「令和6年度 女子U15日本代表チーム 選手選考会」を開催
まずは全員で入念にウォーミングアップ
希望したポジションでのシートノック。守備の基本技術が問われる選考となった
「実戦形式」での選考で技術・能力はもちろん選手の性格や思考・心理状態まで厳しく選考
基本的なバッティング技術も細部まで厳しくチェック
塁間走や一塁から三塁までのベースランニングで走力をチェック
ピッチャーは球種を自己申告し、スピードガンで球速測定も実施
3日間、全力でアピールを続けた選手たち。「日本代表」に選ばれるのは誰だ!?
去る12月2日(月)~4日(水)の3日間、静岡県伊豆市/天城ドームを主会場に「令和6年度 女子U15日本代表チーム選手選考会(2025 第2回女子U15アジアカップ・第2回女子U15ワールドカップ出場選手選考会)」が開催された。
選考会には、下記「選考会参加条件」をクリアし、各都道府県支部の推薦を受けた94名が参加。「第2回女子U15アジアカップ」「第2回女子U15ワールドカップ」に出場する「日本代表」16名の座をめざし、「狭き門」となる厳しい選考に挑んだ。
【選考会参加条件】
1.礼儀と規律を遵守し、活力があり、国民の期待に応えうる競技力を有する選手
2.守備力・打撃力において、日本代表としてふさわしい技能を有している者 競技力の基準として、下記の条件を満たしている者(測定はすべて革イエローボールを使用)↓
●投手
①ファストボールの平均球速が90㎞/h以上
②縦の変化(ライズボールまたはドロップボール)を有する
③緩急の変化(チェンジアップ)を有する
※原則、投手は上記①~③すべての条件を満たしていること。
ただし、打者を打ち取ることのできる「球種」ならびに「投球術」があると認められる場合はこの限りとしない。
なお、野手全般の条件も満たしていることが望ましい。
※ただし、選考会は投球距離(本塁から投手板までの距離)12.19mで選考を行う。
●捕手
①二塁送球 1秒85以内が望ましい(革ボール・捕手捕球→送球→二塁捕球)
※捕手は上記①の条件、野手の③条件を満たしていること。
また、野手②の条件は満たしていることが望ましい。
●野手全般
①遠投 45m以上(革ボール・半径1mの円内から送球)
②30m走 4秒95以内
③バッティングティーにボールを置いてのバッティングで飛距離50m以上(革ボール)
※野手は上記①~③すべての条件を満たしていることが望ましい。
選考会初日(12月2日/月)、選考会の開始にあたり、(公財)日本ソフトボール協会・松田和広選手強化本部長が挨拶に立ち、「ここに集う皆さんは日本のトップ、ひいては世界のトップを狙う人材であり、この『U15』が日本代表としての最初のステップ、登竜門となる。そこから『U18』『TOP』カテゴリーへとステップアップし、復活なった『LA28』(2028年ロサンゼルスオリンピック)をも視野に入れ、さらなる高みをめざしていくことになる。そうあるためには、単にソフトボールがうまい、技術が高い、というだけでなく『人間力』が求められる。技術的な水準が高いことはもちろん、ソフトボールに取り組む姿勢のみならず日常生活においても多くのソフトボールプレーヤーのお手本となり、見本となるような選手でなければならない。それを忘れないでほしい」と、めざすべき場所を指し示し、そこに至る道は険しくも厳しいということを改めて説いた上で、「そういう選手でなければ『日本代表』に選ばれることはない。その『覚悟』を持ってこの選考会に臨んでほしい」と厳しい言葉で選手たちに自覚を促し、その一方で「選考会である以上、代表16名が選ばれ、残念ながら今回の選考からは漏れてしまう選手もいる。ただ、この選考会で『終わり』ではない。まだまだ道は始まったばかり。先ほども述べた通り、ここから『U18』『TOP』へと道は続いていく。過去、『U18』の選考では涙を飲みながら『TOP』カテゴリーで『日本代表』の座を射止め、『金メダル』を獲得した選手もいる。今回の選考会の座を逃したとしても、この先まだまだ何度もチャンスがある。諦めずチャレンジを続けてほしい」と過去の実例を挙げながら参加選手を熱く温かい言葉で激励した。
この後、全員で入念なウォーミングアップを行い、キャッチボール、希望ポジションでのシートノックを行い、A・B・C・D4チームに分かれて「実戦形式」での選考が行われた。
ボールカウントをワンボール・ワンストライクに設定。無死一・二塁の状況からピッチャーは打者3人と対戦。順次ピッチャー交代を繰り返し、2巡目に入ったら打者2人で投手交代していくローテーションで選考が進められた。ピッチャーは打者を抑えるべく投球し、打者はそれを打ち返し、最低でも走者を進めるのか、一気に走者を還そうとするのか、それぞれの打者の性格や思考が反映された打席となり、まさに「実戦」における個々の選手の技術的特徴や戦術的思考が如実に表れる選考となった。
「実戦形式」の選考の後には、2カ所でのバッティング。基本的な打撃フォームやミートの正確性、スイングスピード、打球の速度・飛距離、バットコントール等、バッティングの基本技術が細部にわたってチェックされた。
さらに塁間走、一塁から三塁までのベースランニングでのタイム測定も実施。個々の基本的な走力やベースランニングの巧拙が選考の対象となった。
最後にキャッチャーの一塁走者の二塁盗塁、盗塁阻止を想定したスローイングのタイム測定が実施され、初日の選考を終えた。
選考会2日目(12月3日/火)、この日も「実戦形式」での選考が行われ、この日はボールカウントを前日同様、ワンボール・ワンストライクに設定。無死一塁の状況から選考が始められた。ピッチャーは打者3人と対戦。順次ピッチャー交代を繰り返し、2巡目に入ったら打者2人で投手交代していく前日同様の形で選考が進められた。
また、「実戦形式」の選考の傍ら、ピッチャーはスピードガンによる球速測定を実施。自らが有する球種を自己申告し、各球種3球ずつ「全力」で投げ込んだ。
日頃使い慣れない革ボールでの選考とあって、「実戦形式」でも、このスピードガンでの球速測定でも、コントロールが定まらず、なかなか本来のピッチングができない選手も見受けられたが、それでもさすが各都道府県から推薦された「精鋭」。随所に「将来性」と「伸びしろ」を感じさせるピッチングを見せてくれた。
打者もそれぞれの特徴・長所をアピールすべく懸命にピッチャーに立ち向かい、走者になれば常に「次の塁を狙う」貪欲で積極的な走塁を見せていた。
選考会最終日(12月4日/水)は午前中いっぱい「実戦形式」での選考。選手たちは悔いを残さぬよう、やり残したことのないよう、持てる力の「すべて」を出し切ろうと最後の最後まで懸命にアピール。3日間にわたる選考会の全日程を終了した。選考会における選考の観点・基準は下記の通り。
●選考の観点・基準●
※それぞれの項目をA・B・Cで評価する。
【投手】
1.コントロール
2.スピードとキレ
3.変化球
4.守備力
5.精神力
6.状況に応じたピッチング
7.ゲームメイクする力
【捕手】
1.守備力(フットワークを含めた俊敏性)
2.キャッチング
3.送球技術(捕球からスローイングまでの速さ)
4.肩の強さ
5.配球及び状況に応じた判断
6.声の伝達技術(野手への指示)
7.バント処理
【内野手・外野手】
1.守備範囲の広さ(俊敏性・打球への反応)
2.キャッチング(グローブ捌き)
3.送球技術(肩の強さを含む)
4.フットワーク・カバーリング
5.ポジショニング
6.声の伝達技術(野手への指示)
7.状況に応じた守備
《バッティング》
1.スピードへの対応
2.変化球やコースへの対応
3.各種類のバント及びバスターの習得度
4.ランナー対応のバッティング技術(チームバッティング)
5.読みの技術
選考会終了後、すぐに選考会議を実施し、代表候補選手16名を決定。この後、(公財)日本ソフトボール協会理事会の承認を経て、12月16日(月)、選考結果が選手・チーム宛に通知され、翌17日(火)、本協会オフィシャルホームページ上でも発表された(選考結果はこちら)。
今回の選考会の対象となる「第2回女子U15アジアカップ」(大会派遣期間:2025年3月23日〜3月31日、大会日程:3月26日〜30日/台湾で開催予定)が「都道府県対抗全日本中学生大会」と日程が重なっており、「日本代表」に選出された場合には、「都道府県対抗全日本中学生大会」には出場できない……というジレンマがある。
また、その「第2回女子U15アジアカップ」を勝ち抜き、「第2回女子U15ワールドカップ」ファイナルステージへの出場権を獲得した場合も、ファイナルステージの開催は7月、イタリア。この世代の選手にとっては中学生活の「集大成」であり、かけがえのない「仲間」たちと戦える「最後」の大会である「全中」(中体連の全国大会)や「全日本中学生女子大会」の予選等と重なる可能性もある。
それだけに「難しい選択」を迫られることになるが……過去にもインターハイとジュニアカテゴリーのワールドカップ、旧・世界選手権の日程が重なってしまい、どちらを選ぶか「究極の選択」を迫られるようなこともあった。「世界の舞台」に立つことを選んだ者、インターハイで仲間たちと最後まで一緒に戦うことを選んだ者、それぞれの「大きな決断」の末、選んだ道はその時点では違っても、その後、TOPカテゴリーで「日本代表」の座をつかみとり、オリンピック金メダリストとなった者、ワールドカップで優勝し、「世界一」となった者……いずれを選択したとしても「世界の頂点」まで辿り着いた「実例」「実績」は過去にも残されている。
今回の選考会に臨んだ選手たちに、あるいは迷い、悩んだ末に、選考会への参加を断念した選手たちに、この先どんな「未来」が待っているのかはわからない。ただ……本当に「力」があるのなら、「夢」を諦めず、追い続ける「強い気持ち」を持っていれば、どんな「決断」をし、どんな「道」を選ぼうとも、必ずや自分の思い描く「夢」を実現することができるはずである。そう……ここはまだまだ「スタート地点」に過ぎない。ここでの「決断」でこの先の「未来」が決まってしまうのではなく、どんな道を選ぼうとも、自らの「夢」を追い続け、叶えるチャンスと可能性はいくらでも残されている。