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「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」
オープニングラウンド(予選リーグ)横浜ラウンド総括

「横浜ラウンド」の初戦・イタリア戦に先発した藤田倭
写真提供:読売新聞社 撮影:吉野拓也

イタリア戦で先制ツーランホームランを放った「主砲」山本優
写真提供:読売新聞社 撮影:吉野拓也

イタリア戦はホームラン「2発」で5-0と快勝! 
写真提供:読売新聞社 撮影:吉野拓也

カナダ戦、7回表からリリーフし、6連続三振と好投した後藤希友
写真提供:読売新聞社 撮影:吉野拓也

カナダ戦は「キャプテン」山田恵里が劇的なサヨナラ安打を放つ!
写真提供:読売新聞社 撮影:吉野拓也

2008年の北京オリンピックで「悲願」の金メダルを手にした日本 13年の時を越え、「エース」上野由岐子が再びその舞台に……

2008年の北京オリンピック「決勝」でオスターマンから決勝点となるホームランを放った山田恵里。13年後の「対決」はどんな結果に!?

「世界ランキング1位」の日本男子ソフトボールが全面協力 男子トップレベルのピッチャーを相手に打ち込みを続けてきた

VRを活用した練習も早くから取り入れ、練習方法も日々「進化」させ、コロナ禍にあっても対策は十分!?

あの「感動」「感激」を……もう一度!!!

日本、4勝1敗の2位で「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出!
銀メダル以上が確定!!

 7月21日(水)に全競技に先駆け、「開幕」を迎えた「第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ソフトボール競技」は、翌22日(木)に福島県福島市・福島あづま球場での「福島ラウンド」を終え、23日(金)の「開会式」を挟み、7月24日(土)~26日(月)の3日間、神奈川県横浜市・横浜スタジアムに「戦いの舞台」を移し、「横浜ラウンド」が実施された。
 日本はイタリア、カナダに「連勝」し、まず「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出、「銀メダル以上」が確定。最終戦のアメリカとの「全勝対決」には敗れたものの、通算成績4勝1敗の2位で「ゴールドメダルマッチ」(決勝)に駒を進め、「5戦全勝」の1位・アメリカと「金メダル」をかけ、戦うことになった。
 ここでは「オープニングラウンド」(予選リーグ)最後の3日間、「横浜ラウンド」での戦いを振り返り、総括する。

ホームラン2発! またしても後藤希友が好リリーフ!!
5-0で快勝したイタリア戦

 「福島ラウンド」でオーストラリア、メキシコに「連勝」した日本は、「横浜ラウンド」の初戦、イタリアと対戦。イタリアは「福島ラウンド」で「連敗」を喫したものの、アメリカに0-2、オーストラリアに0-1と「予想以上」の試合内容・健闘を見せている。

 日本は立ち上がり、イタリアの「18歳」の先発投手・アレッシア・ラカテナに手を焼き、3回までノーヒット。日本は「福島ラウンド」のアメリカ戦、オーストラリア戦で敗れたとはいえ、好投を見せていた「エース」グレタ・チェケッティの先発を「予想」していたこともあってか、完全に抑え込まれてしまった。

 日本の「先発」は、スターティングメンバーの発表時点では、メキシコ戦で「神懸かり」的なリリーフを見せ、一躍「時の人」となり、ネット・SNS上では、「神」とまで崇め奉られている後藤希友の名前が記入されていたが、初回の守りにつくと同時に投手交代。5番・DP(指名選手/基本的には「打撃専門」の選手)に起用されていた「驚異の二刀流」藤田倭がFP(フレックスプレイヤー/基本的には「守備専門」の選手)・後藤希友のピッチャーの守備を兼務(DPは基本的には「打撃専門」の選手だが、FPを含め他の選手の守備を「兼務」して出場することができる。この場合、守備を「兼務」された選手は守るポジションがなくなるため、DPに代わって「打撃専門選手」(OPO/オフェンシブ・プレイヤー・オンリー)となる)し、「実質的な先発投手」となって試合をスタートさせた。これは後藤希友の「勢い」以上に、これまでにも世界選手権をはじめ、数々の国際大会を経験してきた藤田倭の「経験と実績」を買っての起用と考えられる。
 その藤田倭は初回、先頭打者にセンター前に運ばれ、犠打、レフトフライで二死ながら三塁まで走者を進められたが、4番打者を空振り三振に斬って取り、ピンチを脱出。続く2回裏は三者凡退に抑え、このままリズムに乗るかと思われた。しかし……3回裏、先頭打者に右中間を破るツーベースを浴びたところで、DP・藤田倭のピッチャーの守備の兼務を解除。DP・藤田倭は本来の「打撃専門」の選手に戻り、FP・後藤希友がピッチャーとして「再出場」(ソフトボールではスターティングプレイヤーであれば一度に限り「再出場」することができる。後藤希友は「FP」のスターティングプレイヤーであり、DPの藤田倭がピッチャーの守備を「兼務」して登板した時点で、たとえ1球も投げていなくても、いったん試合から退いたことになり、この時点での出場は「再出場」となる)させ、登板させた。
 後藤希友は後続を空振り三振、セカンドゴロ、ショートゴロに打ち取り、無失点でピンチを切り抜け、メキシコ戦に続く「好リリーフ」を見せた。

 この後藤希友の「好リリーフ」が試合の流れを変え、その直後の4回表、この回先頭の原田のどかが四球を選び、出塁すると、一死後、「主砲」山本優に右中間スタンドへ突き刺すツーランホームランが飛び出し、2点を先制した。
 終盤6回表には、内藤実穂、山本優の連打で一死一・三塁の追加点のチャンスを作ると、「驚異の二刀流」藤田倭が「3戦連発」となるスリーランホームランをレフトスタンドへ豪快に叩き込み、決定的な3点を追加。イタリアの息の根を止めた。
 守っては、3回裏、無死二塁の場面で登板した後藤希友が5イニングを投げる「ロングリリーフ」。被安打1・四死球3・奪三振9の「力投」でイタリア打線に最後まで得点を許さず、5-0と快勝! 開幕から「無傷」の3連勝を飾った。

 4回表の「主砲」山本優は「右方向」へも「長打」を打てる「山本優らしさ」を感じさせる「一発」であり、膠着状態にあったチームに「喝」を入れてくれた。「ここで一本!」というときに打ってくれる、まさに「主砲」の面目躍如、その「存在感」を発揮する「一発」だった。
 6回表の藤田倭の「3戦連発」の一発は、これも「藤田倭らしい」レフトスタンドへ豪快に運ぶ「一発」。「投打二刀流」の藤田倭としては、後藤希友という「新星」が彗星の如く現れたことで、大会前に期待されていた「上野由岐子に次ぐ存在」の役割を持っていかれてしまい、忸怩たる思いがあるかもしれないが、打撃面で「お釣りがくる」ほどの活躍を見せている。

 その一方で、気になる点もあった。まず初回の守りで一死二塁からレフトフライで二塁走者がタッチアップ。三塁進塁を許してしまった場面だ。確かにレフト・山崎早紀の頭上を襲う難しい当たりではあったのだが、レフトへの当たりで二塁走者のタッチアップを許してしまったプレーは「世界一」と評される日本の守備においては「あってはならない」プレーだった。当然のことながら走者二塁と走者三塁では、バッテリーや内野手にかかる「プレッシャー」が違ってくる。「福島ラウンド」福島あづま球場も、この「横浜ラウンド」の横浜スタジアムも「人工芝」のグラウンドでイレギュラーの心配はない。だが、逆に球足は速く「強襲ヒット」や高いバウンドの「内野安打」の可能性は高くなる。バッテリーも走者が三塁にいれば、ワンバウンドが考えられる低めのドロップが使いにくくなる等、走者二塁に比べ三塁に走者を置くことで失点の「リスク」が高まり、選択できるプレーにも「制約」が出てきてしまう。
 特に、藤田倭が今大会初登板であったことを考えると、少しでも「リスク」を排除し、心理的な負担も軽減できるよう、守備陣が盛り立てていかなければならない場面だった。
 また、攻撃面でも3回表、一死二塁で二塁走者・川畑瞳が目の前の三遊間の当たりでありながら、スタートを切ってしまい、三塁タッチアウトとなってしまった。これもまだ両チーム無得点で、日本としても初めて「得点圏」に走者を送った場面であったこと、次の打者がこの試合「1番」に起用された山田恵里であったこと等を併せ考えれば、無理をする場面ではなかった。セオリー的にも、三遊間の当たりは「抜けてから」スタート切れば良かったケースであり、そうでなければ一塁への送球の間に三塁を狙う選択肢もあったはずである。あるいは、打球を処理したショートの注意を引きつけ、打者走者の渥美万奈が一塁へ到達するまでの「時間稼ぎ」をし、あわよくば一・二塁、一・三塁とチャンスを広げるような「したたかさ」を見せてほしかった。打球が来たので反射的にスタートしてしまいました……では、あまりにも「お粗末」だし、この後続く、カナダ、アメリカとの「メダルをかけた一戦」では、こういった走塁ミスが命取りになりかねない。このレベルの試合では、わずかな「ミス」が勝負を分ける。「ミス」したチームから敗れていく……そう肝に銘じて一つひとつのプレーに「全力」を尽くすことはもちろん、絶対に自ら崩れていくような試合をしてはならない。

最終戦をまたずに
「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出!
「銀メダル以上」が確定!!

 「横浜ラウンド」第2戦のカナダ戦は、勝てば「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出、「銀メダル以上」が確定する「大一番」となった。対戦相手のカナダもここまで2勝1敗で、この日本戦に勝てば「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出の可能性もあるとあって、立ち上がりから緊迫した試合展開となった。

 日本の先発は「エース」上野由岐子。序盤から安定したピッチングを見せ、2回裏には金属バットを真っ二つにへし折る場面も……。5回表に、この回の先頭打者にセンターオーバーのツーベースを浴び、一死三塁のピンチを招く場面もあったが、落ち着いて後続を断ち、カナダに得点を許さない。

 一方、日本打線もチェンジアップを多投し、小刻みな投手リレーで目先を変えてくるカナダ投手陣を打ちあぐみ、両チームゼロ行進。0-0のまま、試合は終盤を迎えた。

 日本は7回表から、今大会「売り出し中」の後藤希友を投入。7回表、延長タイブレークに入った8回表と打者6人をすべて「三振」に斬って取る「奪三振ショー」を繰り広げ、カナダ打線に得点を許さない。

 打線もようやく投手陣の「力投」に応える。延長8回裏、タイブレークの走者を手堅く送ると、カナダが「満塁策」を取り、二者連続の「故意四球」。この目の前の「満塁策」に燃えた「キャプテン」山田恵里が「意地」のサヨナラタイムリーを放ち、熱戦にピリオド。劇的な勝利で最終戦を待たずに「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出と「銀メダル以上」を確定させた。

 この試合の先発・上野由岐子は「さすが!」のピッチング。2回表、一死一塁では相手打者の金属バットを真っ二つにへし折る等、「剛球健在」をアピール! その一方で打者の手元で微妙に変化させるボールを自在に操る「進化形」のピッチングも披露し、6回を無失点。「エース」の貫禄を見せると同時に「先発」としての「役割」をしっかりと果たして見せた。7回表、この回の先頭打者がセンターオーバーの二塁打を含む2安打を放ち、唯一、上野由岐子にタイミングの合っていたジェニファー・サリングで、しかも「左打者」ということもあって「左腕」後藤希友にマウンドを譲ったが、まだまだ「余力」は残しての降板だった。
 その「エース」からしっかりと「バトン」を受け継ぎ、今大会の話題をさらっている「ニュースター」後藤希友が7回表、延長タイブレークに入った8回表と、対戦した打者「すべて」を三振に斬って取る「6連続三振」の「完璧」「圧巻」のピッチングで、日本に試合の「流れ」を引き寄せて見せた。

 この二人の異なるタイプのピッチャーを見事にリードしたキャッチャー・我妻悠香の働きも見逃せない。「横浜ラウンド」に入って、前日のイタリア戦、この日のカナダ戦のテレビ解説を務めた元・日本代表の山根佐由里氏(2010年、2014年、2016年と世界選手権3回出場。2014年世界選手権「連覇」のメンバー。日本リーグの「連勝」(42連勝)記録保持者)もそのリードを「絶賛」。特に今大会「急成長」「大注目」の後藤希友の特徴・良さを存分に引き出しているという。「左投手でありながら右打者のアウトコースにシュート気味に逃げていくボール、左投手特有のクロスファイヤー(右打者のインコース・懐に食い込んでいくようなボール)を駆使して対角線広くストライクゾーンを使い、絶妙なタイミングでチェンジアップを配してくる。打者の読みや予想を裏切り、裏をかくような組み立てができている」と、今大会に現れた「新星」後藤希友を陰で支える「功労者」を称えた。

 打撃面では、カナダのチェンジアップを多投し、小刻みにつなぐ投手リレーにかわされ、なかなか「決定打」が出ず、苦戦を強いられたが、最後は「キャプテン」山田恵里が決めてくれた。延長8回裏、日本は「主砲」山本優がキッチリと送りバントを決め、一死三塁の「一打サヨナラ」のチャンスを作ると、カナダ守備陣は藤田倭、山崎早紀を「故意四球」(野球でいう「申告敬遠」。「故意四球」を宣言すれば、一球も投じることなく、打者を四球で歩かせることができる)で歩かせ、「満塁策」を選択。7回裏にも「満塁策」を選択し、同じような「一打サヨナラ」の場面を切り抜けたことで「味をしめた」わけではないだろうが……山田恵里がセンターにはじき返し、歓喜のサヨナラ! 日本は最終戦を待たずに「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出、「銀メダル以上」が確定した。
 正直、「満塁」で山田恵里を打席に迎えた時点で「勝負」は見えていた。「レジェンド」山田恵里に対し、目の前での二人連続の「故意四球」「満塁策」はさすがに「礼」を失した行為であり、こんな「非礼」を山田恵里が許すわけがなかった。結果は、鮮やかで綺麗なセンター前ヒット。山田恵里らしい高いバッティング技術、芸術的なバットコントロールに裏付けられた「劇的」なサヨナラ安打だった。

 これで「横浜ラウンド」の最終戦は、日本、アメリカともに「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出、「銀メダル以上」が確定した状態での対戦となり、この試合自体の「勝敗」にはさして意味はないものとなった。両チームが、この試合をどうとらえ、どう戦うのか……に注目したいところだ。どちらにしても「ゴールドメダルマッチ」(決勝)を見据えた試合、水面下での心理戦、高度な駆け引きが絡み合う試合となることは間違いなさそうだ。

アメリカが逆転勝ち!
日本は2位で「ゴールドメダルマッチ」(決勝)へ!!
「最後の決戦」で笑うのは……

 オープニングラウンド(予選リーグ)「横浜ラウンド」も最終日を迎え、すでに「ゴールドメダルマッチ」(決勝)進出、「銀メダル以上」が決まっている日本とアメリカが対戦した。
 翌日(7月27日/火)に「ゴールドメダルマッチ」(決勝)で「金メダル」をかけて対戦するとあって、日本の先発は藤田倭。アメリカも「今大会初登板」となるアリソン・カルダが先発させ、試合がはじまった。
 先攻の日本は初回、そのアリソン・カルダの立ち上がりを攻め、相手守備の乱れから1点を先制すると、先発・藤田倭が5回までアメリカ打線を「ノーヒット」に抑える好投。このまま逃げ切るかと思われたが、6回表、3安打を集中され、1-1の同点に追いつかれてしまい、最終回、この回先頭のケルシー・スチュワートにサヨナラホームランを浴び、1-2の逆転負け。日本は今大会「初黒星」でオープニングラウンド(予選リーグ)4勝1敗の2位となり、5戦全勝で1位のアメリカと明日(7月27日/火)、「ゴールドメダルマッチ」(決勝)で「金メダル」をかけ、「再戦」することになる。

 今大会、「驚異の二刀流」と呼ばれながら「打者」としての活躍ばかりが目立っていた藤田倭だが、この試合では「持ち味」を存分に発揮。「エース」上野由岐子に次ぐ存在として期待されながら、なかなか登板機会に恵まれなかった鬱憤を晴らすかのように5回まで「ノーヒット」の好投。「意地」を見せると同時に、「ゴールドメダルマッチ」(決勝)へ向け、「エース」上野由岐子、開幕から4連投と「フル回転」してきた後藤希友に「休養」をとらせ、アメリカ打線の「現状」「調子」を実際の試合で対峙しながら確認するという「役割」をしっかりと果たしてくれた。

 その藤田倭の力投によって明らかになったのは、今大会のアメリカ打線は決して「本調子」ではない、ということである。初戦のイタリア戦が2-0、続くカナダ戦が1-0、第3戦のメキシコ戦が2-0、第4戦のオーストラリア戦が2-1と、2点以上取った試合がなく、本塁打は「0」。この日本戦のサヨナラホームランでようやく今大会「初ホームラン」が飛び出しはしたが、いつものような「迫力」は感じられない。このアメリカ打線であれば、日本の「エース」上野由岐子、「新星」後藤希友であれば、十分に抑えられる。その上、藤田倭にもアメリカ打線に通用する目処が立ったという意味では、試合の勝敗を超えた「収穫」のあった試合といえるだろう。

 打線もこの試合に関しては、アリソン・カルダの勢いのある投球に押され気味ではあったが、アメリカが誇る「Wエース」キャサリン・オスターマン、モニカ・アボットの両左腕に対する「対策」は練りに練ってきており、あとは「本番」でその成果を出すだけ、という状態になっている。
 現在、「世界ランキング1位」の日本の男子ソフトボールも全面協力。それこそ「世界トップクラス」の男子ピッチャーを打ち込んできた。アメリカの「Wエース」の球種、球筋を映像で分析する一方、日本が誇る映像技術でそれを再現し、VR(バーチャルリアリティー)で常にその「特徴」や「攻略法」をイメージできるよう、環境が整えられ、それらを活用した練習も積み重ねてきた。あとはその練習の成果を「金メダル」のかかった「ゴールドメダルマッチ」(決勝)で出すだけでいい。

 ここまでの戦いを見る限り、上野由岐子、藤田倭、後藤希友の投手陣がアメリカ打線を封じ込んでくれる可能性は高い。
 また、アメリカが誇る「Wエース」は確かに「強力」だが、日本打線が必ずや攻略してくれるはずである。「右打者」で固めた今大会好調の「クリーンアップトリオ」内藤実穂、山本優、藤田倭は、例えキャサリン・オスターマン、モニカ・アボットが相手でも、必ずとらえてくれるに違いない。
 山田恵里、市口侑果の高いバッティング技術と巧みなバットコントロールがあれば、「左対左」でも十分に対応してくれるだろう。
 今大会ノーヒットの原田のどか、山崎早紀には「開き直って」狙い球を絞り、自分のスイングを信じて思い切り振り抜いてほしい。2008年の北京オリンピックの「決勝」で先取点のキッカケを作ったのは、それまで9試合・21打席ノーヒットだった三科真澄のレフトフェンス直撃の二塁打。二人にはそんな「役回り」がきっと回ってくるはずだ。

 「ゴールドメダルマッチ」(決勝)の先発は「エース」上野由岐子。経験・実績、現在の調子から考えて、この人以外いないだろう。状況に応じて「勝利の方程式」後藤希友の投入もあり得るし、後藤希友を「ワンポイント」や「ショートリリーフ」に使い、試合の流れを変え、その後、「エース」上野由岐子を「再出場」「再登板」させるような投手起用も考えられる。場合によっては藤田倭が「DP」であることを活用し、藤田倭を登板させるケースだってあるかもしれない。泣いても笑っても「残り1試合」、「総力戦」での戦いになるのは間違いない。

 打線は1番に「キャプテン」の山田恵里、2番・市口侑果、あえて「左打者」で1・2番コンビを組む。高い打撃技術を誇るこの二人であれば「左対左」の不利は関係ない。その後に日本が誇る「クリーンアップトリオ」内藤実穂、山本優、藤田倭の「右打者」が襲いかかる。6番~8番にも山崎早紀、原田のどか、我妻悠香が並び、9番には「守備の要」渥美万奈。この打線でアメリカが誇る「Wエース」を攻略する(あくまで予想でしかありませんが……)。

 アメリカの先発はキャサリン・オスターマンと読む。過去の実績、キャリアを考えると、ピッチャーとしての「格」はキャサリン・オスターマンが「一枚上」であり、モニカ・アボットは2018年の世界選手権で日本打線に打ち込まれていることもあり、キャサリン・オスターマンを押しのけての先発起用はないと見る。所属チーム(トヨタ自動車 レッドテリアーズ)でバッテリーを組む「女房役」峰幸代が日本ベンチに控えており、その峰幸代を含め、モニカ・アボットのことを知り尽くす「チームメイト」の山崎早紀、渥美万奈もレギュラーメンバーに名を連ねている。そして、日本リーグで常に優勝を争い、ライバルチームの「敵将」として実際に何度もモニカ・アボット「攻略」を実現してみせた宇津木麗華ヘッドコーチの存在も、アメリカ側から見れば「ナーバス」にならざるを得ない「ネガティブ」な材料となるのではないだろうか。

 そう……「用意周到」で「策士」の宇津木麗華ヘッドコーチが、アメリカの「Wエース」に対し、何の対策も立てていない、とは考えにくい。必ずやその「攻略法」を考え、そのための「準備」をしてきているはずである。

 日本は「この日のために」やるべきことをやり、「金メダル」を手にするための準備を積み重ねてきている。あとはその「成果」を「オリンピックの決勝」という「最高の舞台」で出すだけだ。

13年分の思いを込めて……つかめ! 金メダル!!



(公財)日本ソフトボール協会 広報
株式会社 日本体育社「JSAソフトボール」編集部 吉田 徹

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