公益財団法人日本ソフトボール協会

〒160-0013 東京都新宿区霞ヶ丘町4番2号 Japan Sport Olympic Square
日本ソフトボール協会 TEL.03-5843-0480 FAX.03-5843-0485

公益財団法人
日本ソフトボール協会

ニュース

ニュース 男子U18日本代表

◆「WBSC第13回男子ソフトボールU18ワールドカップを振り返って」
若き戦士たちが躍動し、王座奪還! 世界の頂点へ!!
今後も世界に『本物のソフトボール』『真のトップレベル』を示して

男子U18日本代表チームが「世界の頂点」へ!
ここでは、その『熱く燃えた戦いの軌跡』を辿る★

昨年11月の代表選手選考会で「出場16名」を選出

同じく昨年12月の国内合宿でチームを本格強化!
日本の長所・強みを磨きつつ、課題克服にも努めた

2月22日、ニュージーランドでU18ワールドカップが開幕

日本は初戦のニュージーランド戦に4回コールド勝ち !!

その後も「圧倒的強さ」で連戦連勝!
無敗のまま優勝決定戦へ駒を進めた

優勝決定戦の相手は前回王者・オーストラリア。
序盤に2点を失い、追いかける展開となったが…

「冷静に」「慌てることなく」すぐに反撃!
終わってみれば9点を奪い、5回コールドで快勝 !!

全勝で駆け抜け、2大会ぶり3度目の優勝を飾った

自国開催のニュージーランドだったが、結果は5位…。
寂しくも世界最強と称されてきた「強さ」や「プライド」を
感じることはできなかった

昨夏の世界選手権で初優勝を飾ったアルゼンチンも4位。
ジュニア世代のチームではあるが、開幕戦でシンガポールに
あっけなく敗れる等「世界王者らしからぬ戦い」が目立った…

その中にあってヨーロッパのチェコが初のメダル獲得(3位)!

日本の全勝優勝は喜ばしい限りだが、
大会全体として「さらなるレベルアップ」を !!

2021年の「WBSC第17回男子ワールドカップ」では
「これぞ! 世界トップレベル !! 」と周囲を唸らせる
熱戦・好ゲームを期待したい★

「ソフトボールを輝かせる」のは
他の誰でもない、私たちである

 去る2月22日(土)~3月1日(日)の9日間、ニュージーランド・パーマストンノースにおいて開催された「WBSC第13回男子ソフトボールU18ワールドカップ(※大会結果はこちら 大会オフィシャルサイトはこちら)」で男子U18日本代表チームが見事優勝。2016年(第11回大会)以来「2大会ぶり3度目」の「世界一」に輝いた。

 大会には、前々回(2016年/アメリカ・ミッドランドで開催)優勝、前回(2018年/カナダ プリンス・アルバートで開催)準優勝とこのジュニア世代では常に「メダル圏内」「上位」に位置し、昨夏の世界男子選手権でもTOPチームが準優勝。今年(2020年)に入ってWBSC(世界野球ソフトボール連盟)男子ソフトボール「世界ランキング1位」へ躍り出た日本をはじめ、アルゼンチン(2)、ニュージーランド(3)、カナダ(4)、オーストラリア(5)、アメリカ(6)、チェコ(7)、メキシコ(8)、南アフリカ(10)、デンマーク(11)、シンガポール(17)、グアテマラ(21)の12チームが出場(※( )内数字はWBSC最新世界ランキング)。

 試合方式は、その出場12チームを「世界ランキング」に基づき2グループに振り分け、まず1回総当たりの「オープニングラウンド」を実施。各グループ上位3チームが「スーパーラウンド」へ進み、同じく1回総当たりの戦い(※ただし、オープニングラウンドで同グループだったチーム同士の対戦は、そのとき(オープニングラウンド)の試合結果が持ち越される)が行われ、ラウンド順位を決定。最終日、スーパーラウンド3位・4位がワールドチャンピオンシップ/ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)を、スーパーラウンド1位・2位がワールドチャンピオンシップ/ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)を戦うというスケジュールで覇が競われた。
 今大会はWBSC(世界野球ソフトボール連盟)のカテゴリー区分の変更に伴い、「U18/18歳以下」のカテゴリーとしては「はじめての開催(※第1回から第12回まで「U19/19歳以下」の年齢区分で開催された)」。男子において、「世界選手権」から「ワールドカップ」に大会名称が変更されて行われる「最初の大会」となった。

 ここでは、男子U18日本代表の「熱く燃えた戦いの軌跡」を辿るとともに、大会をじっくりと総括。男子ジュニア世代における日本の「現在地」や今後果たすべき「役割」について、また、世界のレベルの「実状」から感じる「ワールドカップ(世界の頂点を競う舞台)の課題」等々、考えてみたいと思う。

◎いざ、ニュージーランドへ! 若き戦士たちが見せた「快進撃」!!

 男子U18日本代表チームは昨年11月の代表選手選考会(11月21日~23日:高知県高知市で開催)で「大会に出場する16名(※今回から登録選手数が17 → 16に変更された)」が選び抜かれ、同じく昨年12月の第1次国内強化合宿(12月23日~26日:沖縄県読谷村で実施)を経て、2月13日に再集合。成田空港で大会へ向けた結団式・壮行会が行われ、一路「決戦の地」ニュージーランド・パーマストンノースへと出発した。
 到着後は早速現地(パーマストンノース)で開催されたプレトーナメント大会に参戦。U18カナダ代表チーム、地元・ニュージーランドのチームとテストマッチを行い「全勝」する等、「順調な仕上がり」を見せ、大会本番を迎えた。

【オープニングラウンド】

○オープニングラウンド第1戦/日本 12-1 ニュージーランド

 「WBSC第13回男子ソフトボールU18ワールドカップ」大会第1日、日本は「開幕戦」でホスト国・ニュージーランドと激突。
 立ち上がりから相手投手の制球の乱れ等に乗じてチャンスを作ると、チームの「キャプテン」3番・永吉飛斗が「快打」を連発! タイムリースリーベース2本を含む「3安打・6打点」と爆発する等、得点を重ね、大量12点を奪う猛攻 !!
 守っても、開幕投手を任された投手陣の「リーダー」稲垣拓朗が自慢のライズボールで押しまくり、ニュージーランド打線をわずか2安打に抑え込む「危なげのないピッチング」を展開。12-1(4回コールド)と予想外ともいえる大差で圧勝し、好スタートを切った。

○オープニングラウンド第2戦/日本 12-1 グアテマラ

 大会第2日、日本はオープニングラウンド・グループB第2戦でグアテマラと対戦。
 初戦(ニュージーランド戦)で圧勝した「勢い」そのままに、立ち上がりから着実に得点! 5番・味元琉維、6番・山口葵育の連続タイムリー等で試合の主導権を握ると、4-1と3点リードで迎えた3回裏には1番・西森潤のタイムリーツーベース、代打・大西郁夢樹のタイムリースリーベース等でたたみかけ、大量8点を奪う猛攻 !!
 守っても、先発・八木孔輝が2回表に1点を返されはしたものの、ビッグイニングを作らせることなく2番手・池田響へ投手リレー。最後はその池田響がグアテマラ打線を三者連続三振に斬って取り、12-1で4回得点差コールドが成立。「2試合連続のコールド勝ち」を飾った。

○オープニングラウンド第3戦/日本 15-0 デンマーク

 大会第3日、日本はオープニングラウンド・グループB第3戦でデンマークと対戦。
 ここまで2試合連続4回コールド勝ちを収めている日本は、この試合もエンジン全開! 2番・大西郁夢樹、3番・大橋優也の鮮やかな「連続ホームラン」で早々と先手を取ると、この後も攻撃の手を緩めることなく一気に加点 !!
 相手守備の乱れもあって初回に大量9点を奪い、2回表には6番・池田響、7番・井関綾人の連続タイムリーツーベース、1番・小山竜加のタイムリースリーベース等で4点を追加。3回表にも3番・大橋優也のランニングホームラン等で2点を加え、15点差をつけ、3回得点差コールドゲームが成立。
 投手陣は池田響 → 池田蓮の継投でデンマーク打線をわずか1安打に抑え込み、「余裕」の完封勝利。15-0の完勝で「開幕3連勝」を飾った。

○オープニングラウンド第4戦/日本 4-3 メキシコ

 大会第4日、日本はオープニングラウンド・グループB第4戦でメキシコと対戦。
 2回裏、無死満塁から7番・小椋千寿、8番・山本佳依の連続犠牲フライで2点を先制。
 しかし……3回表、先発・稲垣拓朗が四球、ヒット等で一死一・二塁とされると、2番打者に一塁線を破られ二者が生還。打球が外野深く転がる間に打者走者も一気に本塁を陥れ(※ランニングホームラン)、この回まさかの3失点。
 今大会はじめて「リードを許す展開」となった日本はその裏、四球、3番・永吉飛斗のセンター前ヒット、盗塁等で一死二・三塁とし、4番・山口葵育が痛烈なピッチャー返し! これが投手のグラブをはじく間に三塁走者が還り、同点。
 続く4回裏には一死から7番・小椋千寿が左中間を切り裂くスリーベースを放ち、チャンスメイク。ここで8番・山本佳依がキッチリ犠牲フライを打ち上げ、勝ち越しに成功 !! そのまま4-3のスコアで逃げ切り、苦しみながらも「全勝」をキープした。

○オープニングラウンド第5戦/日本 10-0 アメリカ

 大会第5日、日本はオープニングラウンド・グループB最終戦に臨み、アメリカと対戦。
 ここまで「無傷(4連勝)」で突っ走る日本は、初回に相手守備の乱れに乗じ早々と先取点。さらに6番・大西郁夢樹の右中間を切り裂くタイムリースリーベースで2点を加えると、3回裏には再び相手守備の乱れ、犠牲フライ、7番・井関綾人のランニングホームランで一挙4点を追加。続く4回裏にも一死一・二塁から3番・大橋優也がタイムリースリーベースを放ち、2点を奪い、なおも四球、盗塁の後、5番・山口葵育が三遊間を鋭く破るタイムリー! 4回コールド勝ちに必要な10点差をつけ、そのまま試合終了。
 オープニングラウンド・グループB「5戦全勝」、文句なしの「1位通過」でスーパーラウンドへ進出することとなった。

【スーパーラウンド】

○スーパーラウンド第1戦/日本 8-1 アルゼンチン

 大会第6日、この日からスーパーラウンドに突入し、日本は初戦(グループA2位・グループB1位戦)でアルゼンチンと対戦。
 先発・稲垣拓朗が2回表、一死二塁からライト前タイムリーを浴び1点を先制されはしたものの、その裏すぐに反撃。
 一死一塁から7番・井関綾人がタイムリースリーベースを放ち、同点とすると、この後パスボールであっさり逆転に成功。さらに相手守備の乱れ、1番・西森潤の犠牲フライで1点を加え、4回裏にも7番・井関綾人、8番・山本佳依の連打を口火に1点を追加。
 5回裏にはチームの「キャプテン」3番・永吉飛斗がセンターオーバーのスリーベースを放ち、チャンスメイクした後、4番・山口葵育、7番・井関綾人、2番・大橋優也の3本のタイムリーで一挙4得点! 「5回コールド」を成立させる7点差をつけ、終わってみれば8-1で快勝 !! スーパーラウンド初戦をキッチリ白星で飾った。

○スーパーラウンド第2戦/日本 5-2 オーストラリア

 大会第7日、日本はスーパーラウンド第2戦(グループA1位・グループB1位戦)で「前回王者」オーストラリアと激突。
 互いに“優勝決定戦での再戦”をにらんだ攻防となり、2回表、オーストラリアが7番打者のレフトオーバーのスリーベース、9番打者の二遊間を破るタイムリーで1点を先制。
 しかし、日本も3回裏、一死から四球、ライトフライで二死一塁。ここで2番・大橋優也が「頭部直撃の死球」を受け、一・二塁となると、この目の前の死球に「発奮」した「頼れるキャプテン」3番・永吉飛斗がセカンドへ痛烈な当たり! この打球を二塁手が後逸、打球が外野深く転々とする間に塁上の走者・打者走者(永吉飛斗)が一気に本塁へ還り(※記録は永吉飛斗のランニングホームラン)、逆転に成功。さらに四球、ワイルドピッチ、四球で一・三塁とし、「ここが勝負どころ !! 」と見た田中徹浩ヘッドコーチが得意の「ディレードスチール」を敢行。一塁走者が二盗気味にスタートして捕手の二塁送球を誘い出し、「一瞬」「わずかな隙」を突いて三塁走者が本塁突入。これが見事に決まり、一挙4得点。
 日本は4回裏にも6番・井関綾人がセカンド内野安打で出塁し、積極果敢に盗塁。これが捕手の二塁悪送球を誘い、カバーした中堅手も球を後逸する間に一気に本塁へ生還。
 守っては、先発・八木孔輝が5回表に2点目を返されながらも「集中力」を切らさず、「粘り強いピッチング」を展開。得意のドロップを有効に使って強打のオーストラリア打線をうまく振らせ、完投勝利。難敵に5-2で快勝し、スーパーラウンド「トータル4勝0敗」とし、スーパーラウンド最終戦(チェコ戦)を待たずに「ラウンド1位」「ワールドチャンピオンシップ・ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)進出」を確定させた。

○スーパーラウンド第3戦/日本 8-1 チェコ

 大会第8日、日本はスーパーラウンド最終戦(グループA3位・グループB1位戦)でチェコと対戦。
 前日のオーストラリア戦の勝利で早々と「ワールドチャンピオンシップ・ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)進出」を決めた日本は、この試合「主力」を「温存」。大会最終日/優勝決定戦を見据えたメンバー構成で臨み、初回、相手投手の制球の乱れに乗じて早々と2点を先制。2回裏にもパスボールで1点を追加し、試合の主導権を握ると、ソロホームランで1点を返された後の3回裏には再びパスボール、6番・味元琉維のライトへのタイムリーで3得点。5回裏にもパスボール、二死満塁から2番・畠山陸が二遊間を破るタイムリーを放ち、7点差をつけ「5回得点差コールドゲーム」が成立。
 8-1で快勝し、スーパーラウンドも「全勝(5勝0敗)」で駆け抜け、いよいよ大会最終日に臨むこととなった。

【ワールドチャンピオンシップ】

○ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)/日本 9-2 オーストラリア

 大会最終日、日本は「ワールドチャンピオンシップ・ゴールドメダルゲーム(優勝決定戦)」でオーストラリアと「世界一の座」をかけ再戦。
 先発・八木孔輝が立ち上がりに先制点を許し、2回表にもソロホームランを浴びて失点。
 2点を追いかける劣勢を強いられたが、2回裏、この回先頭の5番・味元琉維が一塁線を鋭く破り、打球がそのまま外野深く転がってランニングホームラン! 反撃の狼煙を上げると、3回裏には一死二・三塁から再び5番・味元琉維が一・二塁間を破るタイムリー。右翼手の打球後逸も重なって塁上の走者・打者走者(味元琉維)すべてが還り、一挙3点を奪い、逆転に成功 !! 「勢い」に乗る日本打線は4回裏にも「機動力」を活かした攻撃と1番・西森潤の左中間へのツーランホームラン等で大量5点を追加し、大きくリード。
 守っては、先発・八木孔輝が毎回のように走者を背負いながらもスーパーラウンド同様「粘り強い」「尻上がりに調子を上げる」ピッチングを展開。3回以降オーストラリア打線に得点を許さず、5回7点差で「得点差コールドゲーム」が成立。
 日本がオーストラリアを9-2で破り、見事「王座奪還」! 「2大会ぶり3度目」の「優勝・世界一」に輝いた !!

◎実を結んだ「継続的な選手強化」

 今大会、見事な「快進撃」で世界の頂点へ登り詰めた男子U18日本代表チーム。その「背景」には、男子のカテゴリーにおいて日本協会が施策した「継続的な選手強化」がある。

 「継続的な選手強化」のはじまりとなったのは、2017年第6回アジア男子ジュニア選手権大会におけるチーム編成。大会は当時U19(19歳以下)を対象に該当カテゴリーの各国代表チームが参加する位置づけであったが、日本協会選手強化本部会はその対象となるカテゴリー(U19)ではなく、あえて「一つ下のカテゴリー」である中学3年生を対象に「日本代表チーム」を編成。これまで「中学生」を対象とした国際大会が開催されていないこともあって、将来有望な中学生選手の「新たな目標」を創出するという狙いも含め、「初の試み」に踏み切った(※また、大会派遣の趣旨・目的は、今後、高校進学はもちろん、大学、実業団、クラブチーム等で将来にわたってソフトボールを続け、U19日本代表(現・U18日本代表)はもとより「TOPチーム」である「日本代表」をめざすモチベーションを高めることにあり、「男子TOP日本代表」を頂点とした「継続的な強化システム」の構築を図るための「第一歩」とされた)。

 この第6回アジア男子ジュニア選手権大会「男子中学3年生日本代表」に名を連ね、見事優勝。「アジアNo.1」を勝ち獲る実績を挙げるとともに早くから「国際舞台で揉まれた」のが、今回の「U18日本代表メンバー」でもある池田響、池田蓮、稲垣拓朗、八木孔輝、永吉飛斗、西森潤、畠山陸だ。

 また、「継続した選手強化」を図るという日本協会の方針・方向性がその後しっかりと受け継がれ、昨年9月の第7回男子U17アジアカップ(※今回の男子U18ワールドカップのアジア地区予選を兼ねた大会)でも2017年第6回アジア男子ジュニア選手権大会優勝メンバーから7名(池田響、池田蓮、稲垣拓朗、八木孔輝、永吉飛斗、西森潤、眞茅大翔)を選出。「チームの主力」に据え、新たな選手とも競わせながら、常にトップレベル(世界の頂点)を追い求めたことも「確かなステップアップ」を遂げた要因といえるだろう。

 今回のU18ワールドカップではチームの「キャプテン」を永吉飛斗が務め、攻守に大活躍(※大会MVPに輝いた)。稲垣拓朗や八木孔輝、西森潤らも継続して代表入りを果たし、積極的に「リーダーシップ」を発揮。グラウンド内外でチームの中心となっていた。また、オーストラリア、アルゼンチン、ニュージーランドら世界の強豪国と対してもまったく臆することはなく、「自信」を持って戦っていた姿が非常に印象的であった。

 田中徹浩ヘッドコーチがチームに説いてきた「U18ワールドカップで“優勝して終わり”ではなく、この経験をキッカケにもっと大きく、たくましく成長してもらいたい。U18はU23、そしてTOPチームにつなげるためのあくまで『通過点』にすぎない。目標・頂点を常に高く! 『真の世界一』をめざそう !! 」という考え(想い)を一人ひとり決して忘れることなく、これからも歩みを進めていってほしい。

◎「機動力」と「決定打を放つ力」を融合

 前回大会(2018年第12回世界男子ジュニア選手権大会)、田中徹浩ヘッドコーチが得意とする戦術・戦略(相手守備の弱さを突き、機動力で揺さぶるソフトボール)を前面に出して戦った日本。その戦い方に間違いはなかったが、最後「力負け(※決勝/オーストラリア戦で相手先発投手(球速130㎞/hに迫る本格右腕)の前にノーヒット・14三振。要所で2本のホームランを浴び、1-6で敗れた)」を喫してしまったことにより、一つ「優勝を勝ち獲るための課題」を残す形となった。

 今回その課題にメスを入れたのが、笹岡裕之コーチだ。自身もかつて「日本代表」として「世界トップレベル」を経験(※2000年第10回世界男子選手権大会では現・男子TOP日本代表ヘッドコーチの岡本友章氏らとともに戦い、準優勝。日本男子に「黄金時代」をもたらした)した笹岡裕之コーチが新たに習得を求めたのは、打撃での「ボールの見極め」と「アウトコースのさばき」。
 「私のこれまでの経験からしても、国際大会は『アウトコースのストライクゾーンが広くなる』傾向にある。この傾向はまさに“投手有利”であり、投手心理としてみれば『ここ一番』『勝負どころ』で当然有効活用してくることだろう。相手がトップレベルの投手になるほど、クレバーな投手になるほど、そこを徹底的に突いてくる。『世界の頂点を争うレベル』では『甘い球などこない』と考えておいたほうがいい。日本国内とは違うもう一段階上のレベルのスピード(球威)・変化球のキレにも各々がどう対応していくか? 何よりそのレベルで勝負できる『準備』をしておかなければならない!」と自らの国際舞台での経験をもとに「世界使用の打撃論」をチームに取り入れ、国内強化合宿から大会最終日まで徹底的に選手たちに「意識」させていた。
 当初、選手の中には「あえて厳しい球を打ちにいくより、甘い球を待ったほうが良いのでは ?? 」「インコースを捨て、アウトコース1本に絞るという“今までしてこなかった極端な打ち方”に戸惑いを感じてしまう……」という様子も見受けられたが、実戦を重ね、その重要性を自ら感じることで徐々に習得。
 現に大会本番では開幕戦(ニュージーランド戦)の永吉飛斗の先制タイムリースリーベースにはじまり、優勝決定戦(オーストラリア戦)でも西森潤がトドメのツーランホームラン! 日本打線の「要所で放つ快打」が効いていた。相手投手が厳しいコースに投げ込んできても、事前の「意識」「準備」のもと、思い切って踏み込んでいける。そしてカットで逃げるのではなく、そこを“狙って打ちにいく”ことができる。それをしっかり「体現」できた日本打線は「前回大会よりレベルアップ」していたし、相手に「怖さ」を与えていたはずである。

 もちろん、前回大会同様、田中徹浩ヘッドコーチ得意の攻撃面での「仕掛け」「揺さぶり」もハマり、各国の守備を翻弄。
 田中徹浩ヘッドコーチ自身も前回の経験を活かし、ただ仕掛け、揺さぶるのではなく、相手の特徴や試合の状況・展開・ポイントを読み、「わずかな隙」を見逃すことなく、「ここぞ !! 」という場面で的確に采配を振るっていた。
 走者一・二塁からのダブルスチール、また、走者一・三塁からのディレードスチールで相手守備陣を焦らせ(パニックさせ)、悪送球やベースカバーの遅れを再三誘発。それが直接得点に結びつき、試合の流れを引き寄せていた。相手の立場からすればボクシングでいう「ボディブロー」のようなもので、まさに嫌らしい攻撃、後々響くダメージとなっていたのではないだろうか。

 今後に向け強いて課題を挙げるとするならば……投手力のアップ(投手陣のさらなる成長)を求めたい。
 今回の投手陣は各々に特徴を持っていた。稲垣拓朗でいえばライズボール(浮き上がるような変化球)、八木孔輝でいえばドロップボール(落ちる変化球)を得意な球種とし、決め球(ウイニングショット)にしていた。
 田中徹浩ヘッドコーチがその個々の特徴・強みをしっかり把握し“相手打線に有効”と判断した上での投手起用であったため、つかまる(打ち込まれる)ことはまずなかったのだが、それぞれのピッチングをじっくり観ていくと「球種の偏り」や投球術における「引き出しの少なさ」を感じたのも正直なところだ。
 いくら得意な、有効な球種であっても、バリエーションが少なければ「狙い打ち」されてしまう。ライズ系の投手であっても、ときに打者の目線から消えるように落ちるドロップで空振りを取りにいく。ドロップ系の投手であっても、ときに打者の胸元をえぐるようなライズでのけぞらせる。「一本調子のピッチング」は「一発(長打)を浴びる危険」と隣り合わせであることを忘れてはならない。
 決め球(ウイニングショット)を有していることは「大きな強み」であるし、それを主体に配球を組み立てることに何ら間違いはないと思う。だが、その勝負球を「より活かす術」を考え、身に付けることで「もう一段階上のレベル」に上がることができる。
 彼らがめざすのは各国のTOPチームがしのぎを削る「真の世界トップレベル」。そのレベルの戦いを勝ち抜き、「本当の世界一」へ登り詰めるために……絶えず己を磨き続けてもらいたい。

◎今後も世界に「本物のソフトボール」「真のトップレベル」を示して!

 昨夏男子TOP日本代表が成し遂げた「世界選手権準優勝」に続く、男子U18日本代表の「ワールドカップ優勝」。まだTOPのカテゴリーで頂点を極めてはいないものの、日本男子の「世界ランキング1位」は納得の立ち位置となり、名実とも「世界の男子ソフトボールをリードする存在」になった。では、今後日本が果たすべき「役割」とは何だろうか?

 シビアな見方になってしまうが、今回のU18ワールドカップは全体の「レベル」として厳しいものがあり、大会の盛り上がりも“いまひとつ”と感じることが多かった。この男子ソフトボールワールドカップを“よりエキサイティングな舞台”へ変えていきたいと思うのであれば、各国の意識改革のもと、さらなる「競技力の向上」が必須となるだろう。

 特に今大会は出場選手の「年齢制限変更(※これまでのU19(19歳以下)からU18(18歳以下)へ年齢制限が変更された)」が影響したか、全体的に「選手強化の遅れ」や「準備不足」が否めず、「未完成のチーム」が多い印象を受けた。
 その表れとして守備におけるバッテリー間のミス(パスボールやワイルドピッチ)が非常に多く、試合そのものを壊してしまう場面もしばしば……。投手がただ力任せに投げ、打者はそれに対して振り回すだけ。守備も打球を簡単に後ろに逸らしてしまう……という世界一を競う舞台とは思えない“目を疑うようなプレー”も続出していた。
 まだジュニア世代のチームとはいえ、これまで“不動の世界ランキング1位”、長きにわたり“世界最強”と称されてきたあのニュージーランドが簡単にコールド負けを喫してしまう(※ニュージーランドは昨夏の世界選手権でTOPチームがメダルを逃していた(4位に終わっていた)が、自国開催となったこのU18ワールドカップでもメダル獲得はならず、5位に沈んだ)。昨夏の世界選手権でTOPチームが初優勝を飾り、“注目”を集めていたアルゼンチンが大事な開幕戦で格下相手にあっけなく敗れてしまう。日本が圧倒的強さで今大会を制したことは喜ばしい限りだが、その一方で「他国は大丈夫なのか……」と現況を不安視したのもまた事実だった。

 今回、球場に観戦に訪れた人々を唸らせ、惹きつけるような「クオリティの高いソフトボール」を展開したチームはどれほどあっただろうか。
 速球はもちろん、変化球を操り、制球力、投球術も兼ね備えたピッチング。あらゆる打球にも瞬時に反応し、正確に捕球・送球できる守備。一発(長打)を狙うだけでなく、小技(セーフティーバントやスラップ)も織り交ぜ、状況によってはバスター等で相手守備の逆を突いたり、パニックさせたりすることも可能な多彩なバッティング。次の塁を積極的に狙いつつ、相手守備を揺さぶる(かき回す)こともできる走塁。これら“ソフトボールならでは”の技術・色を前面に出して、「本物」「真のトップレベル」を「体現」していたのは寂しくも日本だけではなかったか ??

 だからこそ、今後は日本が「世界をリード」していかなければならない。誇り高き王者として世界を引っ張り、「本物」「真のトップレベル」を示し続けていかなければならない。男子ソフトボールの世界トップレベルで競い、頂点を勝ち獲った日本だからこそ「得た役割」があると感じるし、同時に常に「最高のプレー」「最高のクオリティ」を提供する「使命・責任」が与えられたとも思うのだ。

 WBSC(世界野球ソフトボール連盟)主催大会となって、野球側の力も借り、大会の運営スタイルも変わった。試合方式の変更、インターネットによる試合のLIVE配信にも重きが置かれ、試合終了直後にHIGHLIGHT映像を視聴することだってできる。世界中どこにいても、リアルタイムで、身近に、ワールドカップ(世界一を決める戦い)を体感できるようなシステムとなっていることはもうご存知のことだろう。
 今後のWBSCの動向・方向性は定かではないが、少なくともそこには「これまで以上にソフトボールをPRしたい」「男子ソフトボールの魅力・醍醐味も発信していきたい」という意思や姿勢がある。

 以前に比べて世界のソフトボールをリアルに発信できるようになった現代。だが、「ソフトボールそのもの」を輝かせられるかどうかは「選手たち自身」にかかっていると私は思う。より多くの人々に見られるようになった今だからこそ、ソフトボールのトップレベルをめざし、世界最高峰の舞台で戦う者としての「プライド・誇り」を強く持ってほしい。

 これからもソフトボールの未来を見据えて。
 誰かがソフトボールを輝かせてくれるのを待つのではない。私たちが、ソフトボールを輝かせていくのである。

文・写真
男子U18日本代表チーム
選手団広報/竹﨑 治(日本体育社)

男子U18日本代表チーム選手名簿
(2020WBSC第13回男子ソフトボールU18ワールドカップ出場選手)

選手

No. 守備 氏名 所属 選手情報
1 投手 池田 響 熊本県立熊本工業高等学校
2 池田 蓮 鹿児島県立鹿児島工業高等学校
3 稲垣 拓朗 新島学園高等学校
4 八木 孔輝 愛媛県立松山工業高等学校
5 捕手 井関 綾人 埼玉栄高等学校
6 山口 葵育 新島学園高等学校
7 内野手 小椋 千寿 高知県立高知工業高等学校
8 小山 竜加 長崎県立佐世保西高等学校
9 小笹 慶斗 長崎県立大村工業高等学校
10 永吉 飛斗 鹿児島県立鹿児島工業高等学校
11 西森 潤 高知県立高知工業高等学校
12 畠山 陸 高知県立高知西高等学校
13 外野手 大西 郁夢樹 啓新高等学校
14 大橋 優也 島根県立三刀屋高等学校
15 味元 琉維 高知県立高知工業高等学校
16 山本 佳依 飛龍高等学校

スタッフ

No. 役職 氏名 所属
1 団長 塩島 虎一郎 (公財)日本ソフトボール協会
2 ヘッドコーチ 田中 徹浩 新島学園高等学校
3 アシスタントコーチ 安部 厚志 飛龍高等学校
4 笹岡 裕之 高知県立佐川高等学校
5 総務 津本 大貴 長崎県立佐世保西高等学校
6 トレーナー 田岡 幸一 Body Laboratory
PageTop