第3節も全国4会場で熱戦を展開!
「茅ヶ崎ラウンド」を視察するJD.LEAGUE・島田利正チェアマン(前列右端)。「観客目線」で試合全体を俯瞰し、JD.LEAGUEの「今後の展開」を思い描く
記録員室には公式記録を提供する目標時間が朱書きで掲示されていた
迅速かつ正確な公式記録の提供をめざし工夫と努力を重ねる
選手交代の通告・連絡をインカム装着の上、無線で行う試みも導入された
選手たちが少しでもプレーしやすいように……と大会使用球の準備も怠りなく
「掛川ラウンド」を支えてくださった公式記録員の皆さん
「北九州ラウンド」を支えてくださった福岡県協会の皆さん
「北九州ラウンド」には「ドゲンジャーズ」も会場に現れ、大会を盛り上げてくれた
去る4月16日(土)・17日(日)、「ニトリ JD.LEAGUE 2022」第3節が、神奈川県茅ケ崎市、静岡県掛川市、滋賀県草津市、福岡県北九州市の4会場で開催された。
神奈川県茅ヶ崎市・茅ヶ崎公園野球場を会場に開催された「東地区」茅ケ崎ラウンドでは、第2節終了時点で3勝1敗の「同率首位」に並んでいた日立 サンディーバとホンダ リヴェルタの「直接対決」が組まれ、ホンダ リヴェルタが「キャプテン」長谷川優理、塚本蛍の本塁打等で5点を奪い、自慢の「左右の外国人投手二枚看板」ジェイリン・フォード、アリー・カーダとつなぐ投手リレーで「タレント揃い」の日立 サンディーバ打線を完封。5-0と圧勝し、「単独首位」に立つと、続くデンソー ブライトペガサス戦も2-1で競り勝ち、今節連勝。通算成績5勝1敗と星を伸ばし、「東地区」首位を走っている。
「ホーム」開催での「連敗」だけは避けたい日立 サンディーバは、今節2日目の戸田中央 メディックス埼玉戦も3点を先制される苦しい試合展開を強いられながら6-4の逆転勝ち。4勝2敗で2位につけた。
戸田中央 メディックス埼玉は、今節初戦のデンソー ブライトペガサス戦に3-2と競り勝ち、嬉しい今シーズン初勝利を挙げたものの、続く日立 サンディーバ戦に敗れ、今節1勝1敗で通算成績1勝4敗となった。
デンソー ブライトペガサスは第1節で連勝を飾った後、勝ち星なしの4連敗。上位進出どころかテールエンド争いに巻き込まれかねない状況となっている。
神奈川県掛川市・いこいの広場野球場を会場に開催された「東地区」掛川ラウンドでは、「王者」ビックカメラ高崎 ビークイーンが連勝。初戦のNECプラットフォームズ レッドファルコンズ戦では1点を先制され、続く太陽誘電 ソルフィーユ戦では逆に先制しながら同点に追いつかれる等、「盤石」とは言い難い試合内容が続いている。この第3節でも「金メダリスト」上野由岐子、藤田倭の登板はなく、濱村ゆかり、勝股美咲の二人で投手陣を回しているところを見ると、まだまだ力を「温存」しているとも考えられるが、ここまでの戦いを見る限り、「王者」の強さ見せつけるような試合内容には至っておらず、しぶとく勝ちを拾っている、といった感は否めない。それでも4勝2敗の同率2位につけているのは「連覇」を続ける「王者」の底力といえようか。
太陽誘電 ソルフィーユ、大垣ミナモはともに1勝1敗で通算成績も3勝3敗の勝率5割。上位争いに絡んでいくには、ここが踏ん張りどころ。離されずについていきたいところだ。
「ホーム」開催のNECプラットフォームズ レッドファルコンズは残念ながら今節連敗。今節初戦の「王者」ビックカメラ高崎 ビークイーンとの対戦では、2回裏、小川原結のタイムリーで先手を取り、詰めかけた「ホーム」の大応援団を沸かせる場面もあったが、後半投手陣がつかまってしまい、無念の逆転負け。続く大垣ミナモ戦も延長タイブレークにもつれ込む熱戦を演じながら、延長8回力尽き、2-4で敗れ、今節連敗。通算成績1勝5敗で「東地区」の最下位に沈んではいるものの、その「数字」以上に観る者の心を打つ試合を演じてくれている。
滋賀県草津市・草津グリーンスタジアムを会場に開催された「西地区」草津ラウンドでは、豊田自動織機 シャイニングベガが連勝。通算成績4勝2敗とし、3位につけている。
また、「ホーム」の日本精工 ブレイブベアリーズが初戦の伊予銀行 ヴェールズ戦では4-11と大敗を喫したものの、続くシオノギ レインボーストークス兵庫戦では延長タイブレークにもつれ込む「熱戦」の末、5-4のサヨナラ勝ち。同じく「ホーム」開催であった第1節以来となる「2勝目」を挙げ、「ホーム」で強いところを誇示し、通算成績2勝4敗とした。
伊予銀行 ヴェールズも今節1勝1敗。通算成績3勝3敗の勝率5割と一進一退の状況が続いている。上位進出を狙うには、これ以上離されたくないところだ。
シオノギ レインボーストークス兵庫は今節連敗。通算成績2勝4敗の「借金2」となってしまったが、次節「ホーム」開催の尼崎ラウンドが控えているだけに、何とか巻き返しを図り、まずは「勝率5割復帰」が当面の目標となる。
福岡県北九州市・北九州市立桃園野球場を会場に開催された「西地区」北九州ラウンドでは、消化試合数こそ異なるものの、「全勝」のトヨタ レッドテリアーズとSGホールディングス ギャラクシースターズが激突。5回裏、トヨタ レッドテリアーズが今シーズンから加入した「新戦力」バッバ・ニクルスのソロホームランで待望の先取点を挙げ、このまま逃げ切るかと思われたが、5回表から先発・三輪さくらの後を引き継ぎ、登板していた後藤希友が6回表、連続四死球で走者を出し、「ルーキー」小暮沙希(埼玉栄高→城西大)に左中間を破る二塁打を浴び、「まさか……」の逆転負け。後藤希友がこの試合許した「唯一の安打」が逆転の二塁打という「致命傷」となり、トヨタ レッドテリアーズは開幕7戦目にして初黒星を喫し、「西地区」2位に後退。ここまで「6戦全勝」で無傷の快進撃を続けるSGホールディングス ギャラクシースターズが単独首位に躍り出た。
「ホーム」開催でJD.LEAGUE初勝利が期待されたタカギ北九州 ウォーターウェーブは、残念ながら今節も連敗。「東地区」「西地区」合わせ、全16チームのうち、唯一「未勝利」のチームとなってしまった。一方、そのタカギ北九州 ウォーターウェーブを破って2勝目を挙げた東海理化 チェリーブロッサムズは通算成績を2勝4敗とし、上位争いに何とか食らいつこうと懸命の戦いを見せている。
(※ニトリ JD.LEAGUE 2022 第3節終了時点での戦績表はこちら)
第3節を終え、「東地区」ではホンダ リヴェルタが5勝1敗で単独首位に立ち、「西地区」では「全勝対決」を制したSGホールディングス ギャラクシースターズが唯一「全勝」を守り、首位を快走している。
特に、昨シーズン「2部落ち」を経験し、「意地」の全勝優勝を果たしたSGホールディングス ギャラクシースターズの「V字回復」「無敗の快進撃」は目を見張るものがあり、今シーズンから「外国人枠」(従来は2名まで)が撤廃されたこともあり、長くチームの投打の中心となり、屋台骨を支えている「オーストラリア代表」のステーシー・ポーター、カーヤ・パーナビーに加え、昨夏の「東京2020オリンピック」に「イタリア代表」として出場したグレータ・チェッケッティ、エリカ・ピアンカステリをチームに迎える「大型補強」に踏み切った。過去の例を見ると、2部リーグを圧倒的な強さで制したチームが1部昇格後はその「厚く高い壁」に阻まれ、なかなか勝利を手にすることができず、すぐに下部リーグへの降格といったケースがほとんどだった(JD.LEAGUEには、今のところ「昇格・降格」といった制度はないが)だけに、決して現状に満足することなく、さらに「上」をめざそうという心意気、本気度が少なくとも現時点では他チームを凌駕し、それが結果にも表れ、「西地区」首位という誰も予想しなかった快進撃を実現させたのではないだろうか。
この「ニトリ JD.LEAGUE 2022」で戦っているのは選手やチームだけではない。JD.LEAGUE・島田利正チェアマンは、「茅ヶ崎ラウンド」を訪れ、大会関係者を激励・慰労すると同時に、自ら観客席へと足を運び、「観客」の目線に立って球場全体を見渡し、グラウンド上で展開される試合をもっと魅力的で面白いものにするにはどうするべきか、会場に足を運んでくださった観客の皆さんをもっともっと楽しませ、喜んでもらうにはどうしたらいいか、JD.LEAGUEの「今後の展開」を見据え、思案に暮れ、一人「戦う」姿も見られた。
日本精工 ブレイブベアリーズの「ホーム」として、第1節に続き、早くも今シーズン2度目の開催となった草津グリーンスタジアム「草津ラウンド」では、(公財)日本ソフトボール協会・遠藤正人記録委員長自らが陣頭指揮に立ち、公式記録の提供時間の「目標」をホワイトボードに改めて朱書きすることで、あえてその「目標」を強く意識させ、迅速かつ正確な公式記録をそこに掲げた目標通りに作成・提供するのだという強い決意と覚悟を示し、記録員全員でその目標へ向け、力を合わせ、取り組んでいた。
4会場の共通の「改善点」「改良点」としては、インカムを装着し、選手交代を無線連絡する方式を導入。選手交代の通告を受け付ける球審と公式記録員、場内アナウンスの連携は、これまでも「選手交代ボード」を使用することや、球審が選手の背番号を大きなゼスチュアで伝える等、試合の進行の妨げになることなく、円滑に、スムーズに、交代を行えるよう、伝達方法・連絡方法に工夫が凝らされてきていたが、それでも「選手交代ボードが見えない」「何て書いてあるのか見づらい」等の声も出ており、それらの悩みや問題点を解消すべく、インカム装着による選手交代の無線連絡を導入するに至った。これも第2節までの反省点・問題点を共有し、その改善に向け、知恵を絞り、アイデアを出し合ったからこそ実現できたことである。やはり対話を重ね、コミュニケーションを深めていくことが重要で、そうしたことの積み重ねによって、たとえ「ベスト」ではなくても「よりベター」な方策が導き出され、現実的な妥協点を見つけ出すことにつながるのではないだろうか。それは「理想を捨てる」というようなことではなく、その「理想」に到達するために「今できること」「現時点での最善策」を見出し、実行していくということである。求める「理想」に辿り着くために……「現実」を直視し、その問題点や課題をまずは洗い出し、現実的な対応策を構築していくこと。それを一つひとつ地道に積み上げていくことでしか「理想」に辿り着く道はないのである。
各節・各会場でジャッジを担当するリーグ審判員は毎晩のようにリモートで勉強会・反省会を行い、公正・公平で正確なジャッジを行おうと日々努力を重ねている……と聞く。また、「草津ラウンド」が開催された草津グリーンスタジアムのスタンドには、今年9月に中国・杭州で開催される「第19回アジア競技大会」への大会派遣が決定している記録員が、昨夏の「東京2020オリンピック」を経験した記録員に付き添われ、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)方式のスコアカード、公式記録の記帳を研修する意欲的も姿が見られた。このJD.LEAGUEの誕生を一つの契機として、少しずつ何かが変わり、何かが動き始めている。
「北九州ラウンド」では「ご当地ヒーロー」である「ドゲンジャーズ」が会場に現れ、大会を盛り上げ、球場外には「ご当地グルメ」「名産品」の出店もあり、球場内外で観戦に訪れてくれた観客の皆さんを楽しませ、喜ばせようと知恵を絞り、様々なアイデアが出され、実行されていた。ソフトボールを観戦するだけでなく、そこに「付加価値」をつけることで「ソフトボールを観に行きたい」という気持ちをより強くさせ、さらには「もう一度行きたい」「また行きたい」と思ってもらえるようにすること。そして、その地域がソフトボールによって、JD.LEAGUEによって、活気づき、活性化され、そこに「笑顔」が増えていくこと……それこそがJD.LEAGUEの理念であり、ミッションであるはずである。創意工夫を重ね、試行錯誤を繰り返しながら「前」へ進んでいく。このJD.LEAGUEを成功させることが、ソフトボールの「未来」につながると信じて……。