬薬品、連勝!
1部の座を死守!!
「第44回日本女子ソフトボールリーグ1部・2部入替戦」が、11月3日(木/祝)・4日(金)の両日、静岡県伊豆市・天城ドームで開催された。
この入替戦では、1部11位の大鵬薬品と2部2位のぺヤングが1部昇格・残留をかけ、3試合制のプレイオフ(先に2勝したチームが1部昇格もしくは残留が決定)に臨んだ。
■第1戦(11月3日/木・祝)
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
ペヤング |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
大鵬薬品 |
0 |
0 |
0 |
2 |
0 |
1 |
x |
3 |
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(ぺ)●小長井美希・菊池遙−村中梢
(大)○井俣茉莉−増井知美
〔二塁打〕佐々木瞳(大) |
ぺヤング・小長井美希、大鵬薬品・井俣茉莉両投手の投げ合いで両チーム3回まで無得点。迎えた4回裏、大鵬薬品は、この回先頭の3番・中山亜希子がセンター前にはじき返し、ノーアウトのランナーを出すと、4番・佐々木瞳は送りバントの気配を見せず、レフト前ヒット。チームのキャプテンであり、中心打者でもある佐々木瞳が、ベンチの「全幅の信頼」に応え、チャンスを広げた。続く5番・千原香奈がキッチリと送りバント、一死二・三塁とチャンスを広げ、二死後、7番・上釜恵がツーストライクと追い込まれながら、しぶとく粘り、死球で出塁。二死満塁とし、8番・増井知美が詰まりながらもセカンド後方に落とす、ポテンヒット。二者が還り、大鵬薬品が大事な試合の先取点を奪った。
これで勢いづいた大鵬薬品は、6回裏にも「頼れるキャプテン」4番・佐々木瞳が右中間を破るツーベースでチャンスを作ると、5番・千原香奈が確実に送り、一死三塁。二死後、7番・上釜恵のファーストゴロがエラーを誘い、貴重な追加点を挙げ、勝利を決定づけた。
守っては、先発・井俣茉莉が毎回のように走者を背負いながらも、粘り強いピッチングを見せ、2回表の一死一・二塁、3回表の二死一・三塁、5回表の二死満塁と攻め立てられながらも決定打を許さず、被安打2・四死球4の完封勝ち。大事な初戦を勝利で飾り、1部残留に「王手」をかけた。
勝った大鵬薬品は、この大事な試合でも、チームのキャプテンであり、主砲でもある佐々木瞳には、送りバントを命じることなく、信頼して打たせ、その一打から先制のチャンスをつかんだ。レギュラーシーズンと変わらぬ、「いつも通り」の試合が出来たともいえるが、一死二・三塁、一死三塁の絶好の得点機で簡単に打って出て、得点出来ぬところまで「いつも通り」だったところが気がかり。結果的に、ツーアウトから何とか得点に結びつけたが、相手のミスに助けられたところもあり、手放しで喜べる内容ではなかった。このあたりが、レギュラーシーズンでも、いい試合をしながら勝ち切ることができない「弱さ」であり、勝ちパターンの試合を自ら手放してしまう「脆さ」であったのではないかと感じる。
一方、ぺヤングは守備面の「ミス」で自滅した。大鵬薬が先制した4回裏の守りでは、一死二・三塁のピンチで次打者を打ち取り、二死までこぎつけながら、死球で満塁とし、8番・増井知美の完全に打ち取った打球をセカンド・中村藍子が落球(記録は安打)、先制点を奪われた。セカンド後方への難しい当たりではあったが、ぺヤングを引っ張る「チームリーダー」中村藍子であれば、捕らなければいけない打球だった。このピンチを切り抜けていれば、試合の流れは一気にぺヤングに傾いた可能性もあっただけに、悔やまれるプレーだった。
6回裏の失点も、一死三塁から次打者を打ち取り、7番・上釜恵も何でもないファーストゴロ。「ヨシッ!」と思った瞬間に、これを処理しようとしたファースト・大塚枝里香が打者走者の動きが目に入ったのか、あるいはベースカバーを焦ったか、これをはじき、決定的な3点目。これで勝負は決まってしまった。この1点の「重み」を考えれば、絶対にやってはいけないプレーであり、4回裏、6回裏、この2つのプレーは、この試合だけではなく、入替戦そのものの行方を決めかねない「大きなプレー」だった。
■第2戦(11月4日/金)
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
大鵬薬品 |
0 |
1 |
0 |
3 |
0 |
0 |
0 |
4 |
ペヤング |
0 |
0 |
0 |
1 |
2 |
0 |
0 |
3 |
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(大)○井俣茉莉・小澤芙美子−増井知美
(ぺ)●小澤麻美・小長井美希−村中梢
〔本塁打〕佐藤光紗(大)大塚枝里香(ぺ)
〔二塁打〕中村藍子(ぺ)千原香奈、中山亜希子(大) |
この試合に勝てば「1部残留」が決まる大鵬薬品は「エース」井俣茉莉が連投。一方、後がなくなったぺヤングは2部リーグ順位決定プレイオフの決勝・戸田中央総合病院戦で好投した左腕・小澤麻美を先発に起用し、試合がはじまった。
大鵬薬品は2回表、この回先頭の5番・千原香奈が左中間にフラフラッと上がり、ポトリと落ちる幸運なツーベースで出塁。6番・稲垣ゆみこの送りバントをぺヤングのファースト・石川すずが好ダッシュを見せ、三塁タッチアウト。これでピンチを脱したかと思われたが、7番・上釜恵が送り、二死二塁と再びスコアリングポジションに走者を進めると、8番・増井知美がしぶとく二遊間を破り、二塁走者がホームイン。またしても大鵬薬品が先取点を奪った。
こうなると試合は大鵬薬品のペース。4回表には、この回先頭の6番・稲垣ゆみこが三遊間を破り、出塁すると、7番・上釜恵の送りバント、8番・増井知美のライトフライで二死三塁とし、9番・森田まゆがツーストライクと追い込まれながら、粘って10球目を執念のセカンド内野安打。貴重な追加点を挙げると、1番・佐藤光紗が天城ドームの天井を直撃するツーランホームラン。この回3点を追加し、4点のリードを奪い、勝負を決めたかに見えた。
しかし、後がないぺヤングも必死の反撃。4回裏、5番・小澤麻美、7番・後口真紀子の安打等で一死一・三塁とし、8番・村中梢のショートゴロが併殺崩れとなる間に1点を返すと、5回裏にも1番・中村藍子が右中間ツーベースを放ち、チャンスメイク。3番・大塚枝里香が豪快にレフトスタンドへ叩き込むツーランホームランを放ち、1点差に詰め寄り、さらに4番・岩本典子もセンター前にクリーンヒットを放ち、大鵬薬品・井俣茉莉をノックアウト。リリーフした小澤芙美子にも襲いかかったが、6回裏の二死一・二塁のチャンスを逃し、最終回も四球の走者を出したものの、得点に結びつけることができず、猛追およばず1点差の惜敗。悲願の1部昇格は夢と消えた。
連勝で1部残留を決めた大鵬薬品だが、ところどころに「試合運びの拙さ」と「詰めの甘さ」が目についた。先制した2回表、5番・千原香奈がツーベースを放ち、絶好の先制機をつかみながら、次打者の送りバントで三塁タッチアウト。ぺヤング守備陣が思い切ったバントシフトを敷き、「絶対に三塁へは進ませない」とばかりに、ファースト、サードが猛烈なダッシュをしてきているところへ、見え見えの送りバント。二塁走者も完全にアウトのタイミングで三塁へ突っ込み、タッチアウトになったが、このケースは本来、二塁走者がもっとも簡単に三塁へ進めるシチュエーション。このケースのバントシフトでは、ファースト、サードはバントに備えてダッシュし、ショートは三塁ベースカバー、セカンドは一塁ベースカバーに入らざるを得ず、二塁はガラ空きとなる。もちろん、センターが二塁ベースカバーに入るケースもあるが、これも打者の動向を見てからしか動けず(ピックオフプレー等の特別なサインプレーであれば別だが)、二塁走者は大きく離塁することができるし、場合によっては、ファースト、サードが一塁へ送球する間に、三塁進塁を狙うこともできるケースである。にもかかわらず、完全にアウトのタイミングで三塁へ突っ込むというプレーは「愚の骨頂」ともいうべきプレーで、本来あってはならないプレーである。このようなプレーが、この大事な一戦で出てしまうようでは、来シーズンも今シーズンの「二の舞」となりかねない。
また、3回表の無死三塁の絶好機も生かせず、1点差に追い上げられた7回表にも、1番・佐藤光紗が内野安打で出塁しながら離塁アウト。二死後、3番・中山亜希子がライト線に大きな当たりを放ちながら、全力疾走を怠り、二塁打どまり。完全なスリーベースコースであり、走者が残っていれば、「勝負を決める1点」を奪えたケースであり、打者走者も当然三塁まで進塁していなければいけないケースだった。この試合の持つ「意味」、この場面での「1点の重さ」を本当にわかっていたら、決してこのようなプレーはしないはず。「勝負どころ」での1点が持つ「意味」「重さ」、走者三塁と走者二塁での得点の期待値・可能性の違い、相手守備陣に与えるプレッシャーの有無といったことを、もっともっと真剣に受け止め、考える必要がある。もっと貪欲に、もっと厳しく、「勝負を決める1点」を獲りに行く意識と姿勢を持ち、そのための方法論を習得するための練習を積み、実際の試合で実行できるようにしておかなければ、1部残留を果たしたとはいえ、来シーズンも今シーズンと同じような結果となってしまう可能性が高い。
個々の選手の能力は高く、大きな可能性を秘めたチームだけに、その潜在能力に頼るだけでなく、個々の能力に磨きをかけると同時に、「チーム」として組織的にまとめ上げ、「1点」にこだわり、「1点」の攻防を厳しく追い求めるチームへ「変身」してほしいものである。目標は「1部残留」などではなく、1部の上位に食い込み、優勝戦線に食い込むこと。それぐらいはできるチームだと期待している。
一方、ぺヤングも大事な試合、大事な局面で「球際の弱さ」を露呈した。失点はほとんど自らの守備のミス絡み。「ここを踏ん張れば……」という場面で踏ん張り切れず、失点を重ね、自ら試合の流れを手放してしまった。
また、この試合、初回の無死一・二塁での強攻策にも疑問が残る。いつも強気の「ぺヤングらしい」試合運びであり、初球に送りバントの失敗もあったのだが、この試合の「意味」「重さ」を考えれば、大事に、慎重に、試合を進める選択肢もあったと思う。また、その局面で、後続がサードゴロ、レフトフライと、「走者の後ろに打ち、最低でも進塁させる」という進塁打の意識を微塵も感じさせず、簡単に打ち取られたことも気にかかる。もちろん、タイムリーヒットが出れば、一気にビッグイニングになる可能性もあり、「それがぺヤングの攻め方」と言われればそこまでだが、今後、より高いレベルのチームを相手にし、勝利していくことを考えるのなら、「イケイケ」だけでは通用しないケースもある。試合展開や状況に応じて、戦術を使い分けるようなことも必要になるのでないだろうか。
2部では安定して上位を狙えるチーム力を有しているだけに、悲願の1部昇格を果たすために、「何が通用し、何が足りないのか」を、もう一度冷静に分析し、洗い出し、来シーズンこそ、「1部昇格」を成し遂げることを期待したい。
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