2013.10.21
 

 

第46回 日本女子ソフトボール1部リーグ第10節

全日程終了! 戦いの舞台は決勝トーナメントへ!!



最終節となる第10節が、岩手県一関市、秋田県由利本荘市、山梨県甲府市で開催された


一関大会では、勝部修一関市長が駆けつけ、始球式を行った



SGホールディングスグループ佐川急便は7勝15敗で8位に

  戸田中央総合病院はシオノギ製薬との直接対決を制し、入替戦を回避



シオノギ製薬も最後まで全力プレーで戦ったが……11位で入替戦へ



20勝2敗で1位のトヨタ自動車。4連覇へ向け、
「絶対的エース」モニカ・アボットがフル回転か!?



18勝4敗で2位のルネサスエレクトロニクス高崎。
決勝トーナメントでの「一発逆転」を目論む!



15勝7敗で3位のデンソー。「超攻撃型」チームが
世界トップレベルの「エース」たちを相手にどう戦う!?



20年連続の決勝トーナメント進出を果たした豊田自動織機。
ケイラニ・リケッツ、ジェニー・トッピングのバッテリーに注目!



長い歴史の幕を閉じた日立マクセル。また一つ「名門」チームが消えた

 
 
 


第46回 日本女子ソフトボール1部リーグ 第10節
戸田中央総合病院 vs シオノギ製薬
 


 第46回日本女子ソフトボール1部リーグ第10節が、岩手県一関市、秋田県由利本荘市、山梨県甲府市の3会場で開催された。
 一関大会、秋田大会は雨に降られながらも、何とか予定された日程(10月19日/土・20日/日)で終了したが、山梨大会の2日目が朝から激しい雨に見舞われ、中止・順延。予備日(21日/月))を使い、今シーズンの全日程を終了した。

 前節(第9節)で、すでに決勝トーナメント進出の4チームが決まっていたが、1位・トヨタ自動車(20勝2敗)、2位・ルネサスエレクトロニクス高崎(18勝4敗)の順位確定に続き、同率3位に15勝7敗で豊田自動織機、デンソーの2チームが並んだが、直接対決の勝敗は1勝1敗ながら、その得失点差でデンソーが上回り、デンソーの3位、豊田自動織機の4位が決定。11月9日(土)・10日(日)の両日、京都府京都市・わかさスタジアム京都で行われる決勝トーナメントでの「最後の決戦」に臨むことになった。
 また、最終節までもつれ込んだ入替戦を巡る争いは、戸田中央総合病院とシオノギ製薬が、「勝った方が1部残留、負ければ2部との入替戦へ」という「直接対決」を迎え、戸田中央総合病院が13−2で圧勝。1部残留を決め、敗れたシオノギ製薬が、11月6日(水)・7日(木)の両日、静岡県伊豆市・天城ドームで行われる2部2位(10月26日/土・27日/日、静岡県伊豆市・天城ドームで行われる2部リーグ順位決定プレイオフの結果によって対戦相手が決定)との入替戦へ回ることとなった。

 最終節となった今節は、前節(第9節)で決勝トーナメント進出の4チームが決まってしまったこともあり、入替戦を巡る争いに注目が集まった。
 今節初日(10月19日/土)、前節(第9節)まで6勝14敗で同率9位に並んでいたSGホールディングスグループ佐川急便、戸田中央総合病院、シオノギ製薬の3チームのうち、互いの直接対決の結果(得失点差)でもっとも有利な立場にあるSGホールディングスグループ佐川急便が山梨県甲府市・小瀬スポーツ公園野球場で開催された山梨大会に登場。初日、太陽誘電と対戦し、初回に3番・河野美里にいきなり先制ツーランを浴び、リードを許すと、終盤6回表には、1番・岡本由香、2番・山本晴香の長短打で無死二・三塁とされ、3番・河野美里のレフトへの犠牲フライで三塁走者が生還し、3点目。7回表には、二死走者なしから9番・石真実のバント安打でチャンスをつかみ、1番・岡本由香の四球、2番・山本晴香のセンター前ヒットで満塁。3番・河野美里に一・二塁間を破られ、ダメ押しの4点目。打線も太陽誘電の先発・藤田倭にわずか3安打に抑え込まれ、0−4の完封負けで15敗目。自力での入替戦圏内脱出はならなかった。

 一方、同じく6勝14敗で並ぶ戸田中央総合病院とシオノギ製薬は、岩手県一関市・一関運動公園野球場で開催された一関大会に登場。初日、第1試合でシオノギ製薬がHondaと対戦。序盤、2点を先制されながら、2回裏、8番・唐橋亜由佳のタイムリーで1点を返し、3回裏には、二死二・三塁から5番・鹿出千奈美がライト前に同点のタイムリー。試合を振り出しに戻したが、4回表、Hondaが1番・平林真由子の左中間を破るツーベースからチャンスをつかみ、途中出場の3番・芝阜b梨がノースリーからストライクを取りにきた投球を狙い打ち、センター前にタイムリー。1点を勝ち越し、さらに7回表には、7番・加藤恵理が右中間を深々と破るタイムリースリーベースを放ち、ダメ押し。結局、シオノギ製薬は善戦しながら、あと一歩およばず、2−4で敗れ、15敗目を喫した。
 続く第2試合でも、戸田中央総合病院がトヨタ自動車に0−7と完敗。同じく15敗目を喫し、3チーム同率の状態は変わらなかったが、残り1試合となったことで、戸田中央総合病院、シオノギ製薬との得失点差で有利な状況にあるSGホールディングスグループ佐川急便の11位となる可能性がなくなり(戸田中央総合病院とシオノギ製薬は、互いの「直接対決」が最終戦となることから、どちらかは必ず負けることになる。その場合、SGホールディングスグループ佐川急便が最終戦を落したとしても、どちらかのチームとは必ず同率となるため、いずれの場合も得失点差で上回り、11位になることはない)、入替戦へ回るのは戸田中央総合病院、シオノギ製薬のいずれかに絞られた。

 翌日(10月20日/日)、朝からあいにくの雨が降る中、両チームが「1部残留」をかけて激突。3回表、戸田中央総合病院が、2番・内田千恵美のセンター頭上をライナーで越えるタイムリーツーベースで先制すると、これまでの苦しいシーズンの溜まりに溜まった鬱憤を一気に晴らすかのように打ちまくり、17安打・13得点の猛攻。13−2で大勝し、1部残留を決めた。
 敗れたシオノギ製薬は11位が決定。11月6日(水)・7日(木)の両日、静岡県伊豆市・天城ドームで行われる2部2位(10月26日/土・27日/日、静岡県伊豆市・天城ドームで行われる2部リーグ順位決定プレイオフの結果によって対戦相手が決定)との入替戦へ回ることとなった。

 最終順位は、20勝2敗のトヨタ自動車が1位。一関大会の初日、山根佐由里が戸田中央総合病院戦に先発し、4イニングを無失点に抑え、勝利投手となり、今シーズン11勝目。2011年の第6節、ルネサスエレクトロニクス高崎戦で敗戦投手となって以来、続けてきた「連勝記録」を22に伸ばし、リーグ新記録を樹立。「伝説の大投手」ミッシェル・スミスの記録を更新する「快挙」を成し遂げた。
 「絶対的エース」モニカ・アボットの陰に隠れがちではあるが、さすが「日本代表」にも名を連ねる実力派。コツコツと積み上げてきた記録で、その「実力」を証明し、「主役」となる選手以外に、このような記録を残せる選手がいるところに、日本リーグ3連覇中の「王者」トヨタ自動車の強さを見た思いであった。
 と……ここまでなら、「褒め言葉」だけで終われたのだが、最終戦となったHonda戦に細野了華を先発に起用し、初回に6長短打を浴び、4失点。結局、この大量失点が響き、最終戦を3−6で落とした。確かに、決勝トーナメント進出も、順位も、決まった後のいわば「消化試合」ではあったが、およそ「王者らしからぬ」試合での敗戦が、決勝トーナメントに影響を与えなければいいのだが……。
 ただ、「絶対的エース」モニカ・アボットを中心に、選手層の厚さ、チームの完成度の高さは今シーズンもリーグNO.1。優勝候補の「大本命」であることは間違いない。

 2位は18勝4敗のルネサスエレクトロニクス高崎。こちらは開幕節のトヨタ自動車戦に敗れた時点で、「2位狙い」に徹していた節がある。決勝トーナメントでの条件は1位・2位と3位・4位では、敗者復活戦に回れるか否かの差があるが、1位・2位に条件の差はなく、それならばムダな消耗は避け、勝負となる決勝トーナメントに全力を注ごう……という強かな計算が感じられる戦いぶりに終始した。それだけに「不気味」な雰囲気があり、決勝トーナメントでの「一発逆転」、トヨタ自動車の4連覇阻止なるかに注目が集まる。

 3位は15勝7敗のデンソー。豊田自動織機と同率ながら、直接対決での得失点差で上回り、昨年と同じ3位での決勝トーナメント進出を決めた。
 しかし、3位・4位にも決勝トーナメントを戦う上での「アドバンテージ」はない。昨年は同じ顔合わせで豊田自動織機に0−1の完封負けを喫している。
 どこからでも一発が飛び出す長打力が自慢の打線と積極果敢な走塁で、「超攻撃型」のチームをめざし、他チームとは一線を画すアプローチでチームを作り、シーズンを戦い抜いてきた。ただ……「真価」を問われるのはここから。モニカ・アボット、上野由岐子、ケイラニ・リケッツ、決勝トーナメントで戦う「ライバル」のエースは、世界的な好投手ばかり。これを打ち崩してはじめて、真の「超攻撃型」のチームとして認知されるはずだ。2年連続、決勝トーナメントへ駒を進めたデンソーの戦いに注目したいところだ。

 4位は豊田自動織機。15勝7敗でデンソーと同率に並んだが、得失点差で4位に甘んじた。ただ、当初、投手陣の柱として期待されていたダニエル・ローリーが開幕節での完封勝利を「置き土産」にチームを離脱。「エース不在」の状況で、前半戦は7勝4敗の5位と苦しんだ。
 後半戦から、「現役アメリカ代表」ケイラニ・リケッツを補強し、20年連続の決勝トーナメント進出を果たした。ただ……2008年以降、決勝進出はなく、優勝となると2007年までさかのぼらなければならない。レギュラーシーズン、「絶対的エース」モニカ・アボットの登板したトヨタ自動車に、唯一土をつけたチームでもある。「何かを起こす」とすれば、このチームか……。

 5位は13勝9敗の日立。最終節でもルネサスエレクトロニクス高崎を破るなど、「意地」を見せたが、2年連続で決勝トーナメント進出を逃した。
 ソフトボール界のイチロー・山田恵里を中心とした「強力打線」は健在だが、投手陣が他の上位チームに比べると明らかに見劣りし、絶対的なエース、柱となる投手の不在が、その差を分けた感は否めない。上位進出を狙うには、投手陣の立て直しが急務だ。

 6位は11勝11敗のHonda。4年連続の二桁勝利は立派といえば立派だが、一度も上位争いに絡めないままでの6位では喜べない。昨シーズン後半戦の快進撃を支え、救世主的存在となったモーガン・メローが今シーズンはフル参戦。決勝トーナメント進出が期待されたシーズンだけに、この成績で満足してもらっては困る。めざすのはもっと「上」のはずだ。

 7位は10勝12敗の太陽誘電。このチームもこんな成績で終わるチームではないはず。常に決勝トーナメント進出を争うところにいなければいけないチームだ。投手陣に藤田倭、森真里奈の「日本代表」を経験した「二枚看板」がおり、打線も「日本代表」の切り込み隊長・河野美里を中心に、若手期待のスラッガー・青木千春といった将来を嘱望される選手もいる。
 もう一度、チームを立て直し、来シーズンこそは上位進出を期待したいところだ。

 8位は7勝15敗のSGホールディングスグループ佐川急便。「オーストラリア代表」のベネッサ・ストークスが本来の力を発揮できなかったのが、大きな誤算か。打線も同じく「オーストラリア代表」の「主砲」ステーシー・ポーターが健在だが、徹底的にマークされ、四球で歩かされるケースが多く、そうなると得点力がガタ落ち。ただ、これも毎年同じような光景が繰り返されているだけに、そのとき、どう戦うのか、どのような戦術をとるのか、チームとしての戦い方の工夫や他の戦力の底上げがほしいところだ。毎年、国際舞台で活躍するトップレベルの外国人選手を補強しながら、入替戦圏内をウロウロしているようでは寂しい限り。上位争い演じ、決勝トーナメント進出を狙う力は十分にあるチームだけに、何か「抜本的な改革」が必要なのではないだろうか。

 9位は戸田中央総合病院。同じく7勝15敗ながら得失点差で9位に。ただ、最後まで入替戦圏内から抜け出せなかったことを考えれば、何とか1部に踏み止まっただけでも上出来といったところか。
 新戦力・ヒラリー・バッハがまったく機能せず、後半戦、左腕の田家由里、右の五味彩華の継投策に活路を見出し、苦しいシーズンを乗り切った。来シーズンはこの苦い経験を生かし、上位進出の糧にしてほしいところだ。

 10位はペヤング。ペヤングも7勝15敗の同率ながら得失点差で10位となった。目立った補強もないまま、1部リーグ昇格初年度で7勝を挙げたのは、むしろ「健闘」といっていいだろう。ただ、ここからさらに「上」を狙うのであれば、選手補強も含め、チームの戦力の底上げが必要だ。リーグに「新しい風」を起こしてはくれたが、それをさらに大きな「ペヤング旋風」とするためには、さらなるレベルアップが必要であり、戦力補強も必要になるだろう。

 11位は6勝16敗のシオノギ製薬。ルーキー・岩田みゆきがチームの全勝ち星にあたる6勝を挙げたが、それ以外の上積みがなかった。1部残留をかけた戸田中央総合病院戦でも、岩田みゆきが3回途中でKOされると、もはや試合にならなかった。
 打者でも、同じくルーキーの岡恵利華が6本塁打を放つなど、「新しい時代」の息吹を感じさせてはくれたが……。まだそれは芽吹いた程度で、「大輪の花」には程遠く、実りのときはまだまだ先のようである。
 入替戦という「修羅場」を経験することで、芽吹いた新しき息吹が、1部で戦うにふさわしい「本物」に成長してくれることを祈りたい。

 12位は3勝19敗の日立マクセル。シーズン途中で、来シーズン以降の活動停止・廃部が発表されるなど、その中で戦った選手たちの胸中を思うと……無念でならない。また一つ歴史に名を刻んだチームが消えていく。最後の最後まで全力プレーで戦った日立マクセルというチームのことを、選手一人ひとりの姿を、しっかりと目に焼き付け、「記憶」の中に留めておきたいと思う。

 戦いの舞台は、11月9日(土)・10日(日)の両日、京都府京都市・わかさスタジアム京都で行われる「決勝トーナメント」へと移される。

 トヨタ自動車の4連覇か?
 ルネサスエレクトロニクス高崎の王座奪還か??
 あるいはデンソーが「新しい時代」の扉を開くのか。
 はたまた豊田自動織機が「名門復活」を成し遂げるか。

「最後の決戦」の刻が迫っている……。



第46回 日本女子ソフトボール1部リーグ 第10節終了時点 全チーム成績
順位 チーム名
1位 トヨタ自動車 20
2位 ルネサスエレクトロニクス高崎 18
3位 デンソー 15
4位 豊田自動織機 15
5位 日立 13
6位 Honda 11 11
7位 太陽誘電 10 12
8位 SGホールディングスグループ佐川急便 15
9位 戸田中央総合病院 15
10位 ペヤング 15
11位 シオノギ製薬 16
12位 日立マクセル 19

※上位4チームが決勝トーナメント進出。11位は2部リーグ2位との入替戦に回る。
3位・4位、8位〜10位の決定は同率で並ぶチームの直接対決での得失点差による。