北京オリンピック 第9日
  中国・北京/豊台ソフトボール場(2008.8.20)


延長12回の死闘を制す!
日本、決勝進出!!



 8月20日(水)、この日の第1試合で敗れた日本は、敗者復活戦に回り、3位・4位戦でカナダを5−3で破って勝ち上がったオーストラリアと対戦した。


8月20日(水)/決勝トーナメント3位決定戦(ブロンズメダルゲーム)

  
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
 オーストラリア 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 0 3
 日     本 0 0 0 2 0 0 0 0 1 0 1 1x 4

(オ)スメザースト(5回)・●ハーディング(7回)−ティッカム(12回)
(日)○上野(12回)−峰(12回)
〔本塁打〕廣瀬(日)ワイボーン(オ)
〔三塁打〕ルイス(オ)藤本、狩野(日)
〔二塁打〕藤本(日)


 日本の先発は「エース」上野。この日の第1試合で「史上最強」の王者・アメリカを相手に延長9回を投げ抜く力投を見せた「エース」に、この試合もすべてを託した。
 しかし、3位・4位戦で成長著しいカナダの挑戦を5−3の逆転勝ちで退け、銅メダル以上を確定させ、勢いに乗るオーストラリア打線が「世界一の投手」上野に襲いかかる。1番・2番が凡退し、簡単に二死となった後、今大会不振にあえぐ3番・ポーターが意地のセンター前ヒット。4番・ルイスがライト線を抜く三塁打を放ち、一塁走者・ポーターが一気にホームイン。オーストラリアが「世界一の投手」上野の立ち上がりをとらえ、先取点を奪った。
 一方、日本はオーストラリアの先発・スメザーストを攻めあぐみ、3回まで無得点。ようやく4回裏、二死一塁から6番・廣瀬が起死回生の逆転ツーランをライトスタンドに叩き込み、逆に1点のリードを奪った。
 こうなれば試合は日本のペース。「世界一の投手」上野が5回表は三者凡退。6回表は二死一・三塁のピンチを招いたが、8番・スチュワートをショートゴロに打ち取り、このピンチを切り抜けると、7回表も簡単に二死を取り、日本の決勝進出は決まったと誰もが思った。しかし……2番・ワイボーンがセンター頭上を越える同点のソロホームラン。4年前のアテネオリンピックの3位決定戦(ブロンズメダルゲーム)で、日本の息の根を止める走者一掃の三塁打を放った「因縁の相手」が、この試合でもオーストラリア絶体絶命のピンチを救う同点ホームランを放ち、試合を振り出しに戻した。
 日本は「エース」上野が8回表、9回表、10回表とタイブレーカーの走者を背負いながらも得点を許さず、味方打線の援護を待ったが、日本も6回から代わったハーディングの前に「あと一本」が出ず、膠着状態を抜け出せないまま、11回を迎えた。
 11回表、オーストラリアは二死三塁から6番・ワードがレフト前にタイムリー。我慢に我慢を重ねてきた上野が勝ち越し点を許し、オーストラリアがこのまま逃げ切るかと思われた。
 日本はその裏、3番・山田がタイブレーカーの走者をキッチリと犠打で送り、一死三塁。4番・馬渕の打球はショート後方にフラフラッと上がり、勝ち越しのタイムリーを放ったショート・ワードが懸命に背走し、精一杯グラブを差し出したが、グラブの先に当たって落ちるポテンヒット。三塁走者を迎え入れ、同点に追いついた。
 12回表、オーストラリアは四球、送りバントで一死二・三塁のチャンスを作りながら、「世界一の投手」上野の気迫溢れるピッチングの前に、1番・モロー、2番・ワイボーンをサードゴロに倒れ、無得点。
その裏、日本は8番・峰のバスターがサードの失策を誘い、一・二塁。9番・藤本がキッチリ送り、一死二・三塁とすると、1番・狩野が故意四球(Intentional Walk)で歩き、満塁。ここで2番・西山が長かった「死闘」に決着をつけるサヨナラ安打を右中間に放ち、日本が決勝進出を決めた。
 この試合でも攻めの拙さは解消されなかった。第1試合のアメリカ戦同様、延長戦にもつれ込む試合となり、「エース」上野にこの日だけでおよそ3試合分に相当する計21イニング、300球を超える球数を放らせてしまった。
 それでも……「エース」は一人で日本のマウンドを守り続けた。そして……最後は勝利を手にし、アメリカと「金メダル」をかけて再戦する権利を、オリンピックのファイナルを戦う権利を、ボロボロに傷つき、苦しみながらも、その手でつかみ取ったのだ。
 もちろん、チームスポーツは一人でできるものではない。「世界一の投手」のピッチングを支えたのは、これも「世界一」と評される「鉄壁」の守備陣であり、打線に起死回生のホームランが出なければ、あるいは同点・サヨナラのタイムリーが出なければ、「世界一の投手」上野であっても、このオリンピックという舞台から去らなければならなかったのである。
 北京オリンピックの開幕戦となったオーストラリア戦後の記者会見で、上野はこう語っている。「自分が抑えなければ日本は勝てない……そんなふうにばかり考えていたが、守ってくれるバックがいて、3点取られても4点取り返してくれる打線がある。日本というチームが一つとなり、一丸となって勝つことができたこの試合の意味は大きい」と。アメリカ戦では力投の「エース」を援護できなかった打線が、初回に先制を許すという予想外の展開になりながらひっくり返し、再び同点に追いつかれても、何とか粘り抜き、最後は「死闘」を制し、勝利をつかみ取った。厳しく、苦しい戦いを経て、チームはたくましく、しぶとく、成長しているという「手応え」は確かに感じる。
 完璧な試合運びとは言い難い。試合内容も褒められたものではない。しかし、ギリギリのところで踏み止まり、ついに「金メダル」をかけて戦う「オリンピック・ファイナル」まで辿り着いた。
 泣いても笑っても、あと1試合。今日の試合でもわかる通り、アメリカは強い。「史上最強」の看板に偽りなし、正真正銘の「チャンピオンチーム」だ。ベストの状態の上野であっても、最後はつかまり、奈落の底へと突き落とされた。
 ここまでの力投を見せた代償として、明日、上野がベストの状態でアメリカ戦に臨むことは難しくなってしまった。連投の疲れ、アメリカ、オーストラリアという強豪相手に延長戦を投げ続けた心身の消耗度……。これが一日で回復するとは思えない。
 だが……日本は決して「上野だけ」のチームではないはずだ。この日のオーストラリア戦でも「エース」の窮地を救ったように、打線が、守備が、「世界一の投手」とともに戦い、支え続けるはずだ。
 斎藤ヘッドコーチは、試合後の記者会見で、「明日のファイナルは、多くのソフトボールファンに夢と希望と感動を与える試合をしたい」と語った。その意気やよし、である。願わくは、ソフトボールの、オリンピックの、「歴史に残る」好ゲームを期待したい。

 
北京オリンピック  決勝トーナメント3位決定戦(ブロンズメダルゲーム)
オーストラリア戦スターティングラインアップ

1番・ライト    狩野亜由美(豊田自動織機)
2番・ショート   西山  麗(日立ソフトウェア)
3番・センター   山田 恵里(日立ソフトウェア)
4番・レフト    馬渕 智子(日立ソフトウェア)
5番・ファースト  佐藤 理恵(レオパレス21)
6番・サード    廣瀬  芽(太陽誘電)
7番・セカンド   三科 真澄(ルネサス高崎)
8番・キャッチャー 峰  幸代(ルネサス高崎)
9番・DP     藤本 索子(レオパレス21)
DEFO/ピッチャー 上野由岐子(ルネサス高崎)

※選手交代

7回裏 峰OUT→伊藤 幸子(トヨタ自動車)IN ※代打
8回表 伊藤OUT→峰  幸代(ルネサス高崎) ※キャッチャーの守備にリエントリー



第29回オリンピック競技大会(2008/北京) ソフトボール競技 予選リーグ戦績表

予選リーグ第7日終了現在
(戦績表はその日の最終試合が終了次第、更新します)

チーム名 日本 アメリカ オースト
ラリア
中国 カナダ ベネズエラ 台湾 オランダ 順位
日本 ── ●0─7 ○4─3 ○3─0 ○6─0 ○5─2 ○2─1 ○3─0 6 1 2
アメリカ ○7─0 ── ○3─0 ○9─0 ○8─1 ○11─0 ○7─0 ○8─0 7 0 1
オーストラリア ●3─4 ●0─3 ── ○3─1 ○4─0 ○9─2 ○3─1 ○8─0 5 2 3
中国 ●0─3 ●0─9 ●1─3 ── ●0─1 ○7─1 ●1─2 ○10─2 2 5 6
カナダ ●0─6 ●1─8 ●0─4 ○1─0 ── ●0─2 ○6─1 ○9─2 3 4 4
ベネズエラ ●2─5 ●0─11 ●2─9 ●1─7 ○2─0 ── ●0─3 ○8─0 2 5 7
台湾 ●1─2 ●0─7 ●1─3 ○2─1 ●1─6 ○3─0 ── ●2─4 2 5 5
オランダ ●0─3 ●0─8 ●0─8 ●2─10 ●2─9 ●0─8 ○4─2 ── 1 6 8

※5〜7位は同率チーム同士の勝敗で順位を決定(台湾2勝、中国1勝1敗、ベネズエラ2敗のため、5位・台湾、6位・中国、7位・ベネズエラとなる)


第29回オリンピック競技大会(2008/北京) ソフトボール競技 決勝トーナメント




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