第8回世界男子ジュニア選手権大会(カナダ・ホワイトホース)
 大会第10日(最終日)
 日本、カナダにサヨナラ負け……
 3位で終戦
                                (2008.6.29)


初回、日本が川口のツーランで先制!

2点を先制し、日本ペースかと思われたが……

日本の先発は「エース」濱田

2回裏、カナダが2本のホームランで逆転

7回表、二死走者なしから筒井が起死回生の一発を放つ!

まさかのサヨナラホームラン。勝負は決した

試合を終えた選手たちの頬に涙がつたう……


 6月29日(日)、第8回世界男子ジュニア選手権大会第10日、大会もいよいよ最終日を迎え、この日は決勝トーナメント・ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)、ゴールドメダルゲーム(ファイナル/優勝決定戦)が行われた。
 第1試合では、昨日の1位・2位戦の敗者・日本と3位・4位戦の勝者・カナダが対戦。日本はこのカナダ戦に臨んだが、思いもよらぬ結末が待ち受けていた。

〔決勝トーナメントブロンズメダルゲーム(3位決定戦)/カナダ戦〕

  
  1 2 3 4 5 6 7
 日 本 2 0 0 0 0 0 1 3
 カナダ 0 3 0 0 0 0 2x 5

(日)●濱田(6回1/3)−藤川(6回1/3)
〔本塁打〕川口、筒井


 先攻の日本は初回、1番・植田が四球で出塁。2番・林は送りバント失敗で一死一塁となったが、3番・川口がボール気味のライズをライトスタンドに叩き込み、2点を先制。カナダファンで埋まった満員のスタンドが一瞬沈黙する強烈な先制パンチを浴びせた。
 しかも、日本の先発はオーストラリア戦を回避し、この試合に照準を合わせ、満を持して登板した「エース」濱田。カナダ戦に絶対の自信を持つ「エース」の登板で、日本の勝利は間違いないと思われた。
 しかし、地元・カナダにも意地がある。2回裏、6番・ポスキンがセンター前ヒットで出塁すると、次打者が手堅く送り、一死二塁。8番・ミッシェルが「お返し」とばかりにライトスタンドに同点ツーランを放つと、二死後、1番・ウォーカーが勝ち越しのソロホームラン。一気に逆転に成功した。
 一方、日本はカナダの先発・ケシャネのライズを打ちあぐみ、2回以降は得点を挙げることができない。日本のエース・濱田も再三得点圏に走者を背負いながらも何とか凌ぎ、3−2とカナダが1点のリードを奪ったまま、試合は最終回を迎えた。
 7回表、頼みの「主砲」大嶋がショートフライに倒れ、5番・内海も三振。二死走者なしとなって、カナダファンで埋まった満員のスタンドはカナダの勝利を確信。「カナダ! カナダ!!」絶叫のボルテージが最高潮に達したとき、6番・筒井のバットが一閃。打球は一直線にライトスタンドに飛び込んだ。一瞬、スタンドが静まりかえる。その中を筒井がダイヤモンドを一周する。歓喜の日本ベンチ、茫然と立ち尽くすカナダナイン。勝負は振り出しに戻った。
 7回裏、守備につく前に梅下ヘッドコーチが全員を集め、いったん興奮を静める。「勝負はこれから!」と生気を甦らせた日本ナインが守備位置に散る。7回裏、この攻撃を抑え、延長に持ち込めば絶対に勝てる。誰もがそう思っていた。しかし……地元の大声援に後押しされたカナダもさすがだった。一死一塁から2番・シュリンガムが左打席に入る。最後の力を振り絞り、カナダ打線に真っ向勝負を挑む日本のエース・濱田の入魂の一球をとらえ、青空に吸い込まれていくようにボールが高く舞い上がった。懸命に背走するセンター・植田。フェンス際で懸命に差し出した植田のグラブの上を黄色いボールが越えていった。サヨナラホームラン。一瞬の静寂の後、爆発する歓喜。カナダが決勝進出を決めた。
 10日間にわたる長い戦いを戦い抜いた17名の戦士たち。戦いを終えた戦士たちの頬を涙がつたう。決勝進出、オーストラリアとの再戦は叶わず、「世界一」の夢は消え失せた。
 しかし、次の瞬間、カナダファンばかりのスタンドが、スタンディングオベーションで日本ナインを迎えてくれた。「グッドゲーム!」惜しみない拍手と歓声はいつまでも途切れることはなかった。この拍手こそが、この歓声こそが、彼らが持てる力のすべてを出し切り、戦ったことの「証」であった。
 結果は、「世界一」には届かなかった。それどころか前々回、前回を下回る3位という成績に終わった。しかし、その戦いは称賛に値するものであり、胸を張れる結果であったと思う。恥ずべきことなど一つもない。全力で戦い、全力でプレーし、その持てる力のすべてを出し切り、そして……負けた。それを責めることなど、誰ができるだろうか。
 彼らは「日本代表」の「誇りとプライド」に賭け、その名にふさわしい試合を展開した。それはこのスタンドで日本のプレーを目撃した観客の一人ひとりが証人である。行き交う人が口々に「グッドゲーム」「グッドチーム」と称賛の言葉を惜しまなかった。私自身もこの戦いに立ち会うことができたことを誇りに思う。
 10日間にわたる戦いは終わった。しかし……「ソフトボール」は続いていく。このすばらしい戦いを見せたチームは、もはや存在しない。二度とこのメンバーが集まり、同じユニフォームを着ることはない。それでも……「ソフトボール」は続いていくのだ。それぞれのチームで。それぞれの場所で。今、このときの気持ちを決して忘れないでほしい。純粋にソフトボールに向かう気持ち。ただひたすらに「うまくなりたい」「強くなりたい」と欲する気持ち。それらを持ち続ける限り、「ソフトボール」は続いていく。「ソフトボール」に終わりはない。
 誰かが言った。「ソフトボールは奥が深い」と。そう……君たちはまだ「ソフトボール」の「入口」へ立ったばかりなのだ。ようこそ! 「ソフトボール」の世界へ!! 「ソフトボール」は君たちを歓迎する。
(第8回世界男子ジュニア選手権大会 日本選手団広報 吉田 徹)

〔決勝トーナメントブロンズメダルゲーム(3位決定戦)
/カナダ戦スターティングラインアップ〕

1番・センター    植田 貴也(岡豊高)
2番・サード     林  卓磨(立命館大)
3番・レフト     川口 拓馬(関西大)
4番・DP      大嶋  匠(早稲田大)
5番・ライト     内海 裕也(京都産業大)
6番・ショート    筒井 昭太(環太平洋大)
7番・キャッチャー  藤川 拓郎(立命館大)
8番・ファースト   菅野 達也(環太平洋大)
9番・セカンド    首藤 大地(トヨタ自動車)
DEFO/ピッチャー 濱田耕児郎(豊田自動織機)
▽選手交代なし



 

 

 



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メダルを胸に。願った色ではなかったが、その戦いにはそれ以上の輝きがあった