令和8年度からゴムボール使用の各大会で使用される「新意匠ゴムソフトボール」の記者会見が開催された
記者会見冒頭、挨拶する(公財)日本ソフトボール協会・牧島かれん会長
目黒日本大学高等学校女子ソフトボール部の皆さんによる「新意匠ゴムソフトボール」を使ってのデモンストレーション
「新意匠ゴムソフトボール」使用の感想を述べる目黒日本大学高等学校女子ソフトボール部の皆さん
記者会見に出席者。左から(公財)日本ソフトボール協会・亀田正隆技術委員長、同・岡本友章専務理事兼事務局長、同・牧島かれん会長、検定ゴムソフトボール工業会・土井正孝会長、同・橋本茂樹副会長、同・岩城宏之副会長
去る2月23日(日)、(公財)日本ソフトボール協会は、東京・品川プリンスホテルを会場に、「令和6年度 第2回定時評議員会」終了後、「新意匠ゴムソフトボール」記者会見を開催した。
この記者会見は、日本ソフトボール協会創立(1949年)以来、変わることなく公式球(大会使用球)としてきた「ゴム」ソフトボールについて、新しい意匠のボールを開発し、使用することなったことを受け、行われたもので、(公財)日本ソフトボール協会からは牧島かれん会長、岡本友章専務理事兼事務局長、亀田正隆技術委員長が出席。「新意匠ゴムソフトボール」の開発を行った「検定ゴムソフトボール工業会」から土井正孝会長(内外ゴム株式会社 代表取締役社長)、橋本茂樹副会長(ナガセケンコー株式会社 取締役副社長)、岩城宏之副会長(マルエス株式会社 代表取締役社長)が出席し、「新意匠ゴムソフトボール」の開発・導入の狙い、その特徴や従前の公式球との違い等の詳細が説明された。
記者会見冒頭、(公財)日本ソフトボール協会・牧島かれん会長が挨拶に立ち、「ご存じの通り、ソフトボールは女子が2008年北京オリンピックで金メダルを獲得し、オリンピック競技除外を経て、『東京2020オリンピック』で13年越しとなる2大会連続での金メダルを獲得。昨年、イタリアで開催された『第17回女子ワールドカップ』でも4度目の優勝、『世界一』となっています。男子もU18ワールドカップで『連覇』を継続中で世界ランキング3位と男女ともに世界トップレベルの競技力を誇っています」と、世界有数の国際競技力を有していることに言及。「その一方で、ソフトボールは子どもたちからご高齢の方々まで生涯を通じて楽しめるスポーツ、『生涯スポーツ』としての側面も持っています。これらの皆さんは競技スポーツで使用されている革ボールではなく、ゴムボールを使ってソフトボールを楽しんでいただいています。本日、発表する『新意匠ゴムソフトボール』がそんな皆さんにとって、ソフトボールにさらに親しみ、楽しんでもらえる契機となることを期待しています」と、さらなるソフトボールの普及・発展へ向け、「新意匠ゴムソフトボール」への期待を語った。
岡本友章専務理事兼事務局長は、「ゴムボールは日本独特、日本固有の『ソフトボール文化』であり、世界で他に導入・使用している国はありません。ただ、手軽に楽しめ、悪天候やグラウンド状態の変化に強く、どんな状況でも、長く使用できるゴムボールの存在がったからこそ、日本全国にソフトボールがこれほどまでに普及し、子どもたちからご高齢の皆さんに至るまで、一生を通じて楽しめるスポーツとして定着し、多くの皆さんに楽しんでもらえるスポーツとなったのは、ゴムボールの大きな『功績』であると感じています」と、世界各国と状況が異なり、日本独特・日本固有の「ソフトボール文化」として定着しているゴムボールという存在に触れ、「その一方で、高校生までゴムボールを使用し、大学、JD.リーグ、日本リーグ、実業団、クラブ等の本格的な競技に移行し、ゴムボールから革ボールに使用球が変わると、その対応に苦労する……といった問題がありました。特に高校生や中学生がU18、U15の国際大会に臨む際には普段使っているゴムボールではなく、革ボールで行われる大会に出場することになり、競技性の違いに直面するという『現実』があったのは事実です。そこでその革ボールに近い感触の『新意匠ゴムソフトボール』を開発し、導入することになった次第です」と、その経緯・背景についても説明した。
亀田正隆技術委員長は、「ゴムボールから革ボールへの移行を意識し、従来のゴムボールより、革ボールの縫い目に近づけ、より革ボールに近い形状、感触のボールの開発に取り組みました。縫い目(ゴムボールなので実際には縫い目はないが)を高くすることで。グリップ力が高まり、ボールの握り替え、握り直しが容易となり、指のかかりがよくなり、スピンがかけやすくなったと思います」と。「新意匠ゴムソフトボール」の開発・導入の狙い、特徴を説明した。
実際にこの「新意匠ゴムソフトボール」の開発に携わった「検定ゴムソフトボール工業会」土井正孝会長は、「革ボールの使用に完全に合わせてしまうと、ボールの成形・製造過程で不具合が生じやすく、金型の開発に苦労しました。縫い目の高さを従前の0.5mmから0.9mmに調整することで、革ボールに近い形状・感触を実現することができました」と開発の苦労話を披露し、日本の高い製造技術があればこそ実現できたものであることが語られた。
新意匠ゴムソフトボール」は、従前のゴムボールと大きさ、重さに変わりはなく、縫い目の高さを0.5mmから0.9mmに変更。従前の「1号ボール」「2号ボール」「3号ボール」の名称から、現行の「2号ボール」を「11インチ」、「3号ボール」を「12インチ」と実際のボールの大きさで呼称・表記することも発表された(現在、(公財)日本ソフトボール協会で「1号ボール」を大会使用球とする大会は実施していない)。
記者会見では、目黒日本大学高等学校女子ソフトボール部の皆さん(惠島禾梨さん、繁竹心咲さん、曲田美咲姫さん、熊谷夏望さんの4名)による「新意匠ゴムソフトボール」を使ったデモンストレーションも行われた。
「新意匠ゴムソフトボール」を使ってキャッチボールを行った目黒日本大学高等学校女子ソフトボール部の皆さんは「握りやすい」「ボールのかかり(指のかかり)がいい」「捕球してから握り直すのが楽」「縫い目が高いのでピッチャーは変化球が投げやすいのでは」等、「新意匠ゴムソフトボール」使用の感想を語ってくれた。
また、これまでメーカーによって若干の使用感の違いがあったが、今回の「新意匠ゴムソフトボール」では、メーカー各社が共同で金型を開発し、完全な「統一規格」での製造が実現し、どのメーカーのボールを使用しても「まったく同じ」となることも説明された。
この「新意匠ゴムソフトボール」は。今年秋ごろから販売を開始(詳細な販売時期はメーカー各社のホームページ等で発表予定)、令和8年度(2026年度)の大会から公式球(大会使用球)として使用される予定である。