「女子U18日本代表 第1次国内強化合宿」が岩手県花巻市で実施された
※岩手県高等学校体育連盟70周年記念事業として合宿が招致された
代表選出後、「初」の顔合わせとなる合宿が実施された
「チーム」として初の招集。一分一秒を惜しむように練習に励んだ
大学の強豪チームを相手に「実戦」主体の強化スケジュールが組まれた
「日本らしい」小技や機動力を駆使し、戦っていく!
「実戦」を積み重ねる中で、徐々にチームの「輪郭」が見えてきた
投手陣の「救世主」となれるか!? 安定感溢れるピッチングを見せた小栗巳緒乃
走者一・三塁での守備のフォーメーション、ヒットエンドラン等、サインプレーの確認も入念に!
女子U18日本代表のコーチングスタッフが岩手県下の高校生に技術指導も行った
岩手の地で過ごした4日間……この合宿の成果が「アジアカップ」につながっていく
去る8月3日(木)~6日(日)、岩手県花巻市において、女子U18日本代表が「第1次国内強化合宿」を実施した。
この合宿は、8月29日(火)~9月3日(日)、中国福建省・平潭で開催が予定されている「第9回女子U18アジアカップ」に向けた強化を目的としたもので、4月25日(火)~27日(木)、静岡県伊豆市で開催された「令和5年度 女子U18日本代表チーム選手選考会」の後、初めて代表選手16名が一堂に会し、「チーム」となるべく精力的な強化に励んだ。
WBSC(世界野球ソフトボール連盟)の「女子ワールドカップ」「女子U18ワールドカップ」の試合方式が変更され、まず「アジア地区予選」にあたる「アジアカップ」を戦い、上位3チームが「第2次予選」にあたる「グループステージ」に進出(アジアカップでの成績・順位によりA・B・Cグループに振り分けられる)。その「グループステージ」では、各グループの上位2チームが「本大会」にあたる「ワールドカップ ファイナル」に進出。開催国1チームとワイルドカード(グループステージでの成績や地域性を考慮し、決定)1チームを加えた8チームで「世界一」の座を争うことになる。
この試合方式の変更により、大会は2023年に「アジアカップ」、2024年に「グループステージ」、2025年に「ワールドカップ ファイナル」を開催することになり、実に3年をかけて大会が実施されることになる。
また、「女子U18ワールドカップ」は年齢制限、カテゴリーの上限年齢が設定されている大会であるだけに、その都度「選手選考会」を実施することが必要になる可能性もあり、従前とはまた違った取り組み、強化方針が求められることになる。
その都度、「ベスト」のチームを組むために「選手選考会」を実施していくのか、あるいは「ワールドカップ」本番から逆算し、ある程度長期的な選手強化、いわゆる「3年計画」といったサイクルで選手強化を行っていくのか、協会の方針、選手強化本部会の強化指針が問われることになる。
今回の合宿では、「実戦主体」の強化が行われ、「岩手県高等学校70周年記念事業」の一環として合宿誘致されこともあり、岩手県選抜と2試合の強化試合を行い、女子U18日本代表チームのコーチングスタッフによるクリニック(技術講習会)も実施。それと並行し、東北地区の大学チームの「名門」であり、「強豪」でもある東北福祉大、富士大との強化試合が4試合組まれる等、貴重な強化の場となった。
ここではチームを率いる山内悠平ヘッドコーチ(星城高等学校/愛知)を中心に、攻撃面ではどんな打順の組み合わせが最も効果的で、打線のつながりを生み、攻撃力・得点力をアップさせることができるか等、試行錯誤が繰り返され、守備面でも誰をどこのポジションで使うのか、攻撃面での嚙み合わせ、兼ね合いも考慮しながら、様々なパターンを「実戦」の中でチェック、確認し、チームとしての「最適解」が求められた。
また、今回の合宿が代表選手選出後、「初顔合わせ」「初招集」となった選手たちも、互いの特徴を知り、「チーム」として力を活かすために、それぞれの守備では互いの守備範囲を確認したり、連係プレーの際のカットの位置をどうするか、左中間、右中間、三遊間、二遊間、一・二塁間にとんだ打球はどこまで、誰が追いかけ、捕りにいくのか、カバーに回るのか、「実戦」の中で、一つひとつ丁寧に確認し合い、「チーム」としての「約束事」を確立し、「役割分担」を明確にする作業が進められた。
これは攻撃面でも同様で、「打線」の中で自分が果たすべき役割は何なのか、「チーム」の中で求められる任務はいかなるものか、サインプレーも含め、周知徹底。「チーム」として機能し、戦うことができるよう、繰り返し繰り返し、入念な確認作業が行われた。
「投打の大黒柱」と期待され、すでに「女子TOP日本代表」にも選出され、TOPカテゴリーの「アジアカップ」(ワールドカップアジア地区予選)を経験した後藤実緒(星城高等学校/愛知)が、インターハイ予選決勝の登板中に負傷するというアクシデントに見舞われ、戦線離脱を余儀なくされてしまったが、この合宿では、その後藤実緒に代わって選出された小栗巳緒乃(日本精工 ブレイブベアリーズ/滋賀)が安定感溢れるピッチングを見せてくれた。すでに「エースの風格」を感じさせるような貫禄のピッチングを披露し、今後がますます楽しみな存在になりそうだ。
投手陣では、先のインターハイ(全国高等学校総合体育大会・第75回全日本高等学校女子選手権大会)で「優勝投手」となった左腕・前坂未夢(兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校/兵庫)、JD.LEAGUE「東地区」でトップを走るビックカメラ高崎 ビークイーン(群馬)でプレーする伊東杏珠の存在にも期待がかかる。
打線は、井出久美(高崎健康福祉大学高崎高等学校/群馬)、「投手」としての選出ながらバッティングの良さを買われている「投打二刀流」の栗田満理奏(藤村女子高等学校/東京)を打線の「軸」に据え、1・2番、あるいは下位打線にスラップやセーフティーバントで相手守備陣を揺さぶり、機動力を駆使して攻める「曲者」たちを置き、攻める形、攻撃・打線の「輪郭」も見えてきた。
結果的には、大学の強豪チーム、名門チームを相手にしても「互角」の戦いを見せ、強化試合、テストマッチとはいえ、「勝利」を手にして見せる試合もあった。まずは直前に迫った「アジアカップ」へ向け、順調な足取りを刻んでいるといえるだろう。
また、今回の合宿では、グラウンド上だけでなく、宿舎に帰ってからも「一般社団法人 日本女性アスリート協会」による講習会を受講。アンチ・ドーピングや日々の栄養摂取、身体づくり。心理学、メンタル等、国際舞台で活躍する選手となるために「必須」の知識、素養を身につけるべく「英才教育」が施された。
女子U18日本代表は、この後、「アジアカップ」出発直前の8月25日(金)・26日(土)の両日、愛知県豊田市・トヨタスポーツセンターで「直前合宿」を行い、27日(日)に大会が開催される中国福建省・平潭へと出発。まずはワールドカップ本大会へ向けた「最初の関門」となる「アジアカップ」で「セカンドステージ」「2次予選」にあたる「ワールドカップ グループステージ」の出場権獲得をめざし、戦うことになる。
この「U18」のカテゴリーでは、1981年の記念すべき「第1回大会」で優勝を飾って以来、1991年の第4回大会、1999年の第6回大会、2003年の第7回大会、2013年の第10回大会と5回の優勝、「世界の頂点」に立ってきた。
しかし……2013年第10回大会の優勝を最後に、2015年の第11回大会、2017年の第12回大会、2019年の第13回大会は「宿敵」アメリカと「決勝」で対戦。優勝をさらわれ、いずれも準優勝に甘んじている。2021年ペルー・リマでの第14回大会はコロナ禍での大会となったこともあり、大会への出場を見合わせ、アメリカが大会4連覇を達成。優勝5回の日本に対し、アメリカは優勝回数8回と水をあけられる結果となっている。
もちろん、ジュニアカテゴリーの場合、必ずしも目の前の大会で優勝すること、勝つことが重要なわけではなく、TOPカテゴリーの強化へつなげていくことが「最大の目標」であり、目的であることは忘れてはならないが、長らく日本のソフトボールを引っ張っている女子TOP日本代表のエース・上野由岐子は、1999年の第6回大会の「優勝投手」であり、その後のキャリア、輝かしい戦績については、今さら言及する必要もないだろう。このカテゴリーでの「優勝」「世界一」をステップに、TOPカテゴリーで日本のソフトボールを支え続け、今や「レジェンド」的な存在となっている。
「東京2020オリンピック」で「神リリーフ」を連発し、チームの救世主的存在となった後藤希友は2019年の第13回大会のメンバー。アメリカとの決勝は0-0のまま、延長タイブレークにもつれ込む熱戦となり、8回表、日本が3点を先制しながら、その裏、「まさか……」の同点スリーランを浴び、最後はサヨナラ負けを喫した「苦い経験」を持つ。ただ、その「悔しさ」が彼女をさらに成長させ、その経験があったからこそ、「東京2020オリンピック」でのメンバー入り、その大舞台での「快投」があったといっても過言ではない。
必ずしも「勝つこと」「優勝すること」が絶対条件の大会ではないのは「事実」である。しかし……今、日本のソフトボールを支えてくれている女子TOP日本代表の選手の多くが、このジュニアカテゴリーでの「国際経験」を経て、名実ともに「世界のTOP」に君臨する選手へと成長を遂げていったことも、また紛れもない「事実」である。
2028年ロサンゼルスオリンピックでのソフトボールのオリンピック競技「復活」が実現するとすれば、今回のメンバーも当然その有力で有望な「対象」となることは間違いない。
その意味でも……ジュニアカテゴリーの段階で「世界の舞台」を経験することに大きな意味があり、それが日本のソフトボールの「未来」へとつながっていくはずである。
まずは「女子U18日本代表」がアジアの舞台でどんな戦いを見せてくれるのか、期待と注目が集まる!
第9回女子U18アジアカップ
出場選手・スタッフ(守備別50音順)
No. | 守備 | 氏名 | 支部 | 所属 |
1 | 投手 | 伊東 杏珠 | 群馬 | ビックカメラ高崎 |
2 | 〃 | 小栗 巳緒乃 | 滋賀 | 日本精工 |
3 | 〃 | 栗田 満理奏 | 東京 | 藤村女子高等学校 |
4 | 〃 | 前坂 未夢 | 兵庫 | 兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校 |
5 | 捕手 | 井出 久美 | 群馬 | 高崎健康福祉大学高崎高等学校 |
6 | 〃 | 浦川 美桜 | 岡山 | 創志学園高等学校 |
7 | 〃 | 田口 心彩 | 山梨 | 山梨学院高等学校 |
8 | 内野手 | 島仲 湊愛 | 福岡 | 福岡大学附属若葉高等学校 |
9 | 〃 | 北原 花菜絵 | 兵庫 | 神戸野田高等学校 |
10 | 〃 | 藤田 和奏 | 栃木 | 宇都宮文星女子高等学校 |
11 | 〃 | 古川 ひとみ | 神奈川 | 神奈川県立厚木商業高校 |
12 | 〃 | 小西 陽菜 | 岐阜 | 大垣ミナモソフトボールクラブ |
13 | 〃 | 次田 せな | 岡山 | 創志学園高等学校 |
14 | 〃 | 野田 愛紗 | 愛知 | 星城高等学校 |
15 | 外野手 | 柏坂 志帆 | 兵庫 | 兵庫大学附属須磨ノ浦高等学校 |
16 | 〃 | 塩田 優和 | 山梨 | 山梨学院高等学校 |
No. | 役職 | 氏名 | 支部 | 所属 |
1 | チームリーダー | 松田 和広 | - | 日本ソフトボール協会 |
2 | ヘッドコーチ | 山内 悠平 | 愛知 | 星城高等学校 |
3 | アシスタントコーチ | 西山 麗 | - | 日本ソフトボール協会 |
4 | アシスタントコーチ | 今野 貴経 | 埼玉 | 埼玉栄高等学校 |
5 | マネージャー | 西川 友理 | 東京 | 藤村女子高等学校 |
6 | トレーナー | 佐藤 瑠美 | - | セカンドエフォートフィットネス |