※資料・画像提供/全日本大学男子選抜チーム・伊勢幸広 アシスタントコーチ兼総務
※画像提供/国士舘大学・志村夕夏里 さん
先日、「アジア№1」に輝いた全日本大学男子選抜。
ここではその若き力の「優勝への道のり」を振り返る!
今回は全日本大学連盟が主体となり、選手選考を実施
短い準備期間にありながらも……日本「トップレベル」の
チームとの「実戦」で強化を図り、本番まで仕上げていった
4月23日、いよいよ大会が開幕!
初戦から大勝し、その後8試合連続のコールド勝ち!
文句なしの予選リーグ1位通過で決勝トーナメントへ
決勝トーナメントでも、見事フィリピンを連破!
「無敗」のまま「完全優勝」を飾り、日本代表として
大会「6連覇」の偉業を成し遂げた!!
全日本大学男子選抜の優勝の裏に見えたもの……。
それはやはり、アジア全体の競技レベルの底上げを
図る必要があるということだった
大会MVP、個人タイトル(打撃部門)総なめの
「大活躍」を見せた八角光太郎(国士舘大学)
2016年の「世界ジュニア選手権優勝投手」
エース・小山玲央も、最優秀投手賞を獲得
ジュニアで世界一を経験した選手たちが主体で
「黄金世代」とも呼ばれているが、ソフトボールに
対する「貪欲な姿勢」は変わらない
※インドネシアチームのコーチングスタッフを務めていた
オーストラリア代表の強打者 ジノン・ウィンタースに、
積極的にアドバイスを求める光景も見られた
若き戦士たちよ、次代を担え!
次は「世界の頂点」を……極めよう!!
去る4月23日(月)~28日(土)の6日間、インドネシア・ジャカルタで「第10回アジア男子ソフトボール選手権大会(兼第16回世界男子ソフトボール選手権大会アジア地区予選)」が開催され、今回日本からは「全日本大学男子選抜チーム」が出場。予選リーグから「無敗」のまま頂点へ登り詰める「圧倒的な強さ」を見せつけ、見事「完全優勝」! 日本代表として大会「6連覇」の偉業を成し遂げるとともに、来年、チェコ・プラハで開催される世界選手権への出場権も獲得した(※大会結果はこちら)。
ここでは、その全日本大学男子選抜の「戦いの軌跡」を辿りながら、「アジアの男子ソフトボールの現状」についても考えてみたいと思う。
【トップチームではなく、あえて大学選抜を派遣!】
今大会は、来年の世界選手権のアジア地区予選を兼ねるという重要な位置づけであったが、(公財)日本ソフトボール協会選手強化本部会は「ジュニア(U19:19歳以下)とTOP(トップチーム)をつなぐ『大学』のカテゴリーに国際大会への出場機会を与え、『強化』を図る」こと、また「国際舞台を経験させることで各々が『国(日本)を代表し、戦う!』意義や醍醐味を体感し、大学卒業後もトップレベルで戦い続け、将来『男子TOP日本代表』となって『世界一になる!!』という目標・モチベーションを創出する」ことを狙いとし、あえて「次代」を担う「大学選抜」の派遣を決定。
2016年に「第11回世界男子ジュニア選手権大会」を制し、「世界一」に輝いた「黄金世代」が揃う「大学選抜」であれば、「必ずや世界選手権への出場権獲得を成し遂げてくれるはず!」と大きな期待を込めて送り出すことになった。
【全日本大学連盟が主体となり、選手を選考】
今回のチーム編成に至っては、大学のカテゴリーの選手たちが所属する「全日本大学連盟」が主体となって、まず3月8日・9日の両日、千葉県野田市・東京理科大学野田キャンパスにおいて選考会を実施。全国の大学から書類選考(一次選考)を通過した26名の選手が参加し、紅白戦による実戦形式での選考をはじめ、体力測定、個人面談等、厳正な選考を経て、大会に出場する代表選手「17名」が決定された。
選出された代表選手の顔ぶれとしては、2016年の世界ジュニア選手権で35年ぶり2度目の「世界一」を勝ち獲った「優勝メンバー」から多数選出され、全日本大学選手権大会(インカレ)で29回の最多優勝回数を誇る日本体育大学、2年連続で決勝進出、過去4回インカレ制覇の実績を有する国士舘大学の現在の「2強」と評される両大学の選手が17名中13名と大部分を占める形となった。
【日本『トップレベル』に挑み、チームを本格強化!】
その後、全日本大学男子選抜は大会本番まで約1カ月という短い準備期間にありながら、日本トップレベルのチームとの「実戦」によりチームを本格強化。
3月31日、愛知県名古屋市・ナゴヤドームで開催された「男子SPECIAL MATCH」では、「男子TOP日本代表」の主力選手のほとんどが顔を揃える日本男子リーグ選抜に真っ向から挑み、互角の戦いを展開。 試合には0-1で惜しくも敗れはしたものの、日本のトップレベルで戦う選手たちに「世界」を相手に戦う「魂」を注入され、チームの士気は一段とアップ! そのまま愛知県豊田市へ移動し、翌日は日本男子東日本リーグに所属する日本エコシステムの胸を借りてダブルヘッダーでのテストマッチも敢行。日本リーグで戦うチームを相手に3-2、3-1と……善戦どころか連勝で締めくくり、チーム力を高め、いよいよ本大会へ臨むこととなった。
【大会が開幕! 初戦から『圧倒的な強さ』を見せ、快進撃!! 】
迎えた4月23日、第10回アジア男子選手権大会が開幕。初戦となる予選リーグ第1戦でインドと対した全日本大学男子選抜は、初回から八角光太郎、瓦口昂弥の二者連続ホームランを含む長短5安打を集中し、一挙10得点を奪う猛攻! その後も攻撃の手を緩めることなく打ちまくり、22-1(3回得点差コールド)で大勝すると、ここからさらに「勢い」を加速させ、タイを14-0(4回得点差コールド)、マレーシアを10-0(4回得点差コールド)、インドネシアを10-0(6回得点差コールド)、チャイニーズ・タイペイを11-0(4回得点差コールド)、フィリピンを12-1(6回得点差コールド)、シンガポールを15-0(3回得点差コールド)、香港を16-2(5回得点差コールド)で撃破!! 「8試合連続コールド勝ち」という文句なしの形で予選リーグを1位通過し、この時点で早々と来年の世界選手権への出場権も獲得した(※予選リーグを2位以上で通過すれば、決勝トーナメント(1位・2位戦)で一度敗れても敗者復活戦(3位決定戦)へ回る権利が得られ、4位以下になることはない:世界選手権への出場権は上位3カ国に与えられる)。
決勝トーナメントでは、まず1位・2位戦でフィリピンと対戦。2回裏、相手守備の乱れに乗じて2点を先制すると、4回裏には二死一塁から芝聖がセンターへツーランホームランを叩き込み、大きな2点を追加。5回裏にも無死一塁から八角光太郎がセンターへツーランホームランを突き刺し、ダメ押しの2点を加え、そのまま6-0で快勝。ここはさすがにコールド勝ちとはいかなかったが、投打に盤石の試合運びで順当に決勝進出を決めた。敗者復活戦(3位決定戦(ブロンズメダルゲーム)/シンガポール戦)を勝ち上がったフィリピンとの再戦になった決勝/ゴールドメダルゲームでも、全日本大学男子選抜が4回裏、無死二塁から八角光太郎の「今大会10本目」となるセンターへのツーランホームランで2点を先制し、 続く5回裏には、無死二塁のチャンスで芝聖が右中間へツーランホームランを叩き込み、大きな2点を追加! 投げても、小山玲央、メーンズ・ジェーラン 秀吉、豊本翔貴、小山玲央(※7回表に再出場)とつなぐ投手リレーで4-0の完封勝利を飾り、「無敗」での「完全優勝」に花を添えた。
【日本の『6連覇』で幕。アジアのレベルの底上げ、さらなる普及を……】
全日本大学男子選抜が「圧倒的な強さ」を見せつけ、日本代表として大会「6連覇」の偉業を成し遂げた第10回アジア男子選手権大会。今回のスコア・試合内容を見る限り、優勝を飾った選手たちのレベルは確かに「突出」していた。2016年の世界ジュニア選手権で優勝し、「世界一」に輝いたメンバーが17名中9名いたことを考えれば「当然」ともいえる結果であり、彼らの今後にますます期待が高まる! そんな戦いぶりであったことは間違いない。
だが、その一方で……我々が目を向けなければならない「課題」もある。「アジアのソフトボールの未来」という視点でとらえれば、この「日本の一人勝ち」が続く現況を踏まえ、アジア全体の競技レベルをどう底上げしていくか!? アジアのソフトボールの輪を広げ、さらなる普及・振興を図っていく必要があるということを決して忘れてはいけない。
今大会に参加したのは、チャイニーズ・タイペイ、香港、日本、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの9カ国。優勝・日本、準優勝・フィリピン、第3位・シンガポールという最終結果になったわけだが、決勝/日本vsフィリピンの対戦カードはもう長きにわたって続いており、「お決まり」ともいえる。その日本、フィリピンに続く存在であったインドネシアを今回シンガポールが破って3位となり、大会を盛り上げたことは朗報ではあったが、ここも本来の「実力差」を考えるとまだまだ日本の相手とはいえず、大会のレベル、試合のおもしろさといった部分でやはり「物足りなさ」は否めなかった。
そういった中で、今回の出場国には久々にチャイニーズ・タイペイの名前があった(※1990年の第4回大会では決勝トーナメントで日本を破った実績がある)。最終的に予選リーグ4勝4敗(5位)に終わって惜しくも決勝トーナメント進出はならなかったが、もともと「野球が盛んなお国柄」だけに、ぜひ、今後も継続して参加してもらいたいところ。この意味合いでいうなら、同じく野球の土壌がある韓国の参加も……実現すればおもしろいだろう。「ソフトボールへの理解」「投手の育成・整備」等、様々なハードルはあるが、逆にそこを日本が先頭に立って「サポート」していくことはできないものだろうか??
アジアにおける日本の強さはもう十分証明されている。これからの「アジアのリーダー」は、ただ勝つだけでなく、ソフトボールの「魅力・醍醐味」を自ら「表現」し、「発信」していかなければならない。また、その「仲間作り」も積極的に行っていかなければならないだろう。
【出てこい! 新たなスター!! 】
ともあれ、今回優勝を飾った選手たちの「将来性」にはやはり目を惹かれる。彼らには今後も「トップレベル」でソフトボールを続け、「男子TOP日本代表」となり、再び「世界の舞台」で躍動してほしいと心から願う。現在「5大会連続で世界選手権5位」「世界の4強の壁」をなかなか破れずにいるトップチームの状況を踏まえれば、彼らのさらなる成長・活躍を期待せずにはいられない。
今大会、チームとしても「圧倒的な強さ」を見せた全日本大学男子選抜だが、個々の活躍に目を向けてもその内容は群を抜いていた。個人タイトルでは、2016年の「世界ジュニア選手権優勝投手」でもあるエース・小山玲央(日本体育大学)が、まだ「大学2年生」でありながらアジア各国の代表チームを相手に終始貫録のピッチングを披露し、実力通り「最優秀投手賞」を獲得。注目される球速においても、この春先の練習試合での計測だったが「MAX130㎞/h」に到達し、着実に進化を遂げているようだ。本人も「目標は『世界最速』と称されるアダム・フォーカード投手(オーストラリア代表)が叩き出す『135㎞/h』! まだまだこれからトレーニングを重ね、上げていきますよ!!」と話しており、今後が楽しみである。
打撃面では、大会を通して打線の「主軸」を担った八角光太郎(国士舘大学)が大当たり。チャンスでことごとく快打を放ち、予選リーグから合計「10本のホームラン」を叩き込んで見せた。当然のごとく、今回打撃部門の個人タイトル(首位打者・ホームラン王・打点王)はその八角光太郎が総なめ! 文句なしで「MVP」も獲得し、自身初となる国際大会の舞台でまさに「輝き」を放った。今回のアジア選手権での活躍を良いキッカケに、この先「日本を代表する打者」、いや、「世界を代表する打者」へステップアップしてくれたらと……期待は膨らむ。
このところ世界選手権の舞台では、「世界の4強(※現在はニュージーランド、オーストラリア、カナダ、アルゼンチンとされている)の壁」に阻まれ続けている「男子TOP日本代表」。そのトップチームにスパイスを加え、「新たな可能性」を見出していくといった意味でも、彼らの今後の成長・活躍は大きなカギになる。彼らには、ぜひ、今の「貪欲」で「真っ直ぐ」な姿勢のまま、自らを磨き続け、「世界の頂点」をめざして戦い続けてほしい。そして「現・TOP、U19」の代表選手も含め、皆で刺激し合い、競い合い、高め合いながら、「日本の男子ソフトボール」を引っ張っていってもらいたいと強く思う。
アジアを制したその先には、「世界の強者」たちが待っている! 「若き力」のさらなる成長と、「次なるステージ」での活躍を期待したい!!
No. | 役職 | 氏名 | 所属名 |
---|---|---|---|
1 | チームリーダー | 岡本 友章 | 日本ソフトボール協会 |
2 | ヘッドコーチ | 久保田 豊司 | 大阪国際大学 |
3 | アシスタントコーチ | 柳田 信也 | 東京理科大学 |
4 | アシスタントコーチ 兼総務 |
伊勢 幸広 | 高知工科大学 |
5 | トレーナー | 田岡 幸一 | Body Laboratory |