昨シーズンの日本リーグの「覇者」大和電機工業株式会社。前年度優勝チームを追い詰めたが……
今夏の全日本クラブ女子選手権の「覇者」MORI ALL WAVE KANOYAも力及ばず1回戦敗退
インカレの「覇者」中京大学も1回戦で姿を消した
大会2日目が雨天中止となり、3日目も第3試合が中止に……
関係者総出の懸命のグラウンド整備も……「日本一」を決める決勝戦を実施できず
ベスト4進出を果たした大垣 ミナモ
太陽誘電 ソルフィーユは2年連続のベスト4進出!
「両チーム優勝」ながら「連覇」を達成したトヨタ レッドテリアーズ
「両チーム優勝」ではあるものの、2年ぶりの「王座奪還」を果たしたビックカメラ高崎 ビークイーン
大会会場・球場設営も「前例」を踏襲するだけでなく、よりよい方向に「改革」「改善」を
今や各チームにとって「アナリスト」は欠くことのできない存在となっている
JD.LEAGUEでは、「チームアナリスト専用席」がすべての会場で設けられている
ソフトボールの「真の魅力」や「楽しさ・面白さ」を伝えるための「改革」を期待!
去る9月16日(土)~19日(火)、佐賀県太良町B&G海洋センター運動広場・白石町総合運動場を会場に、「第75回全日本総合女子選手権大会」が、来年に開催を控える「SAGA2024国民スポーツ大会ソフトボール競技リハーサル大会」として開催された。
佐賀県では、2024年に佐賀県内(一部県外開催競技あり)で開催される 「SAGA2024」(国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会)に向けて、「国民体育大会」から「国民スポーツ大会」に変わる、今だからできることにこだわり、すべての人に「スポーツのチカラ」を届けられる新しい大会づくりを進めており、今回、「SAGA2024」に向け、様々なスポーツを全国で観戦・応援できる環境づくりをめざし、この「第75回全日本総合女子選手権大会」(SAGA2024国民スポーツ大会ソフトボール競技リハーサル大会)の競技映像をSAGA2024実行委員会の公式 YouTube アカウントにてライブ配信を実施する等、「SAGA2024」に向けた準備・取り組みが進められていた。
この「第75回全日本総合女子選手権大会」は、日本ソフトボール協会が創立された1949年(昭和24年)に、「全日本高校女子選手権大会」とともに第1回大会が開催された最も長き歴史と伝統を誇り、権威ある大会である。
大会には、前年度優勝のトヨタ レッドテリアーズ(愛知)、前年度準優勝の太陽誘電 ソルフィーユ(群馬)、JD.LEAGUE所属の14チーム、開催地・佐賀県代表のひらまつ病院 SAGA ALL STARSの計17チームが「推薦」出場。これに全国各地区の予選を勝ち抜いた15チーム(全国9ブロック/北海道1、東北2、関東3、北信越1、東海2、近畿2、中国1、四国1、九州2)を加えた32チームが出場し、「日本一」の座をめざし、熱戦を繰り広げた。
大会初日(9月16日/土)の1回戦は、JD.LEAGUE所属の16チームに、日本リーグ、大学、クラブチーム勢が挑む図式となった。
日本リーグ勢では、昨シーズンの日本リーグの「覇者」であり、今夏の「第63回全日本実業団女子選手権大会」(7月22日(土)・23日(日)、鹿児島県南九州市で開催)の「覇者」でもある大和電機工業株式会社(長野)が、「前年度優勝」チームであり、「ニトリ JD.LEAGUE 2023」西地区で首位を独走しているトヨタ レッドテリアーズと激突。試合は3回裏、トヨタ レッドテリアーズがこの回先頭の切石結女の安打、2つの内野ゴロで二死三塁とし、亀田栞里のタイムリーで先制。一方、大和電機工業株式会社が5回表、「東京2020オリンピック」で神リリーフを連発。一躍「時の人」となり、金メダル獲得の原動力となったトヨタ レッドテリアーズの「エース」後藤希友から「主砲」堀あかねが同点のソロホームラン! 「ニトリ JD.LEAGUE 2023」第11節終了時点ですでに14勝を挙げ、未だ負けなし。「西地区」ハーラーダービー(最多勝争い)を「独走」し、防御率0.53の「日本屈指」の好投手であり、今や「世界のエース」に成長しつつある後藤希友から「大和電機らしい」豪快な一発を放ち、1-1の同点に追いつき、試合はそのまま延長タイブレークに突入。延長8回裏、大和電機工業株式会社の小刻みな継投に手を焼いていた「王者」トヨタ レッドテリアーズがタイブレークの走者を確実に犠打で三塁に進めた後、二者連続の「故意四球」で満塁とし、「東京2020オリンピック」金メダリスト・原田のどかがレフトへ犠牲フライを打ち上げ、三塁走者が還り、熱戦に終止符。2-1のサヨナラで勝利を収め、苦しみながらも2回戦に勝ち上がった。
同じ日本リーグ勢では、今夏の「第44回全日本クラブ女子選手権大会」(7月15日(土)~17日(月・祝)、香川県坂出市で開催)で「連覇」を成し遂げたMORI ALL WAVE KANOYA(鹿児島)が、JD.LEAGUE「東地区」5位の戸田中央 メディックス埼玉(埼玉)に挑み、3回まで0-0の「互角の展開」で試合が進行したが、頼みの「エース」中野花菜が4回裏、戸田中央 メディックス埼玉打線につかまってしまい、四球、グウェン・スヴェキス、ご当地・佐賀出身の武富沙耶の長短打で先取点を奪われ、代打・田島萌愛にもスリーランホームランを浴び、この回4失点。打線も戸田中央 メディックス埼玉の増田侑希、JD.LEAGUE後半戦から加入した「新戦力」マライア・メイソンへとつなぐ投手リレーの前にわずか2安打に封じられ、0-4の完封負け。JD.LEAGUE勢の「高く厚い壁」を打ち破ることはできなかった。
大学勢では今夏のインカレ(第58回全日本大学女子選手権大会/8月25日(金)~28日(月)、愛知県安城市で開催)の「覇者」中京大学(愛知)がJD.LEAGUE「西地区」6位の伊予銀行 ヴェールズ(愛媛)と対戦。2回裏に先制を許したものの、4回表、代打・竹田愛佳のタイムリーで1-1の同点に追いつき、試合を振り出しに戻したのだが……5回裏、「インカレ優勝投手」成瀨結衣が、二死走者なしから四球を与えたのをキッカケに3連続長短打を浴び、3点を失い、そのまま1-4で敗れた。
JD.LEAGUE勢を一番追い詰めたのは昨年のインカレの「覇者」金沢学院大学(石川)。前年度準優勝の太陽誘電 ソルフィーユを相手に、4回表に先制されながら、5回裏、西窪千尋のソロホームランで同点に追いつき、6回裏には二死走者なしから江藤楓果、代打・紅谷凛香の連続二塁打で1点を勝ち越し。2-1とリードし、最終回を迎えたが、橋本芽衣、上林藍子の長短打で無死二・三塁とされ、二死までこぎつけ、勝利目前。「あと一人」というとこまで追い詰めたのだが……この土壇場でご当地・佐賀出身の小松優月が二遊間を破るタイムリーを放ち、2-2の同点に追いつき、試合は延長タイブレークへともつれ込んだ。こうなると試合の流れは太陽誘電 ソルフィーユへと傾き、延長8回表、連続四球で無死満塁と攻め立て、木下華恋のファーストゴロが相手守備の乱れを誘い、2点を勝ち越し。そのまま4-2で押し切り、1回戦はJD.LEAGUE勢16チームが「全勝」で2回戦に駒を進めることになった。
※大会初日(9月16日(土)1回戦の試合結果・イニングスコアはこちら)
翌17日(日)は激しい雨となり、この日予定されていた全試合の中止・順延が決定。18日(月・祝)、2回戦・準々決勝までの12試合を実施する予定で試合がスタートした。
2回戦はすべてJD.LEAGUEチーム同士の対戦となり、前年度優勝のトヨタ レッドテリアーズが1回戦に続き、大苦戦。戸田中央 メディックス埼玉と対戦し、3回まで両チーム得点なく、迎えた4回裏、戸田中央 メディックス埼玉が一死から四球の走者を出し、二死後、「ご当地・佐賀出身」武富沙耶が右中間を破る二塁打。一塁走者が一気に還り、「難攻不落」の好投手・後藤希友から先取点を奪った。このリードを先発・増田侑希、アリッサ・デンハムとつなぐ投手リレーで守り、迎えた最終回、JD.LEAGUE後半戦から加入したマライア・メイソンを「クローザー」として投入。逃げ切りを図ったが……先頭打者を空振り三振に打ち取った後、四球、失策、バント安打で満塁とされ、再び空振り三振で二死となり、勝利は目前……「あと一人」というところまでこぎつけた。続く亀田栞菜の三遊間に転がる当たりをサード・鈴木鮎美がさばき、一塁に送球したのだが……間一髪間に合わず、1-1の同点に。これで息を吹き返した「王者」がここから「本領発揮」。バッバ・ニクルスの二遊間を破るタイムリーで二者が還り、さらにこの打球の処理を誤る間に一塁走者までもが生還し、一挙3点を勝ち越し。なお二死三塁のチャンスが続き、ここでJD.LEAGUE第11節終了時点で「西地区」ホームランダービーのトップに立つ下山絵理がトドメの一発! この回大量6点を奪い、土壇場で試合をひっくり返し、終わってみれば6-1の大差で勝利を収め、風前の灯火だった「連覇」への灯りが再び強く激しく燃え始めた。
2回戦「屈指」の好カード、「東地区」首位を走るビックカメラ高崎 ビークイーン(群馬)と同4位・Honda Reverta(栃木)の対戦は、JD.LEAGUEレギュラーシーズンの対戦では、Honda Revertaが「東地区」首位を快走するビックカメラ高崎 ビークイーンに5-4、3-2と連勝しているだけに興味深い一戦となった。0-0で迎えた4回裏、ビックカメラ高崎 ビークイーンが、Honda Reverta・先発の「左のエース」ジェイリン・フォードの後を受け、登板した「右のエース」アリー・カーダの代わり端を攻め、「キャプテン」内藤実穂がレフト前ヒットを放ち、犠打で二塁へ進み、二死後、藤本麗のレフト線への二塁打で先取点を挙げた。1点のリードを奪ったビックカメラ高崎 ビークイーンは5回表から先発・濱村ゆかりに代え、「レジェンド」上野由岐子を投入。昨シーズンはまったく登板がなく、今シーズン「復活」を果たし、JD.LEAGUEでも「クローザー」の役割を担う「切り札」が登板。「必勝パターン」で逃げ切りを図ったが……Honda Revertaも粘り、安打、ワイルドピッチ、フィルダースチョイス、死球等で二死満塁と攻め立て、渡邉瑞希がレフト前に運ぶ同点のタイムリー。「勝利の方程式」を崩し、試合はそのまま延長タイブレークへともつれ込んだ。しかし……延長8回表、再びマウンドに立った「レジェンド」上野由岐子は土壇場で同点に追いつかれたショックなど微塵も感じさせず、何事もなかったかのように「いつも通り」のピッチングでHonda Reverta打線を封じ、その裏、二死三塁から工藤環奈が劇的なサヨナラ安打。2-1で競り勝ち、準々決勝進出を決めた。
この日は試合途中の天候の急変や午後からの天候悪化に備え、試合前のシートノック(フィールディング)なし、試合中のボール回しなしで試合の進行、スピードアップに努めたが……太良町のA・B2会場は第2試合終了後、白石町のC・D2会場は第2試合の試合途中に激しい雨に見舞われ、白石町のC・D2会場は天候の回復を待ち、何とか第2試合終了まで行ったが、両会場とも第3試合に予定されていた準々決勝(計4試合)は中止・順延を余儀なくされてしまった。この結果、予備日に順延された大会最終日(9月19日/火)は準々決勝・準決勝のみを行い、「日本一」を決める「決勝戦」は行うことができなくなってしまった。
※大会3日目(9月18日(月・祝)2回戦の試合結果・イニングスコアはこちら)
大会最終日(9月19日/火)の準々決勝は、前年度優勝のトヨタ レッドテリアーズが東海理化 チェリーブロッサムズ(愛知)に12-0の4回コールド勝ち。ベスト4に名乗りを挙げ、大垣 ミナモ(岐阜)は日立 サンディーバ(神奈川)に1-0の完封勝利。JD.LEAGUE{東地区}で最下位に沈んでいるチームが、同地区3位の日立 サンディーバを破る「番狂わせ」を演じ、JD.LEAGUE「唯一」のクラブチームが「ベスト4進出」を果たした。
JD.LEAGUE「東地区」首位を走るビックカメラ高崎 ビークイーンと同「西地区」2位の豊田自動織機 シャイニングベガ(愛知)のJD.LEAGUE「上位常連」チーム同士の対戦は、両チーム無得点で迎えた4回裏、二死走者なしから四球で出塁した走者を一塁に置き、「東京2020オリンピック」金メダリストであり、佐賀女子短期大学付属佐賀女子高出身の藤田倭が左中間を破る適時二塁打。待望の先取点を挙げ、この1点のリードを先発・濱村ゆかり、「レジェンド」上野由岐子とつなぐ「必勝リレー」で最後まで守り切り、1-0の完封。最少得点差で逃げ切り、準決勝に駒を進めた。
前年度「準優勝」太陽誘電 ソルフィーユはシオノギ レインボーストークス兵庫(兵庫)と対戦。試合は緊迫の投手戦となり、0-0のまま、終盤6回表を迎え、太陽誘電 ソルフィーユが「ご当地・佐賀出身」中溝優生のセンター前ヒット、盗塁、竹田采実のライト前ヒットで一死一・三塁とし、ここまで好投を続けてきたシオノギ レインボーストークス兵庫・堀本優良が「痛恨」のワイルドピッチ。太陽誘電 ソルフィーユに先取点がもたらされ、最終回にも西山しずく、小松優月、瀬戸口梨乃の3連打で貴重な追加点。2点差にリードを広げ、先発・寺田愛友がシオノギ レインボーストークス兵庫打線を3安打完封。2-0で勝利を収め、2年連続で準決勝進出を決めた。
準決勝、トヨタ レッドテリアーズと大垣 ミナモの対戦は、トヨタ レッドテリアーズが4回裏、「主砲」バッバ・ニクルスソロホームランで先手を取ると、この「一発」がチームに「勢い」を与え、続く5回裏には亀田栞菜のタイムリー、押し出しの死球、切石結女のライト線への二塁打で一挙4点を追加。5-0とリードを奪った。このリードを「エース」後藤希友が被安打1・奪三振8の好投で守り切り、5-0の完封勝利。1回戦・2回戦では苦戦を強いられたものの、その後は、その「実力」をいかんなく発揮し、「両チーム優勝」ながら見事「連覇」を達成。2年連続8回目の優勝を手にした。
もう一方のゾーン、同じ群馬県高崎市に本拠地を置くチーム同士の対戦、「上州対決」「高崎ダービー」となったビックカメラ高崎 ビークイーンと太陽誘電 ソルフィーユの対戦は息詰まる投手戦となり、0-0のまま、延長タイブレークに突入。延長8回表、太陽誘電 ソルフィーユは、先発・濱村ゆかりの後を受け、6回表から登板していた上野由岐子を攻め、タイブレークの走者をサードゴロの間に三塁まで進め、西山しずくのセカンドゴロの間に三塁走者が生還(記録はフィルダースチョイス)。待望の先取点を挙げた。
ビックカメラ高崎 ビークイーンはその裏、タイブレークの走者を犠打で確実に三塁へ進め、工藤環奈がレフトへキッチリと犠牲フライを打ち上げ、1-1の同点に追いつき、試合を振り出しに戻した。
延長9回表、「レジェンド」上野由岐子が「さすが」の引き出しの多さを見せ、延長8回表の「タイブレークだから1点は仕方がない」というピッチングから、「どれだけ走者を出そうが得点だけは許さない」というピッチングに切り換え、センターフライ、四球、盗塁で一死二・三塁と走者を背負ったものの、「ランナーは関係ない」とばかりに、後続を見逃し三振、サードフライに打ち取り、無失点でピンチを脱出。走者を背負っても得点だけは許さぬ「プラン通り」のピッチングで「0」に封じ、味方打線の援護を待った。その裏、打線も「レジェンド」の好投を無にするわけにはいかないと、犠打で走者を三塁へ進め、二者連続の故意四球で満塁となった後、松本怜奈がライトへ犠牲フライを打ち上げ、三塁走者が歓喜のホームイン! 昨年の同大会、準決勝で「不覚」を取った相手にリベンジを果たし、「両チーム優勝」ながら2年ぶりに「王座奪還」。「ビックカメラ」として4回目、日立高崎、日立&ルネサス高崎、ルネサス高崎、ルネサステクノロジ高崎事業所、ルネサスエレクトロニクス高崎時代を含めると19回目の優勝を飾った。
※大会最終日(9月19日(火)準々決勝・準決勝の試合結果・イニングスコアはこちら)
トヨタ レッドテリアーズ、ビックカメラ高崎 ビークイーンの「両チーム優勝」で幕を閉じた本大会をふり返ると、来年、佐賀の同地で開催が予定されている「国民スポーツ大会」の「リハーサル大会」としては、悪天候による日程や試合時間の変更、雨への対応等、「様々なシミュレーションができて良かった」という開催地の皆さんや大会関係者の声を聞くことができたことは「災い転じて福」、天候に振り回され、決勝戦を実施することができなかったこともムダではなかった……とプラスにとらえることができた。
ただ……その一方で、全日本大会の中でも、最も長い歴史と伝統を誇り、権威ある大会が「国体のリハーサル大会」として開催されていることに「違和感」も感じる。現在、(公財)日本ソフトボール協会でも特別プロジェクトを組み、この「全日本総合」(男女とも)の「改革」ついて議論が進められているところではあるが、「全日本総合」の位置づけ・格付け、大会の開催会場・開催時期等についても、これだけの歴史と伝統があり、権威ある大会に「ふさわしい」ものとなるよう、建設的な議論が進められ、「改革」が行われることを期待したい。
これも「国民体育大会」「国民スポーツ大会」の「リハーサル大会」であることが関係していると思われるが、基本的に、次の大会、あるいはその次の大会の開催を予定している開催地の皆さんが大会の「視察」に赴き、「前例」を踏襲し、グラウンドの設営等が行われている。
今大会でも従前の国体での大会会場レイアウトの「前例」が踏襲されており、チームのベンチ、チームのベンチの隣に報道員・視察員のエリア、さらにそれに隣接する形で観客席、といった形の配置・レイアウトとなっている。この場合、報道員・視察員のエリア(席)の前方がカメラマン席、写真の撮影位置となるのだが、仮設スタンド等ない場合、ここで撮影してしまうと、メディアの人数や撮影場所によっては、一部の観客の皆さんの視線を完全に遮る形となり、「見えない!」「観戦の邪魔!!」とのクレームの集中砲火を浴びてしまうことも……。また、一塁側・三塁側のどちらかにしか「報道員・視察員」のエリアがない場合もあり、どこが取材エリアなのか、どこからどこまでが撮影可能なエリアなのか判然とせず、バックネット付近も撮影可能といえば可能だが、審判員の皆さんやグラウンド整備や試合球を補給する大会運営スタッフの皆さんの「動線」と被ってしまうことも多く、いろいろと気を遣いながら撮影しなくてはならない。もちろん臨機応変、その都度確認し、撮影を行えばいいのだが、ある程度、メディアの取材エリア、撮影位置等を明確にしてもらえると無用なトラブルもなくなり、円滑な取材活動が可能になるのでは……と思う。
これも「プレーヤーズファースト」「アスリートファースト」で、選手・チームの皆さんが気持ちよく、思う存分プレーできる環境を用意することが最優先で、観客の皆さんにも普段なかなか見るこのできない「日本のトッププレーヤー」「日本トップレベルのソフトボール」をより身近で楽しんでもらいたい……と思う一方、やはりソフトボールの魅力、面白さを伝えるメディアの皆さんが取材しやすい環境を整えることもまた重要ではないかと感じる。メディアの力、影響力・発信力は非常に大きなものがあり、そのメディアの皆さんにも「またソフトボールの取材に来たい」「ソフトボールは取材しやすい」と思ってもらえるような「環境」づくりを行っていくことが、間接的ではあるかもしれないが、ソフトボール競技のメジャー化やソフトボールファンを増やしていくことにもつながるのではないか……とも思う。
ただただ判で押したように「前例」を踏襲するのではなく、ただそこで試合が行なえればいい、競技ができればいい……というのではなく、よりソフトボールを楽しんでもらうためにはどうしたらいいか。あるいは、ソフトボールというスポーツ・競技の魅力、楽しさ、面白さをより多くの人々に伝え、発信していくために、どのような競技運営・大会運営を行い、どんな球場のレイアウト・設営にしたらよいか、今大会のようにLIVE配信を行うことを含め、試合経過・結果がいち早くわかるようなSNSの活用等、知恵を絞り、アイディアを出し合い、昨日より今日、今日より明日、去年より今年、今年より来年……とたとえわずかでもステップアップさせ、進化させていく「努力」を積み重ねていく姿勢こそが「改革」「改善」へとつながっていくことになるのではないだろうか。
今回の大会では、JD.LEAGUE各チームの「アナリスト」たちがセンター後方の炎天下で試合の映像を撮影し、データ入力・整理をする姿も見られた。JD.LEAGUEでは各会場に「アナリスト専用席」が用意されている。もちろん、参加全チームに「アナリスト」がいるわけではなく、大会側がJD.LEAGUEのチームのみにその配慮をする必要もないのかもしれないが、例えばチーム側・アナリスト自身が簡易的なベンチ(座る場所)や作業用の机等を持ち込んだり、強烈な陽射しを避けるための簡易テントやパラソルのようなものを使用することを容認することはできないだろうか。
今やJD.LEAGUEのチームにおいては「アナリスト」を置くのが「当たり前」となっており、「チームの一員」として重要な役割を担っている。チームもその重要性を認めているからこそ、「アナリスト」を置いて、対戦相手の情報収集・戦力分析を行う人員を割いているわけであり、JD.LEAGUEでもその役割と重要性が認知されているからこそ、どの試合会場においても「アナリスト専用席」が用意されるようになったのである。大会運営側が至れり尽くせりですべて用意せよ……というようなことではなく、時代とともに「チームの在り方」も変わり、構成される人員や求められる役割も変わってきていることを「認識」し、それぞれのチームの行動・対応についても、許容範囲を広げたり、「前例」のない活動についても競技進行や運営に支障・影響がないかをしっかりと確認・判断した上で、「問題なし」と判断されれば、それを容認するような柔軟性を持ってもいいのではないだろうか。ましては9月とはいえ、残暑厳しい時期の大会であることを考えると、暑熱対決や熱中症対策は重要で、そのための環境づくりと配慮はあってもいいはずである。
プレーする選手・チームも、データ収集・分析に奔走するアナリストの皆さんも、試合を観戦・応援し、見守る観客の皆さんも、大会を取材するメディアの皆さんにとっても……すべての人にとって、心からソフトボールを楽しむことができ、真の意味でその魅力と面白さ・楽しさにふれることのできる大会であること、そのための「改革」が議論され、良き方向に進んでいくことを期待したい。
(公財)日本ソフトボール協会 広報担当
株式会社 日本体育社「JSAソフトボール」編集部 吉田 徹