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ニュース 女子TOP日本代表

「第16回WBSC世界女子選手権大会 2018 千葉」
「第18回アジア競技大会」を振り返って

「第16回WBSC世界女子選手権大会」は「宿敵」アメリカとの
死闘の末、準優勝

「第18回アジア競技大会」では、圧倒的な強さで5大会連続の
金メダルを獲得!

8月2日(木)、千葉県成田市「ナスパ・スタジアム」に世界の
強豪16チームが集結!
「世界一」の座と2020年東京オリンピックの「出場権」をかけた
戦いがはじまった

要所要所でチームの士気を鼓舞する快打を連発!
「存在感」を見せつけた「打のレジェンド」山田恵里

「投のレジェンド」上野由岐子(左)
「打のレジェンド」山田恵里(右)を
投打の「軸」に据えたチーム作りを宇津木麗華ヘッドコーチは
進めている

世界選手権で6本塁打・17打点と打ちまくり、「二冠」に輝いた
山本優。
「不動の4番」として、「ここぞ!」という場面で頼りになる
存在に成長した

決勝進出をかけた「宿敵」アメリカとの一戦を「託された」藤田倭。
3点のリードを守れず、サヨナラ負けを喫したが、延長8回を完投

「宿敵」アメリカに「まさか……」の逆転サヨナラ負けを喫し、
「世界一」の座を逃した女子TOP日本代表。
2年後、オリンピックの舞台で「金メダル」を!

世界選手権に引き続き、開催された「第18回アジア競技大会」では
連戦連勝

予選リーグ・決勝トーナメントを通じ、
「全勝」で5大会連続金メダルを獲得!

「まさに「アジアに敵なし!」
 ただ……めざすは「世界の頂点」だ!!

11月に開催される「2018 JAPAN CUP 国際女子ソフトボール大会
in 高崎」には「新たな戦力」も招集!
オリンピック「本番」まであらゆる可能性を探っていく

 2年後の2020年東京オリンピックでの金メダル獲得をめざす女子TOP日本代表は、去る8月2日(木)~12日(日)、千葉県県下四市(千葉市/ZOZOマリンスタジアム、成田市/ナスパ・スタジアム、習志野市/第一カッター球場(秋津野球場)、市原市/ゼットエーボールパーク)を会場に開催された「第16回WBSC世界女子選手権大会 2018 千葉」(大会結果はこちら)に出場。2大会ぶり4度目となる「世界一」の座をめざし、熱戦を繰り広げたが、惜しくも「宿敵」アメリカに敗れ、「王座奪還」はならなかった。

 また、8月19日(日)~24日(土)、インドネシア・ジャカルタで開催された「第18回アジア競技大会」ソフトボール競技(大会結果はこちら)では、圧倒的な強さで5大会連続となる金メダル獲得を果たし、まさに「アジアに敵なし」を印象づけた。

ここでは、両大会を振り返ることにより、女子TOP日本代表の「現在地」を探ると同時に、2020年東京オリンピックへ向けた「課題」を考えてみたい。

【第16回WBSC世界女子選手権大会 2018 千葉】

 8月2日(木)~12日(日)に開催された「第16回WBSC世界女子選手権大会 2018 千葉」には、世界各地区の厳しい予選を勝ち上がった16チームが一堂に会し、「世界一」の座と2020年東京オリンピックの出場権をかけ、激突。
 2大会ぶりの「王座奪還」、4度目の「世界一」を狙う女子TOP日本代表は、「宿敵」アメリカとは別グループの「グループB」に振り分けられ、世界ランク3位のカナダ、4位のオーストラリア、9位のイタリア、12位の中国、14位のイギリス、17位のベネズエラ、33位のボツワナと同組となり、シングルラウンドロビン(1回戦総当たり)の予選リーグに臨んだ。
 予選リーグは「宿敵」アメリカと別グループだったこともあり、大会直前に濱村ゆかりが脇腹を痛め、登板できなかったことを除けば、「予定通り」の戦いであったといえるだろう。
 初戦のイタリア戦は「打の現役進化形レジェンド」山田恵里の先頭打者ホームランで幕を開け、先発した「投の現役進化形レジェンド」上野由岐子が4回を一人の走者も許さぬパーフェクトピッチング。打者12人から8三振を奪う快投を見せ、まさに「投打の主役」揃い踏み。イタリアを9-0の6回コールドで退け、続くボツワナ戦では「美しき天才打者」長﨑望未の2打席連続本塁打を含む本塁打5本、11安打・20得点の猛攻で3回コールド。続く中国戦では「キャプテン」山田恵里の本塁打等、8安打で5点を奪い、上野由岐子、藤田倭とつなぐ投手リレーで5-0の2安打完封勝ち。イギリス戦は「主砲」山本優の先制ツーランホームランで先手を取り、「驚異の二刀流」藤田倭の打っては本塁打、投げては「あわや完全試合」の投打にわたる活躍で6-0の快勝。ベネズエラ戦は「期待の若手」勝股美咲が先取点を奪われ、今大会初めて追いかける展開となったが、その裏、「主砲」山本優のスリーランホームランであっさり試合をひっくり返し、9安打で7点を奪い、若い勝股美咲をしっかりと援護。結局、7-2で勝利を収め、無傷の5連勝を飾った。
 世界ランキング3位のカナダとの対戦は、降りしきる雨の中、「エース」上野由岐子がいきなり無死満塁のピンチを招く、苦しい立ち上がり。ただ、この窮地に立たされても、ベテランらしく冷静に試合の「一時中断」を要求し、29分間の中断を経て、試合再開。ここからが「世界のエース」の真骨頂、後続を三者連続三振に斬って取り、カナダに傾きかけた試合の流れを引き戻すと、相手守備の乱れにつけ込み、2点を奪い、2-0の完封勝ち。悪天候のため、一日順延され、仕切り直しとなった世界ランキング4位のオーストラリアとの予選リーグ最終戦は、「不動の4番」山本優のスリーランホームランで先手を取り、「キャプテン」山田恵里、「驚異の二刀流」藤田倭にも効果的な「一発」が飛び出し、8-1の6回コールド勝ち。予選リーグ「グループ」Bを7戦全勝の1位で通過。決勝トーナメントへと駒を進めた。

 決勝トーナメントでは、初戦で予選リーグ「グループA」2位のプエルトリコと対戦。「主砲」山本優の満塁ホームラン等で7-0と圧勝。6回コールドで一蹴し、決勝進出をかけ、ここまで女子TOP日本代表と同じく、予選リーグから「全勝」の「宿敵」アメリカとの一戦に臨んだ。
 試合は、アメリカがこの大会の優勝と2020年東京オリンピックでの金メダル獲得を見据え、「代表復帰」させた「絶対的エース」モニカ・アボットを、女子TOP日本代表が攻略。この大会「絶好調」の山本優のツーランホームラン等で序盤3点のリードを奪ったものの、この試合を託された藤田倭が徐々に差を詰められ、5回裏に3-3の同点に追いつかれると、試合はそのまま延長タイブレーカーへともつれ込み、延長8回サヨナラ負け。敗者復活戦へと回り、カナダと決勝進出をかけ、ブロンズメダルゲーム(3位決定戦)を戦うこととなった。
 大会最終日、女子TOP日本代表は、まずカナダとブロンズメダルゲーム(3位決定戦)を戦い、山崎早紀の先制の適時三塁打、貴重な追加点となるランニングホームラン等で3点を奪うと、「エース」上野由岐子がカナダ打線を被安打4・奪三振7の力投で完封。「宿敵」アメリカが待ち受けるゴールドメダルゲーム(優勝決定戦/決勝)へと駒を進めた。
 決勝は、序盤、女子TOP日本代表が2回表に我妻悠香のタイムリーで先手を取り、3回表には「主砲」山本優の適時三塁打で2点目を挙げ、このまま有利に試合を進めるかと思われたが、その裏、「エース」上野由岐子が「まさか……」の逆転スリーランを浴び、一転、追いかける展開に。
 6回表、「驚異の二刀流」藤田倭の「起死回生」の一発で3-3の同点に追いつくと、そのまま試合は延長タイブレーカーへ突入。8回表、女子TOP日本代表が代打・内藤実穂のヒットエンドランで勝ち越しに成功したものの、その裏、追いつかれ、4-4の同点で迎えた10回表には、藤田倭がこの試合2本目となるホームランを放ち、2点を勝ち越し。今度こそ「勝負あった」と誰もが勝利を確信した。
 しかし……その裏、これまでどんなピンチも乗り越え、日本を支え続けてきてくれた「エース」上野由岐子が4本の長短打を浴び、逆転サヨナラ負け。2大会ぶり4度目の「世界一」はならなかった。

 この大会だけを勝ちに行くのであれば、アメリカとの最初の対戦、セミファイナルでアメリカの「絶対的エース」モニカ・アボットを攻略し、3点をリードしたところで「エース」上野由岐子を投入し、逃げ切りを図ることもできた。少なくとも、4回裏に2点を返され、3-2と追い上げられたところで、「切り札」上野由岐子を投入するのが「いつもの」女子TOP日本代表の「必勝パターン」であったはずだ。
 その「必勝パターン」を宇津木麗華ヘッドコーチは自ら「封印」し、2020年東京オリンピック、「2年後の金メダル」を見据え、「敢えて」藤田倭に続投を命じ、この試合を藤田倭に託したのである。もちろん、これを投手交代の失敗、選手起用のミスととらえることもできるだろうが、2年後のオリンピックで金メダルを獲るために、この試合は藤田倭に「託す」ことを選択したのである。しかも、それを他の国際大会でやるのではなく、2020年東京オリンピックと同じ「ホスト国」と迎える、この世界選手権「本番」で、「2年後」を想定し、金メダルを争うことになるであろう「本気のアメリカ」に藤田倭を対峙させることに意味があり、それが藤田倭の真の意味での「成長」につながると「決断」したのだ。

 最終日の「エース」上野由岐子の連投も、36歳になる「エース」が「優勝」「金メダル」のかかる大会最終日、酷暑の中で「連投」に耐えうるのか……という重大なシミュレーションでもあった。このところ、「フル回転」することのなかった「エース」が、カナダ、アメリカという強豪相手にダブルヘッダーとなっても投げ抜くことができるのか、確認しておく必要があった。
 「いつまでも上野頼みでは……」「それに代わる若手の育成を!」との声があることは重々承知している。それを誰よりも意識し、望み、取り組んできたのは宇津木麗華ヘッドコーチその人であり、それこそ上野由岐子自身が、「次なるエース」の誕生に期待してきた。協会も選手強化本部会も、その「重要課題」に取り組み、「次なるエース」を育てる努力は続けてきた(今も続けられている)。
 しかしながら、あの北京オリンピックでの金メダルから10年の時を経てもなお「日本のエース」は上野由岐子であり、「第一人者」であり続けている。球威・球速、変化球の球種の多彩さとそれを自由自在に操るコントロール、打者心理を読み切った投球術……すべてにおいて「日本のNo.1ピッチャー」は依然として上野由岐子であり、それが「事実」であり、「現実」なのである。
 前述の通り、上野由岐子を超える存在を見出したい、育てたい……と誰もが願い、努力してきたのも、また「事実」であり、それでも……容易にそれを超えることができない存在が目の前にいて、同じ時代を生きている、その「事実」と「現実」から目を逸らす必要はないし、むしろ感謝して受け入れ、さらにそれを活かす道を探り、考えることは決して間違ったことではない。結局、尋常ならざる真夏の酷暑の中での連投は、百戦錬磨の上野由岐子を持ってしても厳しいものがあり、2年後の東京オリンピックが同じ「真夏の日本」に行われることを考えると、日本が誇る「エース」を「より良い状態」で起用できるような展開に持っていかなければならないことと、今回の決勝進出をかけたブロンズメダルゲーム(3位決定戦)のような「重要な試合」を信頼して任せられるような投手を、少なくもともう一人、育てる必要があることが明確になった。

 上野由岐子が「衰えた」とは思わない。決勝での3回裏の逆転スリーランホームランは「交通事故」に近いものであり(長打力のある打者ではあるが、あの方向に打つ打者ではない)、1点リードで迎えた延長8回裏もタイブレーカーの走者を無理に三塁で殺しにいかず、「同点まではOK」とアウトカウントを一つずつ増やしていく「心のゆとり」さえあれば、上野由岐子と相手打者との力関係を考えたとき、あのイニングで試合を終えることができた可能性は高い。
 また、勝負を決する厳しい局面に晒されても宇津木麗華ヘッドコーチは「敢えて」タイムを取って指示することも、間を取ることも、しなかった(無策で何もしなかったのではなく、意図して「しなかった」のだ)。さらには、最後のサヨナラの一打は「ファウル」だったのでは……という疑念は今も残り、決して「打つ手がなかった」わけではない。

 さらには、6点の援護をもらいながら守り切れなかったという「現実」が、上野由岐子の心の奥底に再び火をつけてくれるのではないか……との密かな期待もある。北京オリンピックでの金メダル以来、上野由岐子が「本気」になった姿を見たことがない。常に余力を残し、何かを考え、何かを試す。もちろん、それがキャリアを重ねるということであり、ベテランらしいクレバーなピッチングともいえるのだろうが……。もう一度、上野由岐子が「本気」になって、相手に立ち向かい、「真っ向勝負」を挑む姿が見たい。アメリカ打線を「かわす」のではなく、「ねじ伏せる」ピッチング。それを心のどこかで期待している。36歳からの2年間に「上がり目」等あるのかと言われるかもしれないが……。この偉大なレジェンドに「常識」をあてはめるのはナンセンスというものだ。まだまだ「進化」は期待できる。

 そして……あの「エース」の姿を見て、何も感じない選手はいないはずだ。藤田倭が、濱村ゆかりが、勝股美咲が……。あの背中を「本気」で追っていかなければ嘘だろう。「世界選手権で負けたからこそオリンピックの金メダルがあった」そう胸を張って言えるようになるために……ここから先が「本当の勝負」であり、あの「敗北の瞬間」から「次なる戦い」はもう始まっている。

 一方、打線は「大きな手応え」を感じた大会となったのではないだろうか。「打の現役進化形レジェンド」山田恵里が節目節目で「さすが!」の働きを見せれば、「不動の4番」に成長した山本優は今大会6本塁打・17打点で大会の本塁打王・打点王の「二冠」に輝く大活躍。「驚異の二刀流」藤田倭も大会通算5本塁打を放ち、投打に活躍。特に決勝での「エース」の力投にバットで応える2本塁打は鮮烈な印象を放った。「左キラー」山崎早紀も存在感を発揮し、3番に定着。「唯一の誤算」は、これまで無類の勝負強さを発揮し、チームの得点源となってきた洲鎌夏子の不振か。洲鎌夏子がいつもの調子であれば、打線の破壊力はさらに増したはずである。
 2番に定着し、3割を超えるアベレージを記録した市口侑果、好守でチームを支え、シュアな打撃で3割5分近い高打率を残し、攻守に奮闘した渥美万奈、ベテランながら泥臭いプレーで独特の存在感を放つ河野美里、打数は少ないながらも打率4割、本塁打も放った川畑瞳ら左打者は、アメリカが執拗なまでにぶつけてくる「左投手」に対し、どこまで食らいついていくことができ、今まで以上の「結果」を残すことができるかが、一つの課題となりそうだ。

 アメリカがこのところ抱えていた「上野由岐子コンプレックス」は、今大会の「優勝」で完全に払拭され、日本が有していたアドバンテージは消失・霧散したと考えるべきだろう。
 その一方で、アメリカも「切り札」として考えていたモニカ・アボットが見事なまでに日本打線に攻略されてしまったことには大きなショックを受けているはずである。今回は日本リーグでは調子が上がらず、不振を極めていたケイラニ・リケッツという「伏兵」にうまくかわされたことが勝負を決する分水嶺となったが、現状ではどちらもまだ「決め手」を欠いており、どっちへ転ぶかわからない、まさに「五分五分」の状態にあるといえよう。
 アメリカは「人材の宝庫」といわれるだけあって、ジュニア層から大学生の世代に素質溢れる将来有望な選手が羨ましいほど次から次へと出てきているのは事実である。「選手層の厚さ」という点ではアメリカにはかなわないかもしれない。
 ただ……オリンピックでベンチ入りできるのは通常の大会よりさらに2人少ない15人。その意味では、アメリカが持つアドバンテージを活かしづらいレギュレーションを採用しているのが「オリンピック」であり、ともに選び抜かれた15名を並べるのであれば……日本とアメリカの戦力は優劣つけがたく、現時点ではほぼ互角。今後は残る2年間でどれだけその選手たちを伸ばし、上積みを与えることができるかがカギとなる。また、最後はその中から誰を選び、どう起用するか……ヘッドコーチの「手腕」が問われる勝負になりそうだ。

 この世界選手権は、テレビ東京が地上波・ゴールデンタイムで生中継。特に「宿敵」アメリカとの2試合は、いずれも延長戦にもつれ込む死闘となり、「ソフトボール」の魅力、楽しさ・面白さがすべて詰まった「好ゲーム」となった。「ソフトボール」という競技をアピールする「絶好の機会」となったことは間違いなく、視聴率10%を超えという嬉しい知らせも届いている。

【第18回アジア競技大会】

 それに引き続き、開催された「第18回アジア競技大会」(8月19日/日~24日/金、インドネシア・ジャカルタ)では、開会式で「エース」上野由岐子が日本選手団の「旗手」という大役を務める栄に浴し、試合も連戦連勝。初戦のインドネシア戦に7-0の5回コールド勝ちを収めると、チャイニーズ・タイペイを3-1で下し、香港を15-0、フィリピンを11-1、韓国を10-0、中国を14-1と4試合連続のコールド勝ち。予選リーグ6試合中5試合がコールド勝ちという圧倒的な強さで決勝トーナメントに駒を進め、決勝トーナメントの初戦も予選リーグ2位の中国を5-0で破り、決勝に進出。無傷の7連勝で5大会連続の金メダル獲得に「王手」をかけると、決勝ではチャイニーズ・タイペイに7-0の5回コールド勝ち。予選リーグ・決勝トーナメントを通じて「無敗」のまま、「アジアの頂点」へ登り詰め、5大会連続の金メダル獲得という「偉業」を成し遂げた。

 アジアでは「異次元」の強さを発揮。まったく他を寄せつけない「圧勝」であった。「エース」上野由岐子は大会を通じ、8試合中わずか2試合の登板。代わりに世界選手権では登板できなかった濱村ゆかりが4勝を挙げる活躍。濱村ゆかりといえば「ライズボール」のイメージが強いが、今大会では丁寧に低めにボールを集め、内野ゴロの山を築いた。「地元」千葉での世界選手権に登板できなかったことを発奮材料とし、「新たなピッチングスタイル」を手に入れたのであれば、まさに「ケガの功名」となるのだが。
 藤田倭は、世界選手権での「経験」によるものか、この大会ではまったく危なげのないピッチングを披露。確たる「自信」に裏付けされた安定した投球を見せ、世界選手権での敗戦を糧に、ようやく「もう一段階上のレベル」に到達したという印象を強くした。

 野手では、ベテラン・河野美里が打率6割ちょうどのハイアベレージを残し、チーム最多の10打点。市口侑果も打率5割と打ちまくり、川畑瞳も負けじと8打点を挙げる活躍。その存在をアピールした。「主砲」山本優は今大会も大会最多の3本塁打を放ち、「キャプテン」山田恵里も「要所」でしっかりと仕事をし、キッチリと「数字」と「結果」を残すことで、その「存在感」を見せつけ、「売り出し中」の山崎早紀も相変わらず好調を持続。チームトップの11得点を記録する等、今大会は「チャンスメーカー」としての働きを見せてくれた。
 その一方で石川恭子、原田のどかといった今大会のみ招集されたメンバーは、無難に自らの与えられた役割を果たしてはいたものの、世界選手権を戦い抜いてきたメンバーたちの脅威となるようなパフォーマンスを披露するまでには至らず、大きなインパクトは残せずに終わった。

【新たなスタート!】

 9月4日(火)、11月に群馬県高崎市で開催される「2018 JAPAN CUP 国際女子ソフトボール大会in高崎」(大会の概要・試合スケジュール・出場選手はこちら)の開催記者発表が行われ、同大会に出場する選手17名が発表された。
 投手陣では、「期待の若手」勝股美咲が外れ、円熟味を増す左腕・尾﨑望良、中学3年生で「日本代表入り」を果たし、その後、すべての世代別「日本代表」に名を連ねた岡村奈々も代表「復帰」。
 「上野二世」として期待された社会人1年目、日本リーグデビューを果たしたばかりの勝股美咲、まだ高校生(3年生)の大型左腕・後藤希友は、「球威・球速を『ワールドレベル』に引き上げる必要があり、球種も増やす必要もある。もう少し時間が必要」(宇津木麗華ヘッドコーチ)との判断で、今回の代表入りは見送られ、「より完成度の高いピッチャー」が招集される結果となった。

 ただ、これで勝股美咲も後藤希友も「構想外」というようなことではなく、今後は藤田倭のように「二刀流」に取り組むプランを用意しているも明かされ、投打ともにさらにパワーアップして帰ってきてくれることを期待していた。

 捕手では、2013年の「第10回世界女子ジュニア選手権大会」で世界一の座を勝ち取り、優勝を決めるホームランを放った青木千春を大抜擢。その後、将来を嘱望され、誰もがその潜在能力の高さを認めながら、持てる素質・才能を十分に開花させているとは言い難く、「未完の大器」と呼ばれて久しいが、今回、宇津木麗華ヘッドコーチが期待する「左のスラッガー」「長距離砲」候補として白羽の矢が立ち、現役時代、同じ「左のスラッガー」としてシドニー、アテネでメダリストとなった宇津木麗華ヘッドコーチが「直接指導」に乗り出し、秘めたる潜在能力の「覚醒」に挑む。

 外野手では、抜群の身体能力を誇る江口未来子が代表「復帰」。昨シーズン、日本リーグの「本塁打王」のタイトルを獲得した數原顕子も「左のスラッガー」候補として代表入を果たす等、山本優、藤田倭、山崎早紀が「結果」を出した「右のスラッガー」と並ぶ、「本塁打」「長打」が期待できる「左のスラッガー」候補が新たに招集される形となった。

 世界選手権、アジア大会での戦いの中で出た「課題」を克服すべく、「新たなメンバー」が招集され、「2018 JAPAN CUP 国際女子ソフトボール大会in高崎」を戦うことになるが、まだまだこれも「通過点」。2年後の「オリンピック本番」へ向け、「最強の布陣」を編成すべく、ありとあらゆる可能性が探られ、試行錯誤が繰り返されることになる。

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