※写真提供:Debbie Barker
2月4日~18日の15日間、男子TOP日本代表が
「ソフトボール王国」ニュージーランドで本格強化に励んだ
遠征期間中、現地で2つの大会に参戦!
ニュージーランド、オーストラリアら「世界トップレベル」の
強豪と強化試合を重ね、「大健闘」を見せた
「TABチャレンジカップ 2019 」では計7試合を
戦い、トリプルヘッダーのハードスケジュールも経験
優勝決定戦では「2016 世界ジュニア選手権決勝」で
投げ合った小山、チャップマンが再び雌雄を決することに
日本がニュージーランドを3-1で破り、見事優勝!
世界選手権では「世界の強者」たちが
「本気」で日本を叩きにくる。本番が楽しみだ ‼
2年前のあの悔しさは……忘れない!
世界選手権の舞台で本当のリベンジを
2019 世界男子選手権は6月にチェコで開催される
この経験・成果を「自信」に変えて !!
2000年以来となる「メダル獲得」を期待したい
去る2月4日(月)~18日(月)、今年6月にチェコ・プラハで開催される「WBSC第16回世界男子ソフトボール選手権大会(大会期日:6月13日~23日)」での“メダル獲得”をめざす男子TOP日本代表が「ニュージーランド遠征」を実施。これまで「世界選手権優勝7度(最多)」を誇り、「世界ランキング1位」に君臨する「ソフトボール王国」へ乗り込み、チームの本格強化に取り組んだ。
男子TOP日本代表は今回の世界選手権に向け、昨年11月、高知県高知市で代表選手選考会を実施。全国の実業団・クラブ・大学から65名の選手が参加し、厳しく、激しいサバイバルを経て「世界選手権代表17名」が選出された。
世界選手権前「絶好の強化事業」となるこの「ニュージーランド遠征」では、現地で「TABチャレンジカップ 2019 」「ナショナル・ファストピッチ・チャンピオンシップ 2019 」といった2つの大会に参戦。特にニュージーランド、オーストラリアの代表チームら「世界の強豪」が顔を揃えた「TABチャレンジカップ 2019 ※大会の全試合結果はこちら」ではトータル5勝2敗と大健闘(ニュージーランドとの直接対決でも2勝1敗と勝ち越し)を見せ、見事「優勝」を飾り、大きな収穫を手にした。
ここでは、見事「優勝」したその「TABチャレンジカップ 2019 」の激闘を振り返るとともに、世界選手権本番へ向けた「男子TOP日本代表の展望」をまとめてみたい。
◆「世界のトップレベル」と激突!
2月8日(金)~10日(日)の3日間、ニュージーランド・オークランドで開催された「TABチャレンジカップ 2019 」には、前回の世界選手権の覇者であり、「世界ランキング1位」に君臨するホスト国・ニュージーランド(トップチーム)。そのトップチームの「弟分」として、「若手主体」で編成されたニュージーランドB。前回の世界選手権の「準優勝チーム」であり、「世界の4強(ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、アルゼンチン)の一角」と評されるオーストラリアら“世界トップレベルの強豪”が参戦。
ニュージーランド、ニュージーランドB、オーストラリア、日本の出場4チームでまず2回戦総当たりの予選リーグを行い、その予選リーグの順位に基づき、上位2チーム(予選1位・予選2位)が「優勝決定戦」を戦う試合方式で覇が競われた。
◎大会初日(2月8日/金)
【予選リーグ第1戦】 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日 本 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
ニュージーランドB | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
(日)寺原瑞希・○松田光・寺原瑞希・池田空生-大石司
〔二塁打〕宮路充、浦本大嗣
予選リーグ第1戦の相手はニュージーランドB。先攻の日本は初回、一死から2番・宮路充がレフトへツーベースを放ち、出塁すると、二死後、四球で一・二塁となり、5番・浦本大嗣がセンターオーバーのタイムリーツーベース! 幸先良く2点を先制した。
守っては、「実質的な先発投手」松田光がその裏すぐに1点を返されたものの、4イニングを3安打・1失点でまとめ、5回に寺原瑞希が再出場。6回、7回は「代表初選出」の池田空生が5つの三振を奪う力投で相手打線を抑え込む等、追加点を許さず、2-1で勝利。大事な初戦をモノにし、好スタートを切った。
【予選リーグ第2戦】 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日 本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 3 |
ニュージーランド | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
(日)○小山玲央-片岡大洋
〔三塁打〕八角光太郎
ダブルヘッダーの2試合目、日本は「世界王者」ニュージーランド(トップチーム)と激突。ニュージーランド・ジョシュ・ペティット、日本・小山玲央の両先発投手の投げ合いで、0-0のまま試合は終盤に突入した。
迎えた6回表、日本はこの回先頭の7番・黒岩誠亥がレフト前ヒットで出塁。8番・筒井拓友のサードゴロがエラーとなり、さらに盗塁で二・三塁とチャンスを広げると、一死後、1番・宇根良祐のセンター前タイムリーで一気に二者が生還。なお盗塁で一死二塁のチャンスが続き、2番・八角光太郎も右中間を切り裂くタイムリースリーベース! 3本の長短打を浴びせ、この回一挙3点を奪った。
投げては、男子TOP日本代表の「次代のエース」と期待される先発・小山玲央が「世界最強」ニュージーランド打線と真っ向勝負。3安打・7奪三振と「力」で抑え込み、完封勝利を収め、初日連勝を飾った。
◎大会2日目(2月9日/土)
【予選リーグ第3戦】 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オーストラリア | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
日 本 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
(日)●小山玲央・山脇佑也-大石司
この日トリプルヘッダーになる日本は、まずオーストラリアと対戦。前日のニュージーランド戦に続いて小山玲央を先発起用した日本に対し、オーストラリアは昨年の「世界ジュニア選手権優勝投手」レイトン・リードをぶつけてくるという「注目の一戦」となった。
先発・小山玲央の安定したピッチングで初回、2回とオーストラリアを無得点に抑えていた日本だったが……3回表、内野安打、四球等で一死一・二塁とされ、1番打者にセンター前タイムリーを浴び、先制点を奪われてしまう。
1点を追う日本打線はオーストラリアの「期待の新星」レイトン・リードの前に結局1安打・11三振と反撃の糸口すら見出せず、完封負け。今大会初黒星を喫した。
【予選リーグ第4戦】 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ニュージーランド | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 1 | 1 | 5 |
日 本 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
(日)●松田光・寺原瑞希-片岡大洋
トリプルヘッダーの2試合目、日本は再びニュージーランド(トップチーム)と対戦。日本・松田光、ニュージーランド・ダニエル・チャップマンの先発でスタートした試合は、初回から互いにチャンスを作るものの、得点には結びつかず。初日同様「投手戦になるか!? 」と思われた。
しかし、前の対戦の「逆襲」に燃えるニュージーランドが3回表、松田光をとらえ、一死一・二塁から4番打者の左中間を破るタイムリーツーベースで2点を先制。4回表にも二死から1番打者が「初球」を振り抜き、レフトスタンドへ豪快なソロホームランを叩き込むと、1点を返された後の6回表にはこの回先頭の8番打者が日本の2番手・寺原瑞希から同じく「初球」を狙い打ち、右中間へソロホームラン! 7回表にも7番打者のタイムリーツーベースでニュージーランドがダメ押しの5点目を追加し、日本は連敗を喫することとなった。
【予選リーグ第5戦】 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日 本 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 |
ニュージーランドB | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
(日)池田空生・山脇佑也・小山玲央・○池田空生-大石司
〔二塁打〕池田寛人
トリプルヘッダーの3試合目、3連敗だけは避けたい日本はニュージーランドBと対戦。
日本が2回表にエラーと2番・井上知厚のタイムリーで2点を先制した後、ニュージーランドBも反撃に転じて2回裏、6回裏と1点ずつを返し、試合は振り出しに。2-2のまま延長タイブレーカーへ突入した。
8回は互いに得点を挙げることができず、迎えた9回表、日本はこの回先頭の7番・森田裕介が送りバントでタイブレーカーの走者を手堅く進めると、連続四球で一死満塁。ここで1番・宇根良祐がセンターへキッチリ犠牲フライを打ち上げ、三塁走者がタッチアップから本塁生還。勝ち越しに成功した。
守っては、先発し、7回から再登板した池田空生がその裏二死満塁と攻め立てられながらも、このピンチを何とか凌ぎ、3-2で辛勝。「死闘」を制し、予選リーグ3勝2敗とした。
◎大会最終日/2月10日(日)
【予選リーグ第6戦】 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日 本 | 0 | 2 | 5 | 3 | 0 | 10 | ||
オーストラリア | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 |
※大会規程により5回得点差コールド
(日)○松田光・寺原瑞希-大石司
〔三塁打〕筒井拓友、八角光太郎
〔二塁打〕黒岩誠亥
ここまで予選リーグ2位(3勝2敗)につける日本は、優勝決定戦進出をかけ、予選リーグ最終戦でオーストラリアと対戦。
試合は予選リーグ第3戦での完封負けの「リベンジ」を期す日本打線が序盤からオーストラリア投手陣に襲い掛かり、2回表に8番・筒井拓友、9番・井上知厚の連続タイムリーで2点、3回表に6番・黒岩誠亥、7番・片岡大洋、1番・八角光太郎のタイムリー等4本の長短打を浴びせて5点、4回表にも6番・黒岩誠亥、7番・片岡大洋、9番・井上知厚のタイムリー等4安打を集中して3点を追加し、大量10得点の猛攻! 10-2の大差(5回コールド)で圧勝し、予選リーグ2位を確定させ、予選リーグ1位・ニュージーランドが待ち受ける優勝決定戦へ駒を進めることになった。
【優勝決定戦】 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
日 本(予選2位) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 3 |
ニュージーランド(予選1位) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
(日)○小山玲央・池田空生-片岡大洋
〔本塁打〕松田光
今大会「3度目の対戦」となったニュージーランド(トップチーム)との優勝決定戦は、ニュージーランド・ダニエル・チャップマン、日本・小山玲央の両投手が先発登板。2016年の「世界ジュニア選手権決勝で投げ合った右腕」が、今度はそれぞれトップチームのユニフォームを身にまとい、雌雄を決することとなった。
試合はそのダニエル・チャップマン、小山玲央が立ち上がりから「ライバル心」「闘争心」をむき出しにし、互いに一歩も譲らず、見応えのある投げ合いを展開。0-0のまま終盤へと入った。
迎えた6回表、日本は一死から3番・黒岩誠亥が死球で出塁し、すかさず二盗に成功。得点圏に進むと、ここで4番・松田光がレフトスタンドへ「値千金」のツーランホームランを叩き込み、待望の先制点! リードを奪った日本は続く7回表にも7番・浦本大嗣、8番・井上知厚の連打で無死一・三塁のチャンスを作り、一死後、1番・八角光太郎のセンターへの犠牲フライで大きな3点目を追加。
投げては、先発・小山玲央から7回裏、池田空生へと継投。その池田空生が1点を返され、なお二死満塁のピンチを背負ったが、最後は4番打者を空振り三振に斬って取り、試合終了。日本が3-1でニュージーランド(トップチーム)を撃破し、見事「栄冠」を手にした。
◆「メダル」へ、確かな手応え!
この経験を「自信」に変えて !!
世界選手権に向けた強化試合とはいえ、“世界トップレベルの強豪”ニュージーランド、オーストラリアを相手にした国際大会で日本が「優勝」を飾るとは……。正直なところ、ここまでの戦いぶりは予想していなかった。やはり「勝負」というモノは「やってみないと分からない」し、どんな状況に置かれても、決して「諦めてはいけない」ことを再認識したニュージーランド遠征ではなかっただろうか。
「躍進」の要因となったのは、何といっても「世界に通用する若手」の台頭である。その中でも、男子TOP日本代表「次代のエース」と期待される小山玲央(日本体育大)をしっかりとTOPチームに引き上げ、「絶好の腕試し」の舞台となった「TABチャレンジカップ 2019 」で先発の柱として起用し、結果を残せたということが非常に大きかった。
その他の投手についても、前回の世界選手権でチーム一の安定感を見せた「エース」高橋速水(高知パシフィックウェーブ)を温存しながら、寺原瑞希(旭化成)、池田空生(花王コスメ小田原)といった「若い力」を積極的に起用。世界選手権でベスト4の壁を破るために必ず倒さなければならない強豪(ニュージーランドやオーストラリア)にぶつけても、「ある程度計算できる」ことを確認できたことは収穫であった。世界選手権本番ではおそらく高橋速水、小山玲央を中心に先発投手を回していくことになるだろうが、これで他の投手も今まで以上に「臨機応変」に投入していくことができる。誰がどの場面で投げても試合を作れる! 長丁場の戦いになる世界選手権で、この収穫が日本の強みとなることは間違いない。
打撃に関しても、今回は「若手」の「活躍」が際立っていた。日本リーグチャンピオン・平林金属の「ホープ」である宇根良祐、「アジア選手権MVP」の八角光太郎(国士舘大)をはじめ、走・攻・守「万能型」「伸び盛り」の黒岩誠亥(トヨタ自動車)らも国際経験を積む中で大きく成長。チームの勝利に貢献する「快打」を放ってみせている。また、ニュージーランド(トップチーム)との優勝決定戦では「投打の大黒柱」松田光(平林金属)がまさに「値千金」、日本の主砲として「試合を決める一発」を叩き込んでみせた。過去3大会(2013年・2015年・2017年)の世界選手権でなかなか輝きを放てなかった「悔しさ」を秘めていただけに、本人にとっても「自信を取り戻す」一振りとなったのではないだろうか。世界選手権本番ではこのニュージーランド、オーストラリア以外にも「世界一線級の投手」と対することになる。パワー・スピード・技術、すべての要素をさらに磨き、日本打線としての「クオリティー」を高めていくことが不可欠となるだろう。
前回(2017年)カナダ・ホワイトホースで開催された「第15回世界男子ソフトボール選手権大会」では、決勝でニュージーランドとオーストラリアがぶつかり合い、「王座奪還」へ「執念」を燃やすニュージーランドが終盤の「逆転グランドスラム」で2大会ぶり7度目の世界一に返り咲いた。3位はカナダ、4位はアルゼンチンとなり、日本は「5大会連続5位」という成績に終わっている。
今回のニュージーランド遠征で「確かな手応え」を持ち帰った日本ではあるが……世界の強豪たちが「このまま黙っている」とも思えない。ニュージーランドには昨年のインターコンチネンタルカップ(チェコ・プラハで開催)で日本を抑え込んだ「エース」ニック・ヘイズがいるし、オーストラリアには「球速135㎞/h超え」「世界最速」のアダム・フォーカード、カナダにも「緩急巧みな好投手」ショーン・クレアリー、アルゼンチンにも世界ジュニア選手権を連覇した実績を持つ「強力二枚看板」ウエムル・マタ、ロマン・ゴドイがいる。日本が大きな収穫を手にしたことは確かだが、この錚々たる顔ぶれが「世界の頂点」を争う世界選手権という舞台で“躍進できる保証”は“まだない”といったほうがいいだろう。
それでも……男子TOP日本代表がこのニュージーランド遠征で貴重な経験を積み、成果を上げ、世界選手権本番へ周囲の「夢」を膨らませてくれたことは非常に喜ばしいことである。「世界最強の王者」を2度「撃破」した「自信」を胸に、6月の本大会でも躍動し、再び世界を驚かせてくれることを期待したい!
No. | 役職 | 氏名 | 所属名 |
---|---|---|---|
1 | ヘッドコーチ | 岡本 友章 | 高知パシフィックウェーブ |
2 | アシスタントコーチ | 吉村 啓 | 平林金属 |
3 | 総務兼アシスタントコーチ | 照井 賢吾 | 高崎市役所 |
4 | トレーナー | 田岡 幸一 | Body Laboratory |
5 | マネージャー | 三村 奈弓 | ホンダエンジニアリング |