王者・平林金属が今大会も「強さ」を見せ、総合選手権連覇!
「日本の頂点」をめざし、32チームが熱戦を繰り広げた
大会初日は環太平洋大学、立命館大学が日本リーグ勢を撃破!
平林金属が弟分でもある環太平洋大学の挑戦を退け、連覇に王手
環太平洋大学も、大学勢としては8年ぶりの決勝進出を狙ったが……
前回3位の高崎市役所が旭化成を6-2で破り、決勝へ
1回戦の「死闘」を制し、その後も「激戦続き」となった旭化成
前々回の決勝戦同様、またしても高崎市役所に敗れてしまった
高崎市役所 vs 平林金属の決勝は、「歴史に残る大激戦」に!
平林金属が延長8回タイブレーカーの末、8-7でサヨナラ勝ち
驚異的な勝利への「執念」を見せ、総合選手権連覇を成し遂げた!!
第63回全日本総合男子ソフトボール選手権大会が、去る9月16日(土)~19日(火)の4日間(※台風の影響で3日目/18日(月・祝)が中止・順延)、青森県八戸市/東運動公園野球場他において開催された。
大会には前回優勝の平林金属(岡山)、準優勝のダイワアクト(佐賀)をはじめ、昨年の日本男子ソフトボールリーグ決勝トーナメントに出場した6チーム(※昨年優勝の平林金属、準優勝のダイワアクトを除いた6チーム(ホンダエンジニアリング(栃木)、豊田自動織機(愛知)、デンソー(愛知)、トヨタ自動車(愛知)、大阪桃次郎(大阪)、愛媛ウエスト(愛媛))が推薦出場。その他、全国各都道府県・各ブロックの厳しい予選を勝ち抜いた23チーム、開催地枠として地元1チームを加えた総勢32チームが出場。文字通り「日本の頂点」をめざして熱戦を繰り広げた。
大会初日/9月16日(土)は1回戦16試合が行われ、中国ブロック代表の環太平洋大学(岡山)が、東海ブロック代表(※日本男子東日本リーグに所属)の日本エコシステム(岐阜)を9-1(5回コールド)、近畿ブロック代表の立命館大学(京都)が、四国ブロック代表(※日本男子西日本リーグに所属)のジェイテクト(徳島)を10-5で破る「大金星」。先月、岡山県新見市で開催された第52回全日本大学選手権(インカレ)で8年ぶり29回目の優勝を飾った関東ブロック代表の日本体育大学(東京)も、九州ブロック代表(※日本男子西日本リーグに所属)の旭化成(宮崎)に「積極果敢」にチャレンジし、延長11回タイブレーカーに及ぶ壮絶な「死闘」の末、7-10で打ち負けたものの、健闘を見せた。
大会2日目/9月17日(日)は2回戦・準々決勝の12試合が行われ、前日の1回戦で日本エコシステムを撃破した環太平洋大学が、中国ブロック代表の広島大学(広島)に8-0(5回コールド)、九州ブロック代表のS・Tオール大分(大分)にも7-2と続けて「快勝」し、「大学勢」としては5年ぶり(※第58回大会の日本体育大学以来)のベスト4進出。「前回優勝」の平林金属は、日本男子西日本リーグのライバルでもある愛媛ウエスト、大阪桃次郎との「厳しい戦い」が続いたが、1-0(延長8回タイブレーカーの末、サヨナラ勝ち)、5-2とともにしっかり勝利をつかみ、順当に準決勝へ。「前回準優勝」のダイワアクトは、デンソーとの対戦で先発登板したアンドリュー・カークパトリックが被安打2の好投を見せたものの、最後まで打線の援護がなく、0-1の完封負けを喫して2回戦で姿を消す形となった。この他、1回戦で日本体育大学との激しい打撃戦をモノにした旭化成が、そのまま「勢い」に乗り、ホンダエンジニアリングを3-2、豊田自動織機を5-4で破って準決勝へ進出。関東ブロック代表で「前回3位」の高崎市役所(群馬)も、1回戦から投打に実力を示し、2回戦・準々決勝ではトヨタ自動車、デンソーといった「日本リーグ勢」に9-1(6回コールド)、3-0と連勝。平林金属と同じく、3年連続でベスト4に駒を進めた。
台風の影響(強風)による大会3日目/9月18日(月・祝)の中止・順延をはさみ、最終日となった大会4日目(予備日)/9月19日(火)は準決勝・決勝が行われ、準決勝・平林金属対環太平洋大学戦は、先攻の平林金属が初回、日本代表にも選出された「キャプテン」小見山敦吏の「豪快な満塁ホームラン」でいきなり4点を先制。強烈な先制パンチを浴びせると、4点リードのまま迎えた7回表にも、8番・尾﨑貴成のレフトへのソロホームラン、2番・木谷謙吾の左中間へのタイムリーでダメ押しの2点を追加。守っては、松田光、松岡涼介とつなぐ余裕の投手リレーで環太平洋大学打線を3安打に抑え込み、6-0の「完勝」で「連覇に王手」をかけた。
もう一方の準決勝・旭化成対高崎市役所戦は、3回裏に高崎市役所が2番・小田澤直紀のセンターへのソロホームランで1点を先取。続く4回裏には、一死満塁から8番・松本健の左中間へのタイムリーツーベースで2点を加え、試合の主導権を握り、その後5回表、6回表に1点ずつを返され、1点差に詰め寄られはしたが、迎えた6回裏、6番・照井賢吾の左中間へのソロホームラン、さらに9番・大井宗、1番・深谷祐太の連続タイムリーで一挙3得点。粘る旭化成を突き放す「大きな追加点」を奪い、そのまま6-2で逃げ切り、決勝進出を決めた。
決勝では、「2年ぶり3度目」の頂点を狙う高崎市役所と「連覇(2年連続4度目の優勝)」をめざす平林金属が激突。平林金属・松田光、高崎市役所・照井賢吾の両エース(松田光は「現役日本代表」、照井賢吾は「元日本代表」であり、ともに3度世界選手権を経験している)が先発登板し、スタートした試合は、初回、2回と互いに得点を挙げられずにいたものの、平林金属が3回裏に3番・松田光の左中間へのツーランホームランで2点を先制。このまま有利に試合を進めるかに見えたが、高崎市役所も5回表に反撃に転じ、9番・大井宗がレフトへ弾丸ライナーのソロホームランを突き刺し、1点差。しかし、その裏、平林金属が一死二・三塁から2番・木谷謙吾の犠牲フライで1点を加え、さらに3番・松田光が故意四球で歩いて二死一・二塁とすると、「売り出し中」の4番・鳥山和也が右中間を切り裂く2点タイムリースリーベース。この回一挙3点を奪い、4点差にリードを広げた。今度こそ……王者・平林金属が主導権を握ったかと思われた両チームの戦いであったが、6回表、高崎市役所が6番・照井賢吾のレフトへのスリーランホームランで再び1点差に迫り、7回表にも3番・原田泰光、5番・小田澤正紀のタイムリーで3点を挙げ、逆転に成功すれば、土壇場の7回裏、平林金属も二死一・三塁から4番・鳥山和也がこの試合2本目となる2点タイムリーを放ち、同点。7-7のスコアでとうとう延長タイブレーカーへと突入することになった。8回表の高崎市役所の攻撃を無失点で凌いだ平林金属は、その裏、タイブレーカーの走者を二塁に置き、6番・小見山敦吏は見逃し三振に倒れたものの、7番・祝弘樹がツーボール・ワンストライクからの4球目を鋭く振り抜き、三遊間を破る「執念」のタイムリー。この間に二塁走者・平本拓朗が一気に本塁へ生還し、歓喜のサヨナラ! 平林金属が高崎市役所との「歴史に残る大激戦」を制し、見事「全日本総合選手権『連覇』!!」を成し遂げた。
今や「日本の男子ソフトボール界を牽引するチーム」と評される平林金属。今大会も「王者」は強く、そして他のどのチームよりも……熱かった。「男子ソフトボール」に情熱を注ぐ選手たちは現在も全国にたくさん存在するが、この平林金属ほど「熱さ」を感じさせるチームは、正直なところいない。
今シーズンは7月の全日本クラブ選手権こそ優勝を逃し、準優勝に終わったものの、日本リーグ(日本男子西日本リーグ)では第3節終了時点で通算11勝1敗と首位を独走。次節(最終節)を残してすでに4位以上(決勝トーナメント進出)を確定させており、3連覇へ快調に突き進んでいる。東西両リーグの上位4チーム(計8チーム)が「日本リーグチャンピオン」の座を争う決勝トーナメントでも、やはり「優勝候補の筆頭」に挙げられるチームだ。
「男子ソフトボールのさらなる発展」と「日本リーグ等のレベルの底上げ」を常日頃口にし、日本の男子ソフトボール界を引っ張るリーダーとして“熱い想い”を抱き続ける吉村啓監督の指揮のもと、選手個々の“意識”は当然高い。「男子日本代表の顔」として世界選手権に3度出場し、日本国内でのプレーに止まることなく、オフシーズン等を利用してニュージーランドやアメリカといった「ソフトボールの本場」で武者修行。「世界トップレベル」で揉まれた「投打の大黒柱」松田光の活躍にも他の選手たちが刺激され、その松田光に「追いつき、追い越せ!」とチーム内の競争(レギュラー争い)も年々激しさを増している。どんな大会であろうが、相手がどこであろうが、目の前の一戦・ワンプレー・一球に全力で取り組む。常勝という地位を築きつつある中でも、彼らに「驕り」や「慢心」は一切ないのである。
高崎市役所との決勝戦、まさに手に汗握る攻防が終盤にさしかかったとき……ふと隣を見れば、涙を流しながら必死にカメラのシャッターを切り、「頑張れ!! 松田さん!!!」と懸命に声を張り上げる関係者の姿があった。日本リーグや全日本大会の際、いつもチームに帯同している山本有二広報担当である。選手・スタッフが一丸となって脇目もふらず、前進し続ける。今の彼らにしてみれば決して特別なことではないのかもしれないが、そんな場面からも平林金属の「熱さ」が伝わってくる。「男子ソフトボールへの並々ならぬ情熱」、それこそが……平林金属というチームの強さの源ではないだろうか。