日本、アメリカに完敗!
敗者復活戦で雪辱を期す!!
大会も残すところ2日になり、決勝トーナメントも2日目を迎えた。まず第1試合でホスト国として大会を盛り上げ、地元の熱狂的な声援を背に、数々の「ミラクル」を成し遂げてきたベネズエラが中国に6−1で敗れ、惜しまれながらトーナメントから姿を消した。
第2試合では、昨日アメリカに大敗したカナダとオランダに競り勝ったオーストラリアが対戦。オーストラリアが最終回まで2点のリードを奪いながら、まさかの逆転サヨナラ負け。カナダがこの「サバイバルゲーム」を生き残り、勝利をほぼ手中にしていたオーストラリアが脱落するという信じられない展開となった。
昨日のベネズエラ戦に快勝した日本は、決勝進出をかけてアメリカと対戦。オリンピックの「ディフェンディングチャンピオン」と世界選手権7連覇をめざす「絶対王者」が激突した。
〔決勝トーナメント/1位・2位勝者戦〕
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1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
計 |
日 本 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
アメリカ |
3 |
0 |
0 |
0 |
1 |
0 |
x |
4 |
●山根(5回)・瀬川(1回)−峰(5回)・谷川(1回)
先攻の日本は初回、アメリカの先発「世界最高の左腕」キャサリン・オスターマンの立ち上がりを攻め、一死から2番・西山麗がよく粘って四球で出塁。3番・山田恵里が内野安打で続き、一・二塁の先制機を迎えた。しかし、4番・馬渕智子、5番・坂元令奈が連続三振。キャサリン・オスターマンの「目の前でボールが消える」と形容される切れ味鋭いライズ、ドロップに必死に食らいつき、チャンスを作ったが、惜しくも先取点を奪うことはできなかった。
日本の先発は山根佐由里。予選リーグ第2戦の台湾戦で1イニングを無失点に抑えたのを皮切りに、予選リーグ第4戦のキューバ戦、予選リーグ第6戦のイギリス戦を連続完封。特にイギリス戦ではあわやノーヒット・ノーランという快投を見せているだけに、強打のアメリカ打線を相手にどんなピッチングを見せるか注目が集まった。
その立ち上がり、一死から2番・ケイトリン・ロウがセンター前に落ちるポテンヒットで出塁。3番・ジェシカ・メンドーザに四球を与え、4番・アリッサ・ハーバーがライト前に運び、アッという間に満塁。ここで5番・エリザベス・コーチャンの当たりは強い当たりのファーストゴロ。ホームゲッツーかと思われたが、一塁へ向かう打者走者と重なり、一瞬躊躇して本塁へ送球すると、その送球が高く浮き、キャッチャー・峰の頭上を越える悪送球となってしまった。「世界一」を誇る日本の守備。その「堅守」で名高い日本の守備陣が今大会初めて犯した大きなミス。三塁走者に続き、二塁走者までもが生還し、あまりにも重い先制点を与えてしまった。
このミスを見逃すアメリカではない。さらに続いた一死二・三塁の追加点のチャンスに、6番・アンドレア・デュランがキッチリとレフトに犠牲フライを打ち上げ、1点を追加。この回3点を先制した。
こうなると試合は「絶対王者」アメリカのペース。北京オリンピックの決勝で日本に敗れ、敗戦投手となる「屈辱」を経験した「世界最高の左腕」キャサリン・オスターマンは、この世界選手権、いや日本との対戦に並々ならぬ「決意」を持って臨んでいた。北京オリンピックでの「雪辱」を期し、「リベンジ」を果たすために……。その思いが強ければ強いほど、立ち上がりはナーバスになっているように見えた。
しかし、2回以降はすっかり立ち直り、得意の「奪三振ショー」を展開。必死に食らいつき、反撃の糸口を見出そうとする日本打線を切れ味鋭いライズ、ドロップを自在に操り、翻弄。12三振を奪う力投で、最後まで日本に得点を許さず、4−0で完封勝ち。一足先に決勝進出を決めた。
日本の先発・山根佐由里も決して悪い出来ではなかった。初回に守備の乱れもあり、3失点し、5回裏にも結婚・出産からカムバックしてきたジェシカ・メンドーザにタイムリーを浴びたものの、アメリカの強力打線を相手に被安打4は立派なもの。初回を乗り切っていたら……。試合の流れはどちらに転んでいたかわからない。
ただ、ここまで好守を連発し、投手陣を助けてきた守備陣を責めるのは酷だろう。もちろん、「世界一」の守備陣だからこそ、あの初回の場面も切り抜けてほしかったが……。アメリカの「必勝パターン」は初回の先制攻撃。キャサリン・オスターマン、モニカ・アボット、ジェニー・フィンチらが揃う「世界最強」の投手陣が控えている以上、初回に先制してしまえば、勝利を収める確率は格段に高くなる。
あの北京オリンピックの決勝も、初回にアメリカが先制していたら一方的な試合展開になる可能性すらあった。そのチャンスを逃し、考えてもいなかった日本に先取点を奪われる展開となり、「いつものアメリカ」ではなくなってしまったのだ。圧倒的な強さを見せるが故に、「追いかける展開」には慣れていない。今日の試合でも、どんな形であれ、日本が先制していたら、あるいは、初回のピンチを切り抜けて0−0のまま、後半まで引っ張っていける展開に持ち込めていたら、日本にも勝機が出てきていたはずである。
アメリカは確かに強い。だが、手も足も出ないほどの強さは感じなかった。あの強力投手陣から得点を奪うのは簡単なことではないが、日本の持ち味である「小技」や「機動力」を駆使して、アメリカの守備陣を慌てさせるような展開に持ち込めれば、十分に勝機はあると感じた。クリーンヒットはいらない。ボテボテでも、セーフティーでも、スラップでも、プッシュでも、泥臭く、しつこく、何度でも仕掛けていく姿勢が必要になる。
そのためには、投手を含めた守備での踏ん張りが重要である。今大会、ここまで見せてきた「世界一」の守備で守り抜き、ロースコアでの競り合いに持ち込めれば、勝負はどっちに転ぶかわからなくなる。大差がついてしまう試合展開では、日本の「小技」も「機動力」もプレッシャーにはならない。1点を争う勝負に持ち込んでこそ、日本の「持ち味」が生きる。
もちろん、日本にはその前に「なすべきこと」がある。アメリカに16−1と大敗した後、オーストラリアに3−2、中国に1−0と、苦しみながらも2試合連続のサヨナラ勝ちで勝ち上がってきたカナダとの再戦を制し、再びアメリカへの「挑戦権」を得ることである。予選リーグでは2−1で勝利しているとはいえ、決して簡単な相手ではない。
どちらにしてもあと1日。長かったこの世界選手権もいよいよクライマックスを迎えることになる。「絶対王者」アメリカの7連覇か。それとも日本がそれを止めることができるのか。あるいは……。いずれにせよ、残り2試合。すべては明日、決まることになる。
■決勝トーナメント1位・2位勝者戦/アメリカ戦スターティングラインアップ
1番・ライト 狩野亜由美(豊田自動織機)
2番・セカンド 西山 麗(日立ソフトウェア)
3番・センター 山田 恵里(日立ソフトウェア)
4番・DP 馬渕 智子(日立ソフトウェア)
5番・サード 坂元 令奈(トヨタ自動車)
6番・ショート 松岡 恵美(豊田自動織機)
7番・キャッチャー 峰 幸代(ルネサスエレクトロニクス高崎)
8番・ファースト 濱本 静代(日立ソフトウェア)
9番・レフト 河野 美里(太陽誘電)
FP/ピッチャー 山根佐由里(トヨタ自動車)
▽選手交代
5回裏 西山OUT→松本 尚子(デンソー)IN ※セカンドの守備に入る
6回裏 山根OUT→瀬川 絵美(日立ソフトウェア)IN ※投手交代
〃 峰OUT→谷川 まき(太陽誘電)IN ※キャッチャーの守備に入る
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