U
S
A
日本、予選リーグ最終戦の相手は「宿敵」アメリカ
「金メダル」で自らのキャリアを締めくくるために……「現役復帰」を決意したキャット・オスターマン
アメリカの「Wエース」にして「二枚看板」モニカ・アボット
打線の「中核」を担うバレリエ・アリオト。「チームリーダー」として信望も厚い
2018年「第16回世界女子選手権大会」を制し、オリンピック出場権獲得!
1996年アトランタ・オリンピックで金メダル! オリンピック「初代王者」に!!
2000年シドニー・オリンピックは日本との「死闘」を制し、2大会連続の金メダル獲得!
2004年アテネ・オリンピックでは3大会連続の金メダルに輝く
予選リーグ最終戦はいったいどんな一戦になるのか……「宿命の対決」に注目が集まる
来る7月21日(水)、新型コロナウイルスの影響で「1年延期」を余儀なくされていた「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」が、全競技に先駆け、福島県福島市・福島あづま球場で「開幕」を迎えることになる。
ここでは、日本の予選リーグの対戦順に従って、「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」出場チームを紹介する。第5回は予選リーグ第5戦(最終戦)の対戦相手となる「宿敵」アメリカの注目選手と「激闘の歴史」を紐解いていく。
ROASTER
(出場メンバー)
オリンピックでベンチ入りが許されるメンバーは15名。通常の国際大会に比べ、2名少ない(過去の世界選手権/現・ワールドカップ等は17名。ただし、オリンピックに関しては、アトランタ、シドニー、アテネ、北京の過去4大会、すべて今回と同じ15名となっている)。
アメリカ代表/オリンピック代表選手の詳細はこちら
注目選手
投手陣の中心は、このオリンピックのために「現役復帰」してきたキャット・オスターマン。2004年のアテネ・オリンピックの金メダリストであり、世界選手権でも2006年、2010年と二度「優勝」、輝かしい成績を残しているが、唯一の「悔い」、消すことのできない「苦い記憶」が2008年の北京オリンピック「ゴールドメダルゲーム」(決勝)、日本戦の「敗戦」である。3回表、二死三塁から狩野亜由美の「内野安打」で先制を許し、4回表には山田恵里にソロホームランを浴び、2失点で途中降板。敗戦投手となってしまった。輝かしいキャリアの中に残る唯一の「黒星」、自らのキャリアを「金メダル」で締めくくるために、2015年に一度は現役を「引退」しながら、この「東京2020オリンピック」に照準を定め、カムバックしてきた。その自らが描く「シナリオ通り」に事が運ぶのか、否か、注目が集まる。
キャット・オスターマンと並んで「Wエース」「二枚看板」としてアメリカの「強さの源」となっているのがモニカ・アボット。2009年に来日して以来、日本リーグ・トヨタ自動車 レッドテリアーズでプレーし、日本リーグ3連覇を含む6回の優勝をもたらし、数々の個人タイトルを獲得する等、「絶対的エース」として君臨してきた。そのモニカ・アボットが唯一、手にしていないのが、オリンピックの「金メダル」。世界選手権では、2006年、2010年、2018年と三度の優勝を経験し、「世界の頂点」に立っているが、オリンピックでは2008年の北京オリンピック「ゴールドメダルゲーム」(決勝)で日本に敗れ、「エース」キャット・オスターマンをリリーフして登板したものの、7回表、決定的な3点目を献上し、「銀メダル」に甘んじた。今回のオリンピックでは、その「リベンジ」に燃えている。
打線の中心は、バレリエ・アリオト。見た目はアスリートというより、「貴婦人」といった優雅な佇まいだが、「常勝」アメリカの「キャプテン」としてチームをまとめ、引っ張り、「主砲」として「強力打線」の中核を担っている。選球眼が抜群に良く、決してボール球に手を出さない。その一方、狙った「獲物」は決して逃さず、「一撃」で仕留める狡猾さと決定力を兼ね備えている。2015年・2016年の2シーズンにわたり、日本リーグ・Honda Revertaでプレーし、2015年は打率3割1分6厘・本塁打7・打点22、2016年は打率2割6分・本塁打4・打点10の成績を残し、2015年にはチームを「初」の決勝トーナメントへと導き、「DP」として「ベストナイン」も獲得している。オリンピック競技から「除外」されていた「不遇の時代」のアメリカを支え続けてきた選手であり、2012年・2014年の世界選手権では日本の「連覇」を許す「屈辱」も味わったが、2016年に「王座」を奪還。2018年には「連覇」を達成し、「東京2020オリンピック」出場権を獲得。待ち望んでいたオリンピックという「夢の舞台」で「金メダル獲得」を狙っている。
2018年「第16回世界女子選手権大会の詳細はこちら
ROAD to Tokyo
オリンピック出場権獲得まで
アメリカは、2018年8月2日~12日に千葉県下四市(千葉市・成田市・習志野市・市原市)で開催された「第16回世界女子選手権大会」で優勝。「予選リーグ・グループA」を7戦全勝、得点57・失点3、初戦のメキシコ戦以外はすべて「コールド勝ち」の圧倒的強さで決勝トーナメントへ駒を進め、決勝トーナメントでも初戦で「予選リーグ・グループB」2位のオーストラリアを3-1で破り、「予選リーグ・グループB」1位の日本と「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、「全勝対決」。延長8回タイブレークの末、日本に4-3のサヨナラ勝ちを収めると、「ゴールドメダルゲーム」(決勝)でも日本を相手に延長10回タイブレークの「死闘」を演じ、2点差をひっくり返し7-6の逆転サヨナラ勝ち。世界選手権「連覇」、10回目の優勝を決めると同時に、「いの一番」でオリンピック出場権を獲得した。
その後、アメリカは2004年のアテネ・オリンピックの金メダリストであり、左腕からの切れ味鋭いライズ、ドロップを武器とする「伝説のエース」キャット・オスターマンを「現役復帰」させ、代表に呼び戻す等、日本に奪われた「金メダル」を取り戻すべく、準備万端。日本の「13年越し」となる2大会連続の金メダル獲得を阻止すべく、「万全の体制」でオリンピックに臨んでくる。
日本との過去の対戦
アメリカとのオリンピックでの対戦は、1996年のアトランタ・オリンピックでは予選リーグ第3戦で対戦し、1-6の完敗。2000年のシドニー・オリンピックでも同じく予選リーグ第3戦で対戦し、延長11回の「死闘」の末、2-1で勝利。日本はそのまま「全勝」で「ゴールドメダルゲーム」(決勝)まで突っ走ったものの、4勝3敗の4位から傷だらけになりながらも勝ち上がってきたアメリカとの「再戦」に、延長8回サヨナラ負け。1-2で敗れ、「限りなく金メダルに近い銀メダル」と語り継がれる「名勝負」を演じた。2004年のアテネ・オリンピックでは、またしても予選リーグ第3戦で対戦。延長8回タイブレークの末、0-3の完封負け。キャット・オスターマンにわずか1安打、11三振と抑え込まれている。2008年の北京オリンピックでは、予選リーグ第4戦で対戦し、4本の本塁打を浴び、0-7の5回コールド負け。アメリカが7戦「全勝」の1位、日本が6勝1敗の2位で勝ち上がった決勝トーナメントでは、初戦で「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、対戦。延長にもつれ込む「熱戦」を演じたが、延長9回表、「エース」上野由岐子がアメリカの「主砲」クリストル・ブストスにスリーランを浴びる等、1-4で敗れた。「敗者復活戦」に回った日本は、「ブロンズメダルゲーム」(3位決定戦)でオーストラリアとの延長12回に及ぶ「死闘」を4-3で制し、アメリカが待ち受ける「ゴールドメダルゲーム」(決勝)へと勝ち上がった。金メダルをかけた「ゴールドメダルゲーム」(決勝)では、狩野亜由美の適時内野安打、山田恵里の本塁打、藤本索子の「執念」のヒットエンドランで3点を挙げ、「エース」上野由岐子がアメリカ打線の反撃をクリストル・ブストスの本塁打による1点のみに抑え、3-1で勝利を収め、「悲願」の金メダルを獲得している。
世界選手権では、「初対戦」となった1965年の「第1回大会」では、予選リーグで0-2、1-7と2敗(ダブルラウンドロビン方式/2回総当たりのリーグ戦で予選リーグが実施された)、決勝トーナメントでも「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけた「ブロンズメダルゲーム」(3位決定戦)で0-5と完敗。日本は3位に終わり、アメリカも「ゴールドメダルゲーム」(決勝)でオーストラリアに0-1で敗れている。1970年に大阪で開催された「第2回大会」では、予選リーグでは0-1で敗れたものの、決勝トーナメントでは「ゴールドメダルゲーム」(決勝)で日本が1-0の完封勝利を収め、初優勝を飾っている(この大会のアメリカは「フル代表」ではなかったとの説もある)。1974年の「第3回大会」では、日本、アメリカとも予選リーグを「全勝」で勝ち上がり、決勝トーナメントの「ゴールドメダルゲーム」(決勝)で顔を合わせ、アメリカが3-0の完封勝ち。日本の「連覇」を阻止し、アメリカが世界選手権「初優勝」を飾っている。このときのメンバーには宇津木妙子氏(現・日本ソフトボール協会副会長)の名前も見られる。
1978年の「第4回大会」、1982年の「第5回大会」は、日本が大会に参加しなかったため、1986年「第6回大会」まで対戦がなく、予選リーグで延長8回、0-4で敗れ、日本は予選リーグ4勝7敗で決勝トーナメントに進むことができず、予選リーグ敗退。アメリカが優勝を飾り、ここからアメリカの「無敵」の快進撃が始まり、2010年の「第12回大会」まで大会「7連覇」を飾ることになる。
1990年の「第7回大会」では予選リーグで対戦し、0-2で敗れ、6勝3敗のセクション3位で決勝トーナメントへ進めず、予選リーグ敗退。アメリカが「連覇」を達成した。1994年の「第8回大会」では予選リーグ別グループとなり、対戦なし(日本7位、アメリカ優勝:3連覇)。1998年の「第9回大会」では、予選リーグ別グループで、「グループⅠ」1位のアメリカと「グループⅡ」2位の日本は決勝トーナメント初戦で対戦。延長9回に及ぶ「熱戦」を演じたが、0-1で敗れた。その後、日本はイタリアに2-0、中国に3-0で勝ち、一方、アメリカは日本に勝った後、オーストラリアに1-2で敗れ、こちらも「敗者復活戦」へ。「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、「ブロンズメダルゲーム」(3位決定戦)で対戦し、日本は0-4で完敗。「ゴールドメダルゲーム」(決勝)に進出したアメリカは、オーストラリアと「再戦」。雨による中断で「深夜の決戦」となった「伝説の一戦」を制し、1-0の完封勝ち。大会「4連覇」を達成した。
2002年の「第10回大会」も予選リーグは別グループ。日本、アメリカともに「全勝」で勝ち上がった決勝トーナメントでは、「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、激突。日本は延長9回、0-1のサヨナラ負けを喫し、「敗者復活戦」を勝ち上がって、再びアメリカと相まみえた「ゴールドメダルゲーム」(決勝)でも0-1の完封負け。アメリカの大会「5連覇」を許してしまった。
2006年の「第11回大会」も日本、アメリカはともに予選リーグ「全勝」。決勝トーナメントで「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、激突。日本が3-1で勝利を収め、「敗者復活戦」に回ったアメリカを待ち受ける形となったが、「ゴールドメダルゲーム」(決勝)では、0-0で迎えた6回表、好投の「エース」上野由岐子がジェシカ・メンドーサ、クリストル・ブストスに本塁打を浴び、3点を奪われ、打線もキャット・オスターマンに1安打・14三振と完全に封じ込まれ、0-3で完敗。アメリカが大会「6連覇」を達成した。
2010年の「第12回大会」も予選リーグは別グループ。3大会連続予選リーグ「全勝」で決勝トーナメントに勝ち上がり、「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、対戦したが、0-4の完敗。日本はエース・上野由岐子「不在」の状態(この大会には出場していない)で「敗者復活戦」を勝ち上がり、アメリカの待つ「ゴールドメダルゲーム」(決勝)まで辿り着いたが、0-7の5回コールド負け。アメリカの大会「7連覇」を止めることができなかった。
2012年(オリンピック競技から「除外」されたことで世界選手権が「4年に一度」から「2年に一度」の開催となった)の「第13回大会」は、予選リーグ別グループを日本、アメリカ両チームが「全勝」で勝ち上がり、「恒例行事」のように決勝トーナメントで「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、対戦。ここではアメリカが3-1で勝利を収めたものの、「敗者復活戦」を勝ち上がった日本が「ゴールドメダルゲーム」(決勝)で待ち受けていたアメリカをついに撃破! 延長10回に及ぶ死闘を制し、2-1で勝利を収め、42年ぶりの世界選手権「優勝」。アメリカの大会「8連覇」を阻止し、「王座奪還」を果たした。
2014年の「第14回大会」は初めてヨーロッパで開催され、日本が予選リーグ・決勝トーナメントを通じて「無敗」の「完全優勝」。アメリカとは決勝トーナメントで二度対戦し、6-1、4-1と圧勝。「連覇」を達成した(キャット・オスターマン、モニカ・アボットは、2012年の「第13回大会、2014年の「第14回大会」には出場していない」。
2016年の「第15回大会」は、日本、アメリカとも予選リーグは「全勝」。決勝トーナメントで「ゴールドメダルゲーム」(決勝)進出をかけ、対戦し、アメリカが4-3で競り勝ち、日本が「敗者復活戦」を勝ち上がって、「ゴールドメダルゲーム」(決勝)で「再戦」を果たしたものの、3-7で敗れ、「3連覇」はならず、アメリカが「王座奪還」を果たしている(日本・上野由岐子は右膝手術のため、大会を欠場。アメリカのキャット・オスターマンは前年(2015年)に現役を引退。モニカ・アボットは大会不参加)。
2018年の「第16回大会」は「ROAD to Tokyo」で記載の通り、アメリカが日本との2試合とも「延長戦」にもつれ込む「死闘」を制し、「連覇」を達成。「東京2020オリンピック」出場権獲得を果たしている(アメリカはこの大会からモニカ・アボットが代表復帰。キャット・オスターマンはこの大会の後、「現役復帰」し、代表に呼び戻されている)。
予選リーグ最終戦となる第5戦は、今までの「図式」通りであれば、日本、アメリカともに「全勝」で、すでに「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出を決めており、勝敗はさほど意味のないものとなる。
互いに、次に控える「大一番」へ向け、微妙な「駆け引き」や水面下での「心理戦」が行われることになるはずだが……この「コロナ禍」での大会では、今までの「常識」は通用せず、誰も考えもしなかったような「想定外のこと」が起こる可能性も否定できない。過去4大会のような、ソフトボール独特の「ページシステム」と今大会の試合方式は異なり、予選リーグ「2位以上」でなければ、その時点で「金メダル」の可能性は消滅してしまう。それだけ予選リーグの1試合1試合の持つ「意味」「重み」が増しているだけに、もし……どちらかが「全勝」ではなく、この対戦を迎えるようなことがあれば「消化試合」は一転、とてつもなく「大事な試合」となる可能性もある。
アメリカ オリンピック過去4大会成績
大会名 | 金メダル | 銀メダル | 銅メダル | 第4位 | 第5位 | 第6位 | 第7位 | 第8位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1996 アトランタ | アメリカ | 中国 | オーストラリア | 日本 | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | オランダ | プエルトリコ |
2000 シドニー | アメリカ | 日本 | オーストラリア | 中国 | イタリア | ニュージーランド | キューバ | カナダ |
2004 アテネ | アメリカ | オーストラリア | 日本 | 中国 | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | ギリシャ | イタリア |
2008 北京 | 日本 | アメリカ | オーストラリア | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | 中国 | ベネズエラ | オランダ |
アメリカ 世界選手権(現・ワールドカップ 成績(1994~2018)
大会名 | 優勝 | 準優勝 | 第3位 | 第4位 | 第5位 | 第6位 | 第7位 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1994 第8回世界選手権 (アトランタ・オリンピック1次予選) | アメリカ | 中国 | オーストラリア | カナダ | チャイニーズ・タイペイ | ニュージーランド | 日本 オランダ |
オリンピック出場チームを決定するため、5位決定戦を実施 |
1998 第9回世界選手権 (シドニー・オリンピック1次予選) | アメリカ | オーストラリア | 日本 | 中国 | カナダ | イタリア | チャイニーズ・タイペイ ベネズエラ |
オリンピック出場チームを決定するため、5位決定戦を実施 |
2002 第10回世界選手権 (アテネ・オリンピック1次予選) | アメリカ | 日本 | チャイニーズ・タイペイ | 中国 | オーストラリア ニュージーランド |
イタリア プエルトリコ |
||
2006 第11回世界選手権 (北京オリンピック1次予選) | アメリカ | 日本 | オーストラリア | 中国 | カナダ | イタリア | ベネズエラ チャイニーズ・タイペイ |
オリンピック出場チームを決定するため、5位決定戦を実施 |
2010 第12回世界選手権 | アメリカ | 日本 | カナダ | 中国 | ベネズエラ オーストラリア |
チャイニーズ・タイペイ オランダ |
||
2012 第13回世界選手権 | 日本 | アメリカ | オーストラリア | カナダ | 中国 オランダ |
チャイニーズ・タイペイ プエルトリコ |
||
2014 第14回世界選手権 | 日本 | アメリカ | オーストラリア | カナダ | チャイニーズ・タイペイ オランダ |
中国 ニュージーランド |
||
2016 第15回世界選手権 | アメリカ | 日本 | カナダ | オランダ | メキシコ ベネズエラ |
ニュージーランド 中国 |
||
2018 第16回世界選手権 | アメリカ | 日本 | カナダ | オーストラリア | プエルトリコ メキシコ |
オランダ イタリア |