レギュラーシーズン2位のダイワアクトが、
「8年ぶり5回目」の「リーグチャンピオン」に
シーズンの締めくくりとなる舞台で、激闘を展開!
Hondaが1位・2位戦に勝利し、一足先に決勝へ
″天皇盃王者″ 平林金属は無念の2回戦敗退…
敗者復活戦で「世界No.1サウスポー」が本気モード !!
トヨタ打線を「1安打・16三振」と力でねじ伏せて見せた
優勝決定戦は再び「両者一歩も譲らぬ投手戦」に!
延長8回表、ダイワアクトの8番「ジョシュ・マクガバン」が
「パンチショット」のようなスイングでツーランを叩き込む !!
「世界王者」オーストラリア代表の「最強助っ人」が、 日本男子リーグに ″新たな衝撃″ をもたらしてくれた
今シーズンの日本男子リーグの王者を決める「第53回日本男子ソフトボールリーグ決勝トーナメント」が、去る11月9日(土)・10日(日)の両日、埼玉県鴻巣市/上谷総合公園野球場(フラワースタジアム)において開催された。
日本男子リーグ決勝トーナメントは、5年前(2019年)にリーグが「東西統一」されたことを受け、「リーグ戦(レギュラーシーズン)上位5チーム」による「最終順位決定戦」へとシステムを変更。試合方式もソフトボール特有のページシステム(※敗者復活戦を含むトーナメント方式)が採用され、その現・決勝トーナメントを最後まで勝ち抜いたチームが「日本リーグ優勝」となる形をとっている。
「最終決戦」の舞台には、リーグ戦1位・Honda、リーグ戦2位・ダイワアクト、リーグ戦3位・平林金属、リーグ戦4位・トヨタ、リーグ戦5位・日本エコシステムがそれぞれ進出。「リーグチャンピオン」の座をかけて、熱戦・激闘が繰り広げられた。
初日(11月9日/土)は翌日の優勝決定戦・3位決定戦進出をかけた合計3試合が行われ、まず第1試合(1回戦)でトヨタ(リーグ戦4位)と日本エコシステム(リーグ戦5位)が対戦。
後攻の日本エコシステムが初回、一死一・三塁から4番・吉村利駆杜のセカンドゴロの間に1点を先取したものの、トヨタもすぐに反撃。2回表、5番・杉山喜規、6番・八木孔輝、7番・坂本匠の3連続長短打で逆転に成功すると、3回表にも2番・西森亜夕夢のツーランホームランで2点、5回表にも3番・佐藤光希のツーランで2点、6回表には2番・西森亜夕夢の「この試合2本目」のツーランと6番・八木孔輝のツーランを含む長短5安打を集中して一挙5点を追加! 「16安打・11得点」の猛攻で11-1と6回コールド勝ちを収め、次戦(2回戦)への挑戦権を得た。
第2試合(準決勝)では、Honda(リーグ戦1位)とダイワアクト(リーグ戦2位)が激突。
Honda・池田空生、ダイワアクト・ジャック・ベスグローブの両先発投手が「一歩も譲らぬ投げ合い」を繰り広げ、序盤3イニングは互いに無得点。このままスコア掲示に ″0″ の数字が並んでいくかと思われたが……迎えた4回裏、Hondaの2番・遠畑光希が「初球・甘く入った(ど真ん中に入った)スライダー」を見事にとらえ、ライトへ矢のような当たりのソロホームラン! 「値千金の一発」を突き刺し、貴重な先制点を奪った。
守っては、先発・池田空生が「現・男子TOP日本代表エース」の「プライド」を胸に気合い十分、「今、持てる力をフルに使った」まさに「快投」(被安打1・奪三振13)でダイワアクト打線を抑え込み、そのまま1-0の完封勝利。一足先に翌日の決勝へ駒を進めた。
第3試合(2回戦)は平林金属(リーグ戦3位)とこの日の第1試合に勝利したトヨタが対戦することとなり、トヨタが2回表6番・八木孔輝のソロホームランで先手を取れば、平林金属も4回裏に二死一・二塁から9番・黒岩陽斗のタイムリーで同点。1-1の展開で終盤へ入った。
迎えた5回表、トヨタは前の試合3安打(内2本塁打)・4打点と「当たっている」2番・西森亜夕夢がレフトへ大きなアーチを描くソロホームランを放ち、勝ち越し! さらにこの後5番・杉山喜規、8番・小野寺翔太にも相次いでツーランが飛び出す「一発攻勢」で一挙5得点!! 6-1と大きくリードを奪った。
投げては、先発・小野寺翔太が得意の「威力あるライズボール」を主体に平林金属打線を4回裏の1点のみに抑え(投球内容は被安打6・奪三振13)、完投勝利。今年の ″初代・天皇盃王者″ を退け、翌日の3位決定戦進出を決めた。
2日目(11月10日/日)は3位決定戦・優勝決定戦の2試合が行われ、まず3位決定戦でダイワアクト(初日第2試合の敗者)とトヨタ(初日第3試合の勝者)が対戦。
ダイワアクトはジャック・ベスグローブ、一方のトヨタは小野寺翔太を先発投手に起用。序盤3回まで0-0という状況が続いた。
試合が動いたのは4回裏、ダイワアクトはこの回先頭の4番・永松幸太郎が三塁線を破るスリーベースを放ってチャンスメイクすると、二死後、7番・豊村友之介がツーボール・ワンストライクからの4球目 ″ライズボールの上がり際″ を上手くとらえ、ライトへツーランホームラン! 「貴重で大きな2点」を先制した。
守っては、「世界No.1サウスポー」「絶対的切り札」であるジャック・ベスグローブが「被安打1・奪三振16」と圧巻の投球内容でこのリードを守り抜き、2-0の完封勝利。優勝決定戦で待ち受けるHondaに再度挑むこととなった。
優勝決定戦は、2004年に決勝トーナメント制が導入されて以来2回目の優勝を狙うHondaと8年ぶりの王座返り咲きをめざすダイワアクトが「リーグチャンピオン」の座をかけて再戦。
前日の準決勝同様Honda・池田空生、ダイワアクト・ジャック・ベスグローブの両投手の先発でスタートした試合は、またも「両者譲らぬ、緊迫の投手戦」となり、0-0のまま延長タイブレークに突入。
迎えた延長8回表、ダイワアクトはタイブレークの走者を二塁に置き、代打・吉田和史、大城賢輝がセカンドフライ、空振り三振に倒れ二死となったが、8番・ジョシュ・マクガバンがワンボール・ツーストライクからの4球目 ″ほぼ真ん中に入ったライズボール″ を「パンチショット」のような「コンパクトなスイング」で合わせ、レフトへ会心のツーランホームラン! 喉から手が出るほど欲しかった先制点を奪った。
投げては、優勝・頂点を目前にしたジャック・ベスグローブが自らのピッチングのギアをさらにもう一段上げ、その裏、Hondaの1番・川島大空を空振り三振、2番・遠畑光希を四球で歩かせた後3番・坂田大士にライト前へ運ばれ、1点を返されはしたが、4番・浦本大嗣をファーストゴロ、5番・船原雄大を見逃し三振に斬って取り、スリーアウト。試合終了!! かつてこのジャック・ベスグローブと同じく ″世界最高の左腕″ と評されたアンドリュー・カークパトリックを擁し ″黄金時代″ (※2010年第39回大会、2011年第40回大会と2年連続で西日本リーグ・決勝トーナメントの『二冠』を達成。決勝トーナメントにおいてはその後も2013年、2016年と制し、合計4度王座についた)を築いて以来「8年ぶり」となる「栄冠」を手にした。
世界トップレベルに挑み続けて !!
今回の決勝トーナメントを迎えるにあたり、「大会展望」でも「 ″絶対的切り札″ 擁するダイワアクトが実質優位。 ″世界No.1サウスポー″ ジャック・ベスグローブに各チームの打線がどう挑む?? 」と大きな見どころを掲げたが、ベスグローブ 対 日本の各打者 という図式では「まだ、かなりの力量差がある……」のが正直なところだった。
ジャック・ベスグローブの今大会の投球内容を振り返ってみても、1戦目(準決勝・Honda戦)がソロホームラン一発を打たれはしたものの「2安打・15奪三振」、2戦目(3位決定戦・トヨタ戦)が「1安打・16奪三振」、3戦目(優勝決定戦・Honda戦)も延長8回裏に1点を失いはしたが「3安打・17奪三振」といった……いわゆる ″奪三振ショー″ の連続。
一塁側もしくは三塁側の報道エリア(写真・映像撮影可能エリア)から各試合の対戦(ベスグローブ 対 日本の各打者)の様子を注視していても「現時点でのレベルの違い」は明らかで、特に「ベスグローブがボールをリリースする瞬間『トップの打撃姿勢』を作れていない打者(立ち遅れてしまっている打者)は、そこからスイングしにいっても、すでにボールがホームベースを通過しかけている状態にあり……打撃の『タイミングを取る動作(初動)』『反応』という部分でまったく間に合っていない(対応できていない)」衝撃の事実が見て取れた。
もちろん、ジャック・ベスグローブが投じる「球速135㎞/h超」の領域は、現状、日本国内の戦いではなかなか「経験」「体感」することができない。ボールの「スピンの多さ」に伴うライズ・ドロップの「切れ味」「変化量の大きさ」は文字通り群を抜いており、これにまだ80㎞台(※ファストボールとの球速差は約50㎞/h)の、ストライクがキッチリ取れるチェンジアップを持ち合わせているのだから……打ち返すのは「至難の業」。ベスグローブの勝負球である「打者の手元で浮き上がり(吹き上がり)ながら曲がるスライダー」も「威力・変化」が段違いで、そのベストボールを今の日本の打者のレベルでとらえる、といったことは残念ながら「不可能に近い」と言えてしまうのだ。
唯一「活路」を見出すとするならば、まずもって「ハイライズは捨てる」こと。そして常に目線を下げ、ベスグローブの「ギアが上がる前」の、「ときに甘く入る球(膝元のローライズもしくは外に曲がり切らず真ん中に入ってくるスライダー)」をミスショットせずにはじき返すことだろう。今大会Honda・遠畑光希が放ったソロホームランは、まさにそのような状況・意識の中での一発と言え、 ″振り回す″ のではなく、狙い球をしっかりと限定した上で「ボールの軌道にバットを入れる」「ベスグローブ仕様の打撃」が見事実践された結果だったと感じている(※優勝決定戦でダイワアクト・ジョシュ・マクガバンが叩き込んだツーランホームランも、まず『ミートすること』を強く意識した『コンパクトかつシャープなスイング』が印象的であった)。
「世界No.1サウスポー」ジャック・ベスグローブ。まだ「20歳」という若さではあるが、彼こそが……男子ソフトボールにおける現在の、リアルな「トップオブトップ」だ。
日本屈指のチーム・選手たちといえども、上には上がいるもの。この異次元の領域を私たちが ″諦めてしまう″ のか、それとも ″食らいついていく″ のか、選ぶ道筋によって未来は大きく変わっていく(違ってくる)ように思う。
ベスグローブをはじめとする「世界一線級のプレーヤー」が今後、日本リーグにどれだけ参戦してくれるか分からないが、日本男子ソフトボールのレベルの底上げをめざすためには「日本のみならず、世界に視野を広げること」「常に高いレベルへ挑戦し続けること」をやめてはならない。
かつてドニー・ヘイルやアンドリュー・カークパトリックが「世界基準」を日本にもたらしてくれたように、今度はジャック・ベスグローブが「新たな衝撃」を我々に与えてくれた。
その衝撃を受けて、全チーム・全選手が来シーズンどのような戦いを見せてくれるか!?
今から楽しみに待ちたい。
●文責
日本ソフトボール協会広報担当
竹﨑 治 (日本体育社)
●写真
日本ソフトボール協会広報担当
森山 楓 (日本体育社)