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「第7回アジア女子ジュニア選手権大会」
「第7回東アジアカップ」を振り返って
~アジアにおける課題を考える~

「第7回アジア女子ジュニア選手権大会」は
女子GEM3(U19)日本代表が「完全優勝」

個人賞も工藤環奈がMVPを獲得したのをはじめ、
日本が投・打ともに独占!

「第7回東アジアカップ」は全日本大学女子選抜チームが
6度目の優勝

「東アジアカップ」は今年で7回目の開催となるが、
日本が6回の優勝を飾っている

2016年の「第6回アジア女子ジュニア選手権大会」には、
あえて女子GEM2(U16)日本代表を大会に派遣し、3位

昨年の「第6回東アジアカップ」は日本がホスト国となり、
青森県弘前市で開催。日本が「ホスト国」となる場合は、
「TOPチーム」が出場し、優勝を飾っている

昨年の「第6回アジア男子ジュニア選手権大会」には
「初の試み」として男子GEM2(中学3年生)日本代表を
編成・参加。見事、優勝を飾った

今年4月の「第10回アジア男子選手権大会」には
全日本大学男子選抜チームを派遣。
ジュニア世代で「世界一」となっている「黄金世代」が
圧倒的な強さで優勝!

男女を問わず、アジアの大会参加時は積極的に交流し、
クリニックを行うことも……。
今年3月には「アジアコーチ講習会」を実施する等、
積極的な働きかけを行っている

日本が「強く」「勝つ」だけでなく、アジア全体のソフトボールの
普及・振興をめざして!
日ソ協が新たに立ち上げた「海外普及プロジェクト」の
取り組みに期待が集まる!!

 この5月・6月に「第7回アジア女子ジュニア選手権大会」(5月13日/日~18日/金:フィリピン・アンへレス、大会結果・出場選手はこちら)、「第7回東アジアカップ」(6月12日/火~15日/金:台湾・南投、大会結果・出場選手はこちら)が開催され、「第7回アジア女子ジュニア選手権大会」には女子GEM3(U19)日本代表が大会に派遣され、出場。「第7回東アジアカップ」には全日本大学女子選抜チームが編成・派遣され、ともに優勝を飾ってくれた。

「第7回アジア女子ジュニア選手権大会」を振り返って



 「第7回アジア女子ジュニア選手権大会」は、昨年8月31日(木)~9月2日(土)の3日間、静岡県伊豆市の天城ドームを主会場に、選手選考会を実施。全国各都道府県支部協会の推薦を受けた40名の選考会参加者の中から17名の代表選手が選出され、昨年末に沖縄県読谷村で「初の試み」として実施された「2017 SOFT JAPAN WINTER CAMP in 沖縄」(詳報はこちら)を経て、大会出発の直前の5月9日(水)、日本体育大学の協力を得て「直前合宿」を行い、翌10日(木)の早朝、大会が開催されるフィリピン・アンヘレスへ出発した。
 大会は5月13日(日)に開幕を迎え、日本をはじめ、中国、チャイニーズ・タイペイ、インド、韓国、マレーシア、タイ、ホスト国のフィリピンの8チームが大会に参加。まず参加全チームによる予選リーグがシングルラウンドロビン(1回戦総当たり)方式で行われ、女子GEM3(U19)日本代表は7戦全勝の1位で予選リーグを通過。上位4チームによる決勝トーナメントへと駒を進め、ページシステム(敗者復活戦を含むトーナメント)で行われた決勝トーナメントも初戦で予選リーグ2位のチャイニーズ・タイペイに10-3の5回コールドで圧勝。一足先にゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)進出を決め、ゴールドメダルゲームは敗者復活戦を勝ち上がってきたチャイニーズ・タイペイとの再戦となったが、初回、1番・白石千晴、2番・伊波菜々の連打と3番・奥田芽衣の四球で無死満塁のチャンスをつかむと、4番・工藤環奈の犠牲フライで1点を先制。2回裏には、8番・大谷聖良、9番・白石穂花、1番・白石千晴の3連続長短打で2点を追加。3回裏にも7番・藤原麻由のタイムリーで1点を加え、序盤で4点のリードを奪うと、先発・増田侑希がチャイニーズ・タイペイ打線をわずか1安打で抑え込む力投。4-0で快勝し、「第13回世界女子ジュニア選手権大会」(2019年8月11日~17日/アメリカ・アーバインで開催予定)の出場権を獲得するとともに、圧倒的な強さで「アジアの王座」を手にした。
 同大会が世界女子ジュニア選手権大会のアジア地区予選を兼ねて行われることになったため、今回は当該カテゴリーの女子GEM3(U19)日本代表を大会に派遣・出場させることになったが、当初は大会の競技レベルや選手強化という目的を勘案し、(公財)日本ソフトボール協会選手強化本部会では、「一つ下」のカテゴリーとなる女子GEM2(U16)日本代表を派遣する予定であった。
 それが「アジア地区予選」を兼ねた大会となったため、「万が一」のことを考え、当該カテゴリーの「世代最強チーム」を編成し、大会に臨んだが、その結果が前述の通りの試合内容・結果であり、個人賞も大会MVPに工藤環奈、最優秀投手賞に増田侑希(防御率0.00)、首位打者に奥田芽衣(打率7割2分7厘)が輝き、本塁打王(3本塁打)・打点王(14打点)・長打率のタイトルは工藤環奈が手にし、盗塁王(6盗塁)も伊波菜々が獲得する等、タイトルを独占する結果となった。
 結局、この大会では、予選リーグ・決勝トーナメントを通して9戦全勝の「完全優勝」。その内、7試合がコールド勝ちと他を圧倒する内容で優勝を飾っている。

「第7回東アジアカップ」を振り返って



 「第7回東アジアカップ」は、4月18日(水)~20日(金)の3日間、愛知県安城市に本拠地を置く、日本女子リーグ1部所属の「デンソー ブライトペガサス」の協力を得て、そのホームグラウンドにおいて、選手選考会を実施。この選考会は全日本大学ソフトボール連盟が行い、全国から「精鋭」37名が参加し、「第7回東アジアカップ」に出場する代表選手17名を決定。6月7日(木)~9日(土)、東京女子体育大学の協力を得て、「直前合宿」を実施。日本女子リーグ1部所属の「日立 サンディーバ」「戸田中央総合病院 Medics」の胸を借り、テストマッチを行い、大会が開催される台湾・南投へと出発した。
 大会は6月12日(火)に開幕を迎え、日本をはじめ、中国、韓国、香港、大会のホスト役を務めたチャイニーズ・タイペイの5チームが参加。まず参加全チームによるシングルラウンドロビン(1回戦総当たり)を行い、全日本大学女子選抜チームは予選リーグを4戦全勝の1位で通過。上位4チームによる決勝トーナメントに進出し、ページシステム(敗者復活戦を含むトーナメント)で行われた決勝トーナメントでは、初戦で予選リーグ2位のチャイニーズ・タイペイに0-1で敗れる「波乱」があったものの、敗者復活戦に回り、ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)で韓国と対戦。先発に起用された吉井朝香が初回、三者連続三振の立ち上がりを見せ、試合の流れを引き寄せると、その裏、1番・有吉茜がいきなりの右越三塁打。2番・佐藤友香がキッチリとセンターへ犠牲フライを打ち上げ、先制。さらに二死後、4番・杉本梨緒にレフトスタンドへ運ぶソロホームランが飛び出し、鮮やかな先制攻撃で初回に2点を先制すると、3回裏には、再び「切り込み隊長」有吉茜の安打から二死三塁の追加点のチャンスをつかみ、「主砲」杉本梨緒がレフト前に3点目となるタイムリー。このリードを先発・吉井朝香が韓国打線をわずか2安打に抑える力投で守り切り、3-0の完封勝利。チャイニーズ・タイペイが待ち受けるゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)に駒を進め、両チーム無得点で迎えた3回表、全日本大学女子選抜チームは、8番・兼平真咲、9番・中村優花、1番・有吉茜の3連打で無死満塁と攻め立て、相手守備の乱れと4番・椛山奈々のライト前へのタイムリー、5番・吉田彩夏のセンターへの犠牲フライでこの回大量5点を先制。5回表、7回表にも1点ずつを加え、先発・長谷川鈴夏が終盤、チャイニーズ・タイペイの「意地」の反撃に遭い、3点を失いながらも完投。7-3で勝利を収め、見事「連覇」を達成した。
 この大会でも、チャイニーズ・タイペイに一度は敗れたとはいえ、全6試合の内、3試合がコールド勝ち。7回を数える大会の内、6回は日本が優勝を飾っており、日本がホスト国となった第2回大会(2013年7月4日(木)~7日(日):岐阜県揖斐川町で開催)には女子日本代表(現・女子TOP日本代表)、女子大学日本代表(現在は強化システムの再編によりカテゴリー廃止)、前回大会(2017年6月18日(日)~21日(水):青森県弘前市で開催)には女子TOP日本代表と女子GEM4(U23)日本代表(現在は強化システムの再編によりカテゴリー廃止)の2チームが出場し、実質的には「1・2フィニッシュ」を飾っている(東アジアカップは1国1チームの出場を「原則」としており、公式記録には女子日本代表、女子TOP日本代表の優勝の記録しか残されていないが、いずれの大会も予選リーグ2位は女子大学日本代表、女子GEM4(U23)日本代表で実質的には1位・2位を独占する形となっている)。
 どちらの大会も日本の側からだけ見れば、各カテゴリーで順調に強化が進んでおり、「アジアに敵なし」の状態にあるといえるだろう。

「アジアにおける課題」



 しかし……アジア全体に目を向けたとき、果たしてこのままの状態で本当に良いのだろうか??? 日本が強いはいいのだが……ここまで試合内容も結果も個人成績も、他国を圧倒してしまうと、アジア各国の「やる気」を削ぐことにもなりかねないのではないか……と心配になる。

 このような状況を鑑み、(公財)日本ソフトボール協会選手強化本部会では、「アジア女子ジュニア選手権大会」「アジア男子ジュニア選手権大会」「アジア男子選手権大会」に、当該カテゴリーの選手団を大会に派遣させるのではなく、「一つ下」のカテゴリーをあえて大会に派遣・参加させる等の措置も講じている。
「アジア女子ジュニア選手権大会」には、前回大会(第6回大会/2016年10月20日(木)~25日(火):中国・攀枝花(はんしか)大会結果・出場選手はこちら)は、各国が当然のことながら当該カテゴリーの「U19」代表チームをエントリーさせる中、日本は「一つ下」のカテゴリーである女子GEM2(U16)日本代表を大会に派遣。中国(0-13)、チャイニーズ・タイペイ(0-7)には屈辱的なコールド負けを喫し、韓国にも5-6で敗れ、予選リーグはインドに勝利した1勝のみ。1勝3敗の4位で辛うじて決勝トーナメントへ駒を進めるという「苦境」に立たされた。
 しかし、決勝トーナメントでは初戦の韓国戦で7-0のコールド勝ち。ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)へと勝ち上がり、予選リーグで0-13のコールド負けを喫した中国を相手に互角の試合を展開。3-3で迎えた7回裏、完全に「サヨナラ」と思われたホームでの判定が「アウト」なる「疑惑の判定」もあり、結局、延長タイブレーカーにもつれ込む熱戦の末、3-5で敗れ、決勝進出は逃したが、3位に入る「健闘」を見せている。

 同様に、昨年の「第6回アジア男子ジュニア選手権大会」(2017年11月1日(水)~5日(日):香港で開催。試合結果・出場選手はこちら)には、当該カテゴリーの男子U19日本代表ではなく、「初の試み」として男子GEM2(中学3年生)日本代表を編成し、大会に派遣。この大会では、参加各国が「いくら日本が強くても中学生に負けるわけにはいかない!」「日本に勝ってやる!!」と目の色を変えて戦いに挑み、白熱の試合を展開。予選リーグは全勝の1位で通過したものの、決勝トーナメントの初戦で一度はフィリピンに敗れ、敗者復活戦に回ったインドネシアとのブロンズメダルゲーム(3位決定戦)も最終回、同点に追いつかれ、その裏、サヨナラ勝ちするという5-4の劇的勝利。フィリピンとの再戦となったゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)も2点を先制されながら「大会MVP」に輝いた稲垣拓朗の逆転満塁ホームランで試合をひっくり返すとういうスリリングな試合展開で5-2と逃げ切り、見事優勝を勝ち獲ったが、僅差のクロスゲームの連続に、大会はかつてない盛り上がりを見せる結果となった。

 「第10回アジア男子選手権大会」(兼第16回世界男子選手権大会アジア地区予選/4月23日(月)~28日(土):インドネシア・ジャカルタ、試合結果・出場選手はこちら)にも、日本は「TOPチーム」を派遣せず、女子の「東アジアカップ」と同じく、全日本大学男子選抜チームを派遣しながら、予選リーグ8試合、22-1、14-0、10-0、10-0、11-0、12-1、15-0、16-2で全試合コールド勝ち。決勝トーナメントも6-0、4-0でフィリピンを連破し、「無敗」のまま、「完全優勝」を飾っている。
 また、個人タイトルも、小山玲央が「最優秀投手賞」を獲得。打撃部門のタイトル(首位打者・ホームラン王・打点王)は八角光太郎が独占し、 文句なしで「大会MVP」に輝く等、ジュニア世代で「世界一」を勝ち獲った「黄金世代」の選手で編成されたチームとはいえ、大学生の選抜チームが「圧倒的な競技力の差」を見せつけ、大会は幕を閉じた。

 大会の参加に際し、(公財)日本ソフトボール協会選手強化本部会はもちろんのこと、その理事会でも、「一つ下」のカテゴリーを大会に参加させることは、参加各国へのリスペクトを欠くことになりはしないか……と議論され、心配されたことも事実である。
 女子の場合、「一つ下」のカテゴリーでの大会参加は、せっかくの国際大会参加の機会を少しでも「選手強化」に結びつけたいと意図したものであったが、「中学生」と「高校生」の差は大きかった感は否めない。ただ、逆に言えば、常に「世界のトップレベル」にあり、「負けることを知らない」日本の選手たちが、コールド負けの屈辱を味わい、どうにもならないパワーの差を感じる機会を得たことは、今後の成長を考えれば、むしろ「貴重な経験」を積む機会となったとも考えられる。
 このような考え方は、他国にも見られ、「一つ下」のカテゴリーを大会に参加させる、というところまで思い切った施策ではないにしても、男子ソフトボールで常に「世界の頂点」を争っているニュージーランドは、ジュニア(U19)世代では必ずしも勝つこと、優勝すること、に重きを置いていない。むしろ、ここでは「負ける悔しさ」を経験させ、「勝つことの難しさ」を教え、「次なるステップ」へとつなげることを重視している。ジュニア世代では「負けて悔しい……」「こんな思いは二度としたくない」と心底思わせ、「次は絶対に勝ってやる!」と「勝利への執念」を植え付けることができれば十分と考えているようだ。
 また、男子の場合、「一つ下」のカテゴリーでの大会参加は、女子の場合とは若干事情が異なり、「選手強化」という側面の他に、中学生・大学生に「新たな目標」を設定しようとの狙いが大きかった。もちろん過去の大会結果や試合内容を含め、大会の競技レベルを精査・勘案した上で、男子GEM2(中学3年生)日本代表、全日本大学男子選抜チームを編成し、大会へ参加することになったが、「アジア男子ジュニア選手権大会」では、結果的には参加各国に「やる気」を起こさせ、試合内容が白熱して盛り上がり、その大会を戦い抜いた日本の選手たちにも日本国内の大会では決して得ることのできない大きな「刺激」を与え、「U19日本代表」をめざすのはもちろんのこと、ゆくゆくは「日本代表」の座をめざし、いつか「世界の舞台に立ちたい!」とめざすべき道を示し、明確なモチベーションを生み出すキッカケとなる、まさに「WIN―WIN」の大会となった。
 その一方で、「アジア男子選手権大会」では世界選手権の「アジア地区予選」という位置づけの重要な大会でありながら、「TOPチーム」を編成・派遣しなくても、「ブッチギリ」で優勝してしまう……というアジアにおける競技レベルの問題を改めて考えさせられる結果を見せつけられた。

 そう考えると、「日本が勝てばいい」「日本さえ強ければいい」という時代は過ぎ去り、アジア全体のレベルアップ、競技力向上をめざす取り組みを従前以上に加速させていく必要があるのではないだろうか。
 これまでも(公財)日本ソフトボール協会では、「アジアの仲間づくり」「アジアのレベルアップ」「アジアの競技力向上」が急務であると考え、SCA(アジアソフトボール連盟)の副会長であり、(公財)日本ソフトボール協会の副会長・国際委員長でもある宇津木妙子氏を中心に、アジアでの大会・会議開催の際には、男女を問わず、大会に派遣されるチームとも連携を図りながら、選手向け・指導者向けの「ソフトボールクリニック」を実施してきた。
 今年3月(3月7日(水)~9日(金):千葉県成田市)には、(公財)日本ソフトボール協会の積極的な働きかけにより、「2018 アジアコーチ講習会」の開催が実現。香港、マレーシア、中国、イラン、韓国、タイ、インドネシア、ブルネイ、パキスタンから23名の各国指導者が集い、講習会を実施するに至っている。
 また、ジュニアレベル(女子)でも「日韓ジュニアスポーツ交流事業」をはじめ、台湾との交流等、互いに訪問・受入を行いながら、国際交流を継続・実施する等、アジアにおけるソフトボールの普及・発展のため、様々な取り組みが行われてはいるのだが……。

 現時点では、残念ながら、未だ日本と肩を並べるような「アジアのライバル」は出現していない。この現状を打破するために、何が必要なのか……。(公財)日本ソフトボール協会が本年度から立ち上げられた「海外普及プロジェクト」に大きな期待が寄せられ、そこから新たなアイディア、施策を発信し、アジア全体を巻き込んで真剣に議論すべき時が来ているのではないだろうか。

 たとえば「東アジアカップ」は、ソフトボールの盛んな東アジアの各国が互いに交流することで、さらなるレベルアップ、競技力向上をめざし、オリンピックやアジア競技大会のように4年に一度開催(アジア競技大会と夏季オリンピックの間の奇数年に開催)されている総合競技大会である「東アジア競技大会」の実施競技としての採用、正式種目入りをめざす「ムーブメント」を起こし、同時に、アジア競技大会、オリンピックでソフトボール競技が継続されるよう、東アジアの各国が連携・協力を図ることを目的に創設された大会であったはずだ。
 しかし、「現状」では、日本でさえ「TOPチーム」を派遣する大会とはとらえておらず、中国は昨年、U19代表チームを出場させ、今年は今夏の世界選手権への強化の一環として3チームを編成して代表チームの強化にあたっているというが、「東アジアカップ」に派遣したのは、「実力的には3番目のチーム」。昨年も今年もその間、「代表チーム」はアメリカのプロリーグに参加し、代表チームの強化を図っている……というのが、この「東アジアカップ」の各国の位置づけであり、大会創立当初の崇高な理念とはかけ離れた「現実」がある。

 日本の「事情」をいえば、かつて「世界大学選手権」が開催され、ユニバーシアードの「正式種目」となっていた「大学生」のカテゴリーの国際大会が現在は消滅し、同カテゴリーから参加できる「国際大会」がないという「現実」がある。
 「ユニバーシアードにおける競技復活」を願うのであれば、「大学生」のカテゴリーの活性化と強化は「必須」で「東アジアカップ」を「大学生の強化、国際経験を積む大会」と位置づけざるを得ない状況下にあり、同時にTOPチームを参加させても、その「強化」につながるとは言い難い競技レベルにあるという「ジレンマ」もある。
 同様に、中国の「東アジアカップ」への参加ではなく、アメリカプロリーグへの代表チーム派遣という選択も「東アジアカップに参加する以上の強化が期待できる」と考えてのことだとするならば、少なくとも日本にはそれを責める資格はないし、それを非難できる立場にもないといえよう。
 現実的にアジア各国の競技力には大きな差異があり、それぞれのソフトボール事情、取り巻く環境、抱える問題に大きな「ギャップ」がある以上、簡単にそれぞれの国の事情を同列に語ることはできないし、同じ俎上で論ずることはできない……のもまた、アジアにおけるソフトボールの「現実」なのである。

 しかし、この「東アジアカップ」あるいはジュニア、TOPカテゴリーの「アジア選手権大会」をどのように位置づけ、何を目的に、どう開催していくのか……は、アジア各国の共通理解・共通認識が必要であり、そのための協議の場を持つこと、互いの交流・連携を密にし、アジア各国が共同歩調をとり、協力していく必要があると強く感じる。

 日本の「一人勝ち」ではなく、「アジア全体の盛り上がり」やソフトボール競技の「普及・発展」を推し進めるために……。今こそ、日本が「アジアのリーダー」として、その叡智を結集し、具体的かつ有効な施策を打ち出し、一歩ずつでも「実行」に移していく必要があるのではないだろうか。

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