MEXICO
日本、予選リーグ第2戦の相手はメキシコ
メキシコの「エース」ダラス・エスコベド
「エース」ダラス・エスコベドともにチーム支えるダニエル・オトゥール
パワフルで思い切りの良い打線も破壊力抜群!
近年、急速に力をつけてきたメキシコ。今大会の「ダークホース」的存在
中南米のチームはノリが良く、調子に乗ったら手がつけられない……
オリンピック「初出場」ながら「メダル候補」。日本にとっても、このメキシコ戦が重要な一戦となる
来る7月21日(水)、新型コロナウイルスの影響で「1年延期」を余儀なくされていた「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」が、全競技に先駆け、福島県福島市・福島あづま球場で「開幕」を迎えることになる。
ここでは、日本の予選リーグの対戦順に従って、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」出場チームを紹介する。第2回は「福島ラウンド」2試合目にして日本にとって福島での「最後の試合」の対戦相手となるメキシコを紹介する。
ROASTER
(出場メンバー)
オリンピックでベンチ入りが許されるメンバーは15名。通常の国際大会に比べ、2名少ない(過去の世界選手権/現・ワールドカップ等は17名。ただし、オリンピックに関しては、アトランタ、シドニー、アテネ、北京の過去4大会、すべて今回と同じ15名となっている)。
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注目選手
メキシコの「エース」はダラス・エスコベド。2016年の「第15回世界女子選手権大会」、2018年の「第16回世界女子選手権大会」に出場し、いずれも「エース」として活躍。2019年の「アメリカ大陸予選」でも力投。メキシコの「オリンピック初出場」を勝ち獲る「立役者」となった。
2019年に来日、日本リーグ・1部の「豊田自動織機 シャイニングベガ」でプレーし、3年目のシーズンに入っている。2019年は10勝6敗・防御率1.14・奪三振153(投球回数:117回)、「新型コロナウイルス」の影響で「短縮シーズン」(前半戦が中止。試合数が例年の半分:22試合→11試合で実施)となった2020年は7勝4敗・防御率0.96・奪三振68(投球回数:72回2/3)、今シーズンも前半戦第5節までの11試合を終え、7試合に登板し、4勝3敗・防御率1.10・奪三振55(投球回数:51回)の成績を残している。昨シーズンは「最多勝」の個人タイトルを獲得、「ベストナイン」にも輝いている。
投球の大半は「ムービングファーストボール」。意識して、あるいは無意識の「ナチュラル」な変化を含め、打者の手元で微妙に動くボールを自在に操り、打者を打ち取っていく。決して大崩れすることのない安定感溢れるピッチングは、まさに「エース」の貫禄で、日本リーグで日本の打者と日常的に対戦し、日本の打者の「特徴」を熟知している点も「要警戒」といえるだろう。
その「エース」ダラス・エスコベドとともにメキシコ投手陣を支えるのが「左腕」ダニエル・オトゥール。2017年には「アメリカ代表」の一員として「World Cup of Softball Ⅻ」「日米対抗」「JAPAN CUP」に出場しており、日本とも対戦している。「World Cup of Softball Ⅻ」の予選リーグの日本との対戦では、先発し、1安打完封。「日米対抗」では3試合すべてに登板、第2戦で「勝利投手」となっている。「JAPAN CUP」では初戦のカナダ戦で「勝利投手」となったものの、「決勝」での日本との対戦では「敗戦投手」となってしまった。
2018年の「第16回世界女子選手権大会」に向け、同じ「左腕」のモニカ・アボット(2009年~現在、日本リーグ・トヨタ自動車 レッドテリアーズでプレー。日本リーグ3連覇を含む6回の優勝等、数々の国内タイトルをトヨタ自動車 レッドテリアーズにもたらした本格派サウスポー。2008年北京オリンピック銀メダリスト、2006年「第11回世界女子選手権大会」・2010年「第12回世界女子選手権大会」優勝)が「代表復帰」、キャット・オスターマン(2011年、日本リーグ・豊田自動織機でプレー。2004年アテネ・オリンピック金メダリスト、2006年「第11回世界女子選手権大会」・2010年「第12回世界女子選手権大会」優勝。「目の前でボールが消える」と形容されるほど切れ味鋭い変化球を武器としている)が「現役復帰」したこともあり、「メキシコ国籍」を選択し、「メキシコ代表」として「東京2020オリンピック」に出場することになる。
野手にもソフトボール強豪国・アメリカの「有名大学」「強豪大学」でプレーした経歴を持つ選手も多く、7月8日(木)に来日すると、「ホストタウン」(事前合宿地)広島県尾道市に向かうその足で日本が「第2次国内強化合宿」を行っている群馬県高崎市へ直行。翌9日(金)・10日の両日、日本と3試合の強化試合(テストマッチ)を行い、各種メディアに公開された第2戦では、日本が誇る「二枚看板」藤田倭から2本の本塁打を放つ等、8-0で圧勝。3試合で1勝2敗(0-8、8-0、5-3)ではあったものの、今大会の「ダークホース」に挙げられ、初出場ながら「メダル候補」の呼び声高い「実力」の片鱗を垣間見ることができた。
ROAD TO TOKYO
オリンピック出場権獲得まで
2019年8月25日~9月2日、カナダ・サレーで開催された「アメリカ大陸予選」には、カナダ(WBSC世界ランキング3位)、プエルトリコ(同4位)、メキシコ(同5位)、ブラジル(同14位)、ベネズエラ(同16位)、キューバ(同17位)、グアテマラ(同18位)、ドミニカ(同19位)、ペルー(同20位)、アルゼンチン(同25位)、バハマ(同39位)、英領バージン諸島(同57位)の12チームが参加。6チームずつがグループA・Bに分かれ、まずオープニングラウンド(1次リーグ)を実施。
グループBに振り分けられたメキシコは、グループB「ランキング最上位」の実力通り、初戦のペルー戦に8-0の5回コールド勝ちを収めると、続くドミニカ戦も9-1の5回コールド。続く英領バージン諸島戦は7-0の不戦勝、ベネズエラ戦は7-0の5回コールド、最終戦のブラジル戦も10-0の4回コールドで「負けなし」の5戦全勝。グループB1位で「スーパーラウンド」進出を決めた。
グループA・B上位3チームによる「スーパーラウンド」は「オープニングラウンド」同組の勝敗が持ち越されるため、カナダ、メキシコはすでに「2勝」のアドバンテージを持った状態での戦い(「オープニングラウンド」の同組で対戦したチームとは「スーパーラウンド」では対戦せず、その対戦成績が「スーパーラウンド」に持ち越される)。メキシコは「スーパーラウンド」の初戦でプエルトリコと対戦。2-0の完封勝利を収め、グループA1位のカナダとの「全勝対決」を迎えた。この試合では、「エース」ダラス・エスコベドが力投。3回表に1点を失いながらも粘り強いピッチングで味方打線の援護を待ち、5回裏に2点を挙げ、逆転に成功。最後までこのリードを守り切り、2-1で辛勝。最終戦を待たずにメキシコがオリンピック出場権獲得を確定させた。
※世界ランキングは大会開催時のものです。
2019 東京2020オリンピック アメリカ大陸予選
■オープニングラウンド(1次リーグ)グループA
グループA | カナダ | プエルトリコ | キューバ | グアテマラ | バハマ | アルゼンチン | 勝 | 敗 | 順位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カナダ | ☆ | ○ 3-0 |
○ 17-0 |
○ 19-0 |
○ 18-0 |
○ 7-0 |
5 | 0 | 1 |
プエルトリコ | ● 0-3 |
☆ | ○ 10-0 |
○ 13-0 |
○ 13-0 |
○ 7-0 |
4 | 1 | 2 |
キューバ | ● 0-17 |
● 0-10 |
☆ | ○ 15-0 |
○ 13-0 |
○ 7-0 |
3 | 2 | 3 |
グアテマラ | ● 0-19 |
● 0-13 |
● 0-15 |
☆ | ○ 9-4 |
○ 7-0 |
2 | 3 | 4 |
バハマ | ● 0-18 |
● 0-13 |
● 0-13 |
● 4-9 |
☆ | ○ 7-0 |
1 | 4 | 5 |
アルゼンチン | ● 0-7 |
● 0-7 |
● 0-7 |
● 0-7 |
● 0-7 |
☆ | 0 | 5 | 6 |
※上位3チームが「スーパーラウンド」に進出(同グループ内の試合結果は「スーパーランド」に持ち越す。アルゼンチンは出場をキャンセル(不戦敗扱いですべて●0-7)
■オープニングラウンド(1次リーグ)グループB
グループB | メキシコ | ブラジル | ベネズエラ | ペルー | ドミニカ | 英領バージン諸島 | 勝 | 敗 | 順位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
メキシコ | ☆ | ○ 10-0 |
○ 7-0 |
○ 8-0 |
○ 9-1 |
○ 7-0 |
5 | 0 | 1 |
ブラジル | ● 0-10 |
☆ | ○ 2-1 |
○ 5-0 |
○ 4-3 |
○ 7-0 |
4 | 1 | 2 |
ベネズエラ | ● 0-7 |
● 1-2 |
☆ | ○ 1-0 |
○ 7-3 |
○ 7-0 |
3 | 2 | 3 |
ペルー | ● 0-8 |
● 0-5 |
● 0-1 |
☆ | ○ 6-1 |
○ 7-0 |
2 | 3 | 4 |
ドミニカ | ● 1-9 |
● 3-4 |
● 3-7 |
● 1-6 |
☆ | ○ 7-0 |
1 | 4 | 5 |
英領バージン諸島 | ● 0-7 |
● 0-7 |
● 0-7 |
● 0-7 |
● 0-7 |
☆ | 0 | 5 | 6 |
※上位3チームが「スーパーラウンド」に進出(同グループ内の試合結果は「スーパーランド」に持ち越す。英領バージン諸島は出場をキャンセル(不戦敗扱い●0-7)
■スーパーラウンド
カナダ | メキシコ | プエルトリコ | ブラジル | キューバ | ベネズエラ | 勝 | 敗 | 順位 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
カナダ | ☆ | ● 1-2 |
○ 3-0 |
○ 7-0 |
○ 17-0 |
○ 11-0 |
4 | 1 | 2 |
メキシコ | ○ 2-1 |
☆ | ○ 2-0 |
○ 10-0 |
○ 7-0 |
○ 7-0 |
5 | 0 | 1 |
プエルトリコ | ● 0-3 |
● 0-2 |
☆ | ○ 7-0 |
○ 10-0 |
○ 4-1 |
3 | 2 | 3 |
ブラジル | ● 0-7 |
● 0-10 |
● 0-7 |
☆ | ○ 6-5 |
○ 2-1 |
2 | 3 | 4 |
キューバ | ● 0-17 |
● 0-7 |
● 0-10 |
● 5-6 |
☆ | ○ 2-1 |
1 | 4 | 5 |
ベネズエラ | ● 0-11 |
● 0-7 |
● 1-4 |
● 1-2 |
● 1-2 |
☆ | 0 | 5 | 6 |
※「オープニングラウンド」同グループ内の試合結果は「スーパーラウンド」に持ち越す。1位・メキシコ、2位・カナダはオリンピック出場権獲得
日本との過去の対戦
メキシコはオリンピック「初出場」のため、過去、オリンピック4大会では、日本とは対戦していない。世界選手権(現・ワールドカップ)は1974年「第3回世界女子選手権大会」が初めての出場。予選リーグ敗退(予選リーグ・グループⅠで2勝5敗の7位。日本と同組で12-0で日本が勝利したとの記録が残っている)となっている。その後は2010年「第12回世界女子選手権大会」まで大会不参加。出場の記録すらなく、2012年「第13回世界女子選手権大会」で久々の出場を果たすものの、予選リーグ・セクションBで0勝7敗の最下位(日本と同組で対戦結果は9-0の5回コールドで日本が勝利している)となっている。
メキシコが「躍進」を遂げるのは、「エース」ダラス・エスコベドがチームに加わった2016年「第15回世界女子選手権大会」から。同大会では「予選ラウンド」Pool・Cで「上位進出の常連」オーストラリアと同組となり、ダラス・エスコベドの力投でオーストラリアに延長タイブレークの「死闘」の末、2-0の完封勝ち。大方の予想を裏切り、「予選ラウンド」1位通過を果たすと、決勝トーナメント進出をかけた「チャンピオンシップラウンド」でも3戦全勝の1位で通過。決勝トーナメントの初戦で日本と対戦することになった。この試合でもダラス・エスコベドが好投。4回まで日本打線を無得点に抑え込んだが、日本が5回裏、市口侑果の先制ホームラン等で2点を挙げ、先発・藤田倭がメキシコ打線をわずか2安打に封じ、2-0の完封勝利を収めている。日本に敗れたメキシコは「敗者復活戦」に回り、カナダに0-5と完敗。決勝トーナメントでは1勝も挙げられず、5位で大会を終えた。
2018年、千葉県下4市(千葉市・習志野市・成田市・市原市)で開催された「第18回世界女子選手権大会」では、予選リーグ・グループAに振り分けられ、5勝3敗の3位で決勝トーナメント進出。
決勝トーナメントでは、予選リーグ・グループB4位のイタリアに1-0の完封勝ち。しかし、続く予選リーグ・グループA2位のオーストラリアとの対戦では1-2のサヨナラ負け。またしても5位に終わったが、翌年の「アメリカ大陸予選」では「全勝」の1位で「初」のオリンピック出場権を獲得。「東京2020オリンピック」では大会の「ダークホース」「メダル候補」に挙げられるまでのチームに成長している。
予選リーグ第2戦の対戦相手となるメキシコは、「13年越し」となる2大会連続の「金メダル獲得」をめざす日本にとっても「侮れない相手」であり、予選リーグ「最大の山場」、今大会のメダルの行方を左右する「大一番」となることは間違いない。この「福島ラウンド」の2試合を「連勝」で乗り切れるか否かに「日本の命運」がかかっている。
メキシコ オリンピック過去4大会成績
大会名 | 金メダル | 銀メダル | 銅メダル | 第4位 | 第5位 | 第6位 | 第7位 | 第8位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1996 アトランタ | アメリカ | 中国 | オーストラリア | 日本 | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | オランダ | プエルトリコ |
2000 シドニー | アメリカ | 日本 | オーストラリア | 中国 | イタリア | ニュージーランド | キューバ | カナダ |
2004 アテネ | アメリカ | オーストラリア | 日本 | 中国 | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | ギリシャ | イタリア |
2008 北京 | 日本 | アメリカ | オーストラリア | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | 中国 | ベネズエラ | オランダ |
※メキシコは過去オリンピック出場なし。東京2020オリンピックが初出場
メキシコ 世界選手権(現・ワールドカップ 成績(1994~2018)
大会名 | 優勝 | 準優勝 | 第3位 | 第4位 | 第5位 | 第6位 | 第7位 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1994 第8回世界選手権 (アトランタ・オリンピック1次予選) | アメリカ | 中国 | オーストラリア | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | ニュージーランド | 日本 オランダ |
不参加 |
1998 第9回世界選手権 (シドニー・オリンピック1次予選) | アメリカ | オーストラリア | 日本 | 中国 | カナダ | イタリア | チャイニーズ・タイペイ ベネズエラ |
不参加 |
2002 第10回世界選手権 (アテネ・オリンピック1次予選) | アメリカ | 日本 | チャイニーズ・タイペイ | 中国 | オーストラリア ニュージーランド |
イタリア プエルトリコ |
不参加 | |
2006 第11回世界選手権 (北京オリンピック1次予選) | アメリカ | 日本 | オーストラリア | 中国 | カナダ | イタリア | ベネズエラ チャイニーズ・タイペイ |
不参加 |
2010 第12回世界選手権 | アメリカ | 日本 | カナダ | 中国 | ベネズエラ オーストラリア |
チャイニーズ・タイペイ オランダ |
不参加 | |
2012 第13回世界選手権 | 日本 | アメリカ | オーストラリア | カナダ | 中国 オランダ |
チャイニーズ・タイペイ プエルトリコ |
予選リーグ敗退 (0勝7敗) |
|
2014 第14回世界選手権 | 日本 | アメリカ | オーストラリア | カナダ | チャイニーズ・タイペイ オランダ |
中国 ニュージーランド |
不参加 | |
2016 第15回世界選手権 | アメリカ | 日本 | カナダ | オランダ | メキシコ ベネズエラ |
ニュージーランド 中国 |
||
2018 第16回世界選手権 | アメリカ | 日本 | カナダ | オーストラリア | プエルトリコ メキシコ |
オランダ イタリア |
メキシコ代表チーム ROASTER
No. | 守備 | 氏名 |
---|---|---|
1 | 投手 | Dallas Escobedo |
2 | 〃 | Sierra Hyland |
3 | 〃 | Taylor McQuillin |
4 | 〃 | Danielle O'toole |
5 | 捕手 | Sashel Palacios |
6 | 内野手 | Chelsea González |
7 | 〃 | Amanda Sánchez |
8 | 〃 | Anissa Urtez |
9 | 〃 | Victoria Vidales |
10 | 外野手 | Stefanía Aradillas |
11 | 〃 | Suzannah Brookshire |
12 | 〃 | Tatyana Forbes |
13 | 〃 | Nicole Rangel |
14 | 〃 | Sydney Romero |
15 | ユーティリティー (オールラウンド) |
Bryttany Cervantes |