去る6月18日(日)~21日(水)の4日間、青森県弘前市「はるか夢球場」を会場に「第6回東アジアカップ女子ソフトボール大会2017 in HIROSAKI」が開催された(大会結果ページはこちら)。
大会には、中国、チャイニーズ・タイペイ、韓国、女子TOP日本代表、GEM4(女子U23)日本代表の5チームが参加。まず参加全チームによるシングルラウンドロビン方式(1回戦総当たり)の予選リーグを実施。その予選リーグの順位に基づき、予選リーグ1位と2位、3位と4位が対戦し、最終順位を決定する試合方式で覇が競われた(ホスト国の「特例」として2チーム参加が認められた日本は、女子TOP日本代表、GEM4(女子U23)日本代表の予選リーグ成績上位のチームが最終順位決定戦に進むことになり、もう一方のチームは「順位なし」という扱いとなる)。
結果は、女子TOP日本代表が「貫禄」を見せつけ、予選リーグから無傷の5連勝で突っ走り、圧倒的な強さで優勝を飾った。
投手陣は、予選リーグの初戦、「開幕投手」として1イニング、そして最終順位決定戦・決勝の最終イニングの1イニングに登板した「世界のエース」上野由岐子は、詰めかけてくれた青森のソフトボールファン、大会の開催に尽力してくれた弘前市の皆さんへの「感謝」の気持ちを込めた登板といった意味合いが強く、実質的には「次なるエース」として期待される藤田倭、濱村ゆかりと、中学生のときに「日本代表」に選ばれ、その後もすべての世代で「日本代表」を経験してきた岡村奈々、「スーパー高校生」勝股美咲の4人で今大会の全試合(予選リーグ4試合、最終順位決定戦1試合の計5試合)を回していく形となった。
6月18日(日)~21日(水)の4日間、「第6回東アジアカップ」が開催された
大会は開催地・弘前市の熱意と誠意に溢れ、大成功の大会となった
エスコートキッズとともに入場する選手たち
平日にも関わらず、小学生たちが大会の応援に駆けつけてくれた
大会は女子TOP日本代表が圧倒的な強さで優勝を飾った
2勝を挙げ、防御率0.70の「スーパー高校生」勝股美咲が
最優秀投手賞を受賞した
大会MVPに輝いた原田のどかには弘前市・葛西憲之市長から
当地のたくさんの名産品が「副賞」として贈られた
「最強チーム」編成、「最強メンバー」の選出へ向け、激しい競争が続く…
予選リーグの初戦は、「世界のエース」上野由岐子の先発にはじまり、岡村奈々、藤田倭、勝股美咲、濱村ゆかりと投手陣全員を短いイニングで登板させ、今大会の「試運転」を済ませ、3番手・藤田倭が1点を失ったものの、4-1で勝利を収めると、第2戦の中国戦で先発を任された「スーパー高校生」勝股美咲が5回得点差コールドの参考記録ながら、一人の走者も許さぬパーフェクトピッチング。立ち上がりこそ緊張した様子が見られたが、尻上がりに調子を上げ、打者15人から7三振を奪い、外野に飛んだのはライトファウルフライの1本だけという「完璧」なピッチングを見せた。
第3戦の韓国戦は岡村奈々が先発。初回にいきなり大量7点の援護をもらったことで、拍子抜けしてしまったわけではないだろうが、後半いずれも二死走者なしから長打を浴びる等、5回を完封したとはいえ、もう一つピリッとしない投球内容に終わった。
予選リーグ最終戦のGEM4(女子U23)日本代表戦は濱村ゆかりが先発。初回、二死から倉本美穂に二塁打を浴び、いきなり得点圏に走者を背負う立ち上がりとなったが、落ち着いて後続を断ち、このピンチを切り抜けると、3イニングを投げ、被安打2・与死球1の安定したピッチングを見せた。4回から登板した「スーパー高校生」勝股美咲は、その代わり端、3本の長短打を浴び、2失点。6回表にも1点を失い、4イニングを投げ、被安打5・失点3の投球内容。いずれも守備のミスが失点に絡んでおり、完全に「打ち込まれた」という印象はなかったが、石川恭子に浴びた二塁打、三塁打は完璧に「とらえられた」当たりであり、中国戦での「パーフェクト」なピッチングを再現するには至らなかった。
決勝のチャイニーズ・タイペイ戦で「実質的な先発」として試合を任された藤田倭は、降りしきる雨の中、難しいコンディションでの登板となったが、安定感溢れるピッチングを見せた。4イニングを被安打2・無四死球の投球内容で、最後は「エース」上野由岐子へとつなぎ、三者三振のエンディングへとつなげてくれた。
以上のように、上野由岐子に続く「次なるエース」を争う藤田倭、濱村ゆかりの二人が頭一つ抜けた「投球の質」「安定感」を見せてくれた。この二人に関しては、「宿敵」アメリカを除けば、どの相手に対しても十分に計算ができるだけのピッチングを見せてくれている。ただ……二人にとって本当に「リベンジ」すべき相手は、この後、「日米対抗ソフトボール2017」で大会戦が控えている「宿敵」アメリカであり、この相手にどれだけのピッチングを見せてくれるかが「評価」の基準・対象となる。「宿敵」アメリカを相手に、昨年、「世界一」の座を奪われた「リベンジ」を果たしてこそ、二人の「成長の証」が見えたといえるだろう。
岡村奈々、勝股美咲は「アジア」のレベルでは十分に通用するピッチングを見せたものの、「世界一」のアメリカをはじめ、「世界のトップレベル」相手にしたとき、どれだけのピッチングができるかは「未知数」な部分が多い。「日米対抗ソフトボール2017」では、相手が相手だけにどれだけ投球機会を与えられるかはわからないが、たとえ一球でも「世界の王座」に君臨する「宿敵」を相手に登板する機会があれば、かけがえのない「経験」の機会となることだろう。特に「スーパー高校生」勝股美咲が王者・アメリカと対峙する姿は是非見てみたいところだが……。宇津木麗華ヘッドコーチの投手起用にも注目が集まる。
野手に目を向けると、当初、今大会に出場予定だった長﨑望未のケガによる欠場で「緊急招集」された原田のどかが大会MVPを受賞した。打率4割6分2厘・本塁打1と打ちまくり、突然訪れたチャンスを見事にモノにして見せた。
外野手は「現役進化形レジェンド」山田恵里、「ベテラン」の域に達しつつある河野美里、今大会にも召集予定だった長﨑望未といずれも「左打ち」の好選手が揃うだけに、「右打ち」の原田のどかは、チームにとって「貴重な存在」といえそうだ。この「勢い」を、この後の「日米対抗ソフトボール2017」、アメリカ・カナダへの遠征へとつなげていくことができれば……代表「定着」がグッと近づく。
また、洲鎌夏子が「最優秀打撃勝」を受賞。打率5割・二塁打3本と、相変わらず「チャンスに強い」ところを見せ、原田のどかとともに「チームの得点源」となった。すでに代表チームにとって「欠くことのできない存在」となっているが、その「存在感」をこの大会でもいかんなく発揮。チームを牽引する働きを見せてくれた。
打線では、この大会の幕開けに先頭打者ホームランを放ち、チームの勢いを決定づけた「現役進化形レジェンド」山田恵里、独特のバッティング技術を有する河野美里、抜群の身体能力に裏付けされた豪快なプレーを見せる山本優が、その圧倒的な「存在感」を見せつける一方、原田のどかの活躍を除けば、「新たな驚き」は残念ながらなかった。
その中では、渥美万奈が2番・ショートに定着し、際どいコースは徹底的にカット。粘った末にフォアボールを選ぶ等、相手にとって「嫌らしい存在」となり、打線のアクセントとなっていたことは評価できるが、セカンドが未だ定着せず、代表歴の長い市口侑果、那須千春、川畑瞳が「日替わり」で起用されているような状態。代表初選出の外野手の江口未来子もレベルの高い外野陣の中ではなかなか出場機会を得られずにいる。この競争に勝ち、食い込んでいくために何が必要なのか……選手としての「真価」と「進化」が求められる。
キャッチャーは若い我妻悠香をレギュラーに据え、経験豊富な佐藤みなみがそれをサポート。期待の「大型捕手」我妻悠香に経験を積ませるべく、「我慢」の段階なのかもしれないが、今大会ではイージーなミスも目立った。特に、リードし、引っ張ってやらなければならない高校生の勝股美咲の登板時に、何でもない「ストライク」のボールをパスボールし、ピンチを広げてしまった場面はいただけなかった。このあたりは、技術的な問題というよりは、もっともっと「強い気持ち」を見せてほしいところだが……。一日も早い成長が待たれる。
GEM4(女子U23)日本代表は、予選リーグ3勝1敗。女子TOP日本代表に敗れた他は、アジアの強豪をしっかりと撃破して見せた。
初戦の中国戦を9-0の5回コールドで勝利を飾ると、続く韓国戦は倉本美穂のスリーラン等で4-0の完封勝ち。チャイニーズ・タイペイ戦も初回に、「キャプテン」數原顕子、倉本美穂のホームランで先手を奪い、4-0と快勝。3戦全勝で女子TOP日本代表と「決勝進出」をかけた「決戦」に臨んだが、女子TOP日本代表戦は7-3で敗れ、3勝1敗で今大会を終えた。
中西舞衣の負傷欠場により、「追加招集」された倉本美穂が「優秀選手賞」受賞。2本の本塁打を放つ等、大いにアピールした。「大型スラッガー」としてのポテンシャルの高さを感じさせる結果を残した。
投手陣では、唯一の大学生・原奈々が初戦の中国戦に先発し、3イニングを被安打2・奪三振5の好投で勝利投手となり、チャイニーズ・タイペイ戦でも先発で2イニングをノーヒットピッチング。「決勝進出」をかけた女子TOP日本代表戦でも先発に起用されたが、2回もたずに4安打・6失点。不運で気の毒な失点もあり、これが「本来の姿」ではないのかもしれないが……先発の役割を果たせぬまま、途中降板を余儀なくされてしまった。
小薗美希は得意の「緩急」を使ったピッチングで持ち味を発揮。「らしさ」を見せ、山口清楓、藤嶋涼菜も登板機会は少なかったものの、大会を通じ無失点の好投。それぞれに貴重な経験を積んだことは間違いない。
野手では、女子TOP日本代表にも名を連ねる奥田茉優希、内藤実穂が優先的に出場機会を得たが、「さすが!」というプレーを見せるまでには至らなかった。キャッチャーの坂本結愛が溌剌としたプレーを見せ、倉本美穂、數原顕子も持前の長打力を発揮。大学生の石川恭子も攻守に「センスの良さ」を見せてくれはしたが……。投手陣を含め、「すぐにでも代表入りを!」と思わせるほどの鮮烈な印象を残したかといえば、疑問符も付く。
もちろん、今大会のプレー・結果だけで簡単に「答え」が出せるものではなく、今後の努力・成長次第で、その「答え」すら書き換えていくことは可能なのだが……。今、現在、「代表」に名を連ねている選手たちに追いつき、追い越していくことは決して簡単なことではない。それでも「挑戦」するだけの価値はあり、その「挑戦」がチーム内での「競争」を生み、チームの底上げとレベルアップにつながることも間違いない。
今後はGEM4(女子U23)日本代表だけではなく、勝股美咲のように「GEM3(女子U19)日本代表」の世代からも一足飛びに代表入りを果たすような「サプライズ」もあるかもしれない。
また、現在は、TOPにも、GEMにも選出されていないが、日本リーグ前半戦だけで満塁ホームラン3本、年間の打点記録に迫る22打点を記録し、打率4割6分4厘と打ちまくり、「大ブレイク」した糟谷舞乃(ビックカメラ高崎)のような存在もある。
「確実に」金メダルを獲得するための「最強チーム」の編成、「最強メンバー」選出への「挑戦」と「競争」は、まだまだはじまったばかりである。