平林金属株式会社が「初代・天皇盃」に輝く!
今年度・第70回大会から新たに「天皇盃」の冠を賜った
1回戦で日本リーグ所属の旭化成に「打ち勝ち」、
前回王者・Hondaにも果敢にチャレンジした
岐阜聖徳学園大学
″世界No.1サウスポー″ ジャック・ベスグローブも参戦。
″MAX136km/hの快速球″ に周囲の注目が集まる!
その世界一の左腕に「臆することなく挑んだ」平林金属。
土俵際まで追い詰められながら、見事な逆転劇で決勝へ‼
その平林金属と3年ぶりに決勝の舞台でぶつかり合った
高知パシフィックウェーブ。今回は相手の ″勢い″ が勝った
ここはゴールではなく、「スタート」!
総合選手権の新しい歴史を築いて‼
去る9月28日(土)~30日(月)の3日間、長野県伊那市を舞台に「天皇盃 第70回全日本総合男子選手権大会」が開催された。
全日本総合男子選手権も、日本男子ソフトボールのトップリーグとされる日本リーグをはじめ、実業団、クラブ、大学の各カテゴリーが「日本の頂点」を競い合う文字通り「国内最高峰の大会」と位置づけられてきたが、今年度:第70回大会から新たに「天皇盃」の冠を御下賜いただくこととなった(※2024年(令和6年)9月6日、天皇皇后両陛下より宮内庁を通じ、当協会:公益財団法人 日本ソフトボール協会へ『天皇盃』『皇后盃』を御下賜いただきました。今後は『天皇盃』を『全日本総合男子選手権大会・優勝チーム』に、『皇后盃』を『全日本総合女子選手権大会・優勝チーム』にそれぞれ授与することといたします)。
″天皇盃初年度″ となった今大会には、前回優勝・Honda(栃木)、準優勝・トヨタ自動車(愛知)、その優勝・準優勝チーム(Honda、トヨタ自動車)を除いた昨年の日本リーグ上位6チーム/三重ヴェルデウィン(三重)、平林金属(岡山)、高知パシフィックウェーブ(高知)、大阪桃次郎(大阪)、デンソー(愛知)、豊田自動織機(愛知)が推薦出場。そこに全国各ブロックの予選を突破した23チーム/中原建設工業ソフトボールクラブ(兵庫)、旭化成(宮崎)、岐阜聖徳学園大学(岐阜)、新見城山クラブ(岡山)、FSC吉勝重建(福井)、福島ソフトボールクラブ(福島)、日本エコシステム(岐阜)、S・Tオール大分(大分)、立命館大学(京都)、厚木クラブ(神奈川)、UBE株式会社(山口)、姫路クラブ(兵庫)、ウェルズホームUNITED(福島)、日本体育大学(東京)、住吉工業SBC(山口)、環太平洋大学(岡山)、東かがわソフトボールクラブ(香川)、コマニー株式会社(石川)、ダイワアクト(佐賀)、中京大学(愛知)、高崎市役所(群馬)、ジェイテクト(徳島)、リハビリテーションあいのわ(長崎) ※組合せ番号順にて掲載 と地元1チーム/Y’s伊那クラブ(長野)を加えた合計32チームによって覇が競われた。
大会初日・1回戦は、岐阜聖徳学園大学が日本リーグ所属の旭化成を相手に「6-4」で競り勝つ「金星」。山口県のクラブチーム・住吉工業SBCも日本リーグ勢・デンソーを先制スリーラン、ダメ押しツーランホームランの豪快な一発攻勢で「6-3」と撃破する「番狂わせ」を演じて見せた。
大会2日目は前日旭化成を打ち破った岐阜聖徳学園大学がまず ″前回王者″ Hondaにチャレンジ。序盤2回裏に昨年(2023年)の「U18ワールドカップ優勝メンバー」淀川瑛澄(※U18日本代表チームではキャプテンを務めた)がタイムリーを放って先取点を挙げたが、Hondaも「意地」を見せ、4回表、6回表と船原雄大の「2打席連続ホームラン」等で試合をひっくり返し、最終的には4-1で勝利。デンソーの足元をすくった住吉工業SBCも三重ヴェルデウィン戦に挑み、こちらも先制ソロホームランで先手を取ったが、結局のところは投手陣が被安打10・9失点と踏ん張れず、1-9の5回コールド負け。準々決勝に駒を進めることはできなかった。
「初代・天皇盃」の栄誉をつかむべく、大会最終日に勝ち残ったのはHonda、高知パシフィックウェーブソフトボールクラブ、平林金属株式会社、ダイワアクト。男子ソフトボール「真の日本一」をめざして、それぞれが最後の戦いに臨んだ。
準決勝:高知パシフィックウェーブソフトボールクラブ vs Hondaは、両チーム無得点のまま迎えた4回表、高知パシフィックウェーブがこの回先頭の2番・味元琉維のライトへのソロホームランで1点を先制。続く5回表にも1番・片岡宜久のタイムリー、2番・味元琉維のスリーランホームラン、4番・高島大揮のタイムリー等「集中打」を浴びせて一挙5点を追加。6回表には6番・伊藤皓二にソロホームランが飛び出し、得点差を7点に広げ、そのまま7-0の一方的な展開で6回コールド勝ち! ″前年チャンピオン″ を予想外の大差で打ち破り、3年ぶりの決勝進出を決めた。
もう一方の準決勝:平林金属株式会社 vs ダイワアクトは、後攻のダイワアクトが初回二死満塁からワイルドピッチで1点を先取。このまま優位に試合を運ぶかに見えたが、平林金属も4回表に1番・浜本悌が「初球」を鮮やかに振り抜き、ライトへ「目の覚める」ソロホームラン! 1-1の同点で迎えた5回裏、ダイワアクトが一死三塁から再びワイルドピッチで1点を勝ち越し、これで勝負あった……と思われた。しかし、土壇場の7回表、平林金属は一死から3番・八角光太郎が追い込まれながらも二遊間をしぶとく破り、出塁。すかさず二盗を成功させると、続く4番・鳥山和也も一・二塁間を「執念」で抜くタイムリー!! この打球を右翼手が後逸する間に打者走者・鳥山和也も一気に生還を果たし、この回2点を奪い、3-2と試合をひっくり返した。
投げては、先発・小山玲央が常に先手を取られる嫌な流れの中ではあったものの、 ″味方打線の援護″ を信じた「粘りのピッチング」を展開。最終7回裏も先頭打者にバントヒットで出塁されたが、渾身の投球で後続を空振り三振、レフトフライ、空振り三振に斬って取り、熱戦に終止符。 ″世界No.1サウスポー″ ジャック・ベスグローブとの白熱の投げ合いを「意地」と「プライド」で制し、こちらも3年ぶりの決勝へ駒を進めた。
決勝戦:高知パシフィックウェーブソフトボールクラブ vs 平林金属株式会社は3年前第67回大会の決勝(※このときは高知パシフィックウェーブが4-2で勝利し、10年ぶり5回目の総合選手権制覇)、この長野県伊那市で12年前に開催された第58回大会決勝(※このときは平林金属が3-1で勝利し、記念すべき『初の単独優勝』を飾った)と同じ顔合わせに。
試合は後攻の平林金属が初回、一死から2番・和田彩斗のレフトへのソロホームランで早々と1点を先取。さらに3番・八角光太郎、4番・鳥山和也の連打で一・三塁とし、5番・井上裕太郎がレフトへキッチリと犠牲フライを打ち上げ、2点目を追加。試合のペースを握った。平林金属は3回裏にも一死から先制アーチを放った2番・和田彩斗が左中間へのツーベースで出塁し、チャンスメイク。パスボールで三塁に進むと、3番・八角光太郎のライトへの犠牲フライで生還し、3点目。4番・鳥山和也も左中間最深部へソロホームランを突き刺し、もう1点を加え、1点返された直後の4回裏には相手守備の乱れに乗じて5点目を追加。着々とリードを広げた。
守っては、決勝の先発投手を任された「期待のルーキー」景山蓮がソロホームラン二発で2点を失いはしたが、5イニングを被安打3の堂々たるピッチング。6回表から「エース」小山玲央がリリーフに立ち、2イニングを被安打1・奪三振5の貫禄の投球内容で締めくくり、ゲームセット! 平林金属が5-2で高知パシフィックウェーブに快勝し、「7年ぶり5回目」の総合選手権優勝を果たした。
第70回全日本総合男子選手権大会、栄えある「初代・天皇盃」はこれまで時代をリードしてきた平林金属株式会社(岡山)が手にすることとなった。
平林金属株式会社の今回の戦いぶりを振り返ってみると、1回戦で大学チャンピオン・日本体育大学に「日体大OB」(※大学4年時に『キャプテン』としてチームを引っ張り、『インカレ優勝』を成し遂げている)和田彩斗が「劇的なサヨナラホームラン」をお見舞いし、3-2で辛勝。2回戦・姫路クラブ戦も中盤(4回終了時)まで5-4と一進一退の打撃戦を余儀なくされ、最終的に「地力の違い」(12-4の5回コールド勝ち)は見せたものの、どこかスッキリしない試合内容。準々決勝・三重ヴェルデウィンとの対戦でもリードされ、追いかける劣勢の試合展開になりながら、「真骨頂」である「ここぞ!の場面でのしぶとさ」「勝利へのあくなき執念」で6-4と逆転勝利し、ベスト4へ勝ち上がった。
そして、何より大きかったのが……準決勝・ダイワアクト戦の土俵際での見事な粘り勝ち。難攻不落の ″世界No.1サウスポー″ ジャック・ベスグローブを向こうに回しても、決して臆することなく、攻守に「積極果敢」! 打線の内容的には3安打・13三振だったが、現・男子TOP日本代表でもある浜本悌の「完璧な当たり」の同点ソロホームラン、八角光太郎、鳥山和也の「魂の連打」は、日本男子ソフトボールの未来へ「希望の光」を灯してくれるモノであったといえるだろう。
もちろん、要所要所で見られた「エース」小山玲央の力投・熱投もチーム全体を鼓舞した。吉村啓監督が考える平林金属のチーム育成・強化(大会に臨む上でのゲームプラン)において現行では ″小山一人で勝ち抜く″ というスタイルをとっていないが、今大会の小山玲央の背中(闘志を前面に出して投げ込む姿)からはエースとしての「覚悟」のようなモノが感じられ、まだ本当の意味での復活(『MAX135㎞/h』の快速球を投じ『国内敵なし』を誇っていた全盛期のピッチングに戻った)とは言えないものの、そこに「復調の兆し」が見えたことは間違いのない事実であった。
新たに「皇后盃」を賜った全日本総合女子選手権大会と同じく、この全日本総合男子選手権大会も「天皇盃」の冠のもと、 ″新しい歴史″ を築いていくことになる。
何度も繰り返すようだが……「天皇盃」「皇后盃」を賜ったことがゴールなわけではない。この全日本総合男子・女子選手権大会を、その栄誉ある冠に恥じぬよう「いかにして発展させていくか」が非常に大切で、それが今後、ソフトボールを愛する(支える)私たちに与えられた「ミッション」となる。
さぁ、チーム・選手、協会関係者や大会運営スタッフ、開催地の方々が「一体」「一丸」となって「真に新しい全日本総合選手権」を創造していこうではないか。
未来へ向けたチャレンジは、まだ「スタート」を切ったばかりなのだから!
●文・写真
日本ソフトボール協会広報担当
竹﨑 治 (日本体育社)